退職代行サービス「モームリ」を運営する株式会社アルバトロスの社長夫妻が、2026年2月3日に逮捕されました。
容疑は弁護士法違反です。
累計4万件以上の実績を誇る大手業者のトップが警視庁に連行されるという、業界にとっては衝撃的な展開となりました。
「顧問弁護士監修」を謳っていた会社が、なぜ法律違反で摘発されたのでしょうか。
実は退職代行業界には、以前から「非弁行為」という深刻なグレーゾーンが存在していました。
今回の逮捕劇は、その課題に警察のメスが入った瞬間と言えます。
利用者の多くは「弁護士監修なら安心」と信頼を寄せていたはずです。
それが裏切られた形になり、心配や混乱を感じている人も少なくありません。
目次
モームリ社長夫妻の逮捕容疑とは?
2026年2月3日、警視庁保安課が動きました。
逮捕されたのは株式会社アルバトロスの社長・谷本慎二容疑者(37歳)と、その妻で従業員の志織容疑者(31歳)です。
容疑は弁護士法違反、具体的には「報酬を得る目的で法律事務をあっせんした」というものになります。
何をしたのか。
2024年7月から10月頃にかけて、退職希望者6人以上を弁護士に紹介し、1人あたり約1万6500円の紹介料を受け取っていたとされています。
一見少額に見えますが、報道では全体で約200人紹介し数百万円規模の報酬を得ていた可能性も指摘されているのです。
何より問題なのは、紹介料を「広告費」「賛助金」「アフィリエイト料」といった名目で偽装していた点でしょう。
谷本容疑者は「弁護士法違反になるとは思っていなかった」と否認しています。
しかし警視庁は2025年10月22日に既に本社や自宅などへ家宅捜索に入っており、そこから約3ヶ月半かけて関係者への聴取や証拠の裏付けを進めてきました。
警察は組織的な非弁行為を重く見て、慎重に捜査を積み重ねてきたわけです。
累計利用者4万人超という規模の大手業者だっただけに、この逮捕の波紋は業界全体に広がっています。
家宅捜索の時点でも話題になりましたが、今回の逮捕で事態はさらに深刻化したと言えるでしょう。
逮捕理由の「非弁提携」とは?
退職代行サービスそのものは違法ではありません。
本人に代わって「退職します」という意思を会社に伝える、いわば伝言役としての機能は法的に問題ないとされています。
ただし、ここには重要な線引きがあるのです。
民間の退職代行業者ができるのは、あくまで「意思の伝達」だけ。
会社との交渉や、未払い給料の請求、有給休暇の消化といった法律事務には一切手を出せません。
では交渉が必要になったらどうするか。
そこで登場するのが弁護士です。
弁護士資格を持つ者だけが、報酬を得て法律事務を扱うことができます。
モームリは「失敗した場合」に弁護士を紹介していたとされていますが、この紹介の際に金銭のやり取りが発生していたことが今回の摘発につながりました。
弁護士法違反(非弁行為)とは何か
弁護士法72条には、こう書かれています。
「弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で法律事務を取り扱い、又はこれをあっせんしてはならない」
つまり弁護士資格のない者が、お金をもらって法律案件を扱ったり、人を弁護士に紹介して紹介料を受け取ったりすることは禁止されているわけです。
退職交渉や未払い給料の請求は立派な法律事務ですから、これを非弁護士が有償で引き受けたりあっせんしたりすれば、当然違法になります。
業界では以前からタブーとされており、労働組合や弁護士有志が警鐘を鳴らしていた部分でもありました。
それでもこうした事態が起きてしまったことに、業界の課題が浮き彫りになったと言えるでしょう。
1人あたり1万6500円の紹介料を隠蔽?
報道で一致しているのが、1件あたり1万6500円という紹介料の金額です。
この金額が弁護士側から振り込まれていたとされていますが、名目は「広告費」や「賛助金」などに偽装されていました。
6人分で約10万円。
全体では約200人紹介し、数百万円規模の収益になっていた可能性が指摘されています。
さらに問題視されているのが、この仕組みが「失敗しても紹介料が入る」構造だったという点です。
成功報酬型ではないため、モームリ側としては顧客を弁護士に流してしまえば確実にお金が入ります。
この仕組みでは、利用者にとって十分なサポートが受けにくい面があったかもしれません。
「顧問弁護士監修」でもアウトだった理由
モームリは公式サイトで「顧問弁護士監修」をアピールしていました。
多くの利用者がそう信頼していたはずです。
しかし今回の問題は、その監修とは別の部分にありました。
顧問弁護士が監修していたのは、あくまで基本的な意思伝達の部分だけ。
その後に別途紹介される弁護士との間で発生した有償のあっせん行為が、非弁行為の核心だったわけです。
つまり監修弁護士と提携弁護士は別物であり、「顧問弁護士監修」という表示は合法性をアピールするための看板だったと見る向きもあります。
複数の弁護士と通じていたのになぜ?
顧問弁護士がいて、さらに複数の提携弁護士がいたのに、なぜ誰も違法性を指摘しなかったのでしょうか。
弁護士側も紹介料を支払っていたとされ、責任が問われています。
元従業員が証言した社内の口止め工作
元従業員の証言によると、社内では「非弁提携は違法だから、絶対に外で言わないで」と口止めされていたそうです。
これは会社側が違法性を認識していた決定的な証拠と言えます。
谷本容疑者は逮捕時に「違法になるとは思っていなかった」と否認していますが、社内で口止め工作がされていたとなれば、その主張の信憑性は揺らぎます。
報道では谷本容疑者が周囲に「逮捕されることはない」と話していたとの情報もあります。
業界のグレーゾーンを知りつつ、名目を偽装すれば大丈夫だと考えていたのかもしれません。
提携弁護士側の責任と捜査のメス
紹介料を支払っていた弁護士側も、決して無関係ではありません。
警視庁は弁護士事務所にも捜査の手を伸ばしており、共犯的な関与を調べています。
弁護士という法律の専門家が、非弁行為に加担していたとすれば、これは業界にとって致命的なダメージになるかもしれません。
少なくとも紹介料のやり取りがあった以上、黙認していた可能性は否定できません。
弁護士側がどこまで認識していたのか、紹介料の受け渡しをどう処理していたのか。
捜査が進むにつれて、さらに詳しい事実が明るみに出る可能性もあるでしょう。
「こうやればバレない」という指南はあったか
弁護士側から「こうやれば分からないよ」といったアドバイスがあったのではないか、という疑問を持つ人もいます。
しかし現時点の報道や証言を見る限り、そうした直接的な証拠は出てきていません。
むしろモームリ側が自ら名目を偽装し、リスクを承知の上で運営していた可能性の方が高いように思えます。
「広告費」「賛助金」といった名目は、自分たちで工夫した結果なのかもしれません。
ただし弁護士側が紹介料を受け取っていた以上、完全に無関係とは言い切れないでしょう。
「法の不知は許されない」という原則は、弁護士にこそ当てはまるはずです。
モームリ逮捕による利用者の不安3選と対策
特に現在サービスを利用中の方は大きな不安を抱えているはずです。
公式サイトやSNSは完全に沈黙しており、事件に関する声明は一切出ていません。
サイト自体は稼働中で、問い合わせフォームも表示されていますが、逮捕後の実績更新は止まっています。
この不気味な静けさが、利用者の不安をさらに煽っているのです。
Xなどでは「予約していたのに…」「手続き中はどうなる?」という悲鳴にも似た投稿が散見されます。
深刻なトラブル報告はまだ少ないものの、潜在的な不安は相当なものでしょう。
アディーレ法律事務所が先着100名限定で退職代行費用を1,100円(税込)とする救済措置を発表するなど、他社が迅速に対応しています。
乗り換えを促す動きが活発化しており、業界全体でモームリからの利用者流出が始まっているのかもしれません。
利用中の退職代行手続きはどうなる?
利用者にとって特に気になるのは、今進めている手続きがどうなるかという点でしょう。
既に連絡済みなら退職意思は有効です。
民法627条により、2週間前に予告すれば退職は可能とされていますから、モームリを通じて伝えた退職の意思が無効になることはまずないと考えられます。
ただし問題は追加の交渉が必要なケースです。
未払い給料の請求や有給休暇の消化交渉など、弁護士紹介が前提だった部分は、サービス停止によって宙に浮く可能性があります。
連絡前の人も対応の遅れが心配されます。
問い合わせフォームは稼働中ですが、運営が不安定化すれば対応が遅れたり、最悪の場合は手続きが中断したりするかもしれません。
返金保証や後払いサービスの今後の対応
モームリの規約には「退職できなかった場合は全額返金保証」という記載があり、連絡前のキャンセルなら手数料を引いて返金可能となっていました。
しかし逮捕後、この返金対応がきちんと機能するかは大いに疑問です。
倒産の報道はなくサイトも稼働中ですが、信用低下による影響は避けられません。
「支払ったお金が戻ってこない」というリスクは現実味を帯びてきています。
既に振り込んでしまった人の不安は察するに余りあります。
他社の救済窓口を活用して返金の相談をするのも一つの手です。
アディーレなどが名乗りを上げている以上、そちらに相談する選択肢もあるでしょう。
他社(弁護士・労働組合)への緊急乗り換え
こうなってくると、弁護士直営や労働組合が運営する退職代行サービスへの乗り換えを検討した方が賢明かもしれません。
これらは非弁行為のリスクがなく、最初から合法的に交渉まで対応してくれます。
労働基準監督署や無料の法律相談窓口も有効な選択肢です。
そもそも退職自体は本人が会社に通知すれば成立するものですから、代行業者を使わなければならないわけではありません。
ただし精神的に追い詰められていて、自分では会社と話せないという人もいるでしょうから、そういった場合は信頼できる第三者の助けを借りるべきです。
今回のモームリの事件は、退職代行業界の課題を白日の下に晒しました。
「顧問弁護士監修」という看板の裏で、違法な紹介料ビジネスが行われていた可能性が高く、利用者の信頼が揺らぐ事態となりました。
弁護士という法律の専門家が関わっていながら、なぜこんなことになったのでしょうか。
その答えは捜査の進展を待つしかありませんが、今回の件で「専門家がついているから安心」という思い込みのリスクを多くの人が感じたはずです。
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