鬼越トマホークの良ちゃんのポスト、すんごい暴言に聞こえたんだけど、あれまた名誉毀損とかなったりしないかな?

鬼越トマホークの良ちゃんが、アンジャッシュの渡部建に向けて投稿した「ゴミ」「クソ」などの言葉が波紋を広げています。

発端は、YouTube出演の打診をめぐる行き違いでした。

ところが、渡部建本人や所属事務所が関与していなかったことが判明し、人力舎は「事実と異なる内容」や「人格を著しく傷つける表現」が含まれているとして異例の声明を発表しています。

ここで気になるのが、SNSで相手を「ゴミ」「クソ」と呼ぶ行為は違法になるのかという点です。

結論からいうと、言葉が不快だからといって、すぐに犯罪になるわけではありません。

ただし、公開されたSNSで特定の人物を名指しし、社会的評価を下げるような表現を使った場合は、侮辱罪や名誉毀損罪、民事上の損害賠償が問題になる可能性があります。

芸人同士の毒舌だから、笑いの延長だから。それだけで法的責任が消えるわけではありません。

では、今回のケースはどこが法的なポイントになるのでしょうか。ここから順番に整理していきましょう。

 

渡部建と鬼越良ちゃんの騒動はなぜ起きた?

まずは、今回の騒動の流れから整理していきますね。

発端となったのは、渡部建のトークライブの宣伝を兼ねたYouTube出演の話でした。

良ちゃんは、渡部側から鬼越トマホークのYouTubeチャンネルに出演したいという打診があり、調整を進めていたと認識していたようです。

しかし、その後に出演を断られたと受け止め、2026年7月7日深夜から8日にかけてXで渡部を名指しして批判しました。

「ゴミ」「クソ」といった言葉に加え、後輩を値踏みしている、不誠実な対応をしたという趣旨の投稿を行っています。

ところが、人力舎が7月10日に公表した説明は違いました。

声明によると、出演の打診は渡部本人や人力舎が知らないところで第三者によって行われたもので、渡部が自ら出演を希望した事実も、人力舎が了承した事実もなかったとされています。

つまり、良ちゃんから見れば「相手から誘ってきたのに断られた話」でしたが、渡部側から見れば「知らないところで進んでいた話によって突然批判された」という状態です。

渡部もラジオで、情報が交錯していたことや、誤解として投稿を取り下げてもらえればよかったものの、拡散が続いたため事務所が声明を出さざるを得なかったという趣旨を説明しています。

まさに、すれ違いから始まった騒動。

ただし、誤解があったことと、相手への表現が許されるかどうかは別の問題です。

ここを切り分けて考えることが、今回の論点なんです。

 

「ゴミ」「クソ」は侮辱罪にあたる?

まず引っかかるのは、「ゴミ」「クソ」と書けば侮辱罪になるのかという点。

結論として、「ゴミ」「クソ」と書いたからといって、必ず侮辱罪が成立するとは限りません。

最終的には、投稿の文脈、公開範囲、対象人物が特定できるか、どの程度社会的評価を傷つける表現だったかなどを踏まえて判断されます。

とはいえ、今回のように公開されたXで特定の人物を名指しし、その人格を否定するような言葉を繰り返した場合は、侮辱罪が問題になる余地があります。

刑法上の侮辱罪は、具体的な事実を示さなくても、公然と人を侮辱した場合に成立し得る犯罪です。

「あの人は金を盗んだ」のような具体的な事実ではなく、「バカ」「最低な人間だ」といった抽象的な悪口が典型例とされています。

「ゴミ」「クソ」は、何か具体的な行動を説明する言葉ではありません。

相手そのものに価値がないかのように扱う、かなり強い人格否定です。

しかも今回は、本人同士の閉じた会話ではなく、不特定多数が閲覧できるSNS上で投稿されています。

侮辱罪で求められる「公然性」が問題になりやすい状況といえるでしょう。

侮辱罪は2022年7月から法定刑が引き上げられました。

SNS上の中傷が深刻化したことを背景に、それまでより重い刑事責任を問える仕組みへ変更されています。

ただ、ここで「この投稿は侮辱罪で確定」とまでは言えません。

警察や検察、最終的には裁判所が個別の事情を踏まえて判断する話だからです。

現段階で言えるのは、芸人の強い言葉というだけでは片づけられず、侮辱罪が検討され得る表現だったということなんです。

 

事実と異なる批判は名誉毀損になる?

もう一つ大きな論点が、名誉毀損です。

侮辱罪と名誉毀損罪の大きな違いは、具体的な事実を示しているかどうかにあります。

「ゴミ」「クソ」のような抽象的な悪口は侮辱罪が問題になりやすい一方、「出演を申し込んでおきながら一方的に断った」など、具体的な出来事を示して相手の評価を下げた場合は、名誉毀損罪が問題になります。

刑法230条は、公然と事実を摘示して人の名誉を傷つけた場合、名誉毀損罪が成立し得ると定めています。

ここで注意したいのは、摘示した内容が真実であっても、名誉毀損罪が成立し得るという点です。

もちろん、公共性や公益目的、真実性など一定の条件を満たせば、処罰されない場合もあります。

しかし、個人的な怒りから相手を攻撃する投稿の場合、その例外が当然に認められるわけではありません。

今回、人力舎は、渡部が自ら出演を希望して連絡し、その後一方的に断ったという事実はないと明確に否定しています。

さらに、渡部本人も話を聞いていなかったと説明しました。

仮に、渡部が不誠実な対応をしたという印象を与える具体的な説明が事実と異なり、それによって社会的評価が低下したと判断されれば、名誉毀損が争点になる可能性があります。

良ちゃん自身が誤った情報を事実だと信じていたとしても、それだけですべての責任がなくなるとは限りません。

SNSでは、「聞いた話だから」「自分はそう認識していたから」という説明が、投稿された側の傷ついた名誉を元に戻してくれるわけではありません。

感情が強いときほど、事実確認は後回しになりがちです。

ですが、投稿が広がる速度は、確認が追いつく速度よりはるかに速い。

今回の騒動は、その怖さがそのまま表れたケースといえるでしょう。

 

毒舌芸と人格攻撃の境界線はどこ?

ここで気になるのが、「芸人だから許されるのでは?」という見方ではないでしょうか。

鬼越トマホークといえば、強い言葉を使った毒舌芸で知られています。

そのため、「いつもの芸風では」「芸人同士だから本気ではない」と受け取った人もいるでしょう。

ただ、法的な判断で重要になるのは、発言した人物の芸風だけではありません。

発言された場所、前後の文脈、相手との関係、表現の強さ、視聴者が冗談と理解できる状況だったかなどが総合的に見られます。

テレビ番組や舞台の上で、相手も参加した状態で行われる毒舌には、「演出」「掛け合い」「笑い」という文脈があります。

言われた側がその場で言い返したり、観客がやり取り全体を見たりできるため、単なる人格攻撃とは異なる受け取られ方をすることもあります。

一方、SNSで一方的に相手を名指しし、本気の怒りとして「ゴミ」「クソ」と発信した場合は事情が違います。

そこには、相手との合意も、ネタとして回収する流れもありません。

切り取られた言葉だけが残り、何万人、何百万人へ広がっていきます。

毒舌芸と人格攻撃を分けるのは、言葉の強さだけではなく、その言葉を笑いとして成立させる関係と文脈があるかどうかです。

「芸人だから許される」という線引きではありません。

芸人の毒舌は、何を言っても許される特別な免許ではないんです。

今回、人力舎が問題にしたのも、単に言葉遣いが荒かったからではありません。

事実と異なる説明と、渡部の人格を著しく傷つける表現が組み合わさり、拡散され続けたことでした。

笑いのための毒舌と、怒りに任せた公開攻撃。

言葉だけを見れば似ていても、中身はかなり違うというわけですね。

 

投稿者や便乗した第三者が負う法的責任

最後に見ておきたいのが、最初の投稿者以外の責任です。

法的責任を負う可能性があるのは、最初に投稿した本人だけではありません。

元の投稿を引用しながら、さらに過激な言葉を加えた人や、事実と確認できない内容を自分の情報として拡散した人も、別の投稿者として責任を問われる可能性があります。

「本人が言っていたから」「みんなが投稿していたから」は、完全な免責にはなりません。

自分のアカウントから投稿した以上、その言葉を発信した責任は自分に残ります。

刑事責任とは別に、民事上の問題もあります。

名誉や人格権を侵害したと判断されれば、投稿の削除、損害賠償、慰謝料などを請求される可能性があります。

SNSの投稿者が匿名であっても、一定の条件を満たせば発信者情報の開示を求める制度が設けられています。

つまり、匿名アカウントは「誰が書いたか分からない場所」ではありますが、「誰が書いたか絶対に分からない場所」ではありません。

そして、一度大きく拡散された情報は、元の投稿を削除しても完全には消えません。

スクリーンショットや引用投稿が残り、訂正よりも最初の強い言葉だけが記憶されることもあります。

今回の騒動で最も重いのは、最初の行き違いそのものではないでしょうか。

仲介の過程で誤解が生まれることはあります。

問題は、確認する前に相手の人格まで攻撃し、その言葉が事実関係より先に広がってしまったことなんです。

怒った理由に理解できる部分があったとしても、相手を「ゴミ」「クソ」と呼ぶ必要があったかは別の話です。

SNSでは、感情を吐き出した一瞬の投稿が、そのまま証拠として残ります。

書いた側にとっては一時の怒りでも、書かれた側にとっては、何度も検索され、何度も見られる言葉になります。

SNS中傷の法的リスクとは、罰金や慰謝料だけではありません。自分の怒りを、取り消せない形で世の中に固定してしまうこと。ここが最も重いポイントなんです。