メルカリが、くら寿司の「ちいかわ」コラボをめぐって声明を出しました。

2026年9月7日の夕方のことです。

不正に入手された疑いのある出品商品を、くら寿司と連携して削除している、という内容。

ところが、この知らせに返ってきたのは「ありがとう」ではありませんでした。

 

いちばん目についたのは、削除では足りないという声。

消してほしいのは1件ずつではなくて、入口のほうだ、というわけです。

 

その言い分は、たしかによく分かります。

ただ、メルカリには入口そのものを閉める仕組みも、別に用意されていまして。

今回出された声明が、どこまで届くものなのか。

フリマを使う人がこれから何を見ておけばいいのかも含めて、順番に確認していきたいと思います。


最初から出品禁止にすればいいのに

まず、ここまでの流れを短く。

くら寿司は2026年8月21日から、寿司を食べると回せる「ビッくらポン!」でちいかわとのコラボを始めました。

ところが、フィギュアが1つも出ないという投稿がネットに相次ぎ、フリマサイトでは大量の出品も見つかります。

そして9月5日、くら寿司は従業員による不正行為が判明したと公表し、キャンペーンを早めに終わらせると発表しました。

 

そこへ、9月7日のメルカリの声明が届いたわけです。

ぶら下がった反応は、驚くほど冷たいものでした。

口だけだろう、動くのは儲けてからだ、いまさら遅い。

そういう書き込みが、次から次へと並んでいきます。

 

読んでいて、責める気持ちにはなれませんでした。

フリマの出品をめぐる話は、この騒動が始まってからずっと出ていたことだからです。

ただ、その冷たい声の中に、ひとつだけ具体的な要求が混じっていました。

「最初っから出品禁止にすりゃあいいだけじゃねえか。」

言葉は荒いのですが、指している場所はかなり正確です。

 

というのも、削除と出品禁止は、同じことのように聞こえて中身がまったく違うから。

削除は、並んでしまったものを1件ずつ下ろす作業です。

出品禁止は、そもそも並べられなくする措置。

散らかった部屋を片づける人と、ドアに鍵をかける人くらい、役割が離れています。

 

今回メルカリが動かしたのは、前者のほうでした。


メルカリが消すと言った範囲

声明の文面を、そのまま見てみましょう。

「くら寿司株式会社と連携し、不正に入手された疑いのある出品商品の削除などの対応を実施しています」と書かれています。

ここで大事なのは、消すと言っている範囲のほう。

コラボ商品の出品ぜんぶ、とはどこにも書いてありません。

消えるのは「不正に入手された疑いのある」ものだけです。

 

つまり線は、転売かどうかというところには引かれていません。

引かれているのは、そのモノがどこから来たか、という一点。

店でお客として受け取ったものは残り、そうでない道を通ってきたものが対象。

ここは、まとめて消せない理由でもあります。

並んでいるコラボ商品の中には、お店でふつうに受け取った人が手放したものも混ざっているからです。

全部まとめて下ろすと、その人たちの出品まで一緒に消すことになってしまう。

同じ声明の中には、規約の側の説明も添えてありました。

盗品など正規ルートではない入手が確実と思われる商品の出品は、利用規約とガイドラインで禁止している、とのこと。

禁じられているのは高く売ることではなく、出どころのほうなんです。

 

実際、ITmediaの取材に対してメルカリは、商品を削除した例はすでにあるとしています。

そのうえで同じ記事には、7日午後6時40分の時点でも出品は複数見受けられた、とも書かれていました。

全部が消えたわけではなさそうでして。

声明を読んで「なんだ、まだ残ってるじゃないか」と感じた人がいたとしたら、その感想のほうが文面には忠実だったことになります。


シリアルナンバーのないおまけ

では、残っているものはなぜ残っているのでしょうか。

その手がかりも、同じ声明の中に書いてありました。

 

メルカリは、通報を受けたあとの手順をこう説明しています。

「シリアルナンバーや商品特徴等の情報を照合の上、該当品と判断した場合は出品商品の削除・出品者への制限措置等を実施しています」

照合、という言葉が置かれているところ。

盗まれた腕時計やカメラであれば、製造番号がひとつずつ違います。

被害者が番号を伝えれば、並んでいる1件がその品なのかどうかを突き合わせられる。

 

ところが、今回問題になっているのは、お店で配られていたおまけです。

湯呑みにも、のぼりにも、1枚ずつ違う番号は振られていません。

同じ形のものが、全国のお店に配られています。

 

もちろん、番号がないから何も判断できない、という単純な話ではないでしょう。

メルカリは商品特徴も照合の材料に挙げていますし、そもそも売られていないはずの品が並んでいること自体が特徴とも言えます。

それでも、突き合わせに手間のかかる種類のものであることは間違いなさそうです。

 

なお、通報とは別の道もあります。

警察から出品商品について照会があった場合は、法令に基づいて連携し協力している、と声明には書かれていました。

外から動かせる入口は、ひとつではないということ。

見かけたものを通報するときには、そのモノがどう並んでいたのかを一緒に書いておく。

地味ですが、事務局が確かめる材料はそのぶん増えていく。


4か月前は売り出す前に止めていた

ここまでを読むと、メルカリは1件ずつ消すことしかできない会社のように見えてきます。

ところが、そうではありません。

 

2026年5月8日、メルカリはひとつの発表を出しています。

マクドナルドのハッピーセット「ちいかわ」の玩具付録について、出品を禁止するという内容でした。

期間は「2026年5月15日05:00〜安心・安全な取引環境が確保できないと考えられる期間」。

玩具付録の販売が始まったのが、5月15日でした。

つまり、メルカリは売り出される前に止めていたことになります。

 

理由も公表されていました。

「販売開始直後の取引の増加によるトラブルの発生、取引されるお客さまへの誹謗中傷の発生など、マーケットプレイス内の安心・安全が損なわれる可能性があるため」

 

同じちいかわのおまけです。

ファストフードの店頭で配られるという配り方まで、今回とよく似ています。

食べた人におまけが付いてくること、用意された数に限りがあること、配られる日が前もって決まっていること。

この3つがそろっている景品は、発売の日にどっと並ぶことが前もって読めます。

その一件で、メルカリはすでに一度、並ぶ前にドアを閉める判断をしているんです。

 

だから今回の声明を読んで物足りなさが残るとしたら、それは気のせいではないと思います。

引き出しは2つあるのに、いま開いているのは片方だけ。

そういう状態が続いているわけです。


削除と出品禁止は別の引き出し

その2つ目の引き出しは、思いつきで作られたものではありません。

 

メルカリは2025年10月に、マーケットプレイスの基本原則へひとつの方針を加えています。

そこで示されたのが、市場の安心と安全が著しく損なわれる可能性がある商品については、出品禁止を含む対応を行うという方針でした。

ハッピーセットの一件は、この方針に沿って実際に動いた例になります。

整理してみましょう。

  • 削除=並んだあとに、1件ずつ下ろす(今回やっていること)
  • 出品禁止=並ぶ前に、その商品ごと止める(4か月前にやったこと)
  • 通報=どちらを動かすにも要る、外からの申告

なお、すでに買ってしまった人にも関わる話が、メルカリのガイドには書いてあります。

禁止出品物にあたると事務局が判断した場合、取引のキャンセルや商品の削除、利用制限といった措置を取る場合がある、とのこと。

消される対象になるかどうかは、売る人だけの問題ではありません。

 

そして今回については、メルカリはITmediaの取材に、先ほどの方針に沿って判断・対応するとしたうえで、状況を継続して確認していると答えたと報じられています。

メルカリが出品禁止をするともしないとも、まだ言っていない段階。

もし動くとしたら、その知らせは表に出てきます。

5月のハッピーセットのときも、禁止する商品と期間を書いた発表が先に公表されました。

今後を気にしている人は、その形の発表が出るかどうかを見ておけばいいことになります。

 

ここがこの騒動の分かれ目になりそうです。

くら寿司のキャンペーンはすでに終わっていますから、いま並んでいるものを消すだけなら、時間が経てば自然に静かになっていきます。

けれど次に人気キャラクターの景品が出たときにどちらの引き出しが開くのかは、そのときになってみないと分かりません。

ネットには、ちいかわだけじゃないという指摘も出ていました。

ほかの作品の景品を挙げて、あれも並んでいるじゃないかという書き込み。

その通りだと思いますし、だからこそ1件ずつ消す作業には終わりが見えにくくなっていきます。


フリマで買う前に見ておく3つ

ここからは、今回の件を離れた話。

自分が買う側や売る側に回ったときに、そのモノが消される側なのかどうかを見分ける手がかりです。

むずかしい知識は要りません。

  • そのモノは、店で売っていたものか、配っていたものか
  • 公式が「中止」「回収」と言っていないか
  • 同じ人が、同じものを何十と並べていないか

ひとつ目がいちばん効きます。

値札が付いて売られていた商品なら、誰かが買って手放したという説明が最初から立つ。

一方で、食べた人に配られていたおまけは、本来ならお店の外に大量には出てこないものです。

1つや2つが出てくるのと、箱で出てくるのとでは、意味がまるで変わってきます。

 

ふたつ目が効いてくるのは、買ったあとの安心のほう。

公式が回収や中止に踏み切ったあとは、その商品まわりの空気が変わりますので。

届いてから騒ぎになるより、押す前に一度そのキャンペーンの名前を調べておくほうが早い。

 

三つ目は、いちばん目で見て分かる手がかりです。

自分の家から出てくるおまけの数には、どうしたって限りがありますので。

ひとりの出品者が同じものを並べているとき、その数は本人の趣味では説明がつきにくくなっていく。

出品者の名前を押すと、その人がいま何を売っているのかは一覧で見られますので。

 

そして売る側に回るときも、見るところは同じ。

家にあるおまけを手放すこと自体は、悪いことではありません。

ただ、手放すおまけに自分以外の名前が乗っていないか、というところだけは一度確かめておきたいところです。

 

消した数より、次に止まるかどうか

メルカリはもう動き始めていて、削除した例もあるとのこと。

声明を出したこと自体を、口だけだと切り捨てる気にはなれません。

 

ただ、4か月前に自分たちで開けた引き出しのほうは、今日の時点でまだ閉じたままです。

消した数を数えることより、次に同じような景品が出たときに前もって止まるかどうか。

そちらのほうが、この会社の答えとしてはずっと大きいと感じてしまいます。

そこがはっきりするまでは、手元のグッズの出どころだけ静かに確かめておきたいところですね。