雪がへばりついたLED信号は、何色が点いているのか、ほとんど見分けがつきません。

11月8日の北海道は、各地が吹雪に見舞われました。

交差点で信号の色が読めず、「歳だから見えんのかな」とこぼす運転手に、「年関係なく見えんぞこれは」と返す声が、ネットに次々と並んでいます。

ただ、雪の付いたLED信号が読めないという話は、今年に始まったことではありません。

2020年の大みそかには、すでにこんな投稿が大きく広まっていました。

雪国で車を運転する人なら、目の前の信号が読めない一瞬の怖さに、何度慣れても慣れきれないものですよね。

今回は、LED信号が雪に弱い理由と、色の読めない交差点の通り方をわかりやすく解説していきたいと思います。

雪が貼りついたLEDの灯火

11月7日、北海道では札幌や旭川といった都市部でも今シーズン初めての本格的な積雪となり、翌8日の朝まで大雪への注意が呼びかけられていました。

8日の朝、仕事で深川市に来ていた人も、吹雪の街の様子とあわせて「信号機も見えないところもあり」と書いています。

信号の色がわからないと、まず自分の目を疑ってしまうもの。

 

けれど、雪の付いたLED信号を前にして「走行中に認識するのは無理です」と書く人もいて、見えにくさは年齢を選んでいません。

灯火そのものを、雪がふさいでしまっているんです。

交通の専門ニュースサイト「乗りものニュース」によると、昔の電球式の信号は、電球が出す熱で灯火の雪が解けていました。

LEDはその熱をほとんど出さないので、いちど貼りついた雪がそのまま残ってしまいます。

しかも雪の付き方には条件があって、青森県の研究機関の実験では、気温が1度以上のときに着雪しやすいことが分かっているそうです。

氷点下まで冷え込みきらない、湿った雪の日に付きやすい、という話。

 

北海道のLED信号は全国でいちばん少ない

「そもそも雪国でLEDにしたのが間違いでは」という声も、少なくありませんでした。

ただ、北海道はもともと、LEDへの切り替えがゆっくり進んできた土地です。

警察庁のデータを紹介した自動車雑誌ベストカーの記事によると、2023年3月末の時点で北海道の車両用のLED信号は32.9%で、全国最下位でした。

同じ記事によれば、東京都は2019年の時点で、すべての信号がLEDに替わっています。

雪のせいでLEDが少ない、という説明はとてもわかりやすいもの。

ところが同じ記事によると、雪の多い青森県や秋田県のほうが、神奈川県より高い割合でLEDに切り替わっていて、雪国ほど少ないとは言い切れないとしています。

LEDの切り替えは、雪だけで決まっているわけではなさそうです。

 

では、雪に弱いことは想定外だったのでしょうか。

少なくとも青森県では、県警本部も加わった研究で、LED信号の着雪を防ぐ部品の試作と評価が続けられてきました。

研究の報告には、「信号灯器への着雪は交通渋滞を起こすだけでなく、重大な事故に繋がる可能性があり、対策が急務とされている」とあります。

2019年1月には、雪の付きやすい西向きに、対策をした信号としていない信号を並べて置き、屋外で比べる試験まで行われていました。

雪国のために作った薄型の信号にも雪は付く

雪国向けの工夫として真っ先に挙がるのは、縦に並んだ信号でしょう。

上の面が小さくなるので、雪が積もる面積を減らせます。

それでも電球式の信号は厚みがあるので、縦にしても上に雪が残りがちでした。

 

そこで2010年ごろから登場したのが、電球式より薄く、凹凸をなくした平らなLED信号。

メーカーは「豪雪地帯の積雪・着雪対策として凹凸の無い板状の信号灯器を開発した」と説明していて、ひさしも取り払い、少し下向きに傾けて取り付けることで、雪が灯火にかぶらないようにしています。

雪国向けに作ったというメーカーの説明と、それでも雪は貼りつくという雪国の実感は、実はぶつかっていません。

薄型の信号が防いでいるのは、主に上に積もる雪のほう。

乗りものニュースは、正面から吹雪を受けると灯火への着雪が起きたと伝えています。

そのあと灯火を丸ごと覆う透明なカバーも登場しましたが、冬のあいだに少しずつ雪が積もり、冷えて氷になってから落ちてくることもあるそうです。

上に積もる雪と、正面から吹きつけて張りつく雪。

「斜めにしてあるから積もりにくい設計のはず」「薄型にしたのもまずかった」と意見が割れるのは、この二つの雪がひとつの話として語られているからでしょう。

 

雪を融かしていたのは省エネで手放した熱

「信号は前のままでよかった」という声も上がっています。

ただ、電球式には電球式の困りごとがあって、それでLEDへの切り替えが進んできました。

青森県の研究報告は、電球式から変わりつつある理由として、日の光が当たると点いているように見えてしまうこと、電気代が高くなること、毎年電球を交換しなければならないことを挙げています。

消えているはずの信号が、日差しで点いて見える。

これはこれで、見間違えると危ない現象でした。

 

そしてベストカーの記事によると、LEDの信号の消費電力は電球式の6分の1ほど。

昔の信号は、その6倍ほどの電気を使っていて、出てくる熱が結果として雪も融かしていました。

では、熱を足し戻せばいいのでは、と考えたくなりますよね。

青森県の研究機関が試してきたのが、LED信号に取り付ける融雪用のヒーター。

LEDの信号は、赤・黄・青の3灯ひと組でおよそ10W。

そこへ1灯あたり8Wのヒーターを付けると、何もしないものより雪が付きにくくなりました。

それでも、電球式の信号ほどの効き目には届きません。

電球式と同じくらい見えるようになったのは、ヒーターを1灯20Wまで上げたときだったといいます。

3灯なら、ヒーターだけで60W。

3灯ひと組で10Wほどの本体の、およそ6倍です。

電球式の6分の1まで減らした電気を、ほぼそっくり熱として足し戻す形になります。

省エネのために手放した熱が、そのまま雪を融かしていた熱だったんですよね。

 

しかも、ヒーターのカバーを付けると信号の明るさは少し落ちますし、県警からは、ヒーターと信号を合わせて40W以内に収めるよう指示があったと報告されています。

8Wなら3灯で24W、本体と合わせても40Wの枠に収まりますが、20Wでは収まりません。

電球なみの融かし方は、そもそも選べないんです。

乗りものニュースによれば、雪の時期には警察官や自治体の職員が長い棒を使い、信号の雪を下ろす光景もしばしば見られるといいます。

色の読めない交差点の通り方と伝え先

では、雪で色が読めない信号に出くわしたら、どうすればいいのでしょうか。

乗りものニュースは、減速もしくは停車して周囲の動きに注意し、その状況を警察へ届け出るよう勧めています。

実際に、見えずにスピードを落とし、左右の車の動きを見て止まったという人もいました。

目の前の信号が読めないとき、手がかりになるのは次の3つ。

  • 交差する道の信号
  • 歩行者用の信号
  • まわりの車や人の動き

ただ、横の信号も同じように雪に覆われていることがあるので、どれか一つだけで決めつけないことが大切です。

読めないと思ったら、早めに速度を落として、止まれる構えで交差点に近づく。

雪道は止まるまでの距離も延びるので、気づいてからブレーキを踏むのでは間に合わないこともあります。

 

そして、見づらい信号には伝える窓口があるんです。

北海道警察の「信号機BOX」では、受付の例の一つ目に挙がっているのが「信号灯器が見づらい」。

メールのほか、はがきや封書でも受け付けていて、原則として回答はしないものの、寄せられた意見は今後の改善の参考にするとしています。

信号機が消えているなど急を要するものは、110番か管轄の警察署へ通報してほしいとのこと。

雪の降るほかの県の窓口も、警察庁の「信号機BOXご意見受付ページ」から都道府県ごとにたどれます。

どこの交差点の、どの向きの信号が、いつ見えなかったのか。

場所と向きと日時がそろえば、受け取る側はどの信号の話かをつかめます。

年のせいだと思って飲み込んでいた見えにくさは、伝えていい見えにくさなんですよね。