スーパーの米売り場に、5kgで2000円台の新米が並び始めています。

つい去年まで、同じ棚の米は4000円を超えていたはずです。

「米が足りない」と言われて高い米を買い続けた、あの騒ぎは何だったのか。

その答えのように出てきたのが、過去最大という在庫の数字でした。

ネットでは「業者が儲けようとして抱え込んでいたのでは」という疑惑が噴き出しています。

今回は、令和の米不足の始まりから、この抱え込み疑惑がどこまで本当なのかまで、順番に整理します。

スーパーに並んだ新米が2000円台だった

2026年8月、スーパーの店頭に今年の新米が並び始めました。

その値段が、5kgで2000円台です。

税抜きで1980円という表示を伝えた報道もありました。

 

新米というのは本来、その年いちばん高い米です。

獲れたてで人気があるので、前の年の米より高く売られるのが普通でした。

ところが今年は、去年の米(古米)より新米のほうが安いという逆転現象が起きています。

新しい米のほうが安くて、古い米のほうが高い。

え、逆じゃないの?と、一瞬値札の意味が分からなくなる並びです。

でも、貼り間違いではありません。

ネットにも「確かに2000円台になっている」と、半信半疑で確かめに行った報告が続いていました。

 

しかもテレビの取材によると、同じ時期のスーパーでは肉が最高値を更新しているそうです。

肉は上がって、米だけが半額へ向かって落ちていく。

食卓の中で、米の値札だけが別の世界を生きているような夏です。

令和の米不足はこうして始まった

思い出したくもない人が多いと思いますが、順番に振り返ります。

始まりは2024年でした。

店頭から米が消え、「令和の米騒動」と呼ばれる品薄と値上がりが始まります。

報道で最初の原因として挙げられていたのは、猛暑が作柄に響いたことと、需要が増えていたことでした。

そこへ「無くなるらしい」という空気が重なって店頭では買い急ぎが起き、空いた棚がさらに不安を呼ぶ悪循環になります。

つまり品薄の入り口は、天気と需要と人の心理が重なったもので、犯人が最初からひとりだったわけではありません。

 

2025年3月ごろには、スーパーの5kg平均価格がとうとう4000円を超えました。

同じころ、政府が備蓄米の放出を始めています。

ふだんは倉庫で眠っているお米が、銘柄より安い値段で店頭に並ぶ、あまり見ない光景もありました。

それでも値段は下がりませんでした。

2025年11月中旬には平均4200円前後のピークをつけ、4000円台はおよそ半年も続きました

正直、パンと麺に逃げたくなる値段でした。

それでも毎日の茶碗のぶんは削れませんから、多くの家は高い袋をカゴに入れ続けたはずです。

 

流れが変わったのは2026年です。

年明けから下落がはっきりしてきて、2026年3月には4000円を割るかどうかの攻防になりました。

そして2026年8月、新米が2000円台。

いちばん高かったところから見れば、ほぼ半額です。

足りないはずの米は過去最大の在庫になっていた

ここからが答え合わせの本番です。

農水省の発表によると、2026年6月末時点の民間在庫は243万トンでした。

民間在庫というのは、卸や集荷業者などの倉庫に積んである、市場に出る前の米がどれだけあるかという数字です。

これが過去最大でした。

報道によれば、適正とされる水準を大きく上回る量です。

しかもこの中には、値段がいちばん高かった時期に仕入れられたお米も積み上がっていると報じられています。

高く仕入れた米ほど、安くなった今は売るに売れない。

倉庫の中で、そういう在庫が行き場をなくしています。

 

つまり「足りない」と言われた騒動の2年後に、米は記録が残る中でいちばん余っていたことになります。

足りないから高い、と説明されて4000円を払ってきた側からすると、なんとも言えない気持ちになる数字です。

備蓄米まで放出して「それでも足りない」という空気だったのに、フタを開けたらこれです。

この数字を見た人の受け止めは、だいたいこれでした。

我慢して買い続けたあの半年は、一体何だったんでしょうか。

ネットにあふれる「ざまぁ」「自業自得」の声

在庫の数字と米の値崩れが伝わると、ネットには声があふれました。

安くなった袋を手に取って、うれしさより先に「じゃあ、あの高値は何だったの」と思った人が、それだけ多かったのだと思います。

いちばん多いのは「潰れろ」「ざまぁ」「自業自得」という、米卸への厳しい声です。

その代表格として、たくさんの人に引用されていたのがこの投稿でした。

読まれたとおり、農家さんへ向かう矛先はほとんど見当たりません。

怒りは最初から、間に立っていた誰かへ向いています。

 

この気持ちを責める気には、私はなれません。

だって私たちは「足りない」と言われて、家計を削りながら高い米を買ってきたわけです。

そのフタを開けたら在庫は過去最大だったのですから、「ざまぁ」の一つくらい言いたくなるのは当然だと思います。

払うときは黙って払わされて、下がるときだけ「市況ですから」では、気持ちの行き場がありません。

ただ、この怒りの矛先が本当に合っているのかどうかは、少しだけ確かめておきたくなりました。

卸業者の抱え込み疑惑はどこまで本当なのか

ネットの声をよく見ると、実は真っ二つに割れています。

一方には「卸は年間契約分を確保していただけ」「高値で仕入れた在庫を抱えた卸こそ被害者」という声。

もう一方には「いやいや、卸は今も黒字のはず」という声です。

 

擁護する側の説明で多かったのは、こういうものでした。

卸とスーパーや外食との取引は1年単位の契約が多く、契約したお客さんに届けるぶんの米は先に確保しておくのが当たり前で、それは「隠していた」のとは違う。

中には、品薄のさなかに備蓄米を店まで流したのは他ならぬ卸だ、という声もありました。

そもそも米の卸は全国に数え切れないほどあって、口裏を合わせて値段を釣り上げられるような小さな世界ではない、という指摘も見かけます。

農業に近い立場の人からは、こんな声も出ていました。

どれも投稿者の説明であって、ここでは正しいかどうかを決めつけずにおきます。

 

そのうえで、確かめられた事実だけを並べます。

2026年8月22日の日経の報道によると、卸どうしが売り買いする取引価格は、新潟コシヒカリの玄米60kgで1万8750円前後。

前の年より49%下がっています

これはプロどうしの間の値段で、店頭より先に動く、米の相場の体温計のような数字です。

その体温計が1年でほぼ半分になりました。

そして大手の米卸は、新米が出回る前に手持ちの在庫を減らすため、赤字覚悟の安売りに動いていると報じられています。

 

一方で、それぞれの卸会社がこの2年でどれだけ儲けたのか、それとも損をしたのかは、外からは確かめられませんでした。

なのでここでは「卸は悪者だ」とも「卸こそ被害者だ」とも断定しません。

ただ少なくとも今この瞬間は、高値でつかんだ在庫を損を出してでも吐き出している局面にある、というところまでは数字に出ています。

「抱え込みで儲けたのかどうか」の最終的な答え合わせは、この先出てくる各社の決算と続報でできるはずです。

値下がりのしわ寄せは農家に届いていた

それで胸がすっとするかというと、そうでもない話がここからです。

2026年8月18日ごろ、JAが農家に前払いするお金(概算金・仮渡し金)が各地で発表されました。

新潟の一般コシヒカリで、60kgあたり1万8500円。

これは農家が秋の収穫と引き換えに受け取る、手取りの前払いにあたるお金です。

その前払いが、前の年からおよそ4割減りました

 

北海道のななつぼしは1万7000円で、こちらは1万2000円の下落です。

岩手のひとめぼれにいたっては、騒動が始まった2024年と同じ水準まで逆戻りしました。

テレビの取材には、新潟の農家から「あまりにも安すぎる」「経営が成り立たなくなる」という声が出ていて、廃業を口にする農家もいるそうです。

秋田の農家さんの投稿には、その金額を告げられた朝のことが書かれていました。

高いときは買う側が泣き、安くなったら今度は作る側が泣く。

この順番は、どこかおかしくないでしょうか。

農家が米を作らなくなったら次はどうなる

ネットには「ざまぁ」の声にまじって、こんな心配も増えています。

「農家がもう作らないとなったら、また足りなくなるんじゃないか」

実際、今回の値段で経営が立ちゆかなくなった農家が田んぼをやめてしまえば、数年後に困るのは私たちです。

また「足りない」から始まる、2024年からのあの値上がりを繰り返すことになります。

さきほどの概算金は、農家にとって来年も田んぼを続けるかどうかを決める、いちばん現実的な判断材料です。

その数字が2024年の水準まで戻ったということは、この2年の値上がりぶんが、作る側の手元にはほとんど残らなかったという意味でもあります。

 

そんな中で、農家本人からはこんな声も上がっていました。

恨み言でも値上げのお願いでもなく、これなんですよね。

作る人がいて、食べる人がいる。

その間に挟まった値段だけが、この2年間、激しく上下していました。

安くなった新米を前に思うこと

答え合わせの結果を、一度そのまま置きます。

思えばこの2年、私たちは値札の理由をいつも後から知らされてきました。

上がるときは「足りないから」、下がるときは「余っているから」。

どちらも嘘ではなかったのでしょうが、その説明が届くのは決まって、払い終わったあとでした。

「足りない」と言われて4000円台の米を半年買い続けた2年後、在庫は過去最大で、新米は2000円台になりました。

そして、高かった時期に私たちが余分に払った差額は、誰からも返ってきません

値札が安くなったことだけが、せめてもの返金みたいなものです。

 

だからこそ、次にまた「足りない」という言葉を聞いたときは、値札の向こうで在庫がどうなっているのかを一度疑ってみるクセを、つけておいて損はなさそうです。

それに、安さのしわ寄せが農家に行っている以上、この2000円台がいつまでも続くとは考えにくい気がします。

だったら今夜は、農家さんの「米食ってくれ」に応えて、炊きたての新米を遠慮なくおかわりすることにしましょう。