2026年8月、韓国の済州島で、行方不明だった4人が3日間で相次いで遺体で見つかりました。

済州島は韓国の南にある大きな島で、日本からも直行便が出ている観光地です。

見つかった1人は、行方が分からなくなってから104日がたっていたそうです。

しかも見つかったのは、滞在先から歩いて5分ほどの場所でした。

届けを受けた警察官が、確認しないまま処理していたことも分かっています。

SNSでは「済州島で3000人が行方不明」という話が広がりました。

「島に殺人鬼がいるのではないか」という書き込みも出ています。

旅行を予定していた人ほど、落ち着かない気持ちでいるはずです。

ただ、この3000人という数字は、出どころをたどると見え方が変わるものでした。

今回は、確定していることと膨らんだ話を分けて整理していきたいと思います。

3日間で4人が遺体で見つかった済州島

ニュースの見出しだけを追いかけていると、順番が分からなくなってきます。

最初に見つかったのは、2026年8月22日でした。

行方不明届が出ていた60代の男性が、亡くなった状態で見つかったと報じられています。

この男性の届出が出されたのは、2026年7月2日のことでした。

 

翌23日の未明には、済州市朝天邑の海上で70代の男性が見つかります。

さらに24日の午前、済州市涯月邑の渓谷付近でも、行方が分からなくなっていた1人が発見されました。

そして同じ2026年8月24日、済州市翰林邑のヤシ畑で見つかったのが、37歳の女性です。

 

海、渓谷、畑。

場所はばらばらで、届出の時期もそろっていません。

いちばん古い届けは、2026年5月に出されたものでした。

いちばん新しい70代の男性は、届出の翌日に見つかっています。

同じ3日間の発見でも、届けが出てからの長さはまるで違いました。

女性が見つかったヤシ畑は、滞在先から約400メートル、歩いて5分ほどの距離です。

 

3日のあいだに4人。

この並びだけを見せられると、島のあちこちで人が消えているように感じてしまいます。

旅行の候補に済州島の名前を挙げていた人なら、なおさら落ち着かないと思います。

ネット上でも、結局いま何が起きているのか分からない、という戸惑いが目立ちました。

同じ島で、同じ月に、続けて見つかった。

いまはっきりしているのは、そこまでです。

5月に出した失踪届は握りつぶされていた

多くの人が本当に引っかかったのは、たぶんここだと思います。

37歳の女性の行方不明届が出されたのは、2026年5月でした。

受け付けたのは済州西部警察署で、担当したのは警長という階級の警察官です。

日本でいえば、巡査長にあたります。

 

この警察官が、女性の所在も安否も確認しないまま、連絡がついたように装って事案を終わらせていたことが分かりました。

書類の上では、解決した扱いになっていたわけです。

 

届けを出した側から見ると、話はもっと単純になります。

家族や知人が「いなくなった」と警察へ伝えたのが、2026年5月。

それなのに、8月まで捜索は動きませんでした。

なぜ確認しないまま終わらせたのか、その理由はまだ説明されていません。

104日という数字は、行方が分からなかった期間であると同時に、探されていなかった期間でもあります

行方不明届は、身近な人が消えたときに手元へ残された、数少ない手段です。

その紙が、受け取った側の入力ひとつで消えていました

この処理をしたとして、担当していた警察官は逮捕されています。

1人の警察官が298件を処理していた

問題が1件で終わらないと分かったのは、そのあとでした。

韓国の警察は、この警察官が2025年3月以降に担当した298件の行方不明事案を、全件洗い直すことにしています。

298件。

1人の担当者の手元を通っていった数です。

すでに、別の60代の男性の届出についても、同じ形で終結させた疑いが出ていると報じられています。

 

ここで見えてくるのは、特別に悪い誰かがひとりいた、という話ではありません。

確認の電話を1本もかけないまま、画面に解決と入力するだけで、1件の届けが閉じられてしまう。

その入力を止める仕組みが、担当者の手前にも後ろにも無かったということになります。

 

そして、洗い直しが始まったからこそ、8月に入って発見が続いています。

この3日間で増えたのは、行方不明になった人ではありません

見つかった人のほうです。

ニュースが立て込んで見えるのには、そういう事情も混じっています。

 

韓国警察は、全国の警察署にも同じような処理がないか、調査を広げる方針を示しています。

3000人行方不明という数字の出どころ

3000人という数字は、どこから来たのか。

済州警察が公表しているのは、行方不明届の件数です。

2023年から2026年7月末までに出された届けは、18歳以上の成人で2,914件。

未成年を入れると、さらに1,341件あります。

たしかに3000という数字は、ここにありました。

 

ただ、この2,914件のうち2,899人は、すでに所在が確認されています

割合にして、およそ99.5%。

いま行方が分からないままなのは、15人です。

 

3年7か月のあいだに出された届けの累計と、いま帰っていない人の数

この2つが入れ替わって広まったのが、3000人行方不明という話でした。

怖い数字を見て旅行を一度考え直した人からすると、拍子抜けするくらいの差だと思います。

SNSでも、自分で調べ直した人がこの内訳を出して回っています。

もちろん、15人が軽いという意味ではありません。

その15人の後ろにも、届けを出したまま待っている家族がいます。

連続殺人と結びつける根拠はまだない

島に連続殺人犯がいるのではないか、という見方も出ています。

発見が3日続いたこと、そして警察の処理が信用できないこと。

この2つが重なれば、そちらへ考えが向くのは自然なことだと思います。

 

いまのところ当局は、見つかった4人の死について、互いの関連は確認されていないとしています。

関連がないと断言されたわけではなく、確認されていない、という段階です。

 

もうひとつ、よく持ち出されているのが犯罪発生率です。

済州島は2024年、人口10万人あたり4,539.6件で、韓国の中で最も高い数字でした。

人口はおよそ66万人の島になります。

ただ、犯罪発生率は、あらゆる種類の事件をまとめて数えた数字です。

高いことと、連続殺人が起きていることは、別々の話になります。

 

日本語で広がっている「連続殺人犯がいるらしい」という話をたどると、英語の投稿にぶつかります。

海外のアカウントが書いた推測が訳されて、日本のタイムラインへ流れてきているものが少なくありません。

 

殺人鬼という言葉が広まったのは、事件の中身が明らかになったからではありません。

説明のつかない発見が続いたところへ、警察が信用できないという材料が乗ったからです。

連続殺人を裏づける発表は、いまの時点では出ていません。

観光客が100万人を割った島の現実

不安を感じているのは、日本にいる人だけではありません。

2026年7月に済州島を訪れた人は、963,401人でした。

前の年の同じ月は1,100,021人ですから、12.4%の減少です。

月の来訪者が100万人を割ったのは、コロナ禍が始まった2020年以降で初めてのことでした。

観光で成り立っている島にとって、この数字はかなり重いはずです。

 

一方で、8月の数字は少し違う顔をしています。

2026年8月1日から23日までの1日平均の来訪者は、35,295人。

前の年の同じ時期が35,575人ですから、ほぼ横ばいです。

騒ぎが広がっている最中も、予定どおり島へ渡った人はそれなりにいた、ということになります。

行くか、やめるか。

どちらを選んでも、笑われる筋合いのない判断です。

その判断の材料になる場所が、実はひとつあります。

行くかどうかを決める前に見る場所

渡航先が危ないかどうかは、外務省の海外安全ホームページに出ています。

危険と判断された国には、レベル1から4までの危険情報が付きます。

2026年8月26日の時点で、韓国にその表示はありません

一時的な注意を促すスポット情報も、出ていませんでした。

 

現地の在済州日本国総領事館も同じです。

直近で出ている安全情報は、2026年8月20日の北朝鮮のミサイルに関するもの。

今回の行方不明の件には、まだ触れていません。

 

海の向こうのニュースに国が動いているのかどうかは、こういうとき、いつも見えにくいところです。

中国の白菜の動画が広まったときも、厚生労働省が検査をしているのかまで確かめた人は多くありませんでした。

ホルムアルデヒド白菜は日本に届くのか|厚労省が検査していない理由 中国・河北省の畑で撮影された、1本の動画。 収穫したばかりの白菜が、大きな容器の液体へ次々と沈められていく様子が映っていたそうです...

 

そのかわり総領事館は、済州の治安や交通事情をまとめた「安全の手引き」を出しています。

夜の一人歩き、タクシーの使い方。

防犯対策と、事故に遭わないための注意点がまとめられています。

行く前に一度読んでおくと、それだけで気持ちが違います。

済州島までは、福岡や大阪から直行便で数時間です。

近いぶん、SNSの言葉の強さと、公的な情報の静かさの落差が大きく見えます。

 

ただ、これで安心してくださいと言うつもりはありません。

2026年5月に出された届けが8月まで動かなかったことは、危険情報の欄には出てきません。

行くかどうかとは別の話として、そこは残ります。

 

怖いと感じたことを、大げさだったと片づける必要はないと思います。

おかしいのは怖がった側ではなく、出された届けのほうが先に消せてしまったことです。

亡くなられた方々のご冥福をお祈りいたします。