2026年9月7日に公開された動画で、料理研究家のリュウジがこめおの件について話しました。

中心になったのは、8月の麻布十番で起きた冷やし蟹ラーメンの食中毒ではありません。

去年の話で、2025年11月にあった、おせちの「誤発注」のほうでした。

「食中毒以上に問題だと思ってる」。

そう言い切ったそうです。

 

この一言で、ネットはきれいに割れました。

「どう考えても食中毒の方が問題で草」と呆れる声が出る一方で、「食中毒は悪意がなく…誤発注は悪意があるよな」と受け止めた人もいます。

どちらの言い分もわかる、というのが正直なところですよね。

 

そのやりとりの中に、「誤発注商法」という言葉も出てきました。

聞き慣れない言い方ですが、指しているのはSNSでときどき見かける売り方のこと。

今回はその言葉の中身から、リュウジがなぜそちらを重く見たのかまで、わかりやすく解説していきたいと思います。


食中毒以上に問題と言われたもの

まず、リュウジがこめおを庇っていたわけではない、というところから確認しておきましょう。

食中毒そのものについては「前提としてこめおが500%悪いです」と言っています。

そのうえで「食中毒は徹底的な衛生管理をしても出てしまう可能性もある」と続けたとのこと。

つまり彼の中で、食中毒は「起きてしまうもの」の側に入っていました

起きてしまったことの責任は重いけれど、狙ってやったわけではありません。

そこから先が問題です。

 

おせちの話になったとき、リュウジはこう言っています。

「内部事情全部知ってるから。俺と一緒の会社だからね」。

こめおのおせちを作っていた工場は、リュウジ自身のおせちの工場と同じだった、というわけです。

 

そこへ問い合わせたところ、返ってきたのは「話が違う」という説明でした。

そこからの言い方が、かなり強い。

「業者が嘘ついてるか、こめおが嘘ついてるかなんですけど、業者は嘘つくメリットがないからね」。

さらにリュウジは、おせちの会社にこめおとの契約を切らせたと語っています

「あの嘘つきとやるんだったら俺やらない」と伝えた、とのこと。

こめおと一度会ったときには土下座までされたそうで、「何の土下座だったかわかんない」と振り返っていました。

 

このあたりで、見ている側の温度が下がったのも無理はありません。

「リュウジも契約を切らせるとか基本上からだよな」という書き込みもありました。

「これは死体蹴り。オーバーキルです。」という一行も。

うーん、と言いたくなる気持ちはわかります。

すでに営業を止められている相手に、去年の話を持ち出すのですから。

それでも彼は、おせちの件について「弁明が欲しかな」と言い残しました。


おせちが倍で届いた去年の出来事

ここで、去年の11月に何があったのかを見ておきましょう。

2025年11月13日の夜に、こめお本人のアカウントへ並んだ一文。

「おせち、倍で発注してました。」

続きはこうです。

「1000個売り切って達成感に浸ってた矢先に地獄見た。」

そして最後に「すいません、マジでやらかしました。助けてください。」と添えられていました。

 

監修していたのは「蟹三昧」という名前のおせちで、価格は税抜3万4800円と報じられています。

1000個の予定だったところへ、さらに1000個が乗った

請求書は4000万円に届いていたとのことです。

 

数字だけ見ると、たしかに地獄。

そこへ「助けてください」と書けば、買って支えようとする人が出てきます。

実際、この投稿はニュースでも取り上げられたほど。

一方で、疑いの声もその日のうちに出ていました。

「誤発注設定でお涙頂戴商法なんじゃね?という印象」。

「本当にミスで困ってるなら原価くらいで販売しろよ‼️そしたら信じてやる。」

 

こめお本人は、11月16日に経緯を説明しています。

「個数ミスではない」「自分が認識していない2回目の発注が」あった、という説明でした。

3月に2000個を作りたいと工場へ話し、6月にまず1000個から始めることにして、7月の見積もりで1000個を依頼。

そのあと制作の業務は従業員へ渡っていました。

9月に工場から追加発注の見積もりが届き、従業員はそれを本人からの依頼だと受け取ったとのこと。

本人は電話で確認を受けたものの、蟹の増販の話だと思い込んで了承していた、と書いています。

 

10月に入っても売上は好調で、本人はすべてうまくいっていると思い込んでいました。

11月に従業員から在庫が残っていると報告を受けて、ようやく食い違いに気づいた。

「こういう状況になってしまったのは、最終的には全て管理不足であった自分の責任」と締めくくっています。

読むかぎり、筋は通っている話。

そして、ここで話が止まりました。


誤発注商法と呼ばれている売り方

さて、ネットで飛び交っていた「誤発注商法」という言葉。

これは法律の用語でも業界の用語でもなく、買う側が付けた呼び名です。

 

指しているのは、こういう形の売り方でした。

「発注を間違えて大量に余ってしまいました」「このままでは捨てるしかありません」と困りごとを先に見せて、そこから購入を呼びかける

買う側は商品を選んでいるつもりが、途中から人助けをしているつもりへ変わっていく。

似た形は、ほかにもあります。

台風でイベントが飛んで在庫だけが残った、予約が大量にキャンセルされた、天気が読めずに仕入れすぎた。

どれも実際に起きることなので、そのつど本当の困りごとも混ざります。

 

やっかいなのは、誤発注商法が本当かどうかを買う側に確かめられないところです。

発注書は外に出てきません。

工場と店のあいだのやりとりも、当事者からは見えないところ。

だから普通は、投稿した本人が説明したところで終わります。

こめおの件も、11月16日の説明で一度は終わっていました。

 

そこへ10か月近く経ってから、工場の側を知っている人間が出てきた。

これが今回の特殊なところ。

強く出られたのは、リュウジがたまたま同じ工場を使っていたからでした。


数えていた人がいたのは片方だけ

ここで、2つの出来事を並べてみましょう。

冷やし蟹ラーメンのほうは、2026年8月22日と23日に麻布十番納涼まつりで1杯2000円で売られました。

そのあと体調を崩した人が出て、9月3日の時点で患者は78人と伝えられています。

港区は7日間の営業停止命令を出し、こめおは9月5日に丸刈りの姿で謝罪の動画を公開しました。

 

この流れの中には、ずっと第三者がいます。

保健所が患者を数え、区が処分を決めた

本人が認めるかどうかとは関係なく、外側で手続きが回っていきました。

 

では、おせちのほうはどうでしょうか。

おせちを数えた人は、ひとりもいませんでした

行政が調べたわけでも、第三者が検証したわけでもなく、本人の説明が出たまま時間だけが過ぎています。

 

この件は「リュウジが軽いほうの話を蒸し返した」ように見えて、実は片方には数える人がいて、もう片方には誰もいなかったという話なんです。

食中毒は、黙っていても数字になります。

「誤発注」は、誰かが言い出さないかぎり数字にならないまま

 

しかも、買った人は自分を被害者だと思っていません

困っている人を助けたつもりで買っているので、あとから「あれは嘘だったかも」と言われても、名乗り出る動機がないんです。

被害の申告が出ないところでは、そもそも件数を数える作業そのものが始まりません。

 

リュウジが「食中毒以上に問題」と言ったのは、被害の大きさを比べた発言ではなかったのだと思います。

片方は放っておいても表に出るけれど、もう片方は誰かが言わないと無かったことになる。

見ていたのは、その差のほうでした。

 

もっとも、彼がずっと黙っていたわけでもありません。

2025年11月14日、あの投稿の翌日には、すでにこう書いていました。

去年の時点で、疑いも、確かめる手段も、すでに揃っていたわけです。

それでも答えが出るまでに10か月かかったところに、この売り方の性質が出ています。


助けてくださいも取引条件になる

ここからは、今回の件を離れて、買う側の話をしていきましょう。

「誤発注なので助けてください」は気持ちの表明に見えますが、売り物に添えられた時点で、取引条件の説明という顔を持ちます。

なぜ安いのか、なぜ急ぐ必要があるのか、なぜいま買うと喜ばれるのか。

その理由を作っているからです。

 

こういう表示について決まりを置いているのが、景品表示法という法律。

第5条第2号が「有利誤認表示」を禁止していて、消費者庁は「実際のものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認されるもの」と説明しています。

 

大事なのは、その次の一文です。

消費者庁は「故意に偽って表示する場合だけでなく、誤って表示してしまった場合であっても、有利誤認表示に該当する場合は、景品表示法により規制される」と書いています。

つまり、わざとかどうかは入口の条件ではありません

 

ここを押さえておくと、話がすっきりするところ。

ネットの議論はどうしても「嘘だったのか、本当だったのか」に集まりますが、ルールのほうはもう一段手前に線を引いています。

実際と違う印象を与えたかどうか、が線なんです

 

もちろん、今回の件がそれに当たると決まったわけではありません。

消費者庁が動いたという話もなく、こめおは説明を出したうえで否定しています。

ここは灰色のまま置いておくのが正確なところ。

そして、この法律には弱点があるんです。

景品表示法が動き出すには、誰かが「おかしい」と伝えないと始まりません。

数える人がいないところでは、その「誰か」も出てこないまま。

 

おかしいと感じたときの窓口は、消費者ホットラインの「188」

局番なしで3桁を押すと、住んでいる地域の相談窓口につながります。


買う前に確かめられる三つのこと

とはいえ、毎回そこまでするのは現実的ではありません。

買う前に自分で見られるところを、3つだけ置いておきます。

  • 値段。困っているのに定価のままなら、困りごとの話と値段の話がつながっていない
  • 数字。個数・時期・金額のどれかが具体的に出ているか
  • 困っている人。損をするのは投稿している本人か、それとも作った工場や生産者か

いちばん見落とされるのは、3つ目。

「捨てるのはもったいない」と言われると、頭に浮かぶのは食べ物と生産者ですが、在庫を抱えているのが誰なのかは、書いていないことがほとんど

そこが書かれていない投稿は、買う理由の一部が空欄のまま並んでいることになります。

 

ちなみに、こめおのおせちを作っていた工場も、今回とばっちりを受けた側でした。

ネットには「そんな奴のおせち発注してたらその会社も杜撰な管理してると思われる」という書き込みも出ています。

名前を出して売っている人の後ろに、名前を出していない誰かがいること。

それから、これはもっと単純な話ですが、急かされたら一度画面を閉じてかまいません。

「残りわずか」「今日まで」が付いている買い物で、あとから後悔したことのある人は多いと思います。

困っている人を助けたい気持ちは、そのタイマーと相性が良すぎるんです。

急がずに買っても、本当に困っている人はちゃんと困ったまま待っていてくれます。

 

今回の件は、たしかに後味がよくありません。

すでに営業を止められている人へ去年の話を持ち出す形になったので、やりすぎだと感じた人がいるのも当然でしょう。

ただ、あの言い方が乱暴だったこととは別に、指摘そのものは残ります。

食中毒のほうは、黙っていても誰かが数えてくれました。

「助けてください」のほうは、そうではありません。

自分の財布から出した分は自分で確かめるしかない、というところですね。