マッサージを受けているうちに気持ちよくなって、うとうとしてしまう。

そんな経験、ありませんか。

2026年9月10日、そのうとうとを全国から見られてしまった人がいます。

「1日30分しか寝ていない」と公言してきた堀大輔です。

1週間ぶっ通しの生配信の最中に、ヘッドマッサージを受けながら寝落ちしてしまいました

しかも、それを証明するために自分で回していたカメラの前で。

 

そこで本人が口にしたのが「マイクロスリープ」という、聞き慣れない言葉でした。

今回はこの騒動が何だったのかを、わかりやすく解説していきたいと思います。


マッサージ中にいびきが聞こえた

まずは、何が起きているのかを押さえておきましょう。

堀大輔は、一般社団法人日本ショートスリーパー育成協会の代表理事。

17年前から1日30分の睡眠で暮らしている、と公言してきた人物です。

睡眠改善のプログラムを提供していて、YouTubeのチャンネル登録者も6万人に届こうかというところまで来ていました。

 

ただ、その主張を疑う声はずっとついて回っていたようです。

2025年に細川バレンタインとの対談で「本当に1日30分しか寝ていないのか」と詰められ、疑いを晴らすために1週間のライブ配信をやってはどうか、という話が持ち上がったと報じられています。

そこから話がまとまるまでには、けっこうな時間がかかりました。

2026年8月には本人が反省をつづった投稿を出して、それが配信の中止と受け取られてひと騒ぎになったこともあったそうです。

本人はその日のうちに「1週間のライブ配信をやめるという意味ではない」と釈明しています。

 

そして実際に配信が始まったのが、2026年9月9日の20時。

本人のアカウントにも、その日の告知がそのまま残っています。

配信は9月16日まで続く予定で、睡眠を測るためのスマートリングを着けることも約束していたそうです。

ところが始まって間もない9月10日、堀大輔はヘッドマッサージを受けている最中に、そのまま眠ってしまいます。

配信を見ていた人たちによると、いびきまで聞こえていたそうです。

うーん。

検証のために回していたカメラが、いちばん見られたくない場面を映してしまった形になりました。

 

本人は眠っていたことを認めたうえで、あれは「マイクロスリープ」だと説明したと伝えられています。

さらに、仮眠を取ってはいけないとは言っていない、という趣旨のことも話していたそうです。

ネットには笑いと呆れが並びました。

「いびきかいてるの草」「後から付け足しすぎて意味わからない」といった声。

たしかに、寝てしまったこと自体より、そのあとの説明のほうが引っかかる話ではあります。


マイクロスリープとは何のことか

さて、本人が持ち出した「マイクロスリープ」という言葉。

今回はじめて聞いた、という人もいるはず。

医療機関の解説では、日中に起きる数秒から数分ほどの短い眠りのことだとされています。

やっかいなのは、自分では気づけないことがあるところ。

本人は起きているつもりなのに、脳の活動だけがすとんと落ちてしまう

そういう状態まで含めた言葉なのだそうです。

 

原因はいくつかあるようですが、多くは睡眠不足によるものと言われています。

会議中に一瞬だけ記憶が飛ぶ。

車を運転していて、ハッとして目が覚める。

あのときに起きているのがこれだと考えると、イメージしやすいのではないでしょうか。

実際、危険なものとしても扱われていて、眠気の一瞬が作業中のミスやトラブルの原因になりうると説明されています。

過去にはヘリコプターの事故の調査で、操縦していた人がマイクロスリープに陥っていた可能性が調べられたこともあったそうです。

 

ただ、この言葉にはややこしいところがあります。

マイクロスリープは、睡眠が足りている人に起きる現象として説明されているわけではありません。

むしろ、睡眠不足や睡眠負債がたまってきたサインとして紹介されている現象なんです。

つまりマイクロスリープは、「寝ていません」の証明にならない言葉

どちらかといえば「足りていません」のほうに近い言葉になります。

ネットでもそこを突く声が出ていて、警告のサインを言い訳に使っているのが面白い、と書かれていました。

 

ちなみに「睡眠負債」というのは、少しずつの寝不足が借金のように積み上がっていく状態を指す言い方です。

一日くらいなら平気でも、それが何日も重なると、ある日ふっと意識が飛ぶ形で表に出てくる。

借りたものは、どこかで返さないといけない仕組み。


ショートスリーパーは訓練でなれるのか

そもそも、という疑問も浮かびますよね。

1日30分で平気な人なんて、本当にいるのでしょうか。

短い睡眠で足りる体質の人は、研究の世界では実際に確認されています。

2009年、カリフォルニア大学サンフランシスコ校の研究チームが、短い睡眠で足りる家系を調べて「DEC2」という遺伝子の変異を見つけました。

2019年には、同じ大学のチームが別の家系から「ADRB1」の変異も特定しています。

どちらもとても珍しい変異だとされていて、こうした体質は「家族性自然短時間睡眠」と呼ばれているそうです。

 

大事なのは、これらが訓練で手に入るものではなく、生まれつきの体質として説明されている点。

つまり、憧れて頑張れば近づけるという性質のものではないんですね。

厚生労働省が2023年にまとめた「健康づくりのための睡眠ガイド2023」でも、成人の睡眠は6時間以上が目安とされています

6時間と、30分。

並べてみると、その距離の遠さがよくわかります。

 

だからこそ今回の配信は、本当なら相当に珍しい人であることの証明になるはずでした。

逆に言えば、それだけの主張だからこそ、7日間もカメラを回すという話になったわけですね。


30分と45分が両方出てくる

ところが、調べていくと妙なことに気づきます。

本人が語ってきた睡眠時間が、話す場所によって違っているんです。

今回の配信で証明しようとしているのは「1日30分睡眠」。

ところが2024年に受けたインタビューでは、1日45分程度の睡眠に加えて、パワーナップと呼ばれる15分ほどの昼寝を1日2回とっている、と語られていました。

まとめて眠る時間のほかに、昼寝が別に置かれている形です。

7年かけて3時間ほどの睡眠になり、そこからさらに時間をかけていまの形になった、という道のりも語られています。

 

ここで効いてくるのが、数え方です。

「1日30分睡眠」と言うとき、数えているのはまとめて眠った時間だけなのか。

それとも、昼寝や細切れの眠りも全部足したうえでの時間を指しているのでしょうか。

この2つは、まったく別の数字になります。

配信を見ていた人からも、1日30分しか寝てはいけないのか、常識の範囲であれば仮眠してもよいのか、そこを先に決めておくべきだったという声が出ていました。

言われてみればそのとおりで、ルールが宙に浮いたまま7日間が始まってしまったわけです。

 

本人の「仮眠を取ってはいけないとは言っていない」という説明も、そこを突いて出てきたもの。

ルールが無いのだから、後出しにも見えるし、筋が通っているようにも見える。

同じ映像を見ているのに、勝ったと言う人と負けたと言う人が同時に出てくるのは、たぶんこれが理由です。


眠りは寝た本人がいちばん数えられない

とはいえ、ルールを先に決めておけば片がついたのかというと、そこも怪しいところ。

というのも、マイクロスリープには自覚がない場合がある、と説明されていました。

数秒だけ意識が落ちて、本人はそのまま話し続けてしまう。

そういうことも起こりうるのだそうです。

 

この件は「本当に寝ていないかどうか」の話に見えて、実は別のところに芯があります。

眠りをいちばん数えられないのは、寝ている本人のほう。

そういう話なんです。

いびきをかいて眠ってしまえば、それは見ていた全員にわかります。

でも、数秒ずつ落ちていった分は、カメラにも本人にも数えられません

証明したい側にも、疑っている側にも、そこだけは届かないまま。

どれだけ長くカメラを回しても、その部分だけは白紙のまま残ってしまいます。

 

配信を見ていた人の中に、こんな受け止めを書いた人がいました。

かつて徹夜が当たり前の生活を何年か続けたけれど、実際は隙間があれば昼寝をしていたし、意識も断続的に落ちていたとのこと。

まとめて寝ていないだけで、どこかで帳尻を合わせていたのではないか、という話です。

これ、かなり鋭いところを突いています。

眠りというのは、寝た本人の申告からしか出てこない数字。

だから「1日30分」も「1日8時間」も、根っこは同じ自己申告なんですよね。


数えるものを時間から変えてみる

数えられないのは、堀大輔ひとりの事情ではありません。

自分の睡眠時間を正確に言える人が、どれだけいるでしょうか。

布団に入った時刻は覚えていても、眠りに落ちた瞬間を自分で見ていた人はいません。

夜中に一度目が覚めたことすら、朝には忘れていたりします。

つまり、私たちが口にしている睡眠時間も、たいていは自己申告なんです。

 

7時間寝たつもりが、実際に眠れていたのはもっと短かった、ということも起こります。

最近はスマートウォッチや睡眠アプリで測っている人もいますが、あの数字を自分の感覚だけで確かめる手立てはありません。

結局のところ、自分の眠りを外から丸ごと眺められる人はいない、ということ。

 

だからでしょうか、厚生労働省のガイドは、時間の目安だけを置いてはいません。

「睡眠休養感」という言葉も一緒に置かれていて、睡眠で休養が取れている感覚を高めることも大切だと説明されています。

  • 寝室にスマホやタブレットを持ち込まない
  • 部屋はできるだけ暗くして眠る
  • 眠るための飲酒は控える

こういう具体的な話まで書かれていて、なかなか耳が痛いところ。

 

何時間眠ったかは、思い出そうとすると必ずぼやけます。

でも「今日は休めた感じがあるか」なら、朝の自分がその場で答えられる。

数える相手を時間から休養感へずらすと、途端に手元で確かめられるものになる、というわけです。

1日30分が本当かどうかは、正直なところ、今回の7日間で決着がつくものではなさそうで。

それでも、この騒ぎのおかげで自分の眠りを見直した人がいるなら、配信は無駄ではなかったのかもしれません。

 

配信は9月16日まで続きます。

ただ、最後まで見届けたところで、勝ち負けがきれいに決まることはなさそうです。

数えられないものを数えようとしているので、当然といえば当然のところ。

それでも、数え方を決めないまま「1日30分」という数字だけを出し続けてきたのは、やっぱり不親切だったと感じてしまいます。

そのおかげで、久しぶりに自分の枕元のことを思い出した人もいるはず。

今夜は何時間寝るかより、朝どれだけ休まった気がするかを見てみたいところですね。