宅配の不在票トラブル|配達員と受け取る側どっちが悪いのか調べてみた

宅配の不在票トラブルをめぐって、ネットではいま二つの文句がぶつかっています。
一つは、家にいたのにピンポンが一度も鳴らず、ポストに不在票だけが入っていた、という受け取る側の怒り。
もう一つは、時間どおりに届けに行ったのに、家にいなかった客から責められる、という配達員の側のぼやきです。
押した押していない、居た居なかったの言い合いは、どっちが悪いのかで平行線のまま終わってしまうんですよね。
今回は、宅配の不在票が国のルールの上でどんな紙なのかを確かめながら、配達員と受け取る側のどっちが悪いのかを調べていきたいと思います。
鳴らないピンポンと入っている不在票
家にいたのに不在票が入っていた、という話は、宅配の会社を問わず出てくるもの。
窓からトラックが見えたので待っていたのに、玄関まで来た配達員がそのまま戻っていった、という人もいました。
インターホンが鳴った瞬間に出られるようドアの前で待っていたら、開けたときにはもう不在票が入っていて、見えたのは後ろ姿だけだった、という人も。
その人は「お前それただのピンポンダッシュじゃねぇか」と書いていて、つい笑ってしまいました。
家にいた時間帯なのに、家族の誰もベルに気づかないまま不在票が入っていて、玄関のベルを試すとちゃんと鳴る、という声もあります。
なかには、もっと不思議な話も。
不在票すら入っていないのに、ネットで荷物を調べたら「持戻(ご不在)」と出ていた、という投稿です。
【おい‼️黒猫ー🤣】
荷物来るから自宅待機🏠️
↓
全然来ないか〜😒
↓
ポストに不在票ナシ
インターホンの履歴ナシ
↓
ネットで確認したら…
【持戻(ご不在)】😱再配達は可哀想だと思って待ってたのに😇来ても無いのに不在って何⁉️😳
— ドライバーRie🐼 (@driver_rie) 2026年10月3日
インターホンの履歴にも、何も残っていなかったとのこと。
再配達させるのは悪いからと待っていた人ほど、この表示ひとつで気持ちが折れてしまいます。
ただ、原因がいつも押し忘れとはかぎりません。
不在のメールが届いたので問い合わせたら、配達員が一つ下の階と勘違いして不在票を入れていた、という話も出ていました。
押していないのか、押した部屋が違うのか、インターホンが壊れているのか。
受け取る側からは、どれなのかが見えないんです。
しかも、どこへ怒ればいいのかもはっきりしません。
配達した人の顔を、こちらはたいてい見ていないので。
不在票の番号に電話をかけても、出るのは営業所の人です。
「本当に押したんですか」と聞いたところで、インターホンの録画が無い家だと、押したかどうかを確かめる手立てがありません。
答えが出ないまま、宅配会社への不信感だけが積もっていきます。
時間どおりに来ても責められる配達員
まず引っかかるのは、そもそも配達する側に得があるのか、という点です。
荷物を渡してしまえば、トラックの荷物は1つ減ります。
不在票を入れれば、同じ荷物をもう一度運ぶ手間が増えるだけでしょう。
実際、配達の仕事をしていたという人からは「再配達のほうが面倒だったからこういうことはやらなかった」という声も出ていました。
再配達は、国が数字を取って減らそうとしているほどの手間です。
報道によると、2024年度の宅配便の取扱個数は50億個を超えて、10年続けて過去最多を更新したとのこと。
国土交通省が2026年7月10日に公表した調査では、同じ年の4月の宅配便の再配達率は約7.6%でした。
前の年の10月より0.7ポイント下がったとはいえ、一度で届かない荷物はまだこれだけあります。
それでも押さずに帰る人が出てくる事情として、現場の側から語られているのは時間の締め切りだそうです。
宅配便には、送る人や受け取る人が「午前中」「19時から21時」のように届く時間帯を選べるサービスがあります。
配達の仕事をしているという人の投稿には、午前中の指定に間に合いそうにないとき、11時59分に不在の記録を入れて、12時5分ごろに届けることはある、と書かれていました。
同じ人は続けて、「家前まで行ってインターホン押さないとかありえねンだわ」とも書いています。
現場の人の目から見ても、押さずに帰るのはありえない話なんですよね。
もう一つ、建物の作りに困らされている配達員もいます。
オートロックの内側にポストと宅配ボックスがあって、不在票すら入れられないという嘆きです。
【軽貨物 不思議】
設計した人、出てきてよ!
聞きたい。
どんな考えがあって、オートロックの中にポストと宅配ボックス設置したん?
しかも、その一帯のマンション全部このタイプ。
いや、入れないのよ!
不在だからポストに不在票を入れたい。宅配ボックスに荷物を入れたい。…
— やま吉/軽貨物 (@yamakiichi) 2026年10月3日
配達する側にも、入れたくても入れられない場面があります。
反対に、時間どおりに来たのに責められている配達員も。
自分で午前中の再配達を指定しておきながら、インターホンを鳴らしてもノックをしても反応がなかった、という配達員の投稿。
自分で午前中に再配達を指定しておきながらインターホンを鳴らしてもノックをしてもまったく反応がなかったので仕方なく不在票を用意しながらさらに強めにノックをしつつ大声で名前を呼び続けていたらやっと返事が聞こえたのでイライラしながら待っていたらバンッと玄関が開いて眉間にシワを寄せた不機…
— ひろい@宅配業者 (@hiroyzero) 2026年8月20日
受け取る側からも、19時から21時の指定で19時17分に届いて不在票だった、という声が出ていました。
投稿した人は「20時くらいに来てよ」と書いていますが、配達員は指定された時間の中で来ています。
怒りの宛先は、配達員というより、時間帯の区切り方に向いているように見えるんですよね。
押さない配達員もいれば、指定した時間に家にいない人もいます。
どちらか片方だけを悪者にしても、同じ言い合いはまた起きるでしょう。
国の約款が決めているのは紙の中身だけ
宅配便には、国が示した基本のルールがあります。
「標準宅配便運送約款」といって、1990年に当時の運輸省が告示し、2025年にも改正されているもの。
約款というのは、運ぶ会社と荷物を出す人とのあいだの約束ごとをまとめた書面のこと。
不在のときの決まりを定めているのが、第12条です。
当店は、荷受人又は前条に規定する者が不在のため引渡しを行えない場合は、荷受人に対し、その旨を荷物の引渡しをしようとした日時及び当店の名称、問い合わせ先電話番号その他荷物の引渡しに必要な事項を記載した書面(以下「不在連絡票」という。)によって通知した上で、営業所その他の事業所で荷物を保管します。
出典:国土交通省「標準宅配便運送約款」第12条(令和7年国土交通省告示第193号による改正後)
私たちが不在票と呼んでいる紙には、正式には「不在連絡票」という名前がついています。
書くと決められているのは、届けようとした日時、会社の名前、問い合わせ先の電話番号などです。
同じ第12条の2項には、近所の人の承諾を得て、その人に荷物を預けることがある、という決まりまで入っています。
ところが、「不在」をどうやって確かめるのかは、どこにも書かれていません。
約款の全文を見ても、「インターホン」「呼び鈴」「在宅」という言葉は一度も出てこないんです。
決まっているのは、不在だった場合に何をするか、だけ。
そして、不在だったかどうかを決めているのは、玄関の前の配達員本人です。
裏を返せば、押さずに入れた不在票は、この条文の入口にある「不在のため」を確かめないまま書かれた紙、ということになりますね。
実際の現場では、インターホンを鳴らし、ノックしてから不在票を入れる、という順番で動いている配達員もいます。
時間指定された荷物の備考欄に『現地に着いたら連絡ください』なんて書いてあったのですが基本的にそんなサービスはやってないし電話するのも面倒くせえからインターホンを鳴らしてノックして不在だったからすぐに不在票を投函して立ち去りました。そしたら数分後に電話がかかってきて『電話くださいと…
— ひろい@宅配業者 (@hiroyzero) 2026年10月5日
この順番を支えているのは、会社の手順や一人ひとりの心がけでして。
国のひな形は、紙に何を書くかまでしか決めていません。
不在票は来ましたの記録にもなる
不在票は、受け取る側へのお知らせです。
ただ、約款にはもう一か所、不在票が出てくる条文があります。
荷物が遅れたときの賠償を決めた、第25条4項1号。
第十二条の不在連絡票による通知が荷物引渡予定日の翌日までに行われたときを除き、荷物の引渡しが荷物の引渡予定日の翌日まで行われなかったことにより生じた財産上の損害を運賃等の範囲内で賠償します。
出典:国土交通省「標準宅配便運送約款」第25条4項1号
ひと息で読むと、形が見えにくい文ですね。
中身は、予定日の翌日までに荷物が届かなければ、運賃の範囲で損害を賠償するという内容です。
ただし、その日までに不在票で知らせていれば、この賠償からは外れます。
不在票は会社にとって、「期日までに届けに行きました」という記録にもなる紙なんです。
もちろん、これは本当に不在だったときの話でして。
ちなみに、送り状に「何日の何時に使う」と使い道まで書いて引き受けてもらった荷物は扱いが別で、その日時に使えなかった損害を限度額の範囲で賠償する、というのが同じ条文の2号です。
同じ第25条の6項は、会社の故意や重大な過失で遅れたときには、生じた損害をすべて賠償すると定めています。
押さずに不在票を入れた配達員が、何を考えていたのかは外からは分かりません。
ただ、この紙には、受け取る側への連絡と、運ぶ側の記録という二つの役割が重なっています。
ピンポンが鳴らなくても不在になってしまうのは、不在かどうかを決める人と、その記録を書く人が同じだから。
記録を大事にしているのは、配達する側も同じでした。
置き配をしたあとに写真を撮ったら、「なんで人の家、写真撮んだよ!」とお客さんに怒られた、という配達員の投稿があります。
【軽貨物 置き配】
ぶちギレてる方、出ておいで!
置き配して写真撮ったら、ぶちギレたお客様いましたけど。
『なんで人の家、写真撮んだよ!』
『消せよ!』いや、証拠です。
『そんな客いるの?』って思うかもしれないけど、ガチでいます。…
— やま吉/軽貨物 (@yamakiichi) 2026年9月29日
本人いわく、写真は置いたという証拠。
配達員も、自分の身を守るために記録を残しているんですよね。
だとすれば、受け取る側も記録を手元に持っておけば、対等に話せるはずです。
揉めたときに手元に残しておく記録
不在票のことで揉めそうになったら、まずは手元の記録を3つそろえます。
- 不在票に書かれた、お届けにうかがった日時
- 荷物の追跡ページに出ている表示と、その時刻
- インターホンの来訪履歴や録画(機種によっては残らない)
不在票の日時は、第12条で書くと決められている項目です。
追跡ページは、通販の注文履歴に出ている伝票番号(お問い合わせ番号)から開けます。
追跡で「ご不在」と出ているのに不在票が入っていないなら、第12条の手順でいえば、知らせるところが一つ抜けている状態。
この3つの時刻を並べれば、「何時何分には家にいて、インターホンの履歴には何も残っていない」と、事実だけで伝えられるでしょう。
もちろん、その時刻にちょうど電話をしていた、シャワーを浴びていた、ということもあるので、自分の側の記録も同じ目で見ておきたいところです。
時間帯を指定したなら、その枠のはじめから家にいることも大事で、19時から21時の指定なら19時ちょうどに来ることもあります。
連絡する先は、不在票に書かれた問い合わせ先か、送り状に名前のある宅配会社の窓口。
運んできたのが下請けの業者だったとしても、約款の第28条は、ほかの事業者を使って運んだ場合でも「運送上の責任は、この運送約款により当店が負います」と定めています。
文句を言う先は、送り状に名前のある会社で合っているんです。
電話では、再配達のお願いと、インターホンが鳴らなかったことの報告を分けて伝えると、話がこじれにくいと思います。
もう一つできるのは、受け取り方を先に決めておくこと。
国土交通省は2025年11月7日、玄関先などに荷物を置く「置き配」を、宅配便の標準のサービスに加える方針を決めました。
2026年度以降に、国の基本ルールを改める予定だと報じられています。
いまの約款には置き配という言葉がまだ一度も出てこないので、これからの話。
盗難や破損を心配する人も少なくないため、国はトラブルを防ぐための指針も作るとのことです。
置き配や宅配ボックスを選んでおけば、ピンポンが鳴るかどうかに一日を預けずに済みます。
ただ、指定がいつも守られるとはかぎりません。
手渡しで受け取るつもりだったのに、宅配ボックスに入れられてしまったという人もいます。
ヤマトさん、わたし怒ってますよ😡
この中身、50万円分の百貨店ギフトカードなんよ
昨日不在票入れてくれたから19時〜で時間指定したよね
なんで宅配ボックスにいれたの
【宅配BOX禁止】
【手渡し配達】
って書いてるの見えてるよね
「申し訳ありません…」じゃないんよ
紛失してたらどうすんのさ… pic.twitter.com/dn7c4fymcp— ひびころ♛ポイ活.懸賞.投資女子♛ (@hibikorokoro) 2026年10月1日
中身は50万円分の百貨店ギフトカードで、「宅配BOX禁止」「手渡し配達」と書いてあったそうです。
受け取り方を決めておくことと、記録を手元に残しておくこと。
どちらか片方だけでは、この手のトラブルは防ぎきれません。
もちろん、トイレに入っているあいだに3回くらい押してくれる配達員がいる、という声もありました。
配達員と受け取る側のどっちが悪いのかは、一件ごとに違う、というのが調べてみての答えです。
不在票1枚でここまでこじれるのは、紙を書く側にだけ記録があって、待っていた側に何も残っていないとき。
インターホンの履歴は、鳴らなかったことの証拠にも、ちゃんと鳴らしてくれた配達員を守る証拠にもなります。
次に荷物を待つ日は、インターホンの履歴が残る設定になっているか、先に一度だけ確かめておくと安心ですね。
この記事で参考にした情報
- 国土交通省「標準宅配便運送約款」(最終改正 令和7年国土交通省告示第193号)
- 国土交通省「宅配便の再配達率」調査結果(2026年7月10日公表・同年4月の調査)
- 共同通信「『置き配』を標準サービスに追加 再配達の負担軽減狙い、国交省」(2025年11月7日配信)
