ナイトスクープのヤングケアラー騒動…長男が本当に頼んでいたこと

2026年1月23日放送の『探偵!ナイトスクープ』、「6人兄妹の長男を代わって」の回。
霜降り明星のせいやが小学6年生の長男を抱きしめて、「お前はまだ小学生や、大人になるなよ」と声をかけた場面を、覚えている人も多いと思います。
いろんな憶測で言及を求められますが、とにかく【まだ大人になるなよ】です
— 霜降り明星 せいや🕙 (@simofuriseiyam) 2026年1月26日
あの放送から、もう秋。
10月7日の夜から8日にかけて、あの家族にまた赤ちゃんができたらしいという投稿がXに相次ぎ、長男くんを心配する声も一緒に流れてきました。
ただ、どの投稿も「〜そうで」「〜らしい」という伝聞の形で、報道や家族側の発表は見当たりません。
家族の私事でもあるので、この記事では妊娠の話の真偽には触れずにおきます。
それでも、あの長男が心配になってしまう気持ちは自然なものですよね。
そのうえで知っておきたいのは、放送で長男の依頼として読み上げられた「長男やるの疲れました」という一言が、最初に番組へ送られた依頼文には入っていなかったこと。
今回は、ナイトスクープのヤングケアラー騒動で長男が本当に頼んでいたことと、騒動のあとで本人が話していたことを、わかりやすくまとめていきたいと思います。
長男がヤングケアラーと心配された放送
放送で流れたのは、こんな依頼文でした。
「正直、長男やるの疲れました。生まれてから長男しかやったことがないので一日だけでもいいので次男になりたいです」
長男の下には10歳、8歳、5歳、2歳、0歳のきょうだいがいて、両親は共働きで、家事は父親と長男が受け持っている、という紹介です。
せいやがおむつを替えたり昼ご飯を作ったりするあいだ、長男は友達と遊べるのは「週1回、2回」と打ち明けていました。
そして最後は、せいやが家を出たあとに響いた母親の「米炊いて、7合!」という声で終わります。
子どもに家事を言いつけて終わるこの締めくくりも、強い批判を浴びることに。
この長男はヤングケアラーではないのか、と心配する声が、放送の直後から一気に広がりました。
あの画面を見れば、そう感じてしまいますよね。
ヤングケアラーというのは、本来なら大人が担うような家事や家族の世話を、日常的に引き受けている子どものこと。
遊んだり勉強したりする時間が削られてしまうおそれがあるとして、国も支援の対象に加えました。
ヤングケアラーの支援に取り組む人からも、こんな受け止めが出ています。
今回の探偵ナイトスクープを通してヤングケアラーに関する議論が広がったこと、ヤングケアラーと聞いてイメージされやすい障害等の状況がなくてもケアの可能性があるということ、家庭の経済状況が良いことと家庭環境が良いは=で結びついてないことなどが見え、広がったことはとても良かったと思う。…
— 平井 登威/親が精神疾患の子ども・若者支援 (@toi_hirai) 2026年1月24日
障害や病気のある家族がいなくても、子どもに世話の重さがかかることはある、という指摘でした。
放送を見て胸がざわついた人の感覚は、見当違いではないんです。
ただ、その心配は思わぬ形で家族に届きます。
1月25日には、警察が「児童虐待の通報があったので」と家を訪れ、子どもたちの服をめくってけががないかを確かめたと父親は話しました。
父親と母親のSNSには、それぞれ1万件ほどのメッセージが届き、夫婦は誹謗中傷や嫌がらせを受けて仕事をすべてキャンセルすることになったそうです。
番組が書き直した「長男やるの疲れました」
1月26日の夜、朝日放送テレビは番組の公式サイトで、あの回に演出があったことを明かしました。
最初に送られた依頼文は、こういう趣旨だったそうです。
「家族8人みんなで家事や育児を協力しあって頑張っているが、他の兄弟よりも僕が一番頑張っている。他の家族の子供と比べてどうなのか調査して欲しい」
それを番組側と家族で相談したうえで「構成・改稿」し、放送では「疲れました」になった、という説明です。
依頼文のほかに局が明かした演出は、次の3つ。
- 父親が乳幼児を残して仕事に出る場面(ふだんは父親が基本的に家にいて、家事と育児を担当)
- 「米炊いて、7合!」の一言(長男が次男になった非日常から、日常に戻る合図)
- 長男には週に3〜4回、大好きなバスケットを習う時間もあること
局はそのうえで、「これらは取材対象者の責任によるものではなく、編集・構成を行った番組側に起因するもの」と書いています。
ナイトスクープ、炎上回は“演出”てんこ盛り
・父親が乳幼児を残して外出は演出
・最後の母親の「米炊いて7合」発言は演出
・番組の編集、構成上の演出として表現した
・実際の生活状況や日常の全体像ではない
・依頼文も家族と相談して番組用に構成した
・長男ばかり家事育児をしている印象になった…— ᴋ_ᴍᴀʀᴜ_ᴅᴀᴜ_ʙᴀʙʏ (@k_maru_dau_baby) 2026年1月26日
1月30日の記者会見では、朝日放送テレビの社長が「ヤングケアラーという社会課題に対して意識を持ちそこねていた。深く反省している」と謝罪しました。
それなら書き換えたことを、放送の中でひと言断ってくれていれば…と、つい言いたくもなってしまって。
2月はじめ、父親は集英社オンラインの取材に、依頼を出したいきさつを話しています。
番組のファンだった長男が依頼を出してみたいと言い出し、父親と2人で文面を考えて応募したとのこと。
ちょうど家庭科の授業で「家のお手伝い何をしてるの?」という発表があり、たくさん手伝っている長男なら番組も興味を持ってくれるかもしれない、と考えたそうです。
ところが放送作家から「元の依頼文だと採用は難しそう」と言われ、作家が長男から困りごとを聞き取って、依頼文を作り直したといいます。
放送には、長男が抱っこひもで末の妹を抱く場面もありました。
この場面について、長男本人は「家事に追われる長男というテイで出とるけえ、紐つけた方がええじゃろと思った」と振り返っています。
そう考えた理由として本人が挙げたのは、「大好きな番組をより面白くするために自分なりに考えた」という言葉でした。
両親も同じころインスタグラムで謝罪し、「虐待」「ネグレクト」「ヤングケアラー」といった事実は一切ございません、と改めて否定しています。
学校や教育委員会、市役所、児童相談所からも連絡があり、母親は取材に、児童相談所は「虐待ではない」と言ってくれたと話していました。
3月に報じられたBPO(放送倫理・番組向上機構)の青少年委員会の議論では、委員の一人が「これが児童相談所に通報すべき案件かと問われたら、絶対に違うと思う」と述べています。
別の委員は、母親が使っているSNSのアカウントもある以上、両親への批判や誹謗中傷が殺到することは「想像できたのではないか」と番組の側を指摘しました。
いちばん守られるべきだった家族が、番組の作った場面のせいで責められる側に回ってしまっていて。
そのあいだ、長男の受け止め方も変わっていきました。
母親の話では、最初は「みんな俺のこと心配してくれてるんじゃろ?それは嬉しい」と言っていた長男が、やがて「大丈夫?と色んな人たちに言われてキツイ」「学校行きたくない」と口にするようになったそうです。
集英社オンラインの別の回では、長男自身の「大丈夫なの?って毎日聞かれるのがつらい」という言葉が、そのまま見出しになりました。
最初の依頼文とヤングケアラーの「過度に」
「他の家族の子供と比べてどうなのか調査して欲しい」
長男が父親と考えて番組へ送ったのは、この問いでした。
この一文を、こんなふうに読んだ人もいます。
ナイトスクープの件。
依頼原文の
『他の家族の子供と比べてどうなのか調査して欲しい』という部分は特に、ヤングケアラーらしい要望だなと思う。親は当然って顔してるし、普通の家庭をよく知らないから、もしかして自分がおかしいんじゃないか?という不安が常にある。https://t.co/kP0pmaelo3
— 村田@元被虐児童 (@DYdZZP59VT2LSgG) 2026年1月29日
普通の家庭をよく知らないから、自分がおかしいのか不安になる、という読み方です。
家族はヤングケアラーではないと話していて、この見方とは食い違います。
どちらが正しいのかを、外にいる私たちが決める材料はありません。
ただ、この問いは、法律がヤングケアラーかどうかを分けるときの考え方とよく似ているんです。
2024年6月に改正された子ども・若者育成支援推進法は、ヤングケアラーを「家族の介護その他の日常生活上の世話を過度に行っていると認められる子ども・若者」と書いています。
国の説明では、この「過度に」は、遊びや勉強など子どもとして育つのに必要な時間を奪われたり、ケアで体や心に負担がかかったりして、負担が重い状態のことを指すそうです。
見られているのは手伝いの量そのものより、それで子どもの時間が削られているかどうか。
他の家の子と比べて自分の手伝いはどうなのか、という長男の依頼は、ちょうどそこを確かめてほしいという頼みとしても読めます。
ただ、その見極めは子ども自身にはなかなかできません。
国の調査では、小学6年生の6.5%、約15人に1人が「世話をしている家族がいる」と答えています。
一家が暮らす広島県の調査で「自分がヤングケアラーにあてはまると思うか」を聞くと、「分からない」と答えた小学5年生がおよそ30%いたそうです。
世話をしている相手は、国の調査でも県の調査でも「きょうだい」がいちばん多い、という結果だったとのこと。
だからこそ長男は、それを番組に調べてほしいと頼んだのかもしれません。
ところが放送で流れたのは、比べた結果ではなく「疲れました」の一言でした。
他の家の子と比べてどうなのかを調べた答えは、放送にも、そのあとの報道にも出てこないまま。
春から先の長男の様子を伝えた報道も、調べたかぎり見当たりません。
それなのに10月に流れた投稿にも、「ヤングケアラーの家庭」という呼び方がそのまま使われています。
6人目の子の妊娠を家族で知らされたときの長男の表情、という触れ込みの動画も、放送翌日と8月にXで回っていました。
放送から季節が変わっても、あの呼び名は家族の名札のように付いたままでして。
この家族については、学校からも児童相談所からも、すでに連絡が入っていたと両親は話しています。
もし身近な子どもの様子が気になったときは、地域の窓口に話を預けるのがいちばん確実です。
児童相談所につながる「189」の番号は、通告も相談も受け付けていて、名乗らずにかけることもできるとのこと。
あの長男が心配な気持ちは、きっと本物だと思います。
ただ、本人がいちばんつらいと話していたのは、「大丈夫?」と聞かれ続けることでした。
心配するなら、番組が書いた「疲れました」より、最初の依頼文の「一番頑張っている」を覚えておきたいですね。
この記事で参考にした情報
- 番組と局の説明:朝日放送テレビの声明(2026年1月25日・26日)、社長の記者会見(1月30日)の報道
- 家族の話:集英社オンラインの両親と長男への取材記事(2026年2月)
- BPO青少年委員会の議論:マイナビニュース(2026年3月12日配信)
- 法律と調査:子ども・若者育成支援推進法、厚生労働省のヤングケアラー実態調査、広島県「子供の生活に関する実態調査」
