7年前に出た一つの判決が、いまXで大きく広がっています。

小学6年の男の子(当時12歳)に強制性交をした23歳の女に、言い渡されたのは懲役3年・執行猶予5年。

刑務所には入らずに済む判決でした。

 

ネットには「女だから軽いのか」「男女が逆なら実刑だろう」という声が並んでいて、その怒りはもっともだと思います。

ところが、男女が逆の裁判で、まったく同じ重さの判決が今年もう出ているんです。

今回は、高松の判決と、男性が裁かれた今年の判決を並べて、小学生への性加害に執行猶予がつく仕組みをわかりやすく解説していきたいと思います。

高松地裁が刑を軽くした理由

事件が起きたのは2019年1月、香川県高松市でした。

女は、スマートフォンのオンラインゲームで福岡県に住む小学6年の男の子と知り合い、自宅で性交に及んだとして逮捕・起訴されています。

男の子との性的な写真をスマートフォンで撮っていたことなどでも罪に問われ、2019年9月4日に高松地裁で判決が言い渡されました。

検察が求めたのは懲役5年で、判決は懲役3年・執行猶予5年。

KSB瀬戸内海放送によると、裁判長はまず「判断能力や性的知識が乏しいことにつけ込んで犯行に及んだことは悪質」と指摘しています。

 

そのうえで、刑を軽くする事情として挙げられたのが、次の2つ。

  • 「将来は結婚したい」というやり取りをするなど、お互いに恋愛感情を有していた
  • 今後一切連絡しないなどの示談が成立している

12歳の男の子の気持ちが、刑を軽くする側の材料として数えられていました。

7年前、判決が出た直後にも、同じところに引っかかった人の投稿があります。

いまXで広がっているのは、この2019年の判決を伝える記事で、同じ話は以前にも一度、Xで広く出回っていて。

そして「男だったら」という比べ方には、今年になって、比べられる判決が出ているんです。

男女が逆の裁判で出た同じ数字

「男女で扱いが違うのでは」と疑いたくなるのも、無理はありません。

実際、法律そのものが長いあいだ、男の子の被害を想定していませんでした。

2017年7月に刑法が変わるまで、いまの不同意性交等罪のもとになった「強姦罪」は、被害者を女性に限っていたんです。

この改正では、刑の下限も3年から5年へ引き上げられています。

男の子が同じ被害を受けても同じ罪では裁けない時代が、長く続いていたということ。

高松の事件はその改正のあとに起きたので、「強制性交」の罪で裁かれています。

罪の名前は、強姦罪から2017年に強制性交等罪へ、2023年にいまの不同意性交等罪へと変わってきました。

男の子の被害を軽く見る目が社会にあった、という感覚には、法律の歴史という裏づけがあります。

 

では、いまの裁判は男女で差をつけているのでしょうか。

2026年7月13日、福岡地裁小倉支部。

SNSで知り合った13歳未満の小学生の女の子とカラオケ店で性交したとして、不同意性交等の罪に問われた男子大学生に、判決が言い渡されました。

検察の求刑は拘禁刑5年で、判決は拘禁刑3年・執行猶予5年。

2025年6月から懲役と禁錮が「拘禁刑」にまとまったので、呼び名が変わっただけで、高松の懲役3年と同じ種類の刑です。

日刊SPA!によると、判決は刑を軽くする事情として、初めての犯罪であること、両親が指導と監督を誓っていること、性犯罪を防ぐためのカウンセリングを受けていること、そして示談が成立していることを挙げていたとのこと。

求刑も判決も、高松の事件とそっくり同じ数字でした。

 

似た判決は、もう一つあります。

元衆議院議員の椎木保が、中学1年の女子生徒に性的暴行をしたとして不同意性交等の罪に問われた裁判で、東京地裁は2025年2月3日、懲役3年・執行猶予5年を言い渡しました。

こちらも求刑は懲役5年で、謝罪や賠償金の支払いを済ませていたと報じられています。

被告が男性で、被害を受けたのが女の子という組み合わせでも、出てくる数字は変わりませんでした。

小学生や中学生になったばかりの子どもへの性交で、刑務所に入らずに済む判決は、性別に関係なく出ています。

だとすると、「おかしい」の中身は性別よりも、なぜ同じ判決が出てくるのかにありそうです。

懲役3年・執行猶予5年という天井

法律の上では、子どもへの性交は、本来なら執行猶予をつけられない重さの罪。

不同意性交等罪の刑は「5年以上」の拘禁刑。

一方で、刑法25条が執行猶予を認めているのは、「3年以下」の拘禁刑を言い渡すときだけ。

いちばん軽い5年でも、そのままでは猶予の線を越えてしまいます。

そのあいだをつなぐのが、「酌量減軽」という仕組みです。

犯罪の事情に同情できる点があるとき、裁判官は刑を減らすことができ、期間のある刑なら上限も下限も半分にできると刑法に書かれています。

5年以上の刑が2年6か月以上まで下がるので、3年を言い渡して執行猶予をつけられるようになるんですね。

 

そして執行猶予の期間は、法律で「1年以上5年以下」と決められています。

執行猶予5年というのは、その5年のあいだに別の罪で有罪にならなければ、刑の言い渡しそのものが効力を失うという意味です。

逆に、そのあいだに別の罪で拘禁刑以上の刑を言い渡されるなどすれば、猶予は取り消されて刑務所に入ります。

つまり懲役3年・執行猶予5年は、執行猶予をつけられる範囲の中で、いちばん重い組み合わせなんです。

高松も福岡も東京も、判決は猶予の天井にぴったり並んでいました。

あわせて見ておきたいのが、どの事件でも検察が求めた5年という数字。

これは法律が決めた刑の下限ちょうどで、求める側も、下限から出発していました。

では、減軽の決め手になるのは何なのか。

 

弁護士ドットコムニュースの解説によると、性犯罪でよくあるのは、被害者との示談が成立しているとして酌量減軽が認められるケースだそうです。

どの事件でも、示談や賠償のことが判決の報道に出てきていました。

それでも、示談をずるい逃げ道だとひと言で切れないのが、この話のつらいところ。

示談は、被害を受けた側が受け入れなければ成立しません。

高松の示談には「今後一切連絡しない」という約束が入っていました。

福岡の判決が刑を重くする側に挙げたのは、子どもの未熟さを「顧みなかった」ことなど、被告の側の事情だったそうです。

これに対して、元裁判官の岡口基一は、今年の福岡の判決について、こう疑問を投げかけていました。

「この事件でもっとも考慮されるべきは、被害者が小学生にすぎないことそれ自体ではないのか」

 

ネットでは、元ジャンポケの斉藤慎二の「7年」と並べて、男女の差だと言う声も出ています。

ただ、その「懲役7年」は検察が求めた刑で、判決ではありません。

斉藤慎二は無罪を主張したまま結審していて、判決は11月16日に言い渡される予定と報じられています。

求刑どうしで比べるなら、高松・福岡・東京の5年と、斉藤慎二の7年。

7年と3年の差は、求刑と判決という別々の段階の数字を並べたもので、男女の差として出てきた数字ではありません。

判決が「恋愛感情」と呼んだもの

高松の判決でいちばん引っかかるのは、「お互いに恋愛感情を有していた」という一行だと思います。

週刊女性PRIMEは、その中身をもう少し詳しく伝えていました。

女はまず男の子が住む福岡を訪ね、年末年始には旅費を出して男の子を高松へ呼び、そのわずか2週間後にも同じように呼び寄せていたそうです。

男の子の母親が心配してメールを送ってくると、女が「こうやって送ったらいいよ」と返し方を教えていた、と同誌の記者は話していました。

入口がスマートフォンのオンラインゲームだったことも含めて、いまの言葉でいえば、子どもを手なずけて近づく「グルーミング」と呼ばれる形にそのまま重なって見えます。

 

2023年7月、刑法はもう一度変わりました。

性交への同意が問われない年齢は13歳未満から16歳未満へ引き上げられ、新しく「面会要求等罪」が作られています。

13歳から15歳の子については、相手が5歳以上年上のときに、同意があっても罪になる形です。

わいせつの目的で16歳未満の子どもに「金銭その他の利益を供与し、又はその申込み若しくは約束をして面会を要求すること」は、それだけで罪になりました。

旅費を出して子どもを呼び寄せるというやり方そのものに、いまは条文の名前がついています。

2017年の改正で男の子を被害者として数えられるようになった法律は、2023年には、子どもを呼び出そうとする段階そのものを罪にしました。

 

もう一つ、男の子が被害を受けた事件には、決まってついてくる言葉があります。

そうした事件が報じられるたびに「羨ましい」「ご褒美」という言葉が飛び交うことを、7年前にこう書いた人がいました。

今回広がっている記事の下にも、「俺も出会いたかった」という書き込みが、いまも残っていて。

男の子の被害を「いい思い」と見る目と、判決に書かれた「恋愛感情」という言葉は、同じ方向を向いているように見えます。

女だから軽くなったように見えたあの判決の中で、本当に軽く扱われていたのは、12歳の男の子のほうだったのかもしれません。

12歳の子どもの気持ちが「恋愛」として刑を軽くする側に数えられる判決は、相手が男の子でも女の子でも、やっぱりおかしいと感じてしまいますね。