2026年9月30日、和歌山県の免許の窓口に、タイムズカーの件で免許証を作り直したいという人が現れはじめました。

カーシェアのタイムズカーから、免許証の画像などの本人確認書類が約160万件も外へ出てしまった問題のことです。

いまでは同じ受け付けが、東北から中国・四国までの各地に広がっています。

島根県では、手数料は1500円から2700円のあいだと報じられました。

免許証の画像が出てしまったと聞けば、まず自分の1枚をどうにかしたくなりますよね。

ただ、作り直して変わるのは、顔写真と番号の最後の1桁だそうです。

しかもその手数料は、いまのところ自分の財布から。

今回は、タイムズカー漏えいで申し込む人が増えている免許証の再交付について、どこで受けられて何が変わり、手数料は誰が払っているのかを、わかりやすく解説していきたいと思います。

県ごとにバラバラな再交付の窓口

免許証の再交付は、ふだんなら、なくしたときや壊れたとき、住所や名前が変わったときなどに受ける手続きです。

情報が漏れたという理由は、その中に入っていません。

それでも今回は、各地の公安委員会が「特例」として受け付けを始めました。

公安委員会というのは都道府県の警察を管理する役所で、免許を出しているのもこの委員会です。

報道で確かめられたのは、次のような県でした。

  • 宮城県(9月末ごろから、これまでに約30件)
  • 愛知県(10月1日から、名古屋の試験場だけで5日までに39人)
  • 和歌山県(9月30日から申請が出はじめ、5日までに10件以上)
  • 岡山県と香川県(どちらも10月1日から)
  • 広島県、山口県、島根県

NHKも、関西の各公安委員会が同じ対応を始めたと伝えています。

宮城県の運転免許センターには数十件、広島県の運転免許センターにも少なくとも20件の相談が寄せられていたとのこと。

広島県は、申請の期限を設けていないとも説明していました。

東京では、警視庁の運転免許本部と都内3つの試験場に、9月30日から10月2日までのあいだで約500件の問い合わせがあったそうです。

府中の試験場に電話で確かめたという人は、こう書いていました。

気になるのは、その人が挙げた持ち物にタイムズの会員カードが入っていること。

山口県では、情報が漏れた証明などは必要なく、申し出があれば再交付を受けられると報じられていました。

島根県は、申請用紙に「情報流出の可能性がある」などと書けばよいそうです。

同じ「特例」と呼ばれていても、窓口ごとに求められるものは同じではありません。

 

では、どうしてここまでばらばらなのでしょうか。

道路交通法の94条2項は、免許証を作り直せる場面として、なくしたとき、燃えたとき、汚れたとき、壊れたときなどを並べたうえで、「その他内閣府令で定めるとき」と書き足す形。

その府令にあたる道路交通法施行規則は、いくつか場面を挙げたあと、最後の項目を「公安委員会が相当と認めるとき」で締めています。

情報が漏れたときにどうするかは、法律にも府令にも書かれていません。

今回の件を「相当」と認めるかどうかは、都道府県の公安委員会がそれぞれ決めています。

だから始めた日も、受付の時間も、持ち物も、県ごとに違ってくるんですね。

住んでいる県が発表を出していなくても、再交付ができないとはかぎりません。

同じ府令には「免許証に表示されている写真を変更しようとするとき」も並んでいて、埼玉県警や大阪府警は、写真の変更を再交付の理由として案内ページに載せています。

特例の発表が出ていない県でも、写真を変えたいという理由でなら、窓口で相談してみる余地はありそうですね。

行く前に、住所地の免許センターへ「タイムズカーの件で再交付はできますか」と電話で聞いておくのが確実です。

手数料を払っているのは漏らされた側

再交付の手数料は、全国で同じ額と決まっているわけではありません。

道路交通法で、手数料は都道府県が条例で決めることになっていて、国は政令で標準になる額を示しています。

その標準は、再交付なら免許証をつくる材料などにあたる1700円と、窓口の人件費にあたる900円で、合わせて2600円。

府中の試験場で聞いたという2600円は、この標準とちょうど同じ数字でした。

そしてこのお金を出すのは、窓口に来た本人。

この「そんな話ある?」には、思わずうなずいてしまいますよね。

自分は何も失敗していないのに、平日に時間を作って免許センターへ行き、手数料まで自分で払うんです。

島根県の受付は平日の昼間が中心で、日曜も短い時間だけ開けているとのこと。

仕事を休まないと行けない人も、少なくないでしょう。

 

しかも、1回行けば済むとはかぎりません。

和歌山県では、交通センターなどなら即日交付ですが、一部の警察署で申し込んだ場合は後日の受け取りになるそうです。

 

和歌山県の交通センターを訪れた男性は、「(漏えいした)会社にはしかるべき対応を願いたいし、それだけの責任があると思う」と話していました。

では、タイムズ側はこの手数料について何か言っているのでしょうか。

タイムズカーを運営するタイムズモビリティは、よくある質問をまとめた資料を出していて、その後も書き足しています。

ところが、その10の質問のどこにも、再交付という言葉は一度も出てきませんでした。

補償についての答えは、こうです。

「現在実施しております外部専門機関による調査の結果を踏まえて、全体方針を決定する予定です」

払うとも払わないとも、まだ決まっていません。

新しく知らせることが出てきたら、関係する人に連絡し、ウェブサイトでも知らせるとしています。

県は窓口を開け、本人は時間とお金を出し、漏らした会社は調べている途中。

いまのところ、再交付の手数料を払っているのは漏らされた側です。

同じ資料には、退会したあとも免許証の情報と画像を7年間残していた理由も書かれていました。

「なりすまし対策やお問い合わせ対応のため」だそうです。

いずれ方針が出たときのために、いつ、どこで、いくら払ったかは控えておいて損はありません。

 

変わるのは顔写真と番号の最後の1桁

番号の末尾が増えるだけで意味がない、という声も出ています。

免許証の番号は12桁で、報道によれば、再交付で変わるのはその末尾と顔写真です。

末尾の1桁は、何回作り直したかを表す数字とされています。

上の11桁はそのまま残り、名前も住所も生年月日も、もちろん変わりません。

そして何より、すでに出ていってしまった古い画像は、作り直しても1枚も消えないんです。

産経新聞もNHKも、再交付で被害を防ぐ効果は限られているという見方を伝えていました。

産経の記事は、専門家の話として「怪しいことがあったらすぐにカード会社に連絡するなど、自分で注意していくしかない」と書いています。

 

では、まったく意味がないのでしょうか。

タイムズのよくある質問には、免許証の画像を使ったネットでの本人確認について、こんな説明がありました。

「本人確認書類の画像だけでなく、本人の容貌画像との照合、本人名義口座による確認といった、追加の確認手続が用いられます」

容貌画像というのは、手続きの場で撮る本人の顔の写真や動画のことです。

ネットの手続きは、画像が1枚あるだけですぐ誰かになりすませる作りにはなっていません。

ただ同じ答えの中で、なりすましなどの可能性を「完全に否定するものではありません」とも書かれていました。

しかも、銀行の口座を作るときなどに、ネットで免許証などの画像を送って本人確認をするやり方は、犯罪収益移転防止法の施行規則が改められて、2027年4月1日でなくなることも決まっています。

画像だけで本人だと認めてくれる場所は、これから少しずつ減っていくはずです。

そのうえで再交付を受けると、いま財布に入っている免許証は、出回っている画像とは番号の最後の1桁も顔写真も違う、別の1枚になります。

もしあとで身に覚えのない契約が見つかったとき、いまの免許証はその日に作り直したものだと示す材料にもなるはずです。

再交付は、出ていった画像を取り戻す手続きではありません。

手元の免許証を、出回っている画像とは違う1枚に替える手続きなんです。

免許証をやめてマイナ免許証だけにすればいい、という声もありますが、マイナ免許証に切り替えても、すでに出ていった画像は戻ってきません。

そのために手数料と平日の時間を使うかどうかは、人によって答えが違って当然でしょう。

免許センターへ行く前にできること

まずは、自分が本当に対象なのかを確かめておきたいところです。

タイムズモビリティによると、免許証の画像などの本人確認書類が漏れたのは約160万件。

その人たちには、9月29日から順にメールで知らせているそうです。

退会した人にも案内を始めていて、連絡先が変わっているかもしれない人は、問い合わせフォームから退会したときの登録内容を送ってほしいとしています。

メールがまだ来ていなくても、順番を待っているだけかもしれません。

 

再交付を受けると決めたら、住所地の窓口に電話して、受付の時間と持ち物を先に聞いておくのが近道です。

埼玉県警の案内では、顔写真の変更などで作り直す人は、いま持っている免許証を持ってくるよう書かれていました。

申請書に貼る本人確認用の写真もいるとのこと。

どんな写真が何枚いるかも、県ごとの案内で確かめておくと安心です。

 

受けないと決めた人にも、できることは残っています。

カードや銀行口座の明細に、覚えのない請求が混ざっていないかを、ときどき見ておくこと。

タイムズは、会社や金融機関、携帯電話会社、公的機関を名乗って認証コードや暗証番号を聞き出そうとする連絡に気をつけるよう呼びかけています。

タイムズ自身も、電話やメールでそうした番号を聞くことはないと書いていました。

そして、知らないうちに自分の名前でローンを組まれる不安には、信用情報機関の本人申告という手もあります。

信用情報機関は、ローンやクレジットカードの審査のときに各社が問い合わせる先で、そこに「名義を悪用されるおそれがある」と本人が登録しておける仕組みです。

登録のしかたと手数料は、こちらで詳しく紹介しています。

タイムズカーの免許証画像流出が怖すぎる…勝手に借金される前にできること自分の免許証の画像が、知らない誰かの手に渡っているかもしれなくて。 カーシェアのタイムズカーで、運転免許証の画像を含む約660万件の会...

免許証を作り直すかどうかは、それぞれが自分で決めていい話です。

ただ、免許センターに並ぶ人が自分のお金と平日の時間を出している今の形には、どうしても首をかしげてしまいますね。