大山の鶏レバーと食パン大量廃棄が怖い…ネットで出ている説と犯人像

2026年8月14日、鳥取県の大山を走る道路のガードレール沿いに、食パンが並んでいるのが見つかりました。
その数、およそ30個。
距離にして150mほどにわたって置かれていたそうです。
見つけたのは、大山の自然環境を管理している財団の職員でした。
その日のうちに全部回収したのですが、翌15日にも、さらに16日にも、同じように食パンが捨てられていたといいます。
そこでいったん止まったのですが、19日に置かれていたのは鶏の内臓でした。
20日には、また食パンが10.5キロ。
7日間のうち5日。
集まった量は、食パンだけでおよそ39キロになります。
誰が置いたのか、何のために置いたのか。
なぜ食パンなのか、なぜあの場所なのか、なぜ何日も続いているのか。
警察も鳥取県も現場を確認しましたが、いまのところ何ひとつわかっていません。
そして8月25日、石原宏高環境相が会見で「極めて危険な行為だ」と述べました。
国が名指しするところまで来ています。
ネットでは、この不気味さをどう受け止めればいいのかわからず、笑い話にする人と本気で怖がる人に割れている状態です。
今回は、そこで出ているいくつかの説を並べたうえで、それぞれが当たっていた場合にどんな人物が浮かぶのか、どれくらい悪い話になるのかを整理していきたいと思います。
大山の道路に置かれた食パンと鶏の内臓
食パンが置かれていたのは、鳥取県の大山町と伯耆町の境目あたりを通る県道158号です。
大山環状道路と呼ばれている道で、中国地方でいちばん高い大山のまわりをぐるりと回っています。
一帯は国立公園。
観光で車を走らせる人も多い場所に、食パンが点々と置かれていました。
見つかった中身を、日ごとに並べてみましょう。
- 8月14日 食パン16.7キロ
- 8月15日 食パン6.3キロ
- 8月16日 食パン5.5キロ
- 8月17日・18日 なし
- 8月19日 鶏の内臓(レバー)1.3キロ
- 8月20日 食パン10.5キロ
ここで一つ、引っかかる点が出てきます。
減って、いったん止まって、また増えているんです。
手元の在庫を処分したかっただけなら、こうはなりません。
出し切って終わるはずのものが、2日おいて10.5キロ分また用意されました。
どこかで補充されているということになります。
もう一つ、置き方が普通ではありません。
現場を管理している財団の担当者によると、パンは2メートルから3メートルの等間隔で、ずっと並べられていたそうです。
ごみを捨てるだけなら、人目につかない場所に一か所へまとめて放るのがいちばん早いはず。
それが、150mにわたって等間隔。
見つかったのは山側の5か所で、どこにも車を停められるスペースがありました。
発見はいつも午前中で、早い日は9時ごろだったとのこと。
この様子がニュースで流れたとき、ネットの反応はまず笑いのほうへ振れました。
でかすぎるヘンゼルとグレーテルが通った
— りく(いしゅみ) (@isyumi_net) 2026年8月19日
道に点々とパンが落ちている光景は、たしかに昔話みたいです。
ただ、実際に拾って歩いた人は笑えなかったと思います。
初日だけで16.7キロ分の食パンを、150mにわたって拾い集める作業ですから。
そして、あとから似た話がもう一つ出てきました。
同じ8月14日の午後、鳥取市の白兎海岸でも食パンが10個ほど捨てられていたというのです。
兵庫県から訪れていた男性が見かけて、情報を寄せました。
場所は国道9号沿い、砂浜へ下りるスロープのあたり。
21日の時点でも、草むらに乾いた食パンが2個だけ残っていたそうです。
大山の件と関係があるのかは、わかっていません。
ただ、同じ日に、県内の別の場所でも同じものが捨てられた。
パン屋が挙げた練習用という説
ネットでいちばん納得を集めたのが、この説でした。
パン屋を営んでいるという人が、別々に2人、ほぼ同じことを書き込んでいます。
きっかけは、写真に写ったパンの形でした。
山(コブ)が4つあるものと、5つあるものが混ざっているというのです。
売り場に並ぶ食パンで、こんな混ざり方はしません。
「見るからに個人店のパンですね。見習いに期限切れ(在庫の小麦粉)の粉を使わせて研修させていたのかな?」
型に入れて生地を分ける練習を、繰り返していたのではないか。
もう一人は、もっと細かいところまで書いています。
パンには技能検定という国家資格があって、実技で焼くのがイギリスパンという山型の食パン。
1級なら4斤、2級なら3斤。
材料は小麦粉、塩、砂糖、ショートニング、イースト、水だけ。
材料費は、たかが知れています。
では、あの量になるまで何回焼くのか。
「写真の量は32斤程度なので、4斤を8回も練習したらそうなります」
つまり、大きな工場を持ち出さなくても届く量なんです。
別の人は、形や長さが不揃いなところから「工場のメーカー品ではなく個人店の廃棄では」と書いていました。
もちろん、ここまでは全部、ネットに書かれた推測です。
警察も県も、パンの出どころについては何も発表していません。
それでも、この説だけが答えられる質問が一つあります。
なぜ、食パンなのか。
家庭から39キロの食パンは出ません。
売り物として焼いたなら、これだけ余る前に売り切っているはず。
売るためではないパンが大量に出る場所は、練習の現場くらいです。
量が増えてからは、ここに「個人店の廃棄ではなく、製パンの学校が出したものでは」という声も加わってきました。
検定の試作にしては、一人で何十斤も焼く量ではないという指摘です。
生徒が何人もいて、同じ課題を一斉に焼く場所なら、この量が出ても不思議はありません。
ただ、この説には答えられないことがあります。
19日に置かれていたのは、鶏の内臓でした。
パンの練習で、レバーは出ません。
食パンの出どころは説明できても、置き続けている理由は説明できないんです。
クマをおびき寄せたという見方
20日にまた10.5キロ分が見つかって、この見方が一気に強くなりました。
なぜ?大山の道路沿いに大量の食パン捨てられる 新たに警察が食パン10.5kg分を発見 合わせて39kg分に 鳥取県|日本海テレビNEWS NNN
— 日本海テレビ 報道部 (@hodo_nkthodo) 2026年8月20日
現場を管理している財団の所長は、取材にこう答えています。
「大体不法投棄は谷とか見えにくいところに捨てられるんですけど、これは完全に違う目的だなって」
まず、5日続いています。
荷台から落ちたのなら、1回で終わるはず。
同じ道に何度も出てくるとなると、誰かが同じ場所へ何度も足を運んでいることになります。
しかも17日と18日はいったん空いて、19日には中身が変わりました。
次に、置いた場所。
隠したいなら、藪の奥へ放り込めば済みます。
それをせずに、通りかかった車からでも丸見えのガードレールの外側に、わざわざ並べているわけです。
隠す気がありません。
ここから出てくるのが、餌やり説です。
公園のカルガモに、ちぎったパンを投げる人。
野良猫に、毎日ごはんを置いていく人。
あの感覚のまま、山の動物にやっていたのではないか、と。
「餌やり禁止の看板の目の前で、子どもが餌をまいていた」という目撃談も、ネットにはいくつも並んでいます。
そして、鶏の内臓が出たことで、この見方は一段と強くなりました。
クマは雑食で、動物性のものもよく食べます。
パンだけなら「捨てた」で通ったかもしれませんが、レバーが加わると話が変わる。
パンの次は、肉。
ちなみに大山のふもとは大山どりの産地なので、鶏を扱う場所そのものは、このあたりに珍しくありません。
いちばん多かった不安は、これでした。
道から見える場所にあれだけあるなら、見えない場所にはもっとあるのではないか。
似た光景を見た人もいました。
これはよくない
罰当たりなことです
私は、青森に住んでいた頃に雪道の歩道に大きな焼き魚が3匹落ちているのを見たことがある
5~10m間隔に落ちていたのがまた…
雪の上に焼き魚
おかしな光景でした— Abies (@Abies33912qx6) 2026年8月19日
青森の雪道に、大きな焼き魚が3匹。
5メートルから10メートルおきに、間隔をあけて。
一か所にまとめず、点々と置いていく。
捨てるというより、配っているんですよね。
餌付けにしては不自然だという声
ネットが餌やり説へ傾いていく一方で、「それは違うのでは」という指摘も伸びています。
本気でクマに食べさせたいなら、人に見つからない夜中にまくはず。
置かれていたのは、車が通る道路のすぐ脇でした。
そのうえ、発見はいつも午前中です。
見つけてくださいと言っているような時間と場所なんですよね。
形も引っかかるところです。
3斤の食パンを、切りもせずにそのまま置いてあります。
食べさせたいなら、ちぎるか、せめて小さくするはずだという声もありました。
では、餌やりでないとしたら何なのか。
ここで出てくるのが、嫌がらせではないかという見方です。
「投棄する方も相当な金がかかっているのだろうし、よほどの恨みがなければここまでしないだろう」
拾って回っているのは、いつも同じ財団の人たちです。
毎朝あの道を見回る人がいて、置けば必ずその人が片付けに来る。
だとすれば、向けられているのはクマではなく人のほうということになります。
もう一つ、こんな声もありました。
「害獣被害を狙ったものなら、単なる不法投棄というよりテロですよね」
白兎海岸の件が出てからは、報道の側からも別の見方が添えられるようになりました。
もし2か所に関係があるのなら、面白がってやっている人物ということもありうる、と。
クマのいない海岸にも撒いたのだとすれば、狙いはクマではなかったことになります。
ここまで来ると、もう、ごみの話ではありません。
ごみの処分代をケチったという説
もう一つ、生活寄りの見方もあります。
「今は事業ゴミを捨てるのにもお金がかかる時代なので、どうせ捨てるなら、とこのような事になっているのではないか」
「けちったの?」
商売で出たごみは、家庭ごみの日には出せません。
決まった業者に連絡して、重さの分だけお金を払い、引き取っていってもらうことになります。
39キロ分となると、手間も費用もそれなりです。
つまり、そのお金を惜しんだのではないか。
では、なぜパン屋にそんな在庫が出るのか。
そこを書き込んだ人がいました。
工場が注文より多めに焼き、配送のドライバーに「売ってこい」と持たせる。
当然、売れ残る。
持って帰ると怒られる。
だから、ドライバーが自分でなんとかするしかありません。
配り切れなかった分をこっそり捨てていた人もいた、というところまで書いてありました。
裏の取れた話ではありませんが、余ったパンを抱えて困る人が、どこかに実際にいるということ。
それだけは伝わってきました。
もっとも、この説は続報でどんどん苦しくなっています。
処分代を浮かせたい人が、山道を5回も往復するでしょうか。
19日のレバーは、そもそもパン屋の在庫ではありません。
おまけに、同じ日に70キロ離れた海岸へも運んだことになる。
処分が目的なら、1か所で終わっているはずです。
ちなみに、不法投棄の罰そのものはかなり重い。
個人で拘禁刑5年か1000万円以下の罰金、その両方が科されることもあるそうです。
会社としてやれば3億円以下。
現場は国立公園の中なので、自然公園法も関わってくる話です。
この法律は、国立公園の特別地域などで、野生動物への餌付けそのものを禁じています。
捨てたのか与えたのかにかかわらず、あの場所でやってはいけないことでした。
未遂でも捕まります。
元特捜部検事の前田恒彦は、この件についてこう書いていました。
「餌付けだったとしても、危険を誘発した法的責任は免れません」
善意のつもりでも、罪の重さは変わらないということです。
39キロを5回運ぶ手間と、この罰。
釣り合っているとは、とても言えません。
説ごとに変わる犯人像と悪質さ
ここまで、いくつもの説を並べてきました。
どれが当たっているかで、浮かんでくる人物像はまるで違います。
そして、「どれくらい悪い話なのか」も説によって別物です。
ニュースを見て気持ち悪いのは、犯人がわからないからというより、悪意でやったのか善意でやったのかすら決められないからだと思います。
一つずつ当てていきましょう。
練習で出たパンだった場合
浮かぶのは、パンを焼く技術を持った人です。
小さな店の人か、パンを教えている場所の人か、これから資格を取ろうとしている人か。
悪意はありません。
練習で出てしまった食べられないパンの、置き場所に困っただけ。
ただ、悪質さで言うと、思ったより軽くありません。
仕事や勉強で出たパンは、家庭ごみではなく事業ごみです。
それを山の道端へ運んだ時点で、はっきり不法投棄になります。
そして何より、5日も続いているという事実。
1日目に回収されたことを知らずに続けた可能性もありますが、知ったうえで続けたなら、話はまるで変わってきます。
それに、この人物像だと19日のレバーが宙に浮いたまま。
処分代を惜しんだ場合
これは、はっきり計算した人です。
処分にかかるお金と、山道を何度も往復する手間を天秤にかけたうえで、山のほうを選んでいます。
「見つからないだろう」という読みも、そこには入っているはずです。
もし本当にそうなら、悪質さでは重い部類に入ります。
うっかりでも思い込みでもなく、損得を考えたうえでの行動だからです。
罰則が拘禁刑まで用意されているのは、まさにこの型を想定してのことでしょう。
餌やりのつもりだった場合
ここがいちばん厄介です。
浮かぶのは、動物のためになると思っている人。
悪いことをしている自覚が、たぶんありません。
法律の重さで言えば、不法投棄という点は他と同じです。
でも、こちらは止まりません。
「捨てた」人は在庫がなくなった時点で終わりますが、「あげている」人はなくなればまた用意します。
実際、16日でいったん止まったあと、19日と20日にまた置かれました。
やめていません。
もう一つ、この説がいちばんつらいのは、やっていることの結果が本人の願いと真逆になるところです。
人の食べ物の味を覚えたクマは、また道路に出てきます。
出てくれば、次に待っているのは駆除です。
助けるつもりで、殺す方向へ押していることになってしまう。
嫌がらせだった場合
浮かぶのは、この場所か、ここを管理している人に思うところがある人です。
毎朝見回りに来ることを知ったうえで、そこへ置く。
悪質さで言うと、これがいちばん質が悪いかもしれません。
片付けさせるために置いているうえに、寄ってくるクマの危険まで人に押しつけているからです。
どの説でも共通する条件
ネットにはもう一つ、毒が入っているのではという説も出ていました。
ここまで説明のつかないことが続けば、そちらへ連想が伸びるのも自然だと思います。
ただ、10日たっても、それを支える材料は何ひとつ出ていません。
人物像はばらばらですが、その人にできることを条件として並べていくと、重なる部分が出てきます。
ネットでいちばん反応を集めていた整理が、よくまとまっていました。
- 大量に焼けるオーブンがある
- 素人でも大量に焼ける
- 鶏肉も扱える
- 材料をまとめて買える
- 捨てても経営が傾かない
- 何度も通えるくらい、現場から遠くない
全部を満たす人は、そう多くありません。
そして、もう一つ重なっていることがあります。
どの人の頭の中にも、クマは出てきません。
どの説だとしてもクマは寄ってくる
8月25日、この件について国が口を開きました。
石原宏高環境相が、記者会見でこう述べています。
「クマが引きつけられれば、利用者の安全に影響する極めて危険な行為だ」
環境省は、県や県警と連携して対応するとしています。
クマを研究している人からも、はっきりした言葉が出ました。
岩手大学の山内貴義准教授は、取材にこう答えています。
「過去に廃棄されたパンを食べたクマがいるという報告がある。8月は山にエサが少なくクマは行動域を広げている時期」
そのうえで、いちばん重い一言が続きます。
「国や自治体が行っている捕獲・電気柵などのクマ対策が、餌付け行為ですべて水の泡状態になるかもしれない」
電気柵も、捕獲も、パン39キロで台無しになりうるということです。
数字を見ると、この心配は大げさではありません。
鳥取県が公開しているクマの出没件数は、8月14日の時点で今年度すでに114件。
今年の4月から6月末までの目撃だけで65件あり、これは前の年の同じ時期のおよそ4倍です。
6月18日には、大山の山頂付近の登山道でもクマが目撃されています。
現場を管理している財団の職員も「6月くらいからクマの目撃もあるので、ここに集まってくるのではと不安に思う」と話していました。
そして、県のページには、こんなお願いが書かれています。
「食材や生ゴミを屋外に置かない・捨てない。適切な管理や処分をしましょう」
初日の16.7キロが見つかったのが、まさにその8月14日でした。
県が「食べ物を外に置かないでください」と呼びかけているその日に、同じ県の国立公園の道端へ、においの強い食べ物が16.7キロ。
パンは、クマにとって都合が良すぎる食べ物です。
やわらかくて、消化しやすくて、遠くからでもにおいでわかる。
ここで、最初の問いに戻ります。
練習で出たパンだったのか、処分代を浮かせたかったのか、動物にあげたかったのか、それとも誰かへの嫌がらせなのか。
動機はどれも別物ですが、クマの鼻には、その違いは届きません。
届くのは、あの道の脇に何日もにおいがあった、という事実だけです。
しかも、寄ってきたクマにとっても、いいことは何もありません。
中国地方のツキノワグマは、環境省が「絶滅のおそれのある地域個体群」に選んでいます。
人里へ降りて騒ぎになれば、待っているのは捕獲か駆除です。
8月20日を最後に、新しい投棄は報じられていません。
止まったのか、それとも場所を変えただけなのか。
環境大臣まで動いたいま、次に置けばもう「謎の食パン」では済みませんね。
