スマホで「JAF」と検索して、出てきた番号に電話をかける。

やっていることは、それだけです。

けれど、電話の先に来たのはJAFではない業者でした

2026年9月9日、東京・足立区で起きた恐喝事件で、男2人が逮捕されたと報じられています。

請求されたのは60万円以上。

断ろうとしたら、今度はキャンセル料の話になったそうです。

 

ネットでは「調べ方が甘い」という声も出ていました。

ただ、この件はそこで片づく話ではないように思います。

JAF自身が、去年から何度も同じ注意を出していたからです。

今回は、足立区で何が起きたのかと、車が止まったときに本当にかけるべき番号について、初めての人にもわかるように整理していきたいと思います。

キャンセルしますと言ったあとで

報道によると、事件が起きたのは2026年5月、東京・足立区でのこと。

車が故障して動かなくなった20代の男性が、スマートフォンでロードサービスを検索して電話をかけたそうです。

やってきたのは、車を積んで運ぶキャリアカーでした。

そこで示された金額が、60万円以上。

男性は「JAF関連の会社だと思ったけれど違うようなので、キャンセルしたい」と伝えたと報じられています。

ところが、話はそこで終わりませんでした。

今度はキャンセル料として高額な金額を請求され、「お前が呼んだんだよな」と言われて、現金30万円を渡してしまったとのこと

 

警視庁が逮捕したのは2人です。

ロードサービス会社役員の秋元心容疑者(24)と、職業不詳の巻島光樹容疑者(26)。

巻島容疑者は恐喝の疑い、秋元容疑者は「レッカー用の車を個人で使用する」などと偽ってレンタカー会社から車を借りていた詐欺の疑いだと報じられています。

その車のレンタル代は、1年近く払っていなかったそうです。

まだ裁判が始まる前の段階なので、2人のことは「容疑者」と書いています。

 

認否についても報道が触れていました。

巻島容疑者は容疑を否認していて、秋元容疑者は黙秘しているとのこと。

つまり、何がどこまで行われたのかは、これから調べられていく段階。

警視庁は、ネットを使った手口から匿名・流動型犯罪グループ、いわゆるトクリュウの関与を調べる方針だとも報じられています。

こちらも「調べる方針」であって、そうだと決まった話ではありません。

 

トクリュウという言葉も、ここ数年で急に見かけるようになったものですよね。

暴力団のように決まった組や名簿があるわけではなく、SNSなどでその都度集められた人がひとつの仕事だけをこなして解散する、という形を指す呼び方です。

看板がないので、外から見てもどこの誰なのか掴めません。

ネットの見出しでは「トクリュウが来た」と書かれていましたが、警察が確認しているところまでで受け止めておくのがよさそうです。

JAFで検索して、JAFに届かない

この件でネットの反応が向かっていたのは、犯人像の話だけではありませんでした。

「どんなサイトだったんだろう」。

引っかかるとしたら、たしかにそこですよね。

実際に「JAF 電話番号」と検索してみた人もいて、JAFではない会社がJAFより上に3件ほど出てきた、という報告も流れていました。

 

では、いま検索するとどうなるのか。

2026年9月13日の時点で実際に試してみました。

「JAF」とだけ打った場合は、JAFの公式サイトがちゃんと最初に出てきます。

ところが「JAF 電話番号」だと、景色が変わりました。

検索結果のいちばん上は「スポンサー」と書かれた広告の枠。

JAFの公式ページが出てくるのは、その下です。

 

見分け方そのものは、実はむずかしくありません。

検索結果の上のほうに、小さく「スポンサー」または「広告」と書かれた行があって、そこから下の何件かが買われた枠です。

ただ、この表示は本当に小さく、色も地味。

ここが、この件のいちばん地味で、いちばん怖いところだと思います。

広告の枠は、お金を払って買う場所です

中身が正しいから上にあるのではなく、その位置を買った人がそこにいる、というだけのこと。

 

もちろん、広告を出している会社が悪いという話ではありません。

きちんとしたロードサービスの会社も、当然そこへ広告を出しているでしょう。

ただ、焦っている人の目には、上にあるものほど正解に見えてしまいます

車が動かない、後ろから別の車が来る、後部座席では子どもが待っている状態。

そういう状態で画面を見たとき、人は上から順に押します。

ネットでも、こんな一言に頷きが集まっていました。

「検索で上の方に出てくるスポンサーのところのリンクは触っちゃダメだよ」

経験でそれを知っている人が、ちゃんといるということですね。

知らなかったのは名前ではなく番号

この事件には、もう一つの顔があります。

被害に遭った男性は、いったい何を知らなかったのでしょうか。

ロードサービスという仕組みは知っていたはずです。

JAFという名前も知っていました。

現場で「JAF関連の会社だと思った」と言っているくらいですから、最後の最後までJAFにたどり着いたつもりでいたわけです。

男性が知らなかったのは、JAFの電話番号のほうでした

 

考えてみると、これはかなり多くの人に当てはまる話。

110番も119番も、たいていの人が何も見ずに言えます。

けれどJAFの番号を、いまそらで言える人がどれくらいいるでしょうか。

僕も、この記事を書くまで言えませんでした。

覚えていなくても、これまで困らなかったからです。

スマホさえあれば、その場で調べて呼べる。

そう思って暮らしてきた人が、たぶんほとんどではないでしょうか。

 

つまりこの件は、検索が下手だった人の話ではありません。

名前は覚えているのに、番号だけが抜け落ちている状態。

そういう仕組みの話なんです。

名前しか持っていない人は、それを番号に変える作業を、その場で誰かに任せることになります。

その「誰か」が、いまは検索エンジンです。

そして検索の最上段は、売り物の場所。

正解の名前を知っていても、番号に変える途中で外れてしまう

今回の30万円は、そのわずかな途中で生まれたものでした。

JAFが去年出していた注意書き

調べていて、いちばん手が止まった事実があります。

この形のトラブルについて、JAFは去年の3月25日に公式サイトで注意喚起を出していました

文面はこうです。

「JAFと思って依頼したら別の事業者で、高額なロードサービス料金を請求された」という連絡が複数件寄せられている、と。

 

しかも、それで終わっていません。

去年の9月12日には、公式アカウントが同じ内容をもう一度出していました。

「JAF」でキーワード検索をすると、JAF以外の事業者が表示される場合がある、という書き方。

検索結果そのものを名指しして注意しているわけです。

 

そして今年の8月7日、三度目が出ています。

言葉が変わっているのが、わかるでしょうか。

去年は「JAF以外の事業者が表示される」でした。

去年とちがって、今年は「JAFを装う業者」です。

 

足立区の件が起きたのは、この8月の投稿より前の2026年5月。

JAFは事件が報じられる前から、同じ場所を何度も指さしていたことになります。

そして今年の9月12日、この件を伝える投稿がネットで広がりました。

去年、JAFが注意を出したのと同じ日付です。

偶然だとは思いますが、同じ注意が三度も出ているという事実だけは、はっきり見えてしまいました。

相談が43件から773件へ

ここまではJAFの話でしたが、この形はロードサービスだけのものではありません。

消費者トラブルの相談を全国から集めている国民生活センターは、2023年7月19日にこんなタイトルの資料を出しています。

「インターネットで依頼したロードサービスのトラブル急増-20歳代や学生は特に注意を!-」

寄せられた相談の件数が、そこに並んでいました。

  • 2018年度 43件
  • 2019年度 70件
  • 2020年度 95件
  • 2021年度 231件
  • 2022年度 773件

2022年度は、前の年度のおよそ3.3倍。

足立区で被害に遭ったのも20代の男性でしたから、この見出しがそのまま当たってしまった形です。

 

相談の中身も具体的に載っていました。

「基本料金2,280円〜」と表示されたサイトに頼んだら、請求は約8万円。

「基本料金2,980円〜」を見て頼んだ40代の女性は、6万6000円の見積もりを出され、断ったら「キャンセル料3万5000円」と言われたそうです。

キャンセル料。

今回の事件と、同じ言葉が出てきます。

 

国民生活センターは2024年4月23日にも、同じ内容の注意喚起を出し直していました。

損害保険会社が集まる日本損害保険協会も、ロードサービス業者との料金トラブルに注意を呼びかけている側のひとつ。

注意を出している側が、こうして何か所にもまたがっているという事実。

それ自体が、この形の相談がどれだけ広い範囲から届いているかを物語っています。

 

そして、この構造が効く場所はロードサービスにかぎりません。

鍵の開錠、水漏れの修理、害虫の駆除。

困った瞬間に初めて業者を探す種類の仕事は、全部ここに当てはまります。

ネットでも「水回りの事とかも検索で上に出るところはクリックしてはダメだよ」という声が出ていました。

同じことを別の場所で経験した人も、ちゃんといます。

スマホに入れておきたい3つの番号

では、どうすればいいのか。

答えは拍子抜けするほど単純で、困る前に登録しておく。

それだけなんです。

困ってから調べるから、検索の順番に頼ることになります

先に持っていれば、順番は関係なくなる。

 

入れておくといいのは3つです。

  • 任意保険のロードサービス(保険証券か保険会社のアプリに載っている。国民生活センターも「まずここへ」と案内している)
  • JAFのロードサービス救援コールは0570-00-8139(短縮ダイヤルは #8139。年中無休24時間)
  • 車を買ったお店やディーラーのサービス窓口(購入したお店でロードサービスが付いていることがあります)

JAFは会員でなくても呼べますが、その場合は作業ごとに料金がかかります。

混み合っているときは会員が優先されるとも書かれているので、そこは頭に入れておきたいところ。

0570から始まるナビダイヤルがIP電話などで使えないときは、地区ごとの一般電話があって、関東は03-5730-0111です。

JAFのスマートフォンアプリなら、GPSで自分の場所を送れるので、ここがどこか説明できない場面でも頼めます。

 

もうひとつ、その場で効く一手を。

国民生活センターは、納得できない請求はその場での支払いをきっぱり断ること、そして頼む前にキャンセル料の有無を確かめておくことをすすめています。

おかしいと思ったら、消費者ホットラインの188へ。

かけると、近くの消費生活センターにつないでもらえます。

 

検索が悪いわけでも、広告が悪いわけでもありません。

ただ、車が止まった瞬間というのは、人の判断がいちばん雑になる時間。

その時間に調べなくて済むように、番号を1件だけ先に入れておく。

信号待ちのついででもできることですし、やっておいて損はないところですね。