子どもを泊まりがけの合宿へ送り出した次の日、スマホに子どもからのメッセージが届いたら、たいていの親は「さみしくなったのかな」と思いますよね。

ところが、佐々木希の8歳の長男が合宿先から送ったボイスメッセージは「もう連絡してこないで」でした。

この一言だけを大きく載せたニュースの見出しがネットを回り、親の過去まで持ち出して面白がる書き込みも出てきています。

でも、子育て情報サイトの記事を最後まで読むと、そこには見出しの印象とはまるで逆の話が書いてありました。

今回は、この一言が本当に親離れだったのか、なぜ逆の意味で広まってしまったのか、そして子どもを送り出す側にできることについて、わかりやすく解説していきたいと思います。

合宿2日目に届いたボイスメッセージ

話が出たのは、2026年10月13日に放送された『夫が寝たあとに』(テレビ朝日系)です。

藤本美貴と横澤夏子がMCを務め、母親の本音を語り合う番組で、この回のゲストが佐々木希でした。

この放送の内容を、子育て情報サイトのマイナビ子育てと、ABEMA TIMESがそれぞれ記事にしています。

「最近子どもの成長を感じた瞬間は?」と聞かれて、佐々木希が挙げたのが長男のサッカーの合宿でした。

夏休みに4泊5日の合宿があり、仲のいい友達を誘ったものの「行きたくない」と断られたとのこと。

それでも長男は「僕は行きたい!あっちで友達作るから大丈夫」と言って出かけ、佐々木希はその姿に「成長したな」と感じたそうです。

ところが合宿の初日、長男から届いたのは「まま」という、ひらがな2文字だけのメッセージでした。

そして翌日、ボイスメッセージで届いたのが「もう連絡してこないで」です。

帰ってきた長男に理由を聞くと、こんな答えが返ってきたといいます。

「携帯を見るだけで、パパとママを思い出しちゃうから、そういうメールしちゃった」

最初の2日間はホームシックで泣いていたことも、このとき佐々木希は知ったそうです。

スタジオでは藤本美貴と横澤夏子が「あ〜!かわいい〜!」「溢れ出てきちゃったんだね」と声をあげていました。

3日目からは家族と連絡を取らずに過ごし、長男は無事に帰ってきたとのこと。

 

つまり「もう連絡してこないで」は、親離れの言葉でも、親を嫌がる言葉でもありませんでした。

携帯を見ると会いたくなってしまうから、自分で目をそらそうとした言葉だったんです。

 

ただ、見出しにはこの理由が入っていません。

本文を読まずに見出しの一言だけを受け取った人には、8歳の子が親を突き放した話に見えてしまいました。

見出しだけを見て思い込んで、本文を開いたら話がまるで違った、という経験は誰にでもありますよね。

そこへ、2020年に報じられた父親の不倫騒動を持ち出して「そりゃそうなるでしょ」と面白がる書き込みが乗りました。

理由が書かれていないぶん、読む人がそれぞれの想像で埋めてしまったんですね。

うーん、その書き込みで笑われた8歳は、合宿先でホームシックと闘っていただけなんですけどね。

 

もっとも、記事をちゃんと読んだ人は、すぐに気づいていました。

  • 「この記事の内容は現地で子供がホームシックに耐えようとしてただけの話じゃね?」
  • 「寂しくなるからって読めないの?」
  • 「これ家族が好き過ぎる話ですよね」

面白がる書き込みのすぐ近くに、こうした声も並んでいたんです。

 

8歳が自分で見つけた寂しさの止め方

携帯を見ると家族を思い出してつらいから、連絡を断つ。

8歳の思いつきに見えるこのやり方は、実はアメリカのキャンプの現場が、親たちにずっと頼んできたこととそっくりなんです。

アメリカのサマーキャンプ「キーウェイディン」は、保護者向けの案内に「最初の2週間は電話なし」という決まりを書いています。

子どもには残酷に思えても、この決まりのおかげで、キャンプになじむまでの時間がちゃんと短くなるのだそうです。

同じ案内には、笑顔で楽しそうにしていた子が親からの電話を受けて、数分後に泣きながら戻ってくる場面を何度も見てきた、とも書かれていました。

親の声を聞いた途端に、こらえていた寂しさがあふれてしまうんですね。

 

ホームシックそのものは、ほとんどの子が通る道です。

2007年にアメリカの小児科の専門誌に載った報告では、サマーキャンプに来る子の9割が、多かれ少なかれホームシックになるとされています。

防ぐ手立てとして挙げられているのが、親が子ども自身に「行く」と決めさせて、自分で選んだという実感を持たせることでした。

長男は、友達が来ないと分かっていても「僕は行きたい」と自分で決めて出かけています。

そして、つらくなったときの逃げ道も、自分で見つけていました。

 

写真家の幡野広志が、出張に息子のおもちゃを持たせてもらったときのことを書いた投稿があります。

息子が持たせてくれたおもちゃをホテルの椅子に置いたら、かえってホームシックが強まった、という話です。

大人でも、大切な人を思い出させるものがそばにあると、かえって気持ちが引っぱられてしまいます。

8歳の長男にとって、そのおもちゃにあたるのが手元の携帯でした。

しかも携帯は、そこにあるだけで、いつでも家族とつながれてしまう道具です。

「まま」と2文字だけ送ったのも、その携帯からでした。

だから翌日、今度は自分から連絡を止めてもらうほうを選んだのでしょう。

寂しさに負けないための、8歳なりの作戦だったように見えます。

連絡を断たれた親にできること

では、わが子から「もう連絡してこないで」と言われたら、親はどうすればいいのでしょうか。

送り出した側の寂しさも本物なので、きっと胸がざわつきますよね。

佐々木希の長男の場合、その一言はむしろ、向こうで踏ん張っている合図でした。

よその子が同じ理由とはかぎりませんが、突き放されたと決めつける前に、そういう可能性もあると知っておくだけで、受け止め方は変わってきます。

 

電話の向こうの子どもの泣き声は、離れている親にはこたえるものです。

子どもを預けて出かけた日のことを書いた、こんな投稿もあります。

泣き声を聞かされると「すぐ帰らなきゃ」と思ってしまうのが、親心というものです。

キーウェイディンの案内は、親にも慣れる時間が要ると書いています。

敏感な子は親の寂しさを感じ取って、自分だけ楽しんでいることに後ろめたさを覚えることもあるそうです。

だから親から伝えたいのは「つらいよね、でもあなたならできる」という気持ちだ、というのが案内の答えでした。

最初の数日に子どもが書く手紙は暗い内容になりがちでも、それが家に届くころには、たいてい状況が変わっている、という一文もあります。

長男の「もう連絡してこないで」も、ちょうどこの最初の数日に出た言葉でした。

 

先ほどの専門誌の報告にも、送り出す前に親ができることがいくつか並んでいます。

  • 寂しくなるのは普通のことだと、出発前に話しておく
  • 親類の家に2〜3日泊まるなど、家を離れる練習をしておく
  • 「大丈夫かな」「あなたがいないとどうしよう」と、親の不安を口にしない
  • 「つらかったら迎えに行くからね」という約束をしない
  • 電話の代わりに、手紙を書く練習をしておく
  • 寂しい気持ちをひとりで抱え込まないように伝えておく

迎えに行く約束が勧められないのは、優しさのつもりの一言でも、子どもが「親は自分ならやれると思っていない」と受け取ってしまうからだそうです。

3日目からひとりで乗り切って帰ってきた長男の姿に、佐々木希はあらためて成長を感じたと話していました。

 

林間学校や修学旅行、部活の合宿で、子どもが家を離れる日はこれからも何度も来ます。

スマホが静かな夜は、送り出した親のほうがよほどさみしいもの。

それでも、その静けさの向こうで、子どもが自分なりに踏ん張っているのかもしれませんね。