「背中はめっちゃ汗かいてます」

2026年10月12日、俳優の鈴鹿央士がカレンダーの発売イベントで口にしたこの一言は、スポーツ紙やテレビ局のニュースにそろって並びました。

ところが、主なスポーツ紙やテレビ局の7社を見ても、その2日前にXで出回った暴露に触れた記事は1本もありません。

応援してきた人にとっては、本当なのかどうか分からないまま過ごした、落ち着かない3日間だったと思います。

それなのに、ニュースには暴露のことが1行も出てこないんです。

「マスコミがスルーしてる」「大手の事務所だからでは」と感じた人も、きっと多いですよね。

今回は鈴鹿央士の件をきっかけに、デスドルのような暴露系アカウントの投稿を、テレビや新聞がすぐには書けない理由を、わかりやすく解説していきたいと思います。

暴露の2日後に笑顔で立った取材会

鈴鹿央士は2000年生まれの26歳で、2019年の映画『蜜蜂と遠雷』でデビューし、ドラマ『silent』などに出てきた俳優です。

いまは主演映画『藁にもすがる獣たち』が公開されています。

その名前を、暴露系のXアカウント「DEATHDOL NOTE(デスドルノート)」、通称デスドルが出したのは、10月10日の午後でした。

投稿に書かれていたのは、交際していたとされる女性の妊娠をめぐる対応や、別の女性との関係についての話です。

LINEやインスタグラムのやり取りだという画像も添えられていて、フォロワーが120万人を超えるアカウントなので、ネットでは一気に広がりました。

翌11日の夕方には「第二弾」とする投稿が続いています。

ただ、どちらの投稿にも、誰から届いた話で、どう確かめたのかは書かれていません。

画像についても、「鈴鹿央士本人の公式アカウントでそんな話をするだろうか」「作り物では」という声が、出た直後から上がっていました。

その本人は、Xでは10月1日の映画の宣伝を最後に、何も書いていない状態です。

所属事務所のフォスターからの発表も、報道を見るかぎり、12日の午後の時点では出ていません。

本人も事務所も、認めてもいなければ否定もしていない、というのがいまの状態。

 

そんな中で迎えたのが、12日の東京・渋谷でのカレンダー発売記念イベントでした。

会場はHMV&BOOKS SHIBUYAで、カレンダーを本人から手渡しで受け取り、グータッチをする会です。

あわせて報道陣向けの取材会も開かれています。

9月2日の時点で、カレンダーを10月3日に発売することと、記念イベントを10月4日に大阪・梅田、12日に東京・渋谷で開くことが報じられていました。

大阪の回は、暴露が出る前にもう終わっています。

渋谷の回は、1か月以上前から決まっていた予定の2回目。

その取材会で、鈴鹿央士は笑顔でカレンダーの話をしていたと報じられています。

ファンと会う時間については「顔を見て名前も覚えたりできる。そういう時間がすごく好き」と話していたそうです。

汗の話は載っても暴露は載らない

では、取材会のニュースには何が書かれていたのでしょうか。

中日スポーツ、日刊スポーツ、スポーツ報知、デイリースポーツ、スポニチ、テレビ朝日、オリコンの7社の記事に並んでいたのは、だいたい次のような話でした。

  • 役作りの増量とサウナで汗かきになった話
  • カレンダーの出来は「150点」
  • 飾ってほしい場所は「靴箱の中」や「トイレットペーパー入れ」
  • ファンと直接話せる時間が好きで「逆にパワーをもらえる」

7社のどの記事にも、暴露という言葉もデスドルという名前も出てきません。

暴露について質問が出たのかどうかも、記事からは読み取れないまま。

 

これだけそろうと「示し合わせて触れないようにしているのでは」と疑いたくなりますよね。

大手の事務所だから遠慮しているのでは、という見方がネットに出るのも無理はないと思います。

そこは、外からは確かめようがありません。

ただ、それとは別に、新聞やテレビには「書けない理由」がはっきりあります。

 

それが、名誉毀損という決まりです。

刑法230条は、人前で事実を挙げて人の評判を傷つけたら、その事実が本当かどうかに関係なく罪になると定めています。

例外は、世の中のためになる話で、しかも本当だと証明できたときくらい。

芸能人の私生活がどこまで「世の中のためになる話」に入るのかも、簡単には言い切れません。

最高裁も1968年の決定で、「〜という噂がある」という書き方をしても、証明しなければいけないのは噂の中身が本当かどうかだと判断しています。

今回の暴露には、出どころの説明も、確かめ方の説明もありません。

もし書いた中身が違っていたら、名前を出された側から訴えられるのは、書いた新聞社やテレビ局になります。

新聞やテレビから見れば、まだ書くための材料がそろっていない段階です。

 

実際、ネットの媒体の中には今回の件を取り上げたところもあります。

「coki」は10日の記事で暴露の中身を紹介しましたが、見出しの最後には「証拠に捏造指摘、真偽は不明」と付けていました。

取り上げた媒体でさえ、真偽は分からないと書き添えていたということ。

暴露する側が自分で言った強み

新聞やテレビと暴露アカウントの違いを、暴露をしている側がいちばんはっきり言葉にしていました。

デスドルの創設者である磨童まさをは、2026年2月23日に配信された東京新聞の記事で、取材にこう答えています。

「完璧ではない状態で出せるのが逆にうちのメリットだ。新聞やテレビでは扱えない動画を公開することで被害者を救える」

出典:東京新聞(2026年2月23日配信)

これは、デスドルがいじめの動画を公開しはじめたことについて話した言葉で、芸能人の暴露について語ったものではありません。

それでも、確かめきらないまま出せることを「うちのメリット」と考えているのは、創設者自身です。

 

ただ、確かめきらないまま出せる分、外れることもあります。

同じ記事によると、1月上旬に出した福井県の高校の動画は、いじめとして出されたものの、実際にはいじめではなかったとのこと。

3月には、石破茂前首相と「対談した」という発信について、前首相の事務所が店で居合わせただけだと説明し、創設者が投稿を消して訂正しました。

その2日後には「事実確認や裏取りが不十分なまま発信してしまった」として、活動の自粛まで発表しています。

7月20日には、SixTONESの京本大我についての投稿に添えた写真が、まったくの別人だと指摘され、投稿はすぐに消されていて、cokiの記事によれば、その件について説明や訂正の投稿は出ていなかったとのこと。

外れたときに責任を問われるのは、出した側です。

同じ東京新聞の記事には、創設者がこれまでに開示請求や損害賠償請求の訴訟を複数起こされてきたことも書かれています。

2025年11月には、弁護士から損害賠償を求める通知が届いたとして、創設者が自分でその書面の写真を公開し、Xでの発信をいったん止めると明かしたこともありました。

もちろん、2025年10月にYouTuberのシバターについて出した投稿のように、本人が2日後に動画で認めた例も。

当たることも、外れることもあるのが、暴露という出し方。

だからこそ、新聞やテレビは暴露の投稿をそのまま追いかけるわけにはいかないんです。

暴露がニュースに変わる日

それでも、暴露がニュースになることはあります。

デスドルが出した話のうち、ニュースになった日は、どれも同じ形。

  • シバターの件は、本人が動画で認めた日
  • 栃木県の高校のいじめ動画は、県教委が会見で謝罪し、いじめの重大事態と認め、県警が加害生徒を書類送検したとき
  • 石破前首相の件は、前首相の事務所が説明した日

どれも、本人や事務所、学校、警察といった、説明する責任のある誰かが口を開いた日でした。

本人が認めれば本人の言葉として、警察が動けば警察の発表として、書く側は出どころをはっきり示して書けるようになります。

新聞やテレビが書ける材料がそろうのは、その誰かの言葉が出たとき。

週刊誌が独自に取材して、本人や事務所に確かめた記事を出す場合も同じです。

 

鈴鹿央士の件は、いまのところ、そのどれも起きていません。

本人も事務所も黙っていて、取材して確かめた記事もまだ出ていない状態です。

ですから、この件がどう動くのかを知りたいときに見る場所は、暴露のアカウントではありません。

  • 所属事務所の公式サイトのお知らせ欄
  • 鈴鹿央士本人のXやインスタグラム
  • 「事務所に問い合わせた」と書いてある週刊誌やスポーツ紙の記事

暴露の投稿がいくつ重なっても、確かめた量が増えたことにはならないんですよね。

 

マスコミが黙っているのは、何かを隠しているからとはかぎりません。

少なくともいまの新聞やテレビの手元には、報じるための確かめがまだ届いていないんです。

イベントに予定どおり出たことも、それだけでは本当か嘘かの答えになりません。

書かれたことが本当なら、いちばんつらい思いをしているのは相手とされる女性です。

本当でないなら、映画の公開中に、身に覚えのない話で名前が広まってしまっています。

どちらにしても、答えが出るのは本人か事務所が口を開いた日か、誰かが取材して確かめた記事が出た日。

それまでは、暴露の投稿を追いかけるより、事務所のお知らせ欄と本人のSNSを見ておけば十分ですね。