週刊誌が第3弾でぶつけてきたのは、22歳の若手選手がセクシー女優と顔を寄せ合っている場面でした。
テキーラの入ったショットグラスの酒を口へ注がれ、二人の顔がキス寸前まで近づいた、と報じられています。
ところが記事が出たあと、カープファンが指さしたのは、まったく別の場所だったんです。
同じ場面の隣で歌っていた、矢野雅哉の手元。
1月の逮捕から数えて、もう半年以上が過ぎました。
新しい報道は次々に出てくるのに、この騒動だけは一歩も終わりに近づいていません。
逮捕された元選手が語った「6人」
ここまで長引くと、そもそも何がどうなっている話なのか、途中から見た人にはもう追えないと思います。
登場人物も多いですし、報道も小出しに続いてきました。
なので、まずは順番に並べ直してみましょう。
始まりは2025年の年末でした。
広島東洋カープの内野手だった羽月隆太郎が、広島市内の自宅でいわゆるゾンビたばこを吸引した疑いを持たれ、2026年1月に逮捕されています。
本人は最初、疑いを否定していたそうです。
のちに罪を認めて球団との契約は解かれ、判決は拘禁刑1年・執行猶予3年でした。
エトミデートという麻酔薬
ゾンビたばこと呼ばれているのは、エトミデートという成分を電子たばこのような器具で吸うものです。
もともとは手術の麻酔などに使われている薬なんです。
そして厄介なのは、この成分が指定薬物になったのが2025年5月26日、つまりごく最近だということ。
規制の線が引かれたのが最近だという事実は、このあと何度も効いてきます。
「40人抱えている」という豪語
羽月はネットの生配信で、自分を含めて6人が同じ人物から買っていた、と話したと報じられました。
その「同じ人物」とされているのが、滝口涼介被告です。
エトミデートを羽月へ渡したとして起訴されている人物です。
その滝口被告は知人に、抱えている選手は広島に限らず、プロ野球全体で40人ほどいる——そんな趣旨の自慢をしていたと伝えられています。
本業は、報道によれば有名人や選手に女性を引き合わせる「アテンダー」。
選手1人から参加費10万円を集め、そこから女性への手当・場所代・酒代を引いた残りが自分の収入になる仕組みで、セクシー女優やいわゆる港区女子を呼んだ飲み会は、界隈で「エロ飲み」と呼ばれていたそうです。
選手と一緒に写った写真や動画を「エサ」にして、次の女性を呼び込んでいたともいわれています。
人と人のつながりそのものを商品にしているような話で、ここまで来るともう野球の周辺ですらありません。
ただし6人という数字も、40人という数字も、いまのところ出どころは当事者たちの口だけです。
裏付けの取れた人数として、どこかから発表されたものではありません。
それでも数字のほうが先に走り出して、いまも走り続けています。
7月に相次いだ抹消と家宅捜索
年が明けてからしばらく静かだったこの件が、一気に動いたのが2026年の7月でした。
カープファンにとっては、朝にスマホを開くのが怖い2週間だったはずです。
まず、週刊誌が滝口被告と選手たちの写真を公開しました。
写っていたと報じられたのは、矢野雅哉、小園海斗、田村俊介の3人。
ただ、その集合写真が撮られたのは2025年5月2日とされていて、エトミデートが指定薬物になる24日前にあたります。
そして3人は、検査で陰性だったとのこと。
写真から家宅捜索までの2週間
文章で追うと前後関係がこんがらがるので、7月に起きたことだけ並べます。
- 週刊誌が滝口被告と矢野・小園・田村の写真を公開
- 撮影は2025年5月2日。指定薬物になる24日前
- 3人は検査で陰性と報道
- 7月17日、矢野が一軍の出場選手登録を抹消
- 第2弾報道で、矢野と滝口被告の親密なLINEが表に出る
- 7月30日、広島県警本部が矢野と前川誠太の居宅等を捜索
- 同日、球団が発表し前川も登録抹消。捜索容疑は明らかにされないまま
ここで一つ、はっきりさせておきたいことがあります。
家宅捜索は「捜索を受けた」という事実であって、有罪が決まったという意味ではありません。
登録の抹消も球団の判断であって、犯罪が確認されたから下された処分ではないんです。
矢野も前川も、小園も田村も、誰ひとり逮捕されていませんし、薬物を使ったと確認されてもいません。
ここを混ぜてしまうと、報道を読む目そのものが狂います。
前日まで練習していた前川誠太
前川誠太は23歳、2003年の生まれです。
捜索が入る前日の29日には、まだマツダスタジアムで一軍の全体練習に加わっていました。
敦賀気比高から育成ドラフト2位で入ったのが2021年。
途中で一度は戦力外を告げられながら、育成契約でしがみつき、2025年の夏にやっと支配下へ返り咲いた選手です。
一軍での通算は53試合、打率は1割台にとどまっています。
這い上がってくる途中で名前が出てしまった格好で、うーん、と言葉に詰まります。
一方の矢野雅哉は、亜細亜大から2021年ドラフト6位で入団し、遊撃の堅実な守備を持ち味に2024年のゴールデングラブ賞を獲った選手。
守備でチームを支えてきた顔が、いまは別の理由で毎週のように紙面に出ています。
キスより先に指さされた場所
そして8月に入り、第3弾が出ました。
2024年冬ごろ、六本木のシーシャバーで撮られたという動画です。
マイクを握った矢野雅哉が一青窈の『ハナミズキ』を歌い上げる横で、田村俊介はセクシー女優のA子さんと並んで座っていたとのこと。
テキーラの入ったショットグラスの酒を口へ注がれ、二人の顔がキス寸前まで近づいた、と記事は描写しています。
「いいな~、いいな~」とはやし立てる声の主は、滝口被告だったと報じられました。
ただし、この動画そのものは誌面にもネットにも出ていないとのこと。
読者が確かめられるのは、記者が書いた描写だけということになります。
歌っている選手と、女性と肩を並べている選手が、同じ画面に収まっていたわけです。
この「同じ画面」という点が、あとで効いてきます。
動画の時期は規制より前
ここは誤解が生まれやすいところなので、線を引いておきます。
動画が撮られたとされる2024年冬は、エトミデートが指定薬物になる前の時期です。
そして8月3日を迎えた時点でも、田村の側に捜査が及んだという話は出てきていませんし、球団が何らかの処分を下したという発表もありません。
薬物がらみの嫌疑がかかっているわけでもありません。
つまり第3弾で新しく報じられたのは、法律に触れる行為ではなく、飲み会での距離の近さでした。
ファンが見ていたのは手元
で、この第3弾を受けたファンの反応が、これがなかなか強烈でして。
キス寸前という、週刊誌がいちばん強く押し出したはずの場面が、驚くほど流されたんです。
代わりに視線が集中したのは、同じ画面に写り込んでいた矢野雅哉の手元にあるもの。
「あれはゾンビたばこではないのか」と指摘する声が、かなりの数出ています。
念のために書いておくと、これはあくまでファンがそう見ている、という反応です。
それが何であるかを確かめた報道はありませんし、外から決めつけられる段階の話でもありません。
この矢野雅哉が手に持ってるのゾンタバ? pic.twitter.com/EY9eUleipg
— ポケカニート (@pokeneets) 2026年8月3日
とはいえ、視線がそちらへ一斉に動いたこと自体は、この騒動の性格をよく表しています。
週刊誌がいちばん高い値札を付けた場面が、読者にはほとんど素通りされた。
これはなかなか珍しい光景です。
田村より矢野持ってるの電子じゃなくてゾンタバやない?w
田村どうでもええてw https://t.co/8AY98Xi1en— bega🐎🍭🍁🎏🍼🚤 (@bega286112) 2026年8月3日
週刊誌が売る話とファンが待つ証拠
情報だけは半年かけて積み上がっているのに、なぜ決着だけが一歩も進まないのか?
理由はおそらく、売られているものと求められているものが、最初から食い違っているからです。
週刊誌が号を重ねて出してきたのは、一貫して「人」の話でした。
誰が誰と飲み、誰と写真に写り、誰とLINEをしていたか。
関係の濃さは写真になりますし、動画にもなりますし、読み物としても強い。
商品としては、これで何も間違っていないわけです。
一方でカープファンが半年ずっと見たがっているのは「物」のほうなんです。
薬物そのものが、いつ、誰の手にあったのか。
その一点だけが、疑いを晴らすことも、逆に確定させることもできます。
ところが物は絵になりにくいうえに、確かめる仕事は捜査機関のもので、週刊誌の得意分野ではありません。
これは週刊誌を責めれば済む話でもないと思います。
取材の手足で届く範囲は、どうしても人の動きと関係のほうまででしょう。
誰かの手に何があったのかを立証する道具は、もともと手元にないんですね。
売り物と需要が噛み合わないまま、号だけが重なっている状態です。
返ってきた答案に、名前の書き方ばかり赤ペンで直されていて、肝心の点数の欄だけがいつまでも空白のまま。
書き込みは毎回増えるのに、知りたい一点だけが埋まらないという意味では、今回もこれと同じ形です。
だから第3弾でキス寸前の場面を見せられても、ファンの目は同じ画面の中の手元へ滑っていった。
見せられるものと、見たいものが、半年ずっとすれ違い続けてきた結果なんですね。
検査で分かること、分からないこと
では、みんなが待っている「物」の側は、いまどこまで分かっているのか。
ここも整理しておきます。
NPBのドーピング検査は、試合の途中に抽選で選ばれた選手に対して行われるものです。
そしてエトミデートは、その検査が探している対象ではありません。
シーズン中の検査をいくら通っていても、この件については何の証明にもならないというわけです。
さらに薬物検査には、さかのぼれる期間というものがあります。
いつ採ったかで結果は変わってくる。
報じられている陰性という結果を軽く扱うつもりはありませんが、それだけで全部に決着がついたと言えるほど万能な検査でもありません。
白とも黒とも言えない灰色の時間が、そのまま半年続いています。
オーナーの涙とチームの現在地
球団側の言葉は、すでに出そろっています。
松田オーナーは涙を見せ、「非常に申し訳ない気持ちでいっぱい」「頭痛い」と語りました。
新井監督は「本当に申し訳ない限り」、鈴木球団本部長は「一連の流れだと思う」。
8月3日には、カープOBの言葉として「ゾンビたばこの件はもちろん影響している」と伝えたスポーツ誌の記事も出て、主力の流出危機と合わせてチームの現状が語られています。
騒動がグラウンドの側にも影を落としている、ということですね。
仮に矢野と前川のゾンタバが事実だとすると、羽月よりも処分を重くしないといかん
球団のヒアリングに虚偽の回答をして一度発表した内容を覆すことになったとしたら、契約解除だけでなく制裁金等の処分もしないと釣り合わない— ふか (@fuka415) 2026年7月30日
広島だけの話で終わるのか
この問題を、一球団の不祥事として片づけてよいのか。
それともNPBと社会の側の当事者意識が問われる話なのか。
そう論じる専門家の記事も出てきました。
滝口被告が「40人抱えている」と豪語していたと報じられている以上、広島だけを見ていて済むのかどうかは、確かに気になるところです。
そして、毎週の続報を追いかけている側もまた、半年ずっと同じすれ違いの中にいます。
読みたかったのは決着で、届くのは新しい人間関係の写真。
それでも次の号をめくってしまうのは、たぶん、結末のほうが知りたいからなんでしょう。
矢野雅哉がまたショートの守備位置に戻る日が来るのか、前川誠太が一軍の練習に合流し直せるのか。
いまはまだそのどちらも決まっていなので、続報を待ちたいところですね。

