旅先のホテルで目が覚めて、スマホを見たら9時20分。

二度寝しようか迷って、そこでチェックアウトが10時だったことを思い出す。

歯みがき、着替え、散らかった荷物、ベッドの上の充電ケーブル。

40分でこれを全部片づけるのかと思うと、せっかくの旅行の朝が、急に出勤前みたいな顔になりますよね。

 

ネットでもいま、ホテルの10時チェックアウトは早すぎる、せめて昼まで寝かせてほしいという声が広がっています。

ただ、その10時が誰の決めた時刻なのかは、意外と知られていません。

今回は、ホテルのチェックアウトがなぜ10時なのかと、昼まで部屋にいたい人がいまからできることを、わかりやすく解説していきたいと思います。


朝だけ追い立てられる旅先のホテル

10時がしんどいという声は、前からありました。

今年の春には、こんな投稿も。

「はよ起きろ、飯食え、荷物まとめろ、歯磨け、退室だ」という一文には、思わず笑ってしまった人もいるかもしれません。

朝食が7時から9時までで、食べたらすぐにチェックアウトが来るので、旅行中ずっと眠いまま宿を出ることになる、という声もありました。

ライブの遠征でホテルを取った人からは、前の晩にカラオケで夜ふかしした翌朝に10時は無理だ、という嘆きも並んでいます。

朝のローカル番組をぼんやり眺めていたら、あっという間に10時になっている、という人も。

 

温泉宿なら、朝風呂に入って朝食を食べて10時に出るのは、なかなかの駆け足です。

ビジネスホテルでも1万円くらいするのに、10時きっかりに追い出されるのはどうなのか、という声もあります。

お金を払って泊まっているのに、朝だけ追い立てられる。

そう感じるのは、ごく自然な感覚だと思います。

 

いっぽうで、ネットには別の声もありました。

旅行先では朝早く起きて観光に出たいので、10時で困ったことはないという人。

昼まで寝たい人は追加料金を払えばいい、と短く返す人もいます。

チェックアウトが遅くなったら嬉しいよね、で終わる話なのに、なぜか言い合いになっているのを見て、首をかしげている人もいました。

10時が早いかどうかは、たしかに人によって違います。

それでも、朝がつらい人が「どうして10時なんだろう」と思うのは、まっとうな疑問ですよね。

そもそも10時じゃないホテルってどこにあるの、と聞き返している人もいました。

11時や12時まで部屋にいられる宿があること自体、まだあまり知られていないのかもしれません。


12時台はまだ清掃の真っ最中

では、ホテルはどうして10時に部屋を空けてほしいのでしょうか。

理由としてまず出てくるのは、次のお客さんを迎えるための清掃です。

ホテルの部屋は、チェックアウトしたあとに清掃が入り、最後に確認をして、はじめて次の人に売れる状態になります。

ホテルで働いている人の投稿によると、10時にチェックアウトが済んだ場合でも、12時台はまだ清掃中で、ほぼ終わるのは15時台だそうです。

清掃は、何部屋も同時に進めているのだとか。

チェックインが15時からのホテルなら、10時に空いた部屋も、15時まではずっと清掃と確認に使われています。

 

清掃のアルバイトをしていたという人からは、30部屋ほどあるホテルに、自分以外は3人しかいなかったという声もありました。

髪の毛1本に神経を使う仕事だ、と書いている人もいます。

そう聞くと、10時はホテルの意地悪で決まった時刻ではなさそうです。

 

12時チェックアウトにしたら、15時のチェックインまで3時間もないけれど、その間の準備はどうするのか、と問い返す人もいました。

いっぽうで、15時ぴったりに来る人はそう多くないのだから、チェックインを15時・18時・21時の3つに分けて、チェックアウトもそれに合わせてずらしてほしい、という提案もあります。

そのやり方をすでに取り入れている宿もある、と書き添えられていました。

早く入りたい人と、遅くまでいたい人。

どちらの希望も、昼をはさんだ同じ数時間に集まってくるんです。


国のひな形では10時は空欄だった

10時という時刻は、どこかで決められているのでしょうか。

ホテルと宿泊客のあいだの約束ごとは、宿泊約款という形で、それぞれのホテルが定めています。

国の登録制度に入っているホテルや旅館(すべてのホテルではありません)は、国際観光ホテル整備法という法律で、この約款を観光庁長官に届け出て、公示しなければなりません。

その約款の下書きにあたるのが、観光庁が示している「モデル宿泊約款」です。

そのモデル宿泊約款で、客室を使える時間を決めているのが第9条。

「宿泊客が当ホテル(館)の客室を使用できる時間は、午後 時から翌朝 時までとします。」

数字が入るはずの場所は、空欄になっています。

ひな形には、10時という時刻がどこにも書かれていないんです。

その空欄をどう埋めるかは宿しだいで、JRホテルメンバーズの案内を見ても、ふだんのチェックアウトが11時の施設と、正午の施設が並んでいます。

10時は国が決めた時刻ではなく、宿が自分の事情で書き込んだ数字でした。

 

実際に、その数字を自分で書き換えた宿もあります。

長野で旅館を営んでいる人が、チェックアウトの時刻を変えた話を書いていました。

その旅館では、10時にチェックアウトのお客さんがフロントに集中して、混み合うそうです。

その時間だけスタッフを増やしたくても、ほかの時間は手があいてしまうので、増やすわけにもいかなくて。

そこで、スイートに泊まるお客さんだけ、チェックアウトを10時30分に変えてみたとのこと。

清掃はチェックアウトが済んだ部屋から順に始めればいいので、とくに負担は増えず、運用はむしろよくなったと書かれていました。

10時にそろえると、今度はフロントが混む。

チェックアウトの時刻は、清掃だけでなくフロントの人手ともつながっているんです。

そして宿の側が、自分の判断で30分ずらすこともできました。

 

モデル宿泊約款の第9条は、連泊のときの扱いも決めていて、連続して泊まる場合は、到着日と出発日を除いて終日部屋を使えるとしています。

連泊の中日なら、昼まで寝ていても誰にも追い出されない、というわけですね。

ただし、泊まっている途中で「もう1泊したい」と言い出したときは、第2条で、その時点で新しい宿泊の申し込みがあったものとして扱うと決められています。

空いている部屋があるかどうか次第なので、昼までゆっくりしたい日がわかっているなら、最初から連泊で予約しておくのが近道です。

 

さらに第9条の2項には、決まった時間を超えて部屋を使いたいという申し出に、ホテルが応じることがあると書かれています。

そのときの追加料金の目安も、ひな形の中に並んでいて。

  • 超過3時間までは、室料金の3分の1
  • 超過6時間までは、室料金の2分の1
  • 超過6時間以上は、室料金の全額

室料金のかわりに「室料相当額」で計算する書き方も用意されていて、その額は基本宿泊料の70%とのこと。

10時のホテルで正午まで残るなら、いちばん上の段です。

もちろん、これはあくまで下書きなので、実際の料金はホテルごとに違います。

10時の先に、延ばす人のための料金まで用意されていました。


無料の会員登録で12時まで延びる

昼まで部屋にいたい人にも、打てる手はいくつかあります。

いちばん手軽なのは、ホテルチェーンの会員になることです。

JRホテルメンバーズは入会金と年会費が無料で、チェックインのときに申し出れば、チェックアウトを正午まで延ばしてもらえます。

リッチモンドホテルの会員組織「リッチモンドクラブ」も無料で、ふだんは1,000円かかる12時までの延長が、無料になるとのこと。

 

アパホテルは、会員のランクごとにチェックアウトの時刻を分けています。

会員ではない人は10時、いちばん下のランクのレギュラー会員は11時。

入会金も年会費もかからないので、名前を登録するだけで、1時間延びます。

アパの場合、12時まで延ばすには、公式サイトかアプリで予約したうえで、クレジットカードのエポスカードを会員情報に登録しておく必要があるそうです。

ネットでは「神」と喜ぶ声もありました。

同じホテル、同じ部屋でも、予約の仕方ひとつで朝が2時間変わるんですね。

12時チェックアウトの宿に泊まったら、2時間違うだけでこんなに楽なのかと驚いた、朝ゆっくり温泉にも入れた、という人もいました。

 

数年前に、無料の会員でもチェックアウトが12時になるチェーンをまとめていた人の投稿では、東急ホテルズやリソルホテルの会員組織も挙がっています。

時間がたつと中身が変わることもあるので、使う前に各ホテルの公式サイトで、いまの条件を見ておくと安心です。

予約の前に、そのプランが対象になっているかを確かめておきましょう。

 

会員特典が無いホテルでも、方法はあります。

  • 予約のときに電話で相談して、延長料金を払う
  • はじめから連泊で予約する
  • 公式サイトの「宿泊約款」のページで、延長料金を確かめる(置いていないホテルもある)
  • チェックアウトが最初から11時や12時の宿を選ぶ

上の2つは、ホテルのコンサルタントを名乗る人も、予約の段階でやってほしいとすすめていました。

どの特典にも、予約や空室の状況しだいで使えないことがあるという断りが付いているので、当日の朝に頼むより、予約の段階で決めておくほうが確実です。

 

10時は早すぎる、というあの声は、わがままでも何でもありません。

ただ、その10時は、何も選ばずに予約したときの時刻です。

次の旅行では、宿を予約する前に、会員登録の画面をひとつだけのぞいてみてくださいね。