赤ちゃんを誰かに預けて、1時間だけでも眠りたいと思ったことはありませんか。

アンガールズが毎週木曜に配信しているニッポン放送のポッドキャスト『アンガールズのジャンピン』で、そんな気持ちにまっすぐ届くやりとりがありました。

ポッドキャストを聴いた人がネットで紹介したところによると、田中卓志が、子どもが5か月になって自分も50歳で疲れがたまると打ち明けたそうです。

奥さんの前では疲れた態度を取れず、夫婦の関係もあまりよくない、とも話したとのこと。

すると相方の山根良顕が、ボケるでもなく「俺が赤ちゃん預かるよ」とさらりと返した、というのです。

この場面はネットで広く読まれ、この人になら安心して預けられる、という声がたくさん集まりました。

 

ただ、その中には、自分もいつも同じことを言っているのに誰も預けてくれない、とこぼす人もいたんですよね。

同じ「預かるよ」でも、届く言葉と、届かない言葉があるようなんです。

今回は、なぜ山根になら安心して預けられると思えるのかと、家族以外に赤ちゃんを安心して預けられる場所について、わかりやすく解説していきたいと思います。

「すくすく子育て」の司会を3年務めた山根

相方の弱音に、冗談で逃げずに手を差し出す。

それだけで胸が熱くなった人は多かったようで、「やばい泣く」とまで書いている人もいました。

 

では、聴いた人たちは、あの一言のどこに心を動かされたのでしょうか。

この場面を紹介した投稿への反応の中でも、多くの共感を集めていたのが、山根の子育ての経歴に触れた声。

山根は2016年4月から2019年3月まで、NHK Eテレの子育て番組『すくすく子育て』で司会を務めていました。

長女が生まれたのは2015年5月なので、ちょうど自分の子育てと番組の仕事が重なっていた時期にあたります。

司会に決まったころには、娘の離乳食について「かわいくて何回もあげちゃいます。」と話していたそうです。

2018年には育児イベントを企画するグループ「トーチャンズ」を結成し、2019年には「イクメン オブ ザ イヤー 2019」のイクメン芸人部門にも選ばれました。

番組を見ていたという人からは、「真摯に話を聞いて、ゲストの親御さんに共感したり寄り添ったり。」していた、「変にチョケることがなかったのも好感度高くて」と振り返る声も出ています。

赤ちゃんを抱いてきた人の「預かるよ」と、抱いたことのない人の「預かるよ」では、聞く側の受け取り方がまるで違うものです。

産後につらいのは母親だけじゃなかった

田中の打ち明け話に、自分の家のことを重ねた人もいたのではないでしょうか。

田中は2023年1月に結婚を発表し、2026年5月上旬に第1子となる男の子が生まれたことを報告しています。

同じポッドキャストで誕生を報告したときには、山根が自分の娘の誕生日を例に「やることが多いのよ、パパになると。」と話し、田中に「何か買ってあげたいとか思う」とまで言っていたと報じられました。

あれから5か月。

夜中に何度も起きる日が、まだまだ続くころです。

 

ネットにも、その時期のしんどさを思いやる声がありました。

産後に心が弱るのは母親だけではないことが、数字でも分かっています。

国立成育医療研究センターが2020年に発表した調査では、産後1年のあいだに「メンタルヘルスの不調のリスクあり」と判定された父親は11.0%でした。

母親は10.8%で、父親も、ほぼ同じ割合で不調を抱えていたとのこと。

さらに、夫婦がそろって同じ時期に不調のリスクありと判定された世帯は3.4%で、センターはこれを「年間約3万組」と見積もっていました。

 

背景として示されていたのは、父親の長時間労働、母親の睡眠不足、そして子どもが生後半年から1年の時期であることなどだそうです。

田中の子どもは、ちょうどその入口に立ったところ。

奥さんの前で疲れた顔を見せない、という田中の気づかいはよく分かります。

ただ、夫婦が同時に疲れていると、お互いに「代わってほしい」とは言い出しにくくなるもの。

どちらかが休めば、そのぶんもう片方が背負うことになってしまうので。

夫婦のどちらでもない誰かが、少しのあいだ赤ちゃんを引き受けてくれる。

そこで初めて、二人がそろって息をつける時間が生まれるんですよね。

預けたい側が本当に見ているもの

では、「預かるよ」と言ってくれる人がいれば、誰にでも頼れるのでしょうか。

ネットには、こんな声もありました。

本気で大丈夫なのに、と言われると、少し同情したくなりますね。

 

でも、預ける側の気持ちを考えると、すぐに「お願い」と言えない理由も見えてきます。

生後数か月の赤ちゃんは、苦しくても自分でそれを伝えられません。

預けるというのは、その数時間、子どもの命をまるごと任せることでもあります。

だから親が見ているのは、言葉のやさしさより、この人に任せて大丈夫かという一点なんです。

山根になら安心して預けられると思えた本当の理由は、子育てに向き合ってきた姿を、聞く側がもう知っていたこと。

 

同じ不安は、地域の預かりの仕組みに対しても出てきます。

ファミリー・サポート・センター(地域の人どうしで子どもを預かり合う仕組み)の講習を受けた人が、ほかの受講者の様子を見て「研修っていっても実技ないから」「怖すぎるでしょ。」とこぼした投稿もありました。

預かる側の思いやりが本物でも、それが預ける側から見えなければ、手は伸びないということ。

裏を返せば、安心が目に見える預け先なら、家族でなくても頼ってかまいません。

家族以外に赤ちゃんを預けられる4つの場所

家族や友人のほかにも、赤ちゃんを預けられる場所はちゃんと用意されています。

しかも、どれも預かる人の研修や配置について国や自治体の決まりがあるので、どんな人が預かるのかを前もって確かめやすいのが強みです。

市区町村が窓口になっている代表的なものは、次の4つ。

料金や細かい条件は自治体によって違うので、住んでいる地域のサイトで確かめてくださいね。

 

 

一時預かり(保育園などで数時間あずかる)

保育園や認定こども園などで、ふだん通っていない子どもを一時的に預かってくれる仕組みです。

国の実施要綱には、目的として「育児疲れによる保護者の心理的・身体的負担を軽減するための支援が必要とされている」と書かれています。

疲れたので休みたい、という理由で預けることは、最初から制度の目的に入っているんです。

預かる場所は保育所や幼稚園、認定こども園のほか、地域の子育て支援拠点や駅の近くなども想定されています。

預かる側には、原則として保育士を半分以上にすることや、2人以上を配置することが定められているんですね。

 

ファミリー・サポート・センター(地域の人どうしの預かり合い)

預けたい人と預かりたい人が会員になって、地域の中で助け合う仕組みです。

あいだには、センターのアドバイザーが入って両者をつないでくれる形。

こども家庭庁の資料によると、令和6年度(2024年度)は1,009の市町村で実施されています。

活動の例として挙げられているのは、保育施設への送迎や、買い物などで出かけるときの預かりです。

預かる側の会員には、緊急救命講習と事故防止の講習、少なくとも5年に1回のフォローアップ講習が求められています。

活動中の事故に備えた補償保険への加入も、実施の条件です。

こうした経験を持つ人が、地域の会員として預かってくれることもあるんですね。

 

こども誰でも通園制度(2026年4月から全国で本格実施)

保育園などに通っていない、生後6か月から3歳未満の子どもが対象の新しい制度です。

親が働いているかどうかは問われません。

2026年度は月10時間までが基本で、3時間から10時間の範囲で、それより短く決めている自治体もあります。

使う前に、市区町村へ認定の申請をしておく必要があるとのこと。

田中の子どもも、もうすぐ対象の年齢に入りますね。

 

産後ケア(出産後1年までの母子を支える)

出産後1年以内のお母さんと赤ちゃんを対象に、心と体を休めてもらいながら育児の相談にも乗る事業です。

母子保健法にもとづいて、2021年4月から市町村の努力義務になりました。

泊まりがけ、日帰り、自宅への訪問といった形があります。

赤ちゃんを手放すのではなく、赤ちゃんと一緒に休める場所という点が、ほかの3つとの違いです。

預け先はしんどくなる前に決めておく

いざとなったらそこへ電話すればいい、と思うかもしれませんね。

ところが、たいていの預け先は、その日にいきなりは使えません。

ネットでは、「辛かったらファミサポ利用してね」と勧められても、使えるようになるまでの手間がつらい、という投稿が広く読まれていました。

手順は自治体によって違いますが、その投稿では、決まった日時に指定の場所へ行き、説明の映像を観て、契約書を書いて登録して、ようやく使えるようになる流れだそうです。

こども誰でも通園制度も、使う前に認定の申請が要ります。

本当に限界が来た日には、こうした手続きをこなす気力そのものが残っていないことも多いでしょう。

 

妊娠中から知っておいてほしい、という声もありました。

だから、預け先は元気なうちに決めておくのがいちばんです。

  • 住んでいる市区町村のサイトで、「一時預かり」「ファミリー・サポート」「こども誰でも通園」「産後ケア」を調べる
  • 登録や認定の申請だけ、先に済ませておく
  • 一度だけ短い時間で試して、赤ちゃんにも自分にも慣れてもらう
  • パートナーと、つらいときにどこへ頼るかを一度だけ話しておく

これだけで、つらい日に「お願いします」と言える先がひとつ増えるはず。

 

反対に、山根のように「預かるよ」と言いたい側にも、形はあります。

ファミリー・サポート・センターで、預かる側の会員になること。

こども家庭庁の資料では、預ける側の会員がおよそ60万人なのに対して、預かる側はおよそ14万人でした。

国も、預かる人を増やす取り組みに補助を出しています。

誰も預けてくれないとこぼしていたあの人の手は、地域でいま足りていないものなのかもしれません。

 

山根の一言は、誰にでもすぐ真似できる一言ではなかったはずです。

それでも、安心して任せられる先を前もって作っておくことなら、どの家庭にもできます。

次に疲れた日が来る前に、住んでいる地域の預け先をひとつだけ調べておいてくださいね。

 

この記事で参考にした情報

  • 番組と2人の話:ニッポン放送「オールナイトニッポンPODCAST アンガールズのジャンピン」番組情報、スポーツ報知(2026年5月14日配信)、めざましmedia・モデルプレス(田中卓志の第1子誕生の報告)
  • 山根良顕の子育ての仕事:NHK「すくすく子育て」公式サイト(2016年度のMC紹介)
  • 父親の産後のメンタルヘルス:国立成育医療研究センター プレスリリース(2020年8月27日)
  • 預け先の制度:こども家庭庁「一時預かり事業実施要綱」「子育て援助活動支援事業(ファミリー・サポート・センター事業)」資料「こども誰でも通園制度について」「産後ケア事業ガイドライン」