スマホに「配達完了」の通知が届いたのに、玄関を開けても荷物がどこにもない、あの瞬間。

置き配を使ったことがある人なら、一度は背筋が冷えたことがあるかもしれません。

いまXでは、置き配の荷物を何度も盗まれた末に、玄関のドアノブに覚えのない「置き配OK」の札まで掛けられていた、という千葉県松戸市の体験談が広がっています。

本当にあったことかどうかは確かめようがないものの、この投稿を引用した人からは、盗まれた側として「日本はやられ損だからな」とこぼす声も出ていました。

2月には、Amazonの通知の写真に荷物が写っていたのに、帰ったら無かったという投稿も広がっています。

そんななか、読売新聞オンラインが11月6日、国土交通省が置き配のトラブルについて、誰がどこまで責任を持つのかを示す指針を年内にも出す、と報じました。

記事の中で例に挙がっていたのは、玄関前の置き配を指定した場合は荷物を置いた時点で配達完了となり、そのあとのトラブルは利用者が責任を負う可能性がある、という線引きです。

置き配の「配達完了」の通知は、荷物の責任が自分に移る合図にもなりうる、ということ。

今回は、置き配で荷物が消えたときに誰が責任を持つのかを、わかりやすく解説していきたいと思います。

置き配で荷物が消える相談は10年で7倍

読売新聞オンラインによると、東京都消費生活総合センターに寄せられた置き配の相談は、2016年度は75件でした。

それが2025年度には550件まで増え、記事は「10年間で7倍」と伝えています。

相談の例として挙がっているのが、「置き配の連絡があったのに、荷物がなかった」という声です。

Xでも、10月の終わりにAmazonの荷物について、こんな投稿がありました。

手渡しを指定したはずの25万円分のギフトカードが、ポストからはみ出したまま「配達完了」になっていたそうです。

手渡しを頼んだのに、誰でも抜き取れる形で置かれていたら、生きた心地がしませんよね。

 

置き配の荷物を盗んだとして、実際に人が捕まった例もあります。

2023年4月、東海テレビが伝えたのは名古屋市の自営業の男性の話でした。

男性は、置き配で届いたゲーム機やフィギュアなどを、1か月ほどのあいだに少なくとも5回以上盗まれていたそうです。

そこで、位置がわかるAirTagを入れたおとりの荷物を自宅前に置いたところ、その位置情報が動き出し、追いかけて声をかけた相手が、別の荷物を配達に来ていた配送業の男でした。

男は窃盗の疑いで逮捕されています。

さらに今年1月には甲府市で、玄関前に置き配されたドライブレコーダー2点を盗んだ疑いで、配送業の男が逮捕されたと読売新聞オンラインは報じていました。

 

2月にAmazonの写真の件を投稿した人も、続きにこう書いています。

自宅の防犯カメラを見たら、配達した人が荷物を置いて写真を撮ったあと、そのまま持ち帰る姿が映っていたそうです。

いっぽう、松戸の体験談は、紛失防止タグを入れたおとりの荷物で犯人が捕まった、という結末でしたが、こちらは報道では確かめられていません。

「配達完了」の通知や写真は、荷物が置かれた瞬間の記録で、そのあとも無事だったことまでは教えてくれないもの。

 

配送会社が「配達済みです」と答える決まり

荷物がないと問い合わせて「配達済みです」と返されると、突き放されたように感じますよね。

実はその答えは、配送会社の決まりにそのまま書いてあるんです。

佐川急便の置き配のページには、置き配は受領印やサインをもらわずに、荷物を指定の場所へ置くことで配達完了とするサービスだと書かれています。

そのうえで、「配達完了後(お荷物をご指定の場所へ置いた後)のお荷物の滅失、盗難、き損等について、佐川急便は一切責任を負いません」と明記されていました。

よくある質問にも、受け取る人が指定した場所に荷物を置いたときを、引き渡しが完了したとみなす、とあります。

つまり、置いた瞬間から、荷物は受け取る人の手に渡った扱い。

読売新聞オンラインによると、国交省は配達員の負担を減らすために、置き配を広めたい考えです。

配達する側にとって置き配がどれだけ助かるかは、宅配の仕事をしている人のこんな投稿からも伝わってきます。

いっぽう、国のひな形にあたる標準宅配便運送約款には、いまも置き配という言葉が出てきません。

国交省は2025年11月に、この約款へ置き配を書き加える方針を示しましたが、国交省のサイトに載っている約款は、まだ書き換わっていないんです。

この約款の書き換えと、今回報じられた指針は別のもので、指針のほうはトラブルの責任区分を示すために年内にも出すとされています。

指針では「配達完了」のタイミングを場面ごとに示し、宅配会社には、置いたときに荷物の写真を撮って利用者に知らせることを勧める見通しだそうです。

日本郵便も、配達記録の管理のために、荷物を置いた様子を写真で記録すると案内しています。

置いたかどうかで揉めることは、これで少しは減りそうですね。

見覚えのない「置き配OK」の札が怖い理由

松戸の体験談でいちばん怖いのは、ドアノブに下がっていた見覚えのない「置き配OK」の札ではないでしょうか。

大手2社の正式な頼み方に、玄関の札は出てきません。

佐川急便の場合、置き配は、会員向けのスマートクラブにログインするか、LINEに届くお届け予定の通知から「置き配」を選んで頼む仕組み。

日本郵便は、「指定場所配達に関する依頼書」を出して申し込む形でした。

宅配ボックスか玄関前の鍵つきの容器がある家は、依頼書を出したものとみなすそうです。

どちらも、玄関の外に置いてよいかを決めるのは受け取る人で、決め方も会社が用意した手順のとおり。

 

ところが、玄関に貼った札を見て置いていってくれた、という人もいます。

自分で貼った札なら、ありがたい心づかいですよね。

けれど、札には誰が貼ったのかを示すものが何もありません。

配達する人には、本人が掛けた札か、他人が掛けた札かを見分ける手立てがないんです。

 

国の指針で、置き配を頼んだ人が責任を持つという線引きが示されたとしても、その「頼んだ」が玄関の札1枚で通ってしまうなら、頼んでいない人が責任を背負わされかねません。

反対に、「置き配NG」のステッカーを貼っても置かれてしまう、という人もいます。

札やステッカーは、読むかどうかが配達する人しだい。

会社の手順に沿った頼み方は記録に残るのに、誰でも掛けられる札は、置き配への鍵のかからない入口なんですね。

もし自分の玄関に見覚えのない札が下がっていたら、すぐに外して、アプリの置き配の設定がどうなっているかを確かめておきたいところです。

置き配を頼んでいないことを画面で示せれば、荷物が消えたときに配送会社やお店へ相談する材料にもなります。

 

置き配の荷物を盗まれたらどうする?

では、本当に盗まれてしまったら、泣き寝入りするしかないのでしょうか。

置かれた荷物を持ち去るのは窃盗で、刑法235条は10年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金と定めています。

拘禁刑というのは、それまでの懲役と禁錮がひとつにまとまった呼び方です。

荷物が見当たらないと気づいたら、迷わず早めに警察へ届けてください。

それから、配達完了の通知や置いたときの写真も、消さずに残しておくと話が早くなります。

名古屋の男性は自分で追いかけましたが、相手とのトラブルになるおそれもあるので、位置がわかったら警察に任せたほうがいいでしょう。

 

お金の面の扱いは、配送会社やお店によってまちまち。

読売新聞オンラインによると、日本郵便は2021年から、置き配を指定した人の荷物が盗まれた場合に1万円を上限に補償する仕組みを入れています。

ヤマト運輸は2025年に、盗まれた置き配の荷物も補償の対象にする火災保険の販売を始めたと報じられました。

東京都消費生活総合センターは、相談を受けると通販サイトの側ともやりとりをするそうです。

担当者は「責任が不明確なケースでは返金や再送などの対応に時間がかかる」と話しています。

防犯カメラを確かめたあの人も、Amazonに連絡すると再配達してもらえることになったと書いていました。

困ったときは、配送会社だけでなく、買ったお店や、近くの消費生活センターにつながる消費者ホットラインの188にも相談できるので、ひとりで抱え込まなくて大丈夫です。

 

いっそ置き配をやめたくても、それが簡単ではない人もいます。

何か所にも電話したのに、また置かれてしまったという投稿です。

国交省が2025年に公表した約1000人への調査では、置き配を利用したいと思わない人が24%いました。

その理由でいちばん多かったのが、盗難や紛失の心配です。

防犯アドバイザーの京師美佳さんは、玄関前の配達は盗難などのリスクが高いとして、宅配ボックスや、駅やコンビニの宅配ロッカーを勧めています。

そのうえで、配送される商品を高級品や日用品などに分け、受け取る先を宅配ボックス、在宅中の玄関前、コンビニなどに使い分けるのも対策になる、と話していました。

洗剤やティッシュなら玄関前、松戸の体験談のような10万円のフィギュアならコンビニか対面で、という具合に。

国の指針が出れば、どこで責任が切り替わるのかは今よりはっきりするはずです。

そのとき置き配を「頼んだ」ことになるのが、アプリの記録だけなのか、玄関の札でも通ってしまうのかは、置き配を使う人みんなが知りたいところですよね。

それまでは、高い物ほど玄関の外に置かれない受け取り方を選びつつ、ドアノブに見覚えのない札が下がっていないか、ときどき目をやっておきたいですね。