「千尋が7人か、多いなぁ。」

舞台『千と千尋の神隠し』のワールドツアーで千尋を演じる7人が発表されたあと、ネットにはこんな声が出ていました。

2022年の初演では橋本環奈と上白石萌音の2人で演じていた役が、今回は一気に7人です。

それなのに、2024年から千尋を演じてきた川栄李奈の名前は、その7人の中にありません。

「川栄さんは?」と前の千尋を探す声や、自分の観る日に誰が出るのか分からないという戸惑いも、喜びの声に混ざっています。

ところが、発表された日程をひとつずつ並べてみると、この7という数字には、はっきりした理由が見えてくるんです。

今回は、千と千尋の舞台で千尋役が7人になった理由と、推しの千尋に会うために見ておきたい日付を、わかりやすく解説していきたいと思います。

千尋を務める顔ぶれと世界9都市の日程

千尋役の7人が報じられたのは、2026年10月15日の未明です。

オリコンニュースによると、千尋を務めるのは次の7人とのこと。

  • 橋本環奈(2022年の初演から)
  • 上白石萌音(2022年の初演から)
  • 福地桃子(2024年の再演から)
  • 森莉那(代役から本役へ)
  • 井上和(いのうえ・なぎ/乃木坂46・今回のオーディションで)
  • 豊嶋花(今回のオーディションで)
  • 平澤宏々路(今回のオーディションで)

新しく加わった3人は、翻案と演出を手がけるジョン・ケアードのオーディションを経て選ばれたそうです。

井上和は「個人初舞台にして主演」、豊嶋花も「人生初の舞台」と話していて、平澤宏々路は2027年の舞台『うるうの朝顔』で初舞台を踏んでから千尋に臨む、と紹介されています。

 

いっぽうネットには「オーディションちゃんとやったん?」と首をかしげる声もありますが、豊嶋花と平澤宏々路は、オーディションで何を言われたかを自分の言葉で明かしていました。

豊嶋花は「子どもを無理に演じようとしすぎなくていいから、花さんが思う千尋を思うように演じてみてほしい」と言われ、平澤宏々路は、舞台は遠くまでお客さんがいるので独り言でも遠くまで届けてほしい、と助言を受けたそうです。

もちろん、誰がどう選ばれたのかまでは外から分かりません。

それでも、演出家の前で千尋の場面を演じて選ばれた様子は、本人たちの言葉から伝わってきます。

 

日程も、これまでの公演とは桁が違いました。

始まりは2026年12月17日、台北の国家戯劇院です。

2027年3月から5月が東京の明治座で、そのあと愛知・大阪・福岡・札幌を夏の終わりまで回っていきます。

海外はトロントが2027年5月6日から8月15日まで、ロサンゼルスが9月2日から10月24日まで、そして2028年の3月から7月には、ロンドン・コロシアムでもう一度上演される並び。

台北の公演中には、通算の上演回数が500回を超え、観客も100万人を突破する見込みだと報じられています。

 

この日程表を見て、早くも心配を口にしているファンもいました。

乃木坂46の全国ツアーと重なる時期があるのでは、という声です。

誰がどの都市に出るのかは、明治座に7人全員が出ることのほかは、まだ発表されていません。

 

2022年は2人だった千尋役

「多い」と感じるのは、自然な反応だと思います。

2022年に帝国劇場で幕を開けた初演では、千尋は橋本環奈と上白石萌音の2人でした。

ひとつの役を2人で分け合うダブルキャストは、大きな舞台ではよくある形です。

それが2024年の再演で、オーディションを経た川栄李奈と福地桃子が加わって4人になり、今回は7人。

 

しかも川栄李奈は、2024年の再演から千尋を演じ、今年のソウル公演でも上白石萌音と並んで千尋を務めていた人です。

「川栄の千尋も良かったのにー。」「川栄千尋が観れないの寂しいな」という声は、発表の直後からあちこちに出ています。

ただ、出演しない理由は、今回の発表のどこにも書かれていません。

そこへ、推しの名前が無いさみしさと、知らない名前が増えた戸惑いが重なれば、「一気に増えすぎでは」と言いたくもなりますよね。

同じ発表を見て、背丈や年齢の幅が広がったことに目を留めている人もいました。

同じ夏に地球の両側で幕が開く

では、なぜ7人なのでしょうか。

トロント公演は、2027年5月6日から8月15日まで。

いっぽう国内では、明治座が5月まで続き、6月に愛知、6月から7月に大阪、7月から8月に福岡、8月に札幌と回っていきます。

つまり2027年の5月から8月にかけて、日本とカナダで、同じ『千と千尋の神隠し』が同時に上演される予定なんです。

 

千尋は、ほとんど出ずっぱりの役。

2022年の初演のとき、橋本環奈は「千尋はステージをはける時間がめちゃくちゃ短いです。どのシーンでもずっといるんですよ」と話し、上白石萌音も「倒れ込みそうなところまで体を追い込む役です」と語っていました。

その役を、これまでもひとつの劇場で2人以上が交代しながら演じてきたんです。

だから、同じ時期にふたつの劇場で幕が開くとなれば、日本の千尋とトロントの千尋が、それぞれ別に要ります。

7人で回さないとこなせない公演数を、出る側の体力ごと心配する声もありましたが、7人いても、ひとつの劇場に立つのはそのうちの何人かです。

2024年の再演でも、3月の帝国劇場のあと、4月30日から8月24日までロンドン・コロシアムで上演され、その期間に博多座・梅田芸術劇場・札幌の国内公演も重なっていました。

千尋が4人に増えたのは、まさにこの年です。

しかもこの年は、ハクが3人、湯婆婆と銭婆の二役を演じる人が4人と、千尋以外の役も何人もで回す体制。

今回はそこへ、2026年12月の台北から2028年7月のロンドンまで続く旅程が重なります。

千尋の人数は、同時に開く劇場の数に合わせて増えてきました。

 

7人の中には、代役から上がってきた人もいます。

森莉那は、ロンドン・上海・ソウルの3都市で、千尋のアンダースタディとスウィングを務めてきた人です。

アンダースタディは本役が急に出られなくなったときに備えて同じ役を稽古しておく控えで、スウィングはいくつもの役を覚えておいて欠けたところを埋める役目のこと。

2か所で同時に幕を開け、それを長く続けるなら、いざというときに千尋を任せられる人の層も厚くしておきたいところでしょう。

代役の層から、本役がひとり出てきた形です。

 

千尋は引き継がれる役になった

それでも、ネットには「千尋役、もう誰でもやれるレベルにやっすくなったな」と書く人もいます。

主役を何人もで回すことにさみしさを覚えるのは、作品を大事に思っているからこそでしょう。

この舞台を翻案・演出したジョン・ケアードは、1985年にロンドンで初演されたミュージカル『レ・ミゼラブル』を、トレヴァー・ナンとともに演出した人です。

そのミュージカルの日本版でも、主人公のジャン・バルジャンは2024年の公演で3人が演じていました。

ぴあの記事は、再演のたびに新しいキャストが加わり、無名の俳優がオーディションから主役に選ばれていくことを、あの作品の伝統だと紹介しています。

長く続く舞台では、ひとつの役を何人もで受け渡していくのは珍しくないんですよね。

 

千尋の側にも、すでにその仕組みができていました。

森莉那のコメントによると、初演から「千尋の交換ノート」が受け継がれているそうです。

ダブルキャストで劇場に来られない日の出来事やアドバイスを書き留めるノートで、上白石萌音は製作発表で、4人の千尋に森莉那を加えて「千尋を5人で作っている」と話していたとのこと。

上白石萌音自身も、今回のコメントで「またみんなで交換ノートもできたらいいなあ」と書いていました。

福地桃子も、毎公演いろんな組み合わせが生まれて、そこに生まれる空気も変わっていく、と話しています。

千尋は、何人もの手で受け渡していく役へ、もう変わっていました。

7人という数字は、そのノートを受け渡す輪が、劇場の数に合わせて広がった結果なのかもしれません。

推しの千尋に会うなら日程表の日

とはいえ、観に行く側からすると、いちばん気になるのは結局「自分の日に誰が出るのか」ですよね。

公式サイトのキャスト欄にも、いまは「ツアー各会場の出演者は決定次第、ご案内いたします」とあるだけ。

台北まで観に行くつもりの人や、海外の公演に合わせて旅の予定を立てたい人ほど、ここがいちばん落ち着かないはずです。

千尋だけでなく、湯婆婆やハクとの組み合わせまで考え始めると、選ぶ楽しみと迷いは一気に増えます。

 

ただ、トロント公演のチケットは、現地の劇場の案内では2026年11月2日に一般発売が始まる予定です。

その劇場の発表文には、ワールドツアーの配役は後日発表すると書かれていて、誰が千尋か分からないまま席だけ先に売り出される順番になるかもしれません。

2024年の帝国劇場公演では、誰がどの回に出るかの表がキャスト発表と同じ2023年11月に公式サイトに出ていて、一般発売はそのあと、2024年2月10日でした。

国内の公演で推しの千尋が決まっている人は、チケットの申し込みより先に、まず日程表が出るのを待つのがいちばん確実です。

今回の発表では、人数が先に出て、誰がどこに立つかはまだこれから。

推しの千尋がいる人ほど、その日程表が出る日が待ち遠しいですね。