堀大輔の講座は返金できるのか|高額商材の取り消しをわかりやすく解説

「30分の睡眠は講師の私とごく少数であり」
そう書いていたのは、ほかでもない堀大輔本人です。
しかも今回の生配信が始まるより1年も前、2025年8月のこと。
1日30分の睡眠で17年暮らしてきた、と語ってきた人の配信がいま毎日のように切り取られ、そこに「講座にお金を払った人はどうなるのか」という声が混ざりはじめました。
今回は、高額な商材に払ったお金を取り消せるのはどんなときなのかを、初めての人にも分かるようにわかりやすく解説していきたいと思います。
途中で仮眠がありになった
堀大輔は、一般社団法人日本ショートスリーパー育成協会の代表理事です。
協会は2016年4月に設立されていて、睡眠を整えるためのプログラムを有料で教えています。
公式サイトによると、扱っているのは睡眠の指導だけではありません。
歩き方を学ぶプログラムや、個別のパーソナルトレーニングまで並んでいます。
配信が始まったのは2026年9月9日の20時。
終わりは9月16日の予定で、24時間つけっぱなしの生配信です。
1日30分の睡眠を疑う声に、本人が自分の生活をそのまま見せる形で答える。
そういう企画でした。
ところが2日目、美容整体の施術を受けている最中に、いびきをかいて27分ほど眠ってしまいます。
起きたあとの本人の説明は「マイクロスリープを10回しただけ」。
ごく短い眠りが何度も入っただけで、寝たわけではない、という理屈ですね。
そのあと「仮眠はあり」というルールが足されました。
そして9月14日には、30分の本睡眠に加えて、本人が仮眠を挟んでいく形へ変えたと伝えられています。
ネットでよく見かけたのは「ゴールポストが動いた」という言い方でした。
同じころ、医師でYouTuberのドラゴン細井が配信に加わった日のやりとりも、切り取られて広がっています。
これまで本人が答えてこなかった質問が、次々と読み上げられていく。
その場面に、かなりの反応がありました。
うーん。
ただ、ここで一度立ち止まりたいところが。
30分は本人とごく少数だけ
いまネットで飛び交っているのは「1日30分は嘘だったのか」という問いです。
でも、そこを詰めても実はあまり進みません。
本人が去年の8月に、こう書いていました。
「トレーニングしたら寝なくてよくなる」
すいません、睡眠時間の長短や眠気を含めて、睡眠のコントロール技術が上がることを伝えてます。
「1日30分睡眠の人たち」
30分の睡眠は講師の私とごく少数であり、平均でいうと、受講前に比べて2.14時間の睡眠時間の短縮となってます。
— 堀大輔 / ショートスリーパー商標保有。睡眠改善プログラム、Nature sleep代表 (@d_holi) 2025年8月16日
つまり本人は1年前の時点で、30分は自分の数字で、受講生の数字ではないと書いていたわけです。
協会の公式サイトも、いまはこう書いています。
「睡眠時間を一律に短くすることや、無理にショートスリーパーになることを勧める団体ではありません」
「すべての方が同じように睡眠時間を短くできることを保証するものではありません」
受講者についても「結果として以前より2時間程度短い睡眠時間で活動するようになる方もいます」という書き方で、そのあとに個人差があると添えられています。
どこまでいっても、受講した人の側の数字は2時間ほど。
看板に大きく出ているのは30分。
けれど売られているものの説明は、2時間ほどの短縮と、保証はしないという但し書き。
看板と中身は、最初から別のものでした。
ここが今回のいちばん大事なところだと思うんです。
騒ぎの正体は「嘘か本当か」ではなく、看板の数字と、買った人の数字がずれていたということ。
そしてそのずれに気づくには、本人の1年前のポストか、公式サイトの細かい一文まで読みにいく必要がありました。
いっぽうで、本人のXのプロフィール欄の先頭には、いまも「1日30分睡眠のショートスリーパー」の一行が置かれています。
プロフィールもポストも本人が書いたもので、どちらも本当のこと。
ただ、目に入りやすいのは短いほうでして。
返金を分けるのは嘘かどうかではない
さて、お金の話へ。
2017年の取材記事では、この協会の講座は説明会が3,000円、グループレッスンが348,000円、マンツーマンが540,000円と紹介されていました。
いまも同じ金額かは分かりませんが、数十万円の単位であることは間違いなさそうです。
その額を払った人が返してもらえるかどうか。
ここでいちばん誤解されやすいのが、「配信で寝てしまったから返金できる」ではない点。
返金の入口になるのは消費者契約法という法律で、その第4条にこう書かれています。
事業者が勧誘をするときに「重要事項について事実と異なることを告げること」をして、消費者がそれを事実だと思い込んで契約したなら、その契約は取り消せる。
取り消せば、払ったお金を返してもらう話になります。
取り消すというのは、その契約を最初から無かったことにする、という意味合いですね。
重要事項という言葉は固いのですが、中身はそう複雑でもなく。
そのサービスの質や中身、値段など、聞かされていなければ申し込まなかったはずのことを指します。
「1日30分で暮らせるようになります」は、まさにそこに当たる言葉ですよね。
大事なのは、見るのが契約するときに何と説明されたか、だということ。
配信でどうなったか、ではありません。
だから、同じ講座を受けた人でも結論が割れます。
「1日30分になれます」と言われて申し込んだ人と、「平均で2時間ほど短くなります」と説明されて申し込んだ人とでは、立っている場所がまるで違う。
ネットで一律に「全員返金だ」とも「1円も戻らない」とも言えないのは、そのためです。
睡眠講座はクーリングオフの外側
ここで多くの人が思い浮かべるのが、クーリングオフでしょう。
高いものを契約しても、8日以内なら無条件で解約できる、あれです。
ところが、これが使えません。
特定商取引法には「特定継続的役務提供」という仕組みがあって、長く続く高額なサービスにはクーリングオフと中途解約が認められています。
期間が1か月か2か月を超えていて、金額が5万円を超えていること。
そのうえで、対象になる業種は消費者庁の説明では次の7つだけ。
- エステティック
- 美容医療
- 語学教室
- 家庭教師
- 学習塾
- パソコン教室
- 結婚相手紹介サービス
睡眠の講座も、セミナーも、いわゆる情報商材も、7つのリストに入っていないんです。
おまけにネットで申し込む通信販売には、そもそもクーリングオフという制度自体がありません。
学習塾なら守られるのに、睡眠講座は制度の外。
金額の高さも期間の長さも似ているのに、リストに名前があるかどうかだけで扱いが変わってしまう。
では、この7つに入っていない講座を申し込んだ人には、打つ手がないのでしょうか。
あきらめる前に確かめる3つのこと
そんなことはありません。
順番に3つ、確かめてみましょう。
1つ目は、契約したときの説明が手元に残っていないか。
申込ページのスクリーンショット、説明会の資料、担当者とのメッセージ。
そこに「1日30分になれる」「必ず短くなる」といった約束が残っていれば、消費者契約法の話に乗ります。
このとき、いつ契約したかが分かるもの(申込完了のメール、振込の記録、領収書)もいっしょに探しておいてください。
逆に「個人差があります」と書かれていたなら、そこは争いにくいところ。
2つ目は、期限の時計がもう動いているということ。
さきほどの契約日が要るのは、この期限を数える起点になるからです。
取消権は追認できる時から1年、契約から5年で消えてしまう。
追認できる時というのは、ざっくり言えば、おかしいと気づいて自分で判断できるようになった時のこと。
今回の騒動で初めて引っかかりを覚えた人なら、1年の時計はいま動き出したところ、という見方になります。
長く信じてきた人ほど、この5年の線に先に届いてしまうわけで。
なんとも皮肉な作りですよね。
ただし、ここに逃げ道があります。
同じ法律の第6条が、民法の詐欺の規定を妨げないと書いているんです。
民法の詐欺で取り消す場合の期限は、追認できる時から5年、行為の時から20年。
消費者契約法の5年を過ぎていても、民法でならまだ土俵が残っていることになりますね。
3つ目は、ひとりで判断しないこと。
消費者ホットラインの「188」にかけると、近くの消費生活センターにつないでくれます。
2015年から始まった全国共通の番号で、相談そのものは無料です。
通話料だけは自分持ちになりますが、それだけ。
土日や祝日も受け付けています(年末年始は休み)。
郵便番号を入れると住んでいる地域の窓口に回してくれる仕組みで、全国800か所以上が受け皿になっています。
#著名人 が #もうかる方法 を勧めてくれるらしい!
指示通り #投資 を始めたらもうけが出た!
だけど高額な手数料で出金できないし、連絡も取れなくなった…。
これって #詐欺 !?不審に思った時点で188に相談!
— 国民生活センター (@kokusen_ncac) 2026年9月1日
例に出ているのは投資の話ですが、困ったときの入口はどれも同じです。
契約のときの説明と、期限の残り。
この2つを素人が自分だけで判定するのは、正直かなり難しいところ。
188はその判定を代わりにやってくれる場所だと思ってもらえれば。
看板の数字は誰の数字なのか
自分の体験や実績を看板にして何かを売っている人は、睡眠のほかにもたくさんいます。
年収の数字、落とした体重、伸びた偏差値。
どれも本人の実績で、そこに嘘がなくても、買う側には別の問題が残るんですよね。
判定は1問で足ります。
その数字は、売っている人の数字か、それとも買った人の数字か。
今回の件でいえば、30分は売っている人の数字でした。
そして2時間あまりの短縮が、買った人の数字。
本人はそれを隠していたわけではなく、ポストにも公式サイトにも書いてあった。
ただ、大きく見えていたのは前者のほうだった、というだけのこと。
だから、次に高い講座の申込ボタンを押す前に探すものは決まっています。
その商品の説明の中に、買った人の側の数字が書かれているかどうか。
書かれていなければ、そこはまだ看板しか見ていないということになります。
そしてもう一つ。
見つけた数字を、あとから見返せる形で残しておいてください。
いま返金を考えている人たちがいちばん困っているのが、まさにそこなので。
今回の配信だけで、17年ぶんが嘘だったと決まったわけではありません。
そこは、外から見ている私たちには判定できないところ。
ただ、講座を受けた人が確かめられる場所は、配信の画面ではなく自分の契約のほうにあります。
申込ページのスクショが残っていないか、今夜ちょっと探してみてくださいね。
