長野県小海町の黒澤弘町長が、キノコ採りに入った町内の山林で倒れているのが見つかり、亡くなったと報じられています。

71歳、町長として3期目を務めていた人の、突然の訃報です。

警察は事故と病気の両方の可能性を含めて、死因を調べているとのこと。

家族や身近な人に、秋になると近くの山へキノコを採りに行く人がいるなら、気がかりなニュースだと思います。

長野県警察山岳遭難救助隊は10月2日の投稿で、キノコ採り目的で入山して救助を求めた場合は「すべて『山岳遭難』です」と書いていました。

たとえ近所の山へ、慣れた道を通って、少し採りに行くだけのつもりでも、警察の数え方では登山の遭難と同じ扱いになります。

秋のキノコ採りは、なぜ山岳遭難として数えられるのか。

今回は、小海町長の訃報についてわかっていることと、キノコ採りの山に入る前に家族で確かめておきたいことを、わかりやすくまとめていきたいと思います。

小海町長の訃報でわかっていること

警察の調べによると、黒澤町長は10月9日の正午ごろ、キノコ採りのために町内の山林へ一人で入ったとのこと。

信越放送によれば、車で出かけたそうです。

午後5時を過ぎても家に戻らなかったため、家族が周辺を探したところ、山の中で倒れている町長を見つけたと報じられています。

消防が町内の病院へ運びましたが、その後、死亡が確認されました。

現場は山林の斜面で、体にはすり傷があったと伝えられています。

警察は、死因や詳しい状況を調べているところです。

黒澤町長が初めて当選したのは、2018年の町長選でした。

町は10日の午後に会議を開いて、今後の対応を話し合うとのこと。

いまわかっているのは、ここまで。

足を滑らせたのか、急に体調を崩したのかは、まだ明らかになっていません。

町長の身に何が起きたのかは、警察の調べを待つしかないところです。

キノコ採りも山岳遭難になる理由

長野県警察山岳遭難救助隊と長野県山岳遭難防止対策協会は、「キノコ採りをする皆さまへ」というチラシを出しています。

チラシには、こう書かれていました。

「キノコ採りで入山する際は、登山と同じように『遭難するかもしれない』という危機感を持つとともに、単独行動は避け、必ず家族や友人などに入山場所と予定を知らせましょう」

チラシは、その理由も書いています。

チラシによれば、キノコ採りは探すことに夢中になるあまり山奥へ入り込み、方向感覚を失って、いまどこにいるのかわからなくなることが多いそうです。

危険な崖や斜面に入り込んでしまうことも多い、という注意も並んでいます。

救助隊の9月下旬の投稿には、長雨のあとの晴れた連休から、キノコ採り遭難が相次いだとありました。

同じ投稿で呼びかけていたのは「家族に行き先を告げ、必ず複数人で入山!」。

10月2日の投稿では、遭難した人たちの「共通点は『急斜面の滑落』」とまとめていました。

同じ投稿には「雨が降った翌日、天気が良ければ、きのこ採り遭難が多発」とも。

雨のあとはキノコが出やすく、採りに行きたくなる日と、足元が濡れて滑りやすい日が重なってしまうんですね。

 

では、行き先を家族に伝えることが、なぜそこまで大事なのでしょうか。

長野県には、2016年7月から登山計画書の届出を求めている「長野県登山安全条例」があります。

ただ、届出が必要になるのは、県が「指定登山道」として決めた登山道を通るときです。

登山なら、登山口のポストや登山アプリで、行き先を届け出る形が用意されています。

一方で、キノコを探して入っていく林の中は、そもそも登山道ではありません。

チラシにも「家族から捜索願が出されても、入山場所が特定できなければ、捜索が非常に困難となります」という一文がありました。

キノコ採りの山では、出かける前に家族と交わす一言が、登山届の代わりになります。

11人全員が70代以上だった去年の秋

長野県警がまとめた2025年の山岳遭難の統計を見ると、県内で起きた遭難が1件ずつ記録されているんですね。

キノコ採りで遭難した人は11人で、どれも10月に入ってからでした。

11人のうち、7人が亡くなっています。

年齢はいちばん若い人で73歳、上は90歳でした。

亡くなった7人の内訳は、滑落が5人、クマに襲われた人が1人、病気が1人です。

一人で入山していたのは、11人のうち6人。

3人で入山したあと「別々に行動し、滑落」した例も記録されていて、チラシは入山したあとの単独行動も避けるよう求めています。

 

警察庁の全国のまとめにも、山菜やキノコ採りを含めて、一人で山に入った人の数字がまとめられていて。

2025年に一人で入って遭難した人のうち、亡くなったか行方不明になった人は15.3%で、2人以上で入っていた人の5.5%を大きく上回りました。

一人で入ると、何かあったときに、そばで助けを呼んでくれる人がいなくて。

 

今年の秋も、救助隊の10月2日の投稿によれば、キノコ採りによる死亡遭難がすでに3件起きていると書いていました。

10月9日には、県内で今年の山岳遭難が300件を超え、滑落や転倒、病気による遭難が相次いでいるとも伝えています。

県内の筑北村も今月のはじめ、「『豊作』といわれる今年も遭難の多発が危惧され、すでに亡くなった方もいます」と村のホームページで呼びかけていました。

山へ出かける家族に聞いておきたい一言

長年通い慣れた山があると、家族の側から「危ないからやめて」とは、なかなか言いにくいものです。

県警のチラシは、大きく5つの注意を挙げています。

  • 一人で入山しない、入山したあとも一人で行動しない
  • 入山場所と予定を家族に伝える
  • 携帯電話とヘッドライトを持っていく
  • 急な斜面に入り込まない
  • クマなどの野生動物に気をつける

だから、家族の側からいちばん頼みやすいのは、入山場所と予定を聞いておくこと。

出かける前に「今日はどこの山?何時に戻る?」と一言聞いておけば、戻る時間を過ぎたときに、探しに行く場所も、警察に伝える場所も決まります。

また、チラシは携帯電話のGPS機能をオンにしておくことも求めていました。

秋は日が短く冷え込むので、防寒着や非常食も持っていくようにと書かれています。

 

警察庁によれば、多くの山では携帯電話の通じる範囲がかぎられるそうです。

それでも2025年の遭難の76.3%では、遭難した現場から携帯電話や無線を使って救助を求めていました。

県警の救助隊は、スマートフォンや登山アプリを使って、位置情報を家族と共有することも勧めています。

本人とよく話して、スマートフォンの設定を家族と一緒に確かめておくのも一つの手です。

もう一つ、秋の山にはクマもいます。

救助隊は9月にも、伊那市高遠と軽井沢町で、キノコ採り中の男性がクマに襲われてけがをする事案が続いたと伝えていました。

チラシは、クマがキノコを好んで食べるため、キノコ採りではクマに出会う確率が高くなるとしています。

笛やラジオ、クマ鈴のような音の出るものを持っていくことも、呼びかけの一つです。

 

そして、もし戻る時間を過ぎても連絡がつかなかったら、行き先を添えて、ためらわず警察や消防へ相談してください。

救助のお金を心配して迷う人もいるかもしれません。

長野県は2025年8月、県民からの意見への回答で、地上やヘリコプターによる捜索・救助について「現時点では」救助費用の個人負担を求めていない、と答えました。

また県は、登山安全条例で、登山者に山岳保険へ入るよう努めることを求めています。

 

全部をいっぺんに頼む必要はありません。

行き先と戻る時間を聞くことと、携帯電話を持って出てもらうこと。

まずはこの2つから始めてみてくださいね。

町のために働いてきた人が、秋の地元の山で倒れていたという知らせに、胸が詰まる思いです。

亡くなられた黒澤弘町長のご冥福をお祈りいたします。