「僕はそれでお縄になったら、あー気楽って思って。世間から3年消えれるわーって思って」

2026年10月30日の夜、堀大輔のこんな発言を文字に起こした投稿が、Xで一気に広がりました。

その前には「これ『証拠』ってなって捕まる可能性ありますけど」「やったもんはやったもんなんで別に」という言葉も続いています。

返信には「じゃあ素直に3年消えたら良いのに」「ほな自首してもろて」と、あきれた声が次々に並びました。

捕まるかもしれない話を「気楽」と言われたら、腹が立つのも無理はありません。

本人のほうは同じ日の夕方、ハロウィンのイベントで撮ったコスプレ写真を投稿していました。

この日も、ふだんどおりに発信を続けていた形です。

そもそも、疑われている投資の話は違法なのか。

そして本当に捕まったとして、3年で済むものなのでしょうか。

法律に書かれている数字を並べてみると、本人の言う「3年」とはだいぶ違う形が見えてきました。

 

200万円のメールと「3年消えれる」

堀大輔は、「1日30分睡眠のショートスリーパー」を名乗ってきた実業家です。

日本ショートスリーパー育成協会の代表理事で、協会の運営元にあたるGAHAKU株式会社の代表取締役も務めていると報じられています。

9月には、30分睡眠を示すための1週間の生配信でも大きな話題になりました。

堀大輔の講座は返金できるのか|高額商材の取り消しをわかりやすく解説「30分の睡眠は講師の私とごく少数であり」 そう書いていたのは、ほかでもない堀大輔本人です。 しかも今回の生配信が始まるより1年も前...

ネットでいま問題にされているのは、睡眠とは別のお金の話。

ユーチュラが8月に伝えたところでは、以前に協会員へ送られたとされるメールの画像が、Xで広まっていたそうです。

文面には「まず参加には余剰資金として最低でも200万円が必要となります」とあり、そのうち100万円は会社への贈与、残りは「固定金利15%」をつけて返す約束の「貸出金」として募る、という中身でした。

ただし、メールには発信元も送信日時も書かれておらず、本当に本人が送ったものかは分からない、とも報じられています。

一方で、2023年11月24日の本人の配信を切り取った動画では、「昨日、受講生の方にメールで送らせていただいた」と話していた、とも伝えられました。

そのメールと、いま広まっている画像の文面が同じものかまでは、確かめられていません。

その配信で本人は、「詐欺って言われたのが5つあったんですよ」と明かしたうえで、「何が詐欺じゃって思いながら」と強く言い返しています。

「お世話になったって思ってんだよ、こっちは受講生の方に」とも話していました。

8月の生配信でこのメールについて質問が届いたときも、本人は「いや、なしで」と取り上げず、説明はされていません。

 

そこへ出てきたのが、冒頭の「3年消えれる」でした。

発言を起こした投稿には動画が付いておらず、いつの配信のどの場面なのかは書かれていません。

ただ、広まる前日の10月29日の昼すぎには、すでに「以前は『お縄になったら世間から3年消えれるから気楽』などと言ってた」と書いている人がいました。

少なくとも、10月30日にはじめて出た言葉ではないようです。

 

同じ夜には、別の人がこんな報告も出しています。

過去の資金集めや投資について、証券取引等監視委員会に電話で情報を伝えた、という、その人自身の報告。

証券取引等監視委員会は、株や投資のお金の集め方に不正がないかを見張る、金融庁の中の役所です。

あわせて10月27日には、高須克弥院長も「刑事告発準備完了」とXに書いていました。

こちらは、本人が配信で、格闘技イベントで院長の息子の高須幹弥にけがをさせることを狙っていた、と受け取れる発言をしたことがきっかけで、お金の件とは別の話です。

ただ、情報を伝えた、告発の準備ができた、という段階では、何の罪も決まっていません。

本人が何をしたのか、それが罪に当たるのかどうかは、いまはまだ誰にも確かめられていないんです。

 

捕まるかどうかを決める人たち

読んでいていちばん引っかかるのは、捕まるかもしれない話を、他人ごとのように軽く話しているところ。

けれど刑事の手続きの中で、疑われている本人が決められることは、ほとんどありません。

投資の問題なら、まず証券取引等監視委員会が、関係者に質問したり、裁判官の許可を得て捜索や差し押さえをしたりして調べる仕組み。

罪に当たると判断すれば委員会が告発し、裁判にかけるかどうかは検察官が決めます。

高須院長の告発も同じで、出すかどうかは院長が決め、受け取って調べるのは警察と検察の側です。

高須克弥が堀大輔を刑事告発へ|息子ではなく父が動く理由2026年10月27日の夕方、高須クリニックの高須克弥院長が、自身のXに短い報告を投稿しました。 顧問弁護士から「刑事告発準備完了」と...

 

外から情報を伝えた人にも、その先はほとんど見えません。

証券取引等監視委員会の情報提供窓口には、「調査・検査等の実施の有無や経過、結果等についてのお問い合わせにはお答えしておりません」と書かれています。

もう一つ、「これ『証拠』ってなって」という部分。

刑事訴訟法は、本人の自白だけを証拠に有罪にすることはできないと定めていて、決め手になるのは、メールの実物やお金の流れのような、ほかの証拠のほうです。

「やったもんはやったもん」と言えば話が早いように聞こえても、本人の一言で手続きの行方が決まるわけではありません。

 

出資法なら上限3年、もう一方は5年

では、仮に罪に問われたら、本当に3年で済むのでしょうか。

ネットで名前が挙がっている法律は、主に二つあります。

ひとつは出資法です。

メールの画像を広めた投稿は、「後で返すから」とお金を集める形は出資法に触れる、と書いていました。

出資法は、法律で特別に認められた者のほかは、不特定多数の人から預り金を受け入れてはいけないと定めています。

これに違反したときの罰は、「三年以下の拘禁刑若しくは三百万円以下の罰金」。

拘禁刑というのは、それまでの懲役と禁錮がひとつにまとまった呼び方です。

もうひとつは、証券取引等監視委員会が見張っている金融商品取引法で、国に登録しないまま投資の商売をした場合は、5年以下の拘禁刑か500万円以下の罰金と決められています。

メールが本当に預り金にあたる集め方だったのかは、実際の募集の中身も含めて明らかになっていません。

違法かどうかは、どちらに当たるのか、どちらにも当たらないのかも含めて、まだ何も決まっていないんです。

そのうえで並べると、本人が口にした「3年」は、出資法の罰の上限と同じ数字でした。

けれど金融商品取引法で問われれば、上限は5年。

つまり、3年で済むとは言い切れないうえに、反対に罰金だけで終わることもあり得ます。

 

さらに刑法には、3年以下の拘禁刑を言い渡された人の刑の執行を、事情によって猶予できるという決まりもあって。

執行猶予というのは、刑務所に入るのをいったん待ってもらい、その期間を罪を犯さずに過ごせば、刑を受けずに済む仕組みのことです。

猶予の期間は1年以上5年以下で、そのあいだにまた罪を犯して刑務所行きの判決を受ければ、猶予は取り消されます。

3年以下の判決なら、1日も姿を消さないまま、何年も罪を犯さずに過ごすよう求められる道もあるんです。

 

その本人は、講座の中の動画が外に流出したことについて、10月28日に出回った切り抜き動画の中で、出した人に「覚悟しておいてくださいよ」と話していました。

人には「覚悟」を求め、自分のことは「気楽」と話す、その差に引っかかった人もいたはずです。

 

3年たっても残る記録と会社

それでは、もし刑を受けて3年がたったら、すべて元どおりになるのでしょうか。

刑法は、執行猶予の期間を何事もなく過ごせば、刑の言い渡しが効力を失うと定めています。

刑務所に入った場合は、刑を終えてから罰金以上の刑を受けずに10年たったところで、ようやく言い渡しが効力を失う決まりです。

罰金で終わった場合でも、そこまでに5年かかります。

「世間からは消えても前科は消えない」という返信もありましたが、少なくとも3年で消えるものではない、というのは条文の上でも確かです。

 

もう一つ、返信の中で名前が出ていたのが会社。

出資法には、会社の代表者が仕事の中で違反をしたとき、本人だけでなく会社にも罰金を科すという決まりがあります。

両罰規定と呼ばれるもので、金融商品取引法にも同じ形の条文があり、こちらは会社への罰金が5億円以下です。

その会社は、この騒ぎの中ですでに表に立っています。

少し前には、本人の会社の名前で、切り抜きを投稿していたファンのアカウントに映像や画像の削除を求める通達が届いた、と当のアカウントが投稿していました。

もちろん、ここまで書いた罰はどれも、罪が認められた場合の話です。

それでも返信には「経営者なのに会社のスタッフの事を何も考えないの流石です」という声もありました。

捕まったら気楽、という一言を聞いて、会社で働く人たちはどうなるのかと引っかかったのは、この人だけではないでしょう。

3年で済むのかと聞かれたら、答えは「本人が決められる長さではない」です。

「気楽」と聞いてあきれた気持ちのまま、決まるべき場所で決まるのを見届けたいですね。