家の棚や窓辺に置いた小さな緑に、最後に水をあげたのはいつだったか覚えていますか。

俳優の桐谷健太が、7年間ちょこちょこ水をあげてかわいがってきた多肉植物が、じつは造花だったと明かしました。

「本当に強いなって」と感心していた相手は、最初から枯れることのない一鉢だったというのです。

ネットでは笑い声と一緒に、「7年育ててどのタイミングで気づいたんか気になる」と首をかしげる人も出ています。

同じ目に遭った人は、ほかにもいて。

こちらは3年ほど育ててきた多肉植物が、造花だったという投稿。

年数こそ違いますが、どちらも「育ててきた」と言い切れるくらい、毎日の暮らしの中でちゃんと世話をしていたんですよね。

今回は、桐谷健太の多肉植物が7年も元気に見えた理由を、多肉植物という植物の性質からわかりやすく解説していきたいと思います。

7年水をあげた多肉植物は造花

話が出たのは、2026年11月5日に放送された日本テレビ系「DayDay.」でした。

報道によると、桐谷健太は7年前に引っ越しをしたとき、「ガラスに入った多肉植物を買った」そうです。

片手に乗るくらいの小さなガラスの植木鉢に、多肉植物が植えられていたとのこと。

桐谷健太はその植物をかわいがり、「水をちょこちょこあげた。7年育てた。本当に強いなって」と、枯れる気配のない姿に感心していました。

ところが、「近くで見たら造花だった」。

「近くで見たらつなぎ目があることに気付いた。でも本当にわからないと思いますよ」と振り返っていて、かなり精巧な作りだったようです。

しかも、話には続きがあります。

番組でその多肉植物の写真を紹介したところ、「知り合いのパパ」から「ぼくのも造花でした」と連絡があり、その人は10年水をあげていたそうです。

上には上がいて、10年。

「いつ気づいたのか」も気になるところですが、報道に出ているのは「近くで見たら」まで。

植物だと信じて水を運んでいた話は、職場でも起きています。

出社するたびに毎日水をあげていた花が造花だった、という投稿です。

毎日まず水をあげてから仕事を始める、その丁寧な習慣がまるごと造花に向いていたと思うと、笑っていいのか労っていいのか迷ってしまいますね。

この話には、だまそうとした人も、手を抜いた人も出てきません。

 

変わらない姿は多肉植物の取り柄

それにしても、7年。

ネットには「本当にかわいがっていたら、生きていないことに一ヶ月もあれば気づくのよ」という声もあり、そこにはうなずきたくなる人も多いはずです。

ただ、相手が多肉植物だったことを考えると、話の見え方は少し変わってきます。

多肉植物は、葉や茎に水をたっぷりため込んでおける植物です。

マイナビ農業の解説でも、多肉植物には「葉や茎に水分を大量に蓄える性質がある」と書かれています。

そのぶん水やりの回数が少なくて済み、見た目もあまり変わらないまま長く楽しめるのが特徴。

「手がかからない」「丈夫」が売り文句になるのも、そのため。

ネットには、30年前に会社で花関係の社内ベンチャーをしていたという人の振り返りもあって、消費者の理想を聞いたアンケートで「水をやらないで良い、日に当てないで良い、手入れが不要な植物」という答えが出たそうです。

多肉植物は、その理想にいちばん近いところにいる植物でしょう。

7年たっても枯れずに同じ姿でいることは、多肉植物を育てている人の目には「うまく育っている」サインに見えます。

桐谷健太の「本当に強いなって」という感想は、本物の多肉植物を育てている人が、ふつうに口にするのと同じ言葉なんですよね。

造花は、多肉植物がほめられる「変わらないこと」まで、そっくり真似していました。

 

とはいえ、本物の多肉植物にも、ちゃんと変化は起きていて。

海外の多肉植物専門店のサイトでは、ロゼットの形をした多肉植物は真ん中から新しい葉が出てきて、外側の古い葉はしおれて落ちていくと説明されています。

変化はあっても、ゆっくりで小さい。

そして人の目は、変わっていないものにまで、変化を見つけてしまうことがあります。

別の家では、洗面所に飾った造花の多肉植物に3年ほど水をあげていた夫を、奥さんがそっと見守っていました。

成長しないはずの植物に、成長を見てしまう。

かわいがっている人ほど、そう見えてしまうのかもしれません。

展示会でも聞かれた「これ、ホンモノですか?」

では、そもそもそこまで見分けがつかないものなのでしょうか。

桐谷健太が買った品物がどこのものだったのかは、報道に書かれていません。

ただ、ガラスの器に多肉植物の造花を入れたインテリアは、何年も前から売られています。

たとえば、横浜の造花メーカーの株式会社ポピーは、2014年2月に「デコリウム」という商品を発売しました。

多肉植物をリアルに再現した人工植物と、手のひらサイズのガラスの器を組み合わせて飾るもの。

会社のプレスリリースによると、発売前の2013年9月にギフトショーで展示したところ、「これ、ホンモノですか?」という声が来場者から寄せられたそうです。

同じ紹介文には「お手入れ一切不要」「結露やカビの心配もなく」という言葉も並んでいました。

ネットには「カビてないか?」と心配する声もありましたが、メーカーの説明は水をあげない前提の話で、7年水を足し続けた場合のことまでは書かれていません。

 

売り場の様子も、ここ数十年でずいぶん変わってきました。

さきほどの社内ベンチャーの人は、アンケートの結果に「それなら精巧な造花を作った方が儲かるんじゃないか?」と皮肉を言ったところ、当時の部長から「やはり生きている植物と造花では違う」と返されたそうです。

そのうえで、いまの売り場をこう書いています。

園芸コーナーに造花の鉢植えが並んでいれば、本物だと思って連れて帰る人がいても無理はありません。

しかも多肉植物は、本物からして作り物のように整った形をしている植物です。

ぷっくりした葉、きれいにそろった並び方。

本物がもともと作り物めいている以上、見た目だけで分けるのはなかなか難しいところ。

 

本物だったら7年もったのか

もし桐谷健太の多肉植物が本物だったら、7年間ずっと元気でいてくれたでしょうか。

多肉植物を枯らしてしまう原因として、よく挙がるのが水のあげすぎです。

ホームセンターで植物の売り場に立つ人も、多肉植物の失敗の原因のほとんどは根腐れと水のやり過ぎだと書いていました。

冬の水やりは、2週間に1度で充分なのだとか。

マイナビ農業の解説でも、多肉植物は「根が常に湿った環境に置かれると急速に細胞が傷み、根腐れを引き起こしやすくなります」と書かれています。

同じ記事には、底に穴のないガラス容器だと「水が循環しないため水が腐りやすく」なるという注意も。

桐谷健太のガラスの器に、水の抜ける穴があったかどうかは分かっていません。

それでも、水の逃げ場の少ないガラスの器に水をちょこちょこ足していくのは、本物の多肉植物には心配なやり方です。

7年分の「ちょこちょこ」を受け止められたのは、造花だったからこそだったのかもしれません。

 

海外でも、よく似た話が話題になったことがあります。

2020年、アメリカ・カリフォルニア州の女性が、2年ほど世話をしてきた多肉植物を植え替えようとして、それが造花だったと気づいたとFacebookに投稿しました。

水やりの予定まで決めて、葉まで洗っていたと報じられていて、話題になったあとは地元のホームセンターから本物の多肉植物が届いたそうです。

桐谷健太は近くで見てつなぎ目に気づき、アメリカの女性は鉢から抜いてみて気づいた。

どちらも、ふだん眺めている距離ではなく、手に取れるところまで近づいて初めて気づいた話でした。

海外の造花の販売店の解説では、葉と茎のあいだに接着剤の線が見えるものは作り物らしく見え、本物は茎と葉のつながり方が自然だと説明されています。

本物かどうかを見分けたいときは、次の3つを思い出してみてください。

  • 葉の付け根が、継ぎ目なくつながっているか
  • 真ん中から、新しい葉が出てきたことがあるか
  • 外側の古い葉が、しおれて入れ替わったことがあるか

どれにも見覚えがなければ、ちょっとあやしいところ。

本物だったなら、それはそれで、長いあいだ元気でいてくれた証拠になります。

7年気づかなかった桐谷健太の話を笑いながら、自分の家の小さな緑のことも、ちょっと近くで見てみたくなりますね。