ブレイキングダウンで知られる料理人のこめおに「説教した」と投稿したレオが、いまネットで逆に説教されています。

こめおが自分の店を閉めると発表してから、2日後のこと。

投稿にはこめおの写真が添えられ、その横には「お前はこれからこめおじゃなくて、サルモネラゲリオとして生きていけよ」という言葉が並んでいました。

 

返ってきたのは笑いではなく、「食中毒になった方々に対して失礼過ぎるだろ」といった声ばかり。

店は閉まり、営業停止の期間も終わって、外から見ればひと区切りがついたようにも見えます。

それでも多くの人が、まだ笑えないと感じたのはなぜなのでしょうか。

今回は、こめおに説教したレオが逆に説教されている理由を、症状が治まったあとも体に残るサルモネラの話から、わかりやすく解説していきたいと思います。


「茶化すのはあかん」が並んだ夜

投稿が出たのは、土曜の夜でした。

写真のこめおは丸刈りで白いTシャツを着て、少しうつむいたまま座っています。

その表情を「笑っている」と受け取った人もいて、「反省してないだろこれ」という書き込みも見られました。

 

ただ、いちばん多かったのは、こめおへの声ではありません。

「食中毒って普通に命に関わることもあるのに、それをネタにするってどういう神経してるんだろう」

「被害者が多くいる中で、今回の事件をネタにするのは非常識だと思います」

矛先が向いていたのは、食中毒を笑いのネタに変えようとした一言のほうでした。

「レオは他人に説教できるような立場になったのか?」と、説教という言葉そのものに引っかかる声も出ています。

「今回の件に関してはBDでお前らが不意打ちして炎上してきた話とは訳が違う」と書いた人もいて(BDはブレイキングダウンのこと)、体を壊した人がいる話だという一点で、反応はほぼそろっていました。

短い一言ですが、怒っていた人たちの気持ちがいちばん素直に出ている気がします。

 

2026年8月22日と23日、東京・港区の麻布十番納涼まつりで、こめおの店「割烹こめを」が作った冷やし蟹ラーメンが売られました。

それを食べた人たちが次々に体調を崩し、港区は9月3日、サルモネラ属菌による食中毒と断定しています。

港区が公表した患者は78人で、入院した3人も、公表の時点ですでに退院していたそうです。

店には、そのまま7日間の営業停止が命じられました。

こめおは9月5日に丸刈りの姿で謝罪の動画を出し、10月1日には店を閉めると発表。

そして翌2日、役員を務めていた調味料の会社からも退くと伝えていました。

レオの投稿は、その次の日の夜に出たものです。

なお、10月3日の夜の時点で、こめお本人はこの投稿について何も書いていません。


閉店の文にあった「今も」の一語

説教ポストを見て、こう思った人もいたのではないでしょうか。

店まで閉めたんだから、もう笑い話にしてもいい頃じゃないか、と。

実際、閉店や役員の退任は、外から見ると「けじめ」に映ります。

閉店は急に決まった話でもなく、9月5日の謝罪動画の時点で、こめおは店を閉めることも「視野に入れて」いると話していました。

そこからひと月近く考えて出した答えが、10月1日の閉店だったということでしょう。

 

ところが、こめお本人が10月1日に出した閉店の文章には、まったく逆のことが書かれていました。

画像になっている文章の続きには、こう書かれています。

「これは、今回のことをなかったことにするためでもありません。閉店すれば責任を果たせるとも思っていません。」

同じ文章には、「美味しい料理を作ることよりも前に、安全に食べてもらうこと」が当たり前の責任だった、という反省も書かれています。

そして最後は、こんな言葉で終わっていました。

「そして、今回のことで苦しみ、今も苦しんでいる皆様。本当に申し訳御座いませんでした」

 

目が止まるのは、「今も苦しんでいる」の「今も」という言葉です。

店を閉める本人が、終わったとは一度も書いていません。

翌日の役員退任の報告でも、「役員を辞めたからといって、今回の件の責任を取ったことになるわけではありません」と、同じことを繰り返していました。

 

説教ポストは、閉店を一つの区切りとして、そこから先を笑いへ持っていこうとした投稿に見えます。

レオにしてみれば、落ち込んでいる知り合いを軽口で励ますくらいのつもりだったのかもしれません。

でも、終わりの合図を出したのは、食べた側でも店の側でもない第三者でした。

あの投稿が燃えたのは、言葉の悪さより、本人でさえ「今も」と書いているところへ、外から「もう笑っていい」を置いてしまったせいだと思います。


症状が消えても菌は出ていく

笑えないと感じた人が多かった理由は、食べた人の体の側にもありました。

では、食べた人の体は、いまどうなっているのでしょうか。

一人ひとりの具合は、もちろん外からは分かりません。

ただ、サルモネラという菌そのものについては、国の機関が詳しく書いています。

発表をまとめたこの投稿は「東京都」と書いていますが、公表したのは港区の保健所でした。

症状は下痢や腹痛、発熱で、国立健康危機管理研究機構の説明では、ふつうは1日から4日ほどで治まるとされています。

港区の調べでは、今回の人たちが具合を悪くしたのは8月23日の未明から26日の午後にかけてでした。

ここだけ読むと、数日寝込めば終わる病気に見えますよね。

ただ同じ機構の詳しい解説には、子どもやお年寄りは重くなりやすく、治るのも遅れがちだとも書かれています。

 

ところが、食品安全委員会が国の調査としてまとめた資料には、もう少し先のことまで書かれていました。

症状がよくなったあとも、およそ半分の人は2週間から4週間、便に菌が出続けるというのです。

しかも、10人に1人から2人は、それが数か月に及ぶとのこと。

本人はもう元気なのに、トイレのたびに菌が出ている状態が続く。

そのため小さな子どもやお年寄りがいる家では、うつしてしまう心配まで残ります。

同じ資料には、ごく少数の人で、関節炎や結膜炎、微熱などが長く続くことがある、とも書かれていました。

国立健康危機管理研究機構の解説も、強い下痢止めは菌が体から出ていくのを遅らせることがあるので使わない、という書き方をしているほど。

治ったかどうかを、おなかの具合だけでは決めきれない病気だということが伝わってきます。

 

港区が数えた78人という数も、実際より少ないのかもしれません。

体調を崩したと申し出た人は、報道では一時116人と伝えられていました。

そこから港区が患者として数えたのが78人です。

世界保健機関の資料を日本の検疫所が訳したページには、サルモネラにかかった人の6割から8割は、集団感染の一人として数えられないか、診断そのものを受けずに終わる、と書かれています。

78という数は、あくまで調べがついた人の数。

数えられなかった人の体にも、同じ時間は流れているはずです。


法律が数える5年という時間

店が閉まっても、体を壊された人の権利がそこで消えるわけではありません。

民法は、他人に損害を与えたときの賠償を求める権利について、何年で消えるかを決めています。

ふつうは、被害と相手を知ったときから3年で、それとは別に、出来事から20年たつと請求はできなくなる、という決まり。

ところが、人の命や体を傷つけた場合だけは特別で、民法第724条の2が3年を「五年間」に延ばしています。

 

今回の件で、誰がどんな請求をするのかは、もちろん外からは分かりません。

話し合いがどこまで進んでいるのかも、報道には出てきていないところ。

ただ、体を壊された側が賠償を求められる期間は5年あって、この件は法律の上でもまだ途中です。

この報告の中でも、こめおは「被害に遭われた方々へのご対応、原因の究明、そして再発防止に努めること」を、これからも続けると書いていました。

こめお本人にとっても、まだ終わった話ではないんですよね。

 

この話は、こめおの件にかぎりません。

お祭りの屋台でも、旅先の店でも、食中毒は誰にでも起こりえます。

もし自分や家族がかかってしまったら、覚えておきたいことは4つ。

  • 症状が治まっても、しばらくは菌が出ている前提で、トイレのあとの手洗いを続ける
  • 小さな子どもやお年寄りがいる家では、とくに気をつける
  • 同じものを食べた人が何人も具合を悪くしたら、地元の保健所に伝える
  • 受診した病院や食べた店の記録は、すぐに捨てずに残しておく

今回も、港区の保健所が動き出したきっかけは、8月26日の昼すぎに届いた、イベントで買った冷やし蟹ラーメンを食べて体調を崩したという連絡だったそうです。

あの78人も、誰かが声を上げたところから数え始められた人数でした。

お店とのやり取りで困ったときは、消費者ホットラインの188番に電話すると、近くの消費生活センターにつながります。

なお、僕は専門家ではないので、体調に不安があるときは医療機関で診てもらってくださいね。

 

レオの投稿に悪気があったのかどうかは、本人にしか分かりません。

ただ、食中毒を笑い話にしていいかどうかを決められるのは、投稿した人でも店を閉めた人でもなく、あの夏にラーメンを食べた人たちです。

その人たちが自分から笑える日が来るまでは、そっとしておきたいところですね。


この記事で参考にした情報

  • 麻布十番納涼まつりの食中毒について港区が公表した内容と、営業停止を伝えた各社の報道(2026年9月3日配信分)
  • こめおの閉店発表と役員退任を伝えたデイリースポーツ・オリコン・スポニチ・日刊スポーツの記事(2026年10月1日〜3日配信分)
  • 国立健康危機管理研究機構「サルモネラ感染症」(症状の続く期間と、子ども・高齢者の重症化)
  • 食品安全委員会「食品により媒介される感染症等に関する文献調査報告書」サルモネラの項(回復後に菌が出続ける期間と割合)
  • 厚生労働省検疫所「サルモネラ(チフス以外)について(ファクトシート)」(診断されない患者の割合)
  • 民法第724条・第724条の2(損害賠償を求める権利が消えるまでの期間)