ニュースの見出しを見て、どこが変わったのか一瞬わからなかった人も多いのではないでしょうか。

俳優の新田真剣佑が、2026年10月31日、自身のインスタグラムのストーリーズで「前田真剣佑」への改名を発表しました。

下の名前はそのままで、変わったのは名字の最初の字だけ。

「新」が「前」になったので、ネットでは「新しいのから前のに変わったんか」「後退した感じある」と、文字の意味をそのまま受け取った声まで出ています。

ところが調べてみると、この「前」は後退どころか、彼が生まれたときから持っている本名の字でした。

今回は、新田と前田がそれぞれどこから来たのかを順番にたどっていきたいと思います。

新田の「新」は『ちはやふる』の役名

まずは、これまで使ってきた「新田」の出どころから見ていきましょう。

彼が日本で俳優の仕事を始めたのは2014年で、そのころは名字のない「真剣佑」という名前で活動していました。

本名は前田真剣佑と紹介されていて、仕事では名字を付けずに下の名前だけを使っていた形。

その名前に名字が付いたのは、2017年5月のことです。

所属事務所をトップコートへ移ったのに合わせて、「新田真剣佑」と名乗るようになります。

そのときTwitterに出した報告は「この度、トップコートに移籍をいたしました。そして名前も新田真剣佑(あらた まっけんゆう)に改名しました。今後も新田真剣佑をよろしくお願い致します」というもの。

移籍と改名のお知らせだけで、なぜ新田なのかは、この時点では書かれていませんでした。

映画情報サイトのciatrも、当時は「なぜ前田でなく新田?」と話題になっていたと紹介しています。

 

答えが本人の口から出たのは、1年あまりあとの2018年6月で、場所は滋賀県の近江神宮で開かれた映画『ちはやふる -結び-』の取材会でした。

新田の「新」は、彼が演じた綿谷新という役から取った字だったんです。

綿谷新は、競技かるたに打ち込む主人公の幼なじみで、主人公たちにかるたを教えた人物として描かれています。

報道によると、彼は事前にダイレクトメッセージで、原作者の末次由紀さんに「新」の字を使ってよいかを尋ね、快く認めてもらっていたそうです。

『ちはやふる』は、日本で芝居をやっていこうと決めるきっかけになった作品で、その役の名前を残したかったとのこと。

込めた意味は「初心忘るべからず」だと説明されていました。

実際、彼はこの映画シリーズの綿谷新役で、2017年1月に日本アカデミー賞の新人俳優賞を受けています。

名前と賞の両方を、同じ作品からもらったようなものです。

 

ひとつの作品への思い入れを、毎日名乗る名前に入れてしまったわけですね。

当時、その由来を知って「それでこの名前かぁ」と書いたファンもいました。

その名前を今回外したので、「ちはやふるから卒業するのね」と寂しがる人が出るのも無理はありません。

 

1年前には「原点でしかない」と語っていた作品

ただ、卒業と言い切るには少し早い気がします。

2025年8月20日、日本テレビ系のドラマ『ちはやふる-めぐり-』の第7話に、彼は名人になった綿谷新として登場しました。

映画のシリーズのその後の世界で、同じ役を演じたかたちです。

撮影については「久しぶりに帰ってきたんだなと思いながら撮影してました」と振り返り、「10年経っても、やっぱりかるたは体に染みついていたので、ブランクを感じなかったです」とも話していました。

番組のTikTok公式アカウントに上がったインタビューで「『ちはやふる』という作品は?」と聞かれた彼は、こう答えています。

「原点でしかない」

続けて「『ちはやふる』がなかったら今の僕はいないというくらい。名前もいただきましたし。とても大きな存在です。この作品は」と話したとオリコンが伝えています。

そこから1年と少しで、その「いただいた名前」を外しました。

ここだけ並べると、作品から離れたように見えてしまいますよね。

 

ただ、今回の発表文には、こんな一文も入っています。

「これまで歩んできた道を大切にしながら、原点を忘れず、これからも自分らしく挑戦を続けていきたいと思います」

新の字を外す報告の中に、「原点を忘れず」と書いてあるんです。

「新田」を名乗ったときの「初心忘るべからず」、ドラマに戻ったときの「原点でしかない」、そして今回の「原点を忘れず」。

名前とこの作品の節目のたびに、この人は「初心」「原点」という同じ向きの言葉を置いてきました。

今回の「原点」が何を指しているのかは、発表文には書かれていません。

『ちはやふる』のことなのか、それとも別のものなのかは、本人にしかわからないところです。

ひとつ言えるのは、発表文が「原点を忘れず」と書いている以上、新の字を外したことを「原点を捨てた」と読む材料は無いということ。

前田は父・千葉真一が名乗らなかった本名

では、新しく付いた「前田」は、どこから来たのでしょうか。

これは彼の本名の名字で、父親である俳優の千葉真一の本名の名字でもあります。

千葉真一の本名は、前田禎穂です。

東京スポーツによると、千葉真一が東映ニューフェイスとして入社した1959年当時、芸名を付けたのは東京撮影所の所長だった山崎真一郎さんでした。

東映ニューフェイスというのは、映画会社の東映が新人俳優を公募して育てていた仕組みを指します。

「千葉から来たから名字は千葉」、下の名前は所長の名前から2文字を取って「真一」にしたそうです。

父の芸名は、本人ではなく会社の人が付けた名前でした。

その名前のまま、2021年8月に亡くなるまで活躍を続けた俳優です。

 

息子は、9年前に自分で選んだ名字を、今度は自分で家の名字に替えています。

父が芸名にしなかった「前田」を、息子が仕事の名前として名乗る形です。

父との縁を大事にしてきた形跡は、ほかにも残っています。

2001年、父がフジテレビ系のドラマ『できちゃった結婚』に出ていたころ、5歳の真剣佑は撮影現場に遊びに来ていて、主演の竹野内豊に抱っこしてもらったそうです。

その20年後、2人は2021年の月9ドラマ『イチケイのカラス』で初めて共演し、竹野内豊は「今回、あれ以来ぶりに会ったら、こんなに大きくなっていた」と話しています。

5歳のときの2ショットと、20年後に同じポーズで撮った写真を並べた投稿は、改名発表の前日にも、たくさんの反応を集めていました。

2023年1月には、弟の眞栄田郷敦と兄弟そろって結婚を発表しています。

選んだ日は1月22日で、千葉真一の誕生日でした。

ちなみに、その弟の名字も「眞栄田」と書いて「まえだ」と読みます。

兄は前田、弟は眞栄田で、読みは同じなのに字が違うんですね。

ネットでは「どうせ前田にするなら眞栄田にしたら兄弟同じになったのにな」という声も出ていますが、兄が選んだのは本名と同じ字でした。

 

前回も由来が語られたのは1年後

ここまで来ると、いちばん気になるのは「なぜ今なのか」ですよね。

残念ながら、今回の発表文には理由がひと言も書かれていません。

報じた各社の記事も、発表文をそのまま伝えるところで止まっています。

彼は2021年4月末でトップコートとの契約を終え、それからは海外での活動を中心にしてきました。

そして2026年7月1日、冨永愛や森星が所属する芸能事務所「Crossover」に入ったことを、自身のSNSで発表しています。

そのときの言葉は「新しい一歩としてCrossoverに所属することになりました」でした。

今回の改名は、その4か月後です。

振り返ると、2017年に「新田」を名乗り始めたのも、事務所を移ったのと同じタイミングでした。

2017年は移籍と同じ時期、今回は移籍の4か月後と、どちらも事務所の動きの近くで名前が変わっているんですよね。

ただ、これが偶然なのか、何か決めごとがあるのかは、どこにも書かれていません。

 

そして前回も、新田の由来を本人が話したのは、発表から1年あまりあとでした。

今回も、発表文に理由が無いことだけで何かを決めつけるのは早いと思います。

海外の仕事では、Netflixの実写ドラマ『ONE PIECE』でゾロを演じるなど、すでに大きな役を重ねてきた人。

海外の作品紹介では名字の付かない「Mackenyu」の表記がよく使われていて、名字の違いに戸惑うのは、主に日本の見出しを読む側かもしれません。

ネットでは「何回名前変えるの!?」という声もありますが、名前が変わるのは今回が2回目。

最初は〈名字なし→新田〉で名字を足し、今回は〈新田→前田〉でその名字を本名の字に替えた、という流れです。

 

2017年に「新田」への改名が報告された日、原作者の末次由紀さんがXにこう書いていました。

新の字を使うことを認めた本人が、9年前の時点で、呼び名がどちらでも応援は変わらないと書いていたんです。

新の字が外れても『ちはやふる』との縁まで切れたわけではない、と思える一言ですよね。

名字が変わっても、呼ぶ名前は生まれたときから同じ「真剣佑」のままというのが、なんだかほっとするところですね。