ポケモンカードを買いに行ったら、入口で「カメラに顔を向けてください」と言われたこと、ありませんか。

いま、そんな売り場が期間限定で開いています。

その売り場について「顔認証にしたら、あの連中がいなくなった」という書き込みが広まり、ネットはすっかり大勝利の空気です。

全部のお店でやってほしい、という声まで並んでいます。

ただ、公式の案内を読んでいくと、転売ヤーが消えた理由はカメラだけではなさそうでした。

今回は、ポケカの売り場の顔認証が何をしているのか、転売ヤーが消えた本当の理由はどこにあるのかを、わかりやすく調べていきたいと思います。

平和になったと言われる売り場

話題の中心は、ポケモンカードストアというお店。

ポケモン社が展開している、ポケモンカードの商品を中心に扱う期間限定のお店で、店内では無料のルール教室も開かれていて、参加するとプロモカードがもらえるそうです。

今回は2026年9月16日から10月4日まで、次の5か所で営業しています。

  • イオンモール旭川駅前(北海道旭川市)
  • イオンモール川口前川(埼玉県川口市)
  • イオンモール四條畷(大阪府四條畷市)
  • イオンモール大牟田(福岡県大牟田市)
  • ららぽーと沼津(静岡県沼津市)

30周年を記念した拡張パック「30th CELEBRATION」(カードが数枚ずつ入った袋入りの商品)の発売に合わせたお店で、初日は9月16日の発売日でした。

この30周年のパックは、公式の通販でも抽選販売になったほどの人気商品です。

 

実際に行った人の書き込みを読むと、とにかく「平和だった」という声が目立ちます。

こちらは旭川のお店に行った人の投稿です。

入るまでは快適、ただしレジは3人で30分待ち。

正直すぎる感想で、思わず頷いてしまいますね。

 

そこへ、顔認証にしたら「あの連中」がいなくなった、という投稿が乗りました。

ここでいう「あの連中」は、転売目的で何度も並ぶ人たちのことでしょう。

来なくなった人たちの素性や国籍まで推し量る書き込みも出てきて、話はどんどん大きくなっています。

 

発売日の朝に何時間も並んで、目の前でまとめ買いされていく経験をした人なら、喜びたくなるのは当然です。

ポケカの売り場は、買い占めや、同じ人が買い終わるとすぐ列の最後尾へ戻って買い直すループ買いで、長いあいだ荒れていました。

では、あのカメラは何を見て、誰を止めているのでしょうか。

顔認証が見ているのは「今日2回目か」

ポケモンカードゲームの公式サイトには、顔認証についての案内がそのまま載っています。

対象は小学生以上で、確認するのは入店するときと、入店整理券を受け取るときの2回。

未就学児は顔認証の対象外で、保護者と一緒ならそのまま入店できると報じられています。

同じ人の入店と整理券の受け取りは、1日1回(1枚)まで。

2回目の入店や2枚目の整理券をシステムが見つけて画面に通知が出たら、判定に基づいて一律に入店を断る、と書かれています。

システムの通知とは別に、スタッフが複数回の入店に気づいたときも、個別に声をかける場合があるそうです。

 

顔認証に同意しない人は、入店も整理券の受け取りもできません。

顔を撮られること自体に抵抗がある人もいるはずで、そういう人には入らないという道しか残っていない形。

お手洗いなどで一時的に外へ出るときは、出る前にスタッフへ声をかける決まりで、声をかけずに出ると戻れなくなるそうです。

お会計をしないまま出た場合も、再入場はできないとのこと。

 

行った人の説明が、いちばん短くまとまっていました。

次の日は、また顔の登録からやり直し。

お店が取るのは「入店回数」と「顔画像データ」の2つで、目的の範囲で管理し、一定期間が過ぎたらすぐに消すと書かれています。

案内には、名前や住所を聞くことも、身分証を見せることも書かれていません。

 

カメラが分かるのは、今日すでに来た顔かどうかだけ。

その人がどこの誰なのか、どの国の人なのかを確かめる仕組みは、案内のどこにも書かれていませんでした。

なお、ネットには「マイナンバーの顔認証導入」と書いた投稿もありましたが、マイナンバーカードが出てくるのは、ポケモンの公式通販サイト、ポケモンセンターオンラインの抽選のほうです。

30周年商品の抽選には、マイナンバーカードで本人確認を済ませた人の枠があり、そちらの当選数が多く用意されていると報じられていて、お店の入口の顔認証とは別の仕組み。

目玉のパックは列に並んでも買えない

今回の目玉の30th CELEBRATIONは、このお店では発売前の抽選販売になっていました。

LINEの中で開く申し込み画面(ミニアプリ)で8月21日から9月8日まで申し込みを受け付け、当たった人だけが、決められた日の10時から10時半のあいだに買いに行く形です。

買えるのは1人10パックまでで、複数の店や日付への応募は控えるように書かれ、当選も1つだけ。

当日はLINEの購入整理券の画面をスタッフが操作する決まりで、スクリーンショットや印刷では買えません。

お知らせには、はっきりこう書いてありました。

「発売日における一般販売の予定はございません」

今後の一般販売も未定とされています。

 

四條畷のお店に行った人も、同じところに気づいていました。

抽選に当たっていない日は、誰も30周年の拡張パックを買えないみたい、とのこと。

行列の先に、いちばん人気の商品が最初から置かれていないんです。

転売目的の人から見れば、朝から何時間並んでも、目当ての箱には、最初から手が届きません。

 

しかも、顔認証は今回はじめて入ったわけではないんです。

ポケモン社が導入を発表したのは2026年7月24日で、7月31日から8月16日まで開いていた前回の5店舗(イオンモール名取、調布PARCO、イオンモール東浦、イオンモール広島府中、イオンモール筑紫野)から使われています。

前回から顔認証だったうえに、その前の回はレジまで2時間近くかかった、という証言です。

ループ買いを止める道具として、顔認証がちゃんと仕事をしてきたことは、こういう声からも分かります。

ところが、前回も顔認証をやっていたのに転売目的らしい人を見かけた、という書き込みも出ていました。

同じ顔認証のまま、今回は目玉の商品が列の先に置かれていません。

ネットにも「顔認証と30周年のパックが売ってないのも関係ある気がする」という声がありました。

 

つまり、転売ヤーが消えた本当の理由は、2つが重なったことにあると僕は見ています。

1日1回しか入れない顔認証と、目玉を列に並べない売り方です。

どちらか1つだけを勝因にすると、次に人気商品が抽選なしで店頭に並んだとき、顔認証だけで同じように静かになると思い込んでしまいます。

駅で同じことをしたら取りやめになった

転売ヤーが消えたのが顔認証のおかげなら、ほかの店にも広げれば同じことが起きるはず、と考えたくなりますよね。

全部のお店でやってほしい、という声が出るのも無理はありません。

ただ、顔で人を見分けるカメラは、使う場所によって受け止められ方がまるで違ってきます。

 

2021年7月、JR東日本は駅の防犯カメラで顔認証を使い、過去に重い罪で服役した人なども検知の対象にしていました。

9月21日にこれが報じられて批判が集まると、翌日には、その人たちの検知を取りやめたと各社が伝えています。

日本弁護士連合会も、その年の11月に鉄道での顔認証の利用中止を求める声明を出しました。

 

駅は、通勤や通学で毎日通る人にとって、避けて通れない場所です。

一方、ポケモンカードストアは、入口で説明を読んで同意した人だけが入るお店で、嫌なら入らないという選び方が残されています。

数えているのも、1日に何回来たかだけ。

同じ顔認証でも、ここまで条件が違えば、同じものとして扱うのは難しいんです。

 

個人情報の扱いを見張る国の機関、個人情報保護委員会は2023年3月に、防犯のために顔で人を見分けるカメラを使うときの注意点をまとめました。

その資料では、目や鼻や口の位置と形などから取り出した顔の特徴のデータを、法律上の個人情報にあたるものとして扱っています。

そのうえで、カメラによる検知は「あくまでも近似性による推測に基づくもの」で、同じ人だという事実を示すものではない、とも書かれていました。

よく似た別の人を、同じ人と判定してしまうことがありうる、という意味です。

しかも同じ資料には、肌の色などによって検知の正確さに差が出てしまった例がある、という記述も。

カメラが国籍まで見分けている、という読み方とは、まるで逆向きの注意書きです。

 

同じ資料は、カメラを使う会社の名前や使う目的を、撮られる前に目に入る場所で示すことが望ましい、という考え方も示していました。

ポケモン社の案内は、この仕組みを使う目的として、安心で安全な買い物の環境、防犯、入店と購入のルールを守ってもらうこと、の3つを挙げています。

データの扱いについては、「一定期間後に消す」と書いてあるのに、それを読まずに話を広げている人がいる、と指摘する声もありました。

ただ、その「一定期間」が何日なのかは、案内には書かれていません。

全国の店にそのまま広げるなら、日数や、誰がデータを見られるのかまで、先に説明しておく必要が出てくるでしょう。

顔認証の売り場へ行く前に

行った人の報告では、入るまでの流れはこの順番だったとのこと。

  1. 整理券の列に並ぶ
  2. 顔を登録する
  3. 整理券をもらう
  4. 指定の時間に並ぶ
  5. 顔認証をして入る

お店の決まりで、とくに覚えておきたいのは次のとおりです。

  • 入れるのは1日1回で、並び直しはできない
  • トイレなどで出るときは、出る前にスタッフへ声をかける
  • お会計をせずに出ると、再入場できない
  • 小学生以上は顔の登録が必要で、未就学児は対象外
  • 顔認証に同意しないと、入店できない
  • 30th CELEBRATIONは抽選に当たった人だけで、一般販売の予定は出ていない
  • 当選した人は、LINEの購入整理券の画面をスマホで出せるようにしておく

整理券の時間は、日によってかなりばらつきがあります。

行った人の書き込みを見るかぎり、お昼すぎに着いて1時間後の枠だった人もいれば、夕方の枠になった人もいました。

小さな子どもと行くなら、着いたらまず整理券の時間を確かめて、待つあいだの過ごし方を決めておくと、ぐずられずに済むかもしれません。

 

同じ顔かどうかを正確に見比べるためか、眼鏡を外すように言われた人もいたそうです。

顔のデータの扱いが気になる人は、公式の案内から読めるポケモンのプライバシーポリシーを先に確かめておくと安心ですね。

顔認証が、ループ買いを止めて列を静かにした一因なのは確かです。

ただ、カメラが見ているのは、その人がどこの誰かではなく、今日2回目かどうかだけでした。

10月4日までにお子さんと行く予定があるなら、トイレに立つ前のひと声だけ覚えておいてくださいね。

 

この記事で参考にした情報

顔認証の決まりと売り方は、次の公式の案内で確かめています。

  • ポケモンカードゲーム公式サイト「ポケモンカードストア、新店登場!」(顔認証システムの導入および入店・購入ルールに関するお知らせ)
  • ポケモンセンター公式サイト「【ポケモンカードストア】9月16日(水)発売 ポケモンカードゲーム MEGA 拡張パック『30th CELEBRATION』の事前抽選について」(2026年8月21日)
  • 個人情報保護委員会「犯罪予防や安全確保のための顔識別機能付きカメラシステムの利用について」(2023年3月)
  • 日本弁護士連合会「鉄道事業者における顔認証システムの利用中止を求める会長声明」(2021年11月25日)