timeleszのCM6社削除|連帯責任という決まりを探してみた

6つの会社が、timeleszの広告を公式サイトから下ろしました。
きっかけは、メンバーのひとりが逮捕されたこと。
残った7人は、ひとりずつ自分の言葉で謝罪の文章を出しています。
その流れを見ていた人たちが、そろって同じ言葉を書いていました。
「連帯責任」。
悲しいけどそれがグループで活動するってことなんだよね、と書いている人もいて、そう言われると納得してしまいます。
ただ、その連帯責任という決まりは、いったいどこに書いてあるのでしょうか。
気になって探してみたら、思っていたのとはずいぶん違う場所にありました。
今回は、あの広告の現場で何が起きたのかと、連帯責任という言葉の中身について、わかりやすくまとめていきたいと思います。
消えた広告は1人のものも8人のものもあった
timeleszの猪俣周杜さん(25)が逮捕されたのは、9月19日でした。
報道によると、その前の日の夜、東京・江東区のコンビニの駐車場に停めた車の中で、知人女性の顔を殴ってけがをさせた疑いが持たれています。
容疑は傷害。
所属するSTARTO ENTERTAINMENTは同じ19日に、猪俣さんの謹慎と活動休止を発表しました。
20日には、残る7人の連名でファンクラブサイトにコメントが出ています。
「全員、あまりの衝撃に言葉を失っています」という書き出しだったと報じられました。
そして21日には、7人がそれぞれ個人のブログでも謝罪の言葉を書いています。
広告が動き出したのは、それより少し早い時期でした。
スポーツニッポン(2026年9月21日配信)は、6つの会社が公式サイトから画像を削除したと伝えています。
timelesz猪俣容疑者出演CMが“全滅”Google、ABCマートなど6社がサイトから画像を削除
▼詳しい内容は画像をタップ
— スポーツニッポン新聞社(スポニチ)【公式】 (@sponichiannex) September 21, 2026
名前が挙がっているのは、ABCマート、日清食品、ByGLOW、AOKI、モバイルバッテリーを貸し出すCHARGESPOT、そしてGoogleでした。
ここで少し引っかかるのが、消えた広告の顔ぶれが、そろっていないところです。
- ByGLOW(発酵美容サプリメントのブランド)……猪俣さんがひとりで務めていたアンバサダー
- 日清食品「チキンラーメン」……猪俣さん、橋本将生さん、篠塚大輝さんの3人
- ABCマート、AOKI……8人そろって出演
グループへの罰として動いたのなら、消えるのは8人で出ているものだけのはず。
ところが実際には、ひとりで出ているものも、3人で出ているものも、同じように下ろされました。
共通するのは人数ではなく、猪俣さんが写っているかどうか。
そこだけだったんです。
この日、ネットにこんな言葉が流れていました。
「グループ全員でCM出てたら1人だけ消しゴムマジックって訳にいかないし、企業としては仕方ないよな」。
撮り終えた写真も動画も、ひとりだけをあとから抜くことはできず、抜きたければまるごと撮り直すしかないんです。
だから橋本将生さんと篠塚大輝さんが出ているチキンラーメンも一緒に止まったわけで、二人が何かをしたからではなく、同じ画の中にいたから。
AOKIは「まだ決まっておりません」と答えている
SmartFLASH(2026年9月21日配信)の取材に、AOKIの広報がこう答えていました。
現時点ではまだ決まっておりません。今後の状況を鑑みたうえで検討させていただきます。店頭のポスターの掲出は一時的に取り下げております
出典:SmartFLASH(2026年9月21日配信)
読み返してみると、AOKIは切ったとはひとことも言っていませんし、「一時的に」という言葉が戻す道を残しています。
ByGLOWの回答も似た形で、「当社は報道を受け、当該タレントを起用した広告表現の掲出を停止しております」というものでした。
止まっているのは広告表現で、契約の話ではありません。
じつは、取材に答えている会社は、どこも契約を解除したとは言っておらず、違約金がいくらという話も、まだどこからも出てきていない状態です。
ネットでは「全滅」という言葉が飛び交っていますが、いま確かに起きているのは、画像と動画が見えなくなったところまで。
対応の中身もよく見るとそろっていなくて、ABCマートと日清食品は19日のうちに取り下げ、AOKIとCHARGESPOTが動いたのは20日でした。
AOKIは店頭のポスターまで下ろしていますが、ByGLOWは広告表現の停止という言い方にとどめていて、誰かが号令をかけて、いっせいに動いたわけでもなさそうです。
それぞれの会社が、それぞれの判断で手を打っていました。
AOKIとの関係はSexy Zone時代の2017年から続いていて、脱退した中島健人さんやマリウス葉さんも出ていた10年来の付き合いだそうです。
その関係を逮捕から数日で断ち切ったわけでもなくて、ポスターを一度たたんで、様子を見ている段階でした。
timelesz、猪俣周杜容疑者の逮捕を受け個人ブログで謝罪 菊池風磨「胸が痛み、言葉が詰まります」
— オリコンニュース (@oricon) September 22, 2026
7人は自分の言葉で謝り、会社は「まだ決まっておりません」と答える。
謝る側と、決めかねている側が同じ日に並んでいるのが、いまの正確な景色です。
法律で「連帯責任」と呼ばれているのは夫婦の買い物だけ
では、みんなが口にしている連帯責任はどこにある決まりなのか、法律の中を探してみました。
民法は、買い物や貸し借りから、結婚や相続まで、暮らしのほとんどを受け持っている法律です。
その民法の中で「連帯責任」という名前がついた条文は第761条だけで、見出しは「日常の家事に関する債務の連帯責任」となっています。
夫婦の一方が日常の家事に関して第三者と法律行為をしたときは、他の一方は、これによって生じた債務について、連帯してその責任を負う
出典:民法(明治29年法律第89号)第761条
夫婦のどちらかが日々の買い物でお金を払う約束をしたら、もう片方も一緒に払う。
連帯責任という名前を与えられたたったひとつの決まりは、スーパーのレジの話でした。
「連帯して」という言い方まで広げても、出てくる場所はいくつかの形に収まっていて、いちばん多いのはいわゆる連帯保証人。
その保証について、民法はこう書いていました。
保証契約は、書面でしなければ、その効力を生じない
出典:民法(明治29年法律第89号)第446条2項
書面でなければ効力が生じないと念が押されていて、つまり連帯保証は、自分の名前を書いて引き受けたことが、紙の上に残る形になっています。
巻き込まれるとしたら、自分がどこかに名前を書いたときです。
もうひとつの居場所が、第719条の共同不法行為でした。
数人が共同の不法行為によって他人に損害を加えたときは、各自が連帯してその損害を賠償する責任を負う
出典:民法(明治29年法律第89号)第719条
何人かで一緒にやって、誰かに損害を与えた場合の決まりです。
法律が「連帯して」と言う場面は、二つしかありません。
自分で引き受けたときか、一緒にやったときだけ。
同じ名前で並んでいたことや、同じ写真に写っていたことを理由に責任が横へ広がる条文は、探しても見つかりません。
罰を決めている刑法には、そもそも「連帯」という言葉が一度も出てこないのですが、逮捕された本人にどこまで責任が及ぶのかは、こちらの記事に書きました。
高校野球は去年「連帯責任ではない」と書き直した
連帯責任という言葉を、いちばん長く背負ってきた場所があります。
部活です。
部員のひとりが何かをして、チーム全体が試合に出られなくなる、夏になるとニュースで見たあの形。
2025年4月に日本学生野球協会が出したあたらしい処分基準は、令和5年に委員会を立ち上げて、10回の話し合いを重ねて作られたものです。
ここでいう憲章は、学生野球のルールをまとめた日本学生野球憲章のこと。
その文書の中に、連帯責任という言葉がそのまま置かれていました。
憲章違反行為をした部員のみならず、憲章違反行為をしていない部員に不利益を科すことになり、不合理な処分であるという指摘があります。いわゆる「連帯責任」の問題です
出典:日本学生野球憲章違反行為に関する処分基準(公益財団法人日本学生野球協会)
自分たちの処分について書いた文書に、しかも「いわゆる」を付けて、不合理だという指摘があります、と書いてあるんです。
あわせて作られた運用内規には、部員の大半が関わっていたり、部の活動そのものが原因だったりして、チーム全体に処分が及ぶ場合のことが、こう書いてありました。
このような場合は「連帯責任」ではなく、部員の憲章違反行為を防ぐことができなかったという点で、「野球部」自体に憲章違反行為が認められることが制裁の根拠とされています
出典:部員の憲章違反行為に対する注意・厳重注意、処分および指導・措置の運用内規(公益財団法人日本学生野球協会)
全体に及ぶときですら、根拠は連帯責任ではないということ。
問われているのは、野球部そのものが部員の違反を防げなかったという落ち度でした。
何を見て決めるのかも細かくて、関わった部員が何人いたか、その人数が部の中でどれくらいを占めるか、違反があったのはどこだったか。
令和5年の時点で硬式野球部の部員は1校あたり33.6人だそうで、同じ人数が関わっても、小さな部なら重みがまるで変わってきます。
だから人数と割合の両方を見る、と書き添えられていました。
こうなった経緯も同じ文書に残っていて、平成20年の夏の大会の直前に、一部の部員の違反で野球部を大会に出せなくするのは不合理だという共通認識ができて、違反していない部員を救う運用が始まった、とのこと。
連帯責任という言葉は、いちばん長く使ってきた場所から、少しずつ外されてきました。
「連帯責任だから」と言われたときに開く場所
同じ言い方は、timeleszにかぎらず、職場でも学校でもよく出てくるもの。
職場で言われたときに開くのは就業規則の懲戒の欄で、どんなときにどんな処分があるのかが一覧で書いてあります。
読んでみると、並んでいるのは全部「その人がやったこと」。
隣の席の人が何をしたかで自分が処分される、という項目はまず入っていません。
入っていないなら、それは決まりではなくて、お願いか、空気のほうでしょう。
その就業規則を見せてもらえるのかというところは、労働基準法の第106条がはっきりさせていました。
常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、又は備え付けること、書面を交付することその他の厚生労働省令で定める方法によつて、労働者に周知させなければならない
出典:労働基準法(昭和22年法律第49号)第106条
見やすい場所に貼るか、備え付けるか、書面で渡すか、どれかの方法で知らせなさい、という決まり。
つまり就業規則は、金庫の中にしまっておくための紙ではなくて、頼めば読めるものとして置いてあります。
ただし、就業規則そのものを作る義務があるのは、働く人が常に10人以上いる職場です。
それより小さいお店や事務所にはそもそも無いこともあって、その場合に手がかりになるのは、雇われるときに渡された労働条件の書面でしょう。
部活で言われたときは、処分基準と運用内規を、日本高等学校野球連盟のサイトでのぞいてみてください。
「日本高野連について」の中の処分基準のページにPDFが並んでいて、「連帯責任ではなく」という一行も、その中に文字で置いてあります。
野球以外の部でも、話をするときの手がかりになりそうです。
そのうえで、覚えておくと少し楽になる問いがひとつ。
連帯責任というのは決まりなのか、それともお願いなのか。
決まりかお願いかを分けて聞くだけで背負う場所がはっきりしますし、決まりなら、どこに書いてあるかを教えてもらえるはずですから。
連帯責任と言ってしまえばその先を考えなくて済みますし、誰の何が悪かったのかを一つずつ見ていく作業は、時間もかかってしんどいものですから。
それを委員会を重ねてやり直したのが、去年の学生野球の世界でした。
timeleszの7人がこれからどうなるのかは、まだ誰にも決まっていません。
AOKIの「まだ決まっておりません」は、たぶん、そのままの意味。
決まっていないものを、こちらが先に決めてしまわなくてもいいところですね。
この記事で参考にした情報
- スポーツニッポン「timelesz猪俣容疑者出演CMが“全滅”Google、ABCマートなど6社がサイトから画像を削除」(2026年9月21日配信)
- SmartFLASH「timelesz・猪俣周杜容疑者逮捕で “CM削除” ドミノ…セクゾから「10年来の関係」AOKIもポスター撤去、広報が明かした対応は」(2026年9月21日配信)
- オリコンニュース「timelesz、猪俣周杜容疑者の逮捕を謝罪「全員、あまりの衝撃に言葉を失っています」」(2026年9月20日配信)
- e-Gov法令検索「民法」第446条・第719条・第761条/「刑法」/「労働基準法」第89条・第106条
- 公益財団法人日本学生野球協会「日本学生野球憲章違反行為に関する処分基準」(令和7年2月策定・令和7年4月1日施行)
- 公益財団法人日本学生野球協会「部員の憲章違反行為に対する注意・厳重注意、処分および指導・措置の運用内規」
- 公益財団法人日本学生野球協会ほか「部員の憲章違反行為と野球部への措置の運用内規」(令和7年2月6日制定・令和7年4月1日施行)
