重岡大毅の映画の予約ゼロ|あの席は誰が埋めていたのか

映画館の座席を選ぶ画面で、まっさらに空いたスクリーンに当たったこと、ありませんか。
そのとき頭をよぎるのは、たいてい二つ。
ラッキー、と、この映画だいじょうぶかな。
2026年9月11日に公開された映画『5秒で完全犯罪を生成する方法』をめぐって、いまネットに流れているのは、後者のほうです。
「1日4回上映で予約10席」「秋田で0席」。
主演はアイドルグループWEST.の重岡大毅で、8月の結婚と第1子の報告、そしてメンバー2人の脱退発表が続いたあとの公開でした。
「爆死」という言葉といっしょに、座席表のスクリーンショットが何枚も回っています。
ただ、座席表が何を映していて、何を映していないのかは、案外知られていません。
今回は、あの座席表の読み方と、席を埋めていたのが誰だったのかについて、わかりやすく解説していきたいと思います。
1日4回上映で予約10席と報じられた
いま広まっている数字が、どこから来たものなのか。
9月12日に配信された週刊女性PRIMEの記事が出どころです。
都内の映画館でも通常回の予約は10席程度で、秋田の映画館は上映3時間前でも予約がゼロだった、と伝えられていました。
舞台挨拶つきのチケットも、大量にリセールへ出されていたとのこと。
同じ媒体は9月14日にも続報を出しています。
そちらは、重岡大毅が過去に自分の秘密主義を自虐気味に語っていたことと、今回の低迷を結びつける内容でした。
この2本が広まったあとのリプ欄は、「因果応報」「自業自得」という言葉でいっぱい。
数字を見せられれば、そう言いたくなる気持ちもわかります。
8月に起きたことの順番が順番だったので、なおさら。
ただ、あの数字には、あまり語られていない前提があります。
その「予約10席」や「0席」という数字は、どこを見て数えられたものなのでしょうか。
答えは、映画館のネット予約の座席表。
記事も、拡散したポストも、劇場の発表を引いているわけではなく、誰でも開ける予約画面を見て数えています。
ネット予約が始まるのは2日前から
ここが、いちばん知られていないところです。
映画館のネット予約は、いつでも買えるわけではありません。
イオンシネマの案内を見ると、一般の販売は上映日の2日前の深夜0時から始まると書かれています。
会員向けの先行は、その前日の18時から。
つまり、座席表に映るのは、先に席を押さえた人の数だけなんです。
当日ふらっと来て窓口で買う人は、あの画面には出てきません。
上映3時間前に0席だった、という話も、裏を返せば3時間後には誰かが座っている可能性が残ります。
もちろん、空いている回が本当にあることは変わりません。
けれど、あの画面が数えているのは「何人が観たか」ではなく「何人が事前に押さえたか」のほう。
そしてこの画面には、もうひとつ性質があります。
誰でも開けて、誰でもスクリーンショットを撮れて、誰でも貼れる。
逆に言えば、どんなに人気のある作品でも、2日前より手前の画面はまっさらです。
映画の成績を語るときに、これほど手軽な材料はありません。
劇場の発表を待つことも、誰かに取材することもなく。
スマホひとつで「証拠」のほうが先に作れてしまいます。
初日の興収は1600万円で8位だった
では、本当の物差しはどこにあるのでしょうか。
映画の売れ行きは、チケットの売上を集計した興行収入で測られます。
こちらは劇場が閉まってから集計されるので、数字が出るのは基本的に翌日以降。
映画の興行成績を速報しているサイトによると、『5秒で完全犯罪を生成する方法』の初日興収は推定1600万円で、初登場8位でのスタートだったそうです。
主演作としては物足りない数字だと受け止められていて、複数のメディアが同じ推定値を報じています。
ここは、ごまかしても仕方がありません。
ただ、広まり方のほうに注目してみてください。
初日の興収が出たのは9月12日で、予約画面の記事が配信されたのも同じ日。
ところが、そのあと桁違いに読まれたのは、興行の数字ではなく「予約ゼロ」のほうでした。
数字は静かに出て、言葉だけが遠くまで運ばれていきます。
結論のほうが、成績表を追い越していく。
これが今回の騒動の、いちばん地味で、いちばん深いところだと思います。
舞台挨拶は9月21日にも追加されていた
おもしろいのは、その報道と同じ日に、まったく別の景色も出ていたこと。
本作のプロデューサーである松下剛は、9月12日に自身のXでこう書いていました。
#5秒で完全犯罪を生成する方法
ついに公開いたしました!
早速観にきて下さってる皆さんに感謝感謝です。舞台挨拶は昨日は東京で6回、本日も大阪で6回お邪魔しますよ
ちなみに21日も追加舞台挨拶決めましたのでそちらもぜひ!— 松下 剛 (@244matsushita) 2026年9月12日
「舞台挨拶は昨日は東京で6回、本日も大阪で6回お邪魔しますよ」。
そして「ちなみに21日も追加舞台挨拶決めましたのでそちらもぜひ!」。
初日と2日目で合わせて12回の舞台挨拶をこなしたうえで、公開から10日後の追加がもう決まっていた、という話です。
さらに同じ投稿の中で、18日からの副音声上映についても触れています。
映画の公式アカウントが副音声上映を正式に告知したのは、9月14日でした。
🎧 副音声コメンタリー上映 決定 🎧
映画本編を見ながら
キャスト陣の裏話が楽しめる、
「副音声上映」の実施が決定✨まるでキャストの皆さんと一緒に
映画を見ているような感覚が味わえます👀💭
ここでしか聞けないエピソードも…!?🗓️ 9.18㊎ より上映スタート
— 映画『5秒で完全犯罪を生成する方法』 (@5byodeseisei) 2026年9月14日
本編を観ながら重岡大毅、原菜乃華、田中みな実、近藤亮太監督の裏話が聞けるという上映で、こちらは9月18日からスタート。
これらが報道を受けて急いで決まった、という話ではありません。
日付を並べるかぎり、そう読む根拠はないからです。
同じ日に、片方では「爆死危機」が広まり、片方では21日の追加が告知されていました。
それだけのことなんです。
リセールに出ること自体にも、ちゃんと決まりが関わっています。
チケットが定価を超える値段で売られるのを防ぐため、2019年6月14日にチケット不正転売禁止法が施行されました。
定価以下で公式の窓口を通す再販は対象外とされているので、各社がリセールの仕組みを整えています。
行けなくなった席が表に出るようになったのは、転売を止めるために作られた決まりのおかげ、というわけです。
そして実際、公開から数日たったあとも「定価で譲り先を探しています」という投稿が流れていました。
出品が多いことは、席が余っている印でもあり、席が動いている印でもあります。
離れた人と通う人が同じことを言っている
席を空けたのは誰で、いま座っているのは誰なのか。
ファンのあいだで重岡大毅を応援している人を指すのが、「重岡担」という言葉。
この言葉で検索すると、8月から9月にかけて、離れることを決めた人の投稿がいくつも見つかります。
ただ、離れた人の投稿に並んでいたのは、恨みという温度ではありませんでした。
「15年近く重岡担して、今すぐ『騙された!嫌い!バイバイ!』ができない」。
8月13日に書かれたこの一行が、いちばん近い気がします。
そして、離れた人たちの言い分のなかに、こんな一文がありました。
「アイドルが主演やる映画の初動なんてファンが作ってるに決まってるじゃん」。
どんなに面白そうな映画でも、わざわざ公開初日に行こう、舞台挨拶に行こうとなる人はそういないでしょう、という話。
それをやるのがファンなのだ、と続きます。
矛先が本人ではなく、擁護している側へ向いている投稿も目につきました。
「アイドルだって人間なんだから〜とか言う人たちが映画見に行ってやりなよ」。
「SNSでそんなことする人達って、公式にお金使わないんだよね」。
どちらも、応援というのは気持ちではなく行動なのだ、と言っています。
一方で、いまも通っている人たちの投稿が、同じ日に並んでいるのも事実です。
「今日で映画観るの20回目だったらしい」。
「4回目観てきた。見れば見るほど味がする」。
「舞台挨拶含め何度も観に行ってます。これからもできる限り毎日観に行くよー!」。
おまけの特典が目当てというより、作品そのものを繰り返し観ている書き方が目につきました。
「観るたびに考察の角度も変わっていく」「シナリオブックを最後まで読んでから観てきた」。
ミステリーなので、結末を知ったうえで観直すと別のものが見える、という理屈です。
この二つを並べたときに、見えてくるものがあります。
興行収入はチケットの売上を足したものなので、同じ人が20回観れば、20回ぶん数えられるんです。
つまり興収の数字は「何人が観たか」ではなく「何回売れたか」。
この件は、ファンが離れて席が空いた話に見えて、実は一人が何度も座ることで埋まっていた席だったと、空いてから分かった話。
離れた人は「初動を作っていたのは自分たちだ」と言い、残った人は20回通う。
言い争っているように見えて、離れた人と残った人は、同じ仕組みを別の側から説明しています。
ちなみに、こんな投稿もありました。
「お客さん0と噂の映画をこないだ渋々見に行った」。
噂を見て、逆に足を運んだ人がいたわけです。
座席表を見たときに確かめる3つ
空席の画面が回るのは、この映画にかぎった話ではありません。
ライブでもイベントでも、同じことはこれからも起きます。
そのときに見るところを、3つだけ。
- その画面は、上映の何時間前のものか
- 舞台挨拶の回と、通常の回を混ぜていないか
- 数字を確かめるなら、座席表ではなく興行のランキングを見たか
一つ目がいちばん効きます。
ネット予約が始まるのは2日前からなので、公開の1週間前の画面は、空いていて当たり前。
しかも座席表は、時間が経つほど埋まっていく画面です。
朝に撮った1枚と、開映10分前の1枚では、まったく別のものが写ります。
二つ目は、今回まさに起きたところ。
舞台挨拶つきの回は先に売り切れて、そのあとリセールへ出ます。
通常回の空席と、リセールの出品数を足して語ると、同じ現象を二度数えることになってしまうわけです。
三つ目は、少し手間ですが確実。
興行収入のランキングは週ごとに発表されていて、誰でも見られます。
どの作品が何位で、いくら売れたのかが並ぶ表。
座席表は現場で撮った写真、ランキングは決算書。
どちらが正確かは、比べるまでもないところ。
もちろん、空いている回が実際にあることは変わりません。
ただ、あの座席表が映しているのは、作品の出来でも、人の値打ちでもないんです。
映っているのは、その時間にその席を押さえた人の数だけ。
気になった映画があるなら、噂の数字より先に、近くの劇場の時間割をのぞいてみてくださいね。
