ヴァンビ逮捕|電車の痴漢と同じ罪だった

2026年10月1日の午前4時前、東京・六本木のクラブ。
YouTuberのヴァンビとして活動する白井竜樹容疑者(36)が、20代の女性の下半身を触ったとして、警視庁に現行犯逮捕されました。
当時の日本人最速で登録者1000万人を集めたYouTuberの名前が、昼すぎから一気に流れ始めていて。
驚きの声に混じって目についたのが、「これが迷惑防止条例なん?」という戸惑いです。
報道によると、逮捕の罪名は東京都の迷惑防止条例違反。
今回は、迷惑防止条例違反とは何なのか、なぜ電車の痴漢と同じ罪になるのかを、わかりやすく解説していきたいと思います。
ヴァンビは六本木で何をしたのか
TBSの独自報道によると、現場は港区六本木のクラブ。
白井容疑者は当時、酒に酔っていたとみられ、通報を受けて駆けつけた警察官がその場で逮捕したとのことです。
ここでいう「容疑者」は、疑いをかけられて捜査を受けている段階の呼び方で、有罪が決まった人を指す言葉ではありません。
所属する太田プロダクションは、取材に「現在、事実確認中です」と答えています。
本人が容疑を認めているのかどうかは、報道ではまだ伝えられていない状態です。
被害を受けた女性については、年代のほかは何も報じられていません。
被害を受けた方のことを、これ以上詮索する必要はないと思います。
ヴァンビという名前に、ピンとこない人もいるかもしれません。
ヴィジュアル系バンドのボーカルからYouTubeへ移り、元アイドルのゆんと組んだ男女コンビ「ヴァンゆん」で人気を集めた人です。
2019年に、そのヴァンゆんとして太田プロダクションへ。
その後、正体を伏せて始めた「スパイダーメーン」というチャンネルが、開設から374日で登録者1000万人に届き、当時の日本人最速の記録になりました。
そんな人の逮捕だけに、こんな声も。
ヴァンビこと白井竜樹容疑者が、六本木のクラブで午前4時頃、20代女性の下半身を触ったとして現行犯逮捕だって…
登録者1000万人を達成するほど活動していた有名YouTuberだけに、びっくりだし残念…
でもやっぱりこんな有名人でも嫌がる人がいるんだよね…
って当然か😅酒に酔っていたとみられているとのことですが、今後の捜査で何が分かるのか注目ですね🔥
— くまきち@兼業投資家 ~年収420万円の田舎の会社員が投資で資産1億円を目指す~ (@kumakichi0227) October 1, 2026
有名なのに、という驚きは、ごく自然な反応ですよね。
反応の中には「何回不祥事起こすねん」「薬物は?」という声も混じっていました。
背景にあるのは、2025年4月の告発です。
ヴァンビが開いた飲み会での出来事を女性インフルエンサーたちが配信で明かし、大麻由来の成分を含むとされるグミを口に入れられた、という話も出ていました。
告発した側は2026年4月、ヴァンビから謝罪を受けて和解したことを、自分のアカウントで明かしています。
ただ、今回の逮捕の疑いは「クラブで女性の下半身を触った」ことで、グミの話も薬物も今回の容疑には入っていません。
ネットには報道に無い細かい話も流れていますが、確認できるのは「20代の女性の下半身を触った疑い」というところまでです。
逮捕の罪名は迷惑防止条例違反
罪名が伝わったとき、こんなふうに首をかしげた人もいました。
ヴァンビ逮捕されてるやん。
都の迷惑防止条例違反って”都の”って書いてあるくらいだから、各都道府県ごとに罰則の内容とか違うのかな?まぁ大部分は共通してると思うけど— まぴ (@Gamer432521) October 1, 2026
「都の」と付いているのには、ちゃんと理由があります。
迷惑防止条例は、都道府県がそれぞれ自分で作っている決まりなんです。
東京都の正式な名前は、「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」。
1962年にできた条例で、何条に何を書くかも都道府県ごとにばらばら。
報じられた「下半身を触った」に当たるのは、東京都の第5条1項1号とみられます。
条文はこうです。
「公共の場所又は公共の乗物において、衣服その他の身に着ける物の上から又は直接に人の身体に触れること。」
この条文には前置きとして、「正当な理由なく、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような行為」という条件が付いています。
読み解くと、押さえどころは2つ。
- 服の上からでも、直接でも、同じ条文に入る
- 場所は「公共の場所又は公共の乗物」
罪名がこの条例である以上、お客が出入りするクラブの店内も「公共の場所」として扱われています。
逆に言えば、自宅やホテルの部屋のように公共ではない場所で体を触った場合、この条文はそもそも使えません。
罰は第8条に書かれていて、「六月以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金」。
拘禁刑というのは、それまでの懲役と禁錮がひとつにまとまった呼び方です。
同じことを常習として繰り返した場合は、「一年以下の拘禁刑又は百万円以下の罰金」まで上がります。
電車の痴漢と同じ一行だった
迷惑防止条例と聞いて、思っていたより軽い名前だと感じた人もいたようです。
【悲報】ヴァンビ、逮捕
女性の下半身触って、迷惑防止条例で逮捕されたらしい。マジか。
— お侍さん (@ZanEngineer) October 1, 2026
下半身を触って「迷惑」の扱いなのか、と。
その引っかかり、わかる気がするんですよね。
実はこの第5条1項は、毎朝の通勤電車で起きている痴漢を取り締まるのと、まったく同じ条文。
警視庁が公表している都内の検挙状況では、2025年の1年間にこの第5条1項の卑わい行為で検挙されたのは約950件で、そのうち電車の中での発生が半数以上を占めています。
つまり、六本木のクラブでの逮捕は、法律の上では電車の痴漢と同じ一行の話でした。
この条例は、条文の並び方にも驚かされます。
第2条は乗車券や入場券を転売目的で売り買いするダフ屋行為、第3条は座席などを不当に融通する行為、第4条はパチンコの景品の買い集め。
そして痴漢を禁じる第5条の見出しは「粗暴行為(ぐれん隊行為等)の禁止」で、ぐれん隊は、まちで乱暴を働く不良の集まりを指す古い言葉です。
罰を決めた第8条1項でも、ダフ屋行為と痴漢は同じ罰の欄に並んでいました。
触られた側からすれば、ダフ屋と同じ欄に並べられるのは、さすがに釈然としないものがありますよね。
しかも同じ第5条の中で、盗撮は「一年以下の拘禁刑又は百万円以下の罰金」。
この条例の上では、触るよりも撮るほうが罰が重いのです。
どうしてこんな並びになっているのか。
奈良県にも同じ名前の条例があり、奈良県警が出している運用の通達には、この条例は「現行法令の不備欠陥を補うために制定されたもの」と書かれています。
刑法では拾いきれない、まちの迷惑な行為をまとめてすくい上げるための網、というのがもともとの成り立ち。
痴漢はその網の中に、ダフ屋や景品の買い集めと一緒に入っています。
不同意わいせつとの境目はどこか
ネットでは、罪名をこう書いた投稿も出回りました。
【日本1フォロワーの多い逮捕者】
ヴァンビ(本名:白井竜樹)
容疑:強制わいせつ
場所:港区六本木のクラブ
被害者:20代女性酩酊状態で女性の下半身を触ったとされ
通報を受けた警察官が現場で身柄を確保— 記者さん (@nophb98) October 1, 2026
名前が似ていて、取り違えやすいところなんです。
実際の罪名は迷惑防止条例違反で、しかも「強制わいせつ」という罪名は、2023年の刑法改正で「不同意わいせつ」に変わり、いまはもうありません。
その不同意わいせつ罪を定めているのは、刑法176条。
罰は「六月以上十年以下の拘禁刑」で、罰金で終わる道は用意されていません。
条例は「六月以下」、刑法は「六月以上」。
条例の拘禁刑は常習でなければ重くても6か月、刑法はいちばん軽くても6か月で、ちょうどそこで分かれているんです。
この条文の条件の中には、「同意しない意思を形成し、表明し又は全うするいとまがないこと」という一文も。
不意をつかれて、嫌だと言う間もなかった場合のこと。
条文の上では、いきなり触られた場合も刑法の側に入りうる書き方になっています。
どちらで扱うかは、触り方やそのときの状況から、警察と検察が決めるもの。
先ほどの奈良県警の通達も、条例の行為が「いかなる程度に達し」たら刑法の罪になるのかをよく見分けるよう、捜査する側に求めていました。
今回は、逮捕の時点で条例が選ばれた、というところまでが報道で分かっていることです。
この先の捜査で別の判断が出るのかどうかは、まだ見えていません。
もうひとつ、ネットで目立ったのが「お酒って怖い」「酒に酔ってたとはいえ」という声。
条例の第5条にも第8条にも、酒に酔っていた場合を別に扱う一文は見当たりません。
刑法176条には、「アルコール」という言葉が出てきます。
ただしそれは、「アルコール若しくは薬物を摂取させること又はそれらの影響があること」という形で、触られる側が酔わされた、酔っていた、という状態として書かれているもの。
少なくとも刑法のこの条文の中で、お酒は守られる側の事情として出てきます。
酔っていた側をかばう書き方には、なっていないんです。
その場で逮捕されたのは通報があったから
「現行犯」という言葉に、こんな受け止め方をした人もいます。
「ヴァンビ」として活動するYouTuber 白井竜樹容疑者を現行犯逮捕 女性の下半身を触ったか 警視庁
まじか・・・
しかも現行犯
通報してから警察官が到着するまで辞めなかったのか
— らいち (@lychee_log) October 1, 2026
そう読みたくなる気持ちもわかりますが、現行犯は「警察が来るまで続けていた」という意味ではありません。
刑事訴訟法212条は、「現に罪を行い、又は現に罪を行い終つた者」を現行犯人としています。
つまり、やり終えた直後でも現行犯です。
今回その場で逮捕まで進んだきっかけは、警察への通報でした。
誰が通報したのかは、報道では伝えられていません。
警視庁は被害に遭ってしまったときの動き方として、「防犯ブザーを鳴らす、大声を出すなどして周囲に助けを求めましょう」と書き、続けて「迷わず、速やかに110番通報をしてください」と呼びかけています。
まずは声と、110番。
その場で声が出せなかったとしても、各警察署の生活安全課で痴漢被害の相談を受け付けている、とも書かれていて。
周りの人に向けては、防犯アプリ「デジポリス」の音声や画面に気づいたら「躊躇なく被害者に『大丈夫ですか』等と声を掛けるなど救助を行いましょう」という一文もありました。
電車の痴漢と同じ条文で扱われるのなら、電車で教わってきた対処も、夜の店でそのまま使えるはずです。
処分がどうなるのかは、まだ何も決まっていません。
ただ、名前の大きさとは関係なく、法律が今回の行為に当てたのは、毎朝の電車で使われているのと同じ一行でした。
夜の店でも電車でも、触られたときや見かけたときは、迷わず110番してくださいね。
