日曜劇場『VIVANT』第19話の冒頭に出た、「本日の放送には、一部に暴力的描写を含む表現があります」という注意書き。

その言葉どおり、シャキ城の拷問室の場面は、目をそらしたくなるほどの激しさでした。

ただ、見終わったあとで、ふと手が止まった人も多いはずです。

そもそも別班員たちは、あそこまでされて何を吐かされようとしているんだっけ、と。

同じ疑問を持った人は多く、ネットでは、別班の情報、国家機密、テントの情報と、答えを出し合う声がきれいに割れていました。

無理もありません。

シンシーの側の事情と拷問の場面は、同じ回の中でも別々の場所で描かれていて、ひとつながりの話としては見えにくいつくり。

今回は、シンシーは別班員から何を聞き出したいのか、シーズン2のこれまでの流れをたどりながらわかりやすく解説していきたいと思います。

閉じ込めているのは中国の別班

シーズン2の初回、2026年7月26日の放送で、テントへの潜入作戦に加わっていた黒須を含む別班員5人が、何者かに連れ去られました。

物語の始まりは、祠に置かれた赤い饅頭。

別班の緊急招集を告げる合図で、そこから乃木の仲間探しが始まりました。

犯人として最初に疑われたのは元公安の新庄でしたが、物語の途中で別の名前が出てきます。

黒須たちを捕らえていたのは、「シンシー」という組織でした。

別班のAIハヤトの説明によると、シンシーは表向きこそ多国籍の民間情報機関ですが、実態は「中国の別班」とも言える存在だそうです。

しかも、これまで別班に多くの中国系の工作員や諜報員を排除されてきたことから、別班に遺恨を持つ秘密組織として描かれています。

責任者は、元・中国公安部第6局長のハン・リンシン。

5人が閉じ込められているのは、ゴルバド共和国のシャキ城という、断崖に囲まれた丘の上の城です。

恨みのある相手を、国の外の城にまとめて閉じ込めている状態。

そう聞くと、拷問の目的は「仕返し」だけのように見えてしまいますよね。

ところが、シンシーにはもっと大きな狙いがありました。

 

とはいえ、見ている側はそれどころではなかった、というのが正直なところでしょう。

あまりにつらい場面が続いたせいか、ネットでは冗談まじりにこんな声も上がっていました。

笑いに変えたくなるくらい、見ている側も張りつめていたのだと思います。

本当に欲しいのは核融合の技術

鍵を握るのは、核融合の研究者、エリシャ・ママドフです。

核融合というのは、太陽が光る仕組みと同じように、軽い原子どうしをくっつけて大きなエネルギーを取り出す技術のこと。

第16話の放送で、シンシーの目的はエリシャ博士の核融合実験の研究データで、その技術を自分たちだけのものにしようとしていると明かされました。

別班に恨みを持つ組織が、実は世界のエネルギーを左右しかねない技術まで追いかけている構図。

この2つが同じ組織の中に同居しているのが、シンシーのややこしさなんです。

 

テントは、シーズン1で乃木が潜入した国際テロ組織で、乃木の実の父ノゴーン・ベキが率いていた集団。

では、核融合を狙っている組織が、なぜそのテントの話を持ち出すのでしょうか。

報道によると、第19話のハンはずっといらだっていたそうです。

エリシャの核融合技術にたどり着くためには、テントに関する情報が必要だったから、とのこと。

同じ回では、エリシャを見張っている情報ブローカーのタイランが、エリシャとテントの関係を語る場面もありました。

そこで出てきたのが、エリシャの娘、プリシャの名前です。

プリシャは7年前、当時2歳のときにテントに連れ去られていて、いまは9歳になると報じられています。

核融合の研究者の娘を連れていったのが、テントだったんです。

まったく別の筋に見えていた核融合とテントが、ここでひとつにつながります。

 

この少女が誰なのかをめぐって、ネットではさっそく推理が飛び交いました。

推理が当たっているかどうかは、まだ分かりません。

ただ、シンシーがテントの中のことを知りたがる理由は、この7年前の出来事でぐっと見えやすくなりました。

吐かされているのは2種類の情報

シンシーが聞き出したいものは、大きく2つに分けられます。

  • テントの中の情報(核融合にたどり着くための入口)
  • 別班そのものの情報(長年の恨みの相手)

前者は、第19話でハンの事情としてはっきり形になりました。

後者は、シンシーという組織の成り立ちそのものに書き込まれています。

ネットで答えが割れていたのも無理はなく、どちらもかなり正解に近かったんです。

もう1人、忘れてはいけない人物がいます。

公安の野崎です。

物語の中盤では、別班員を売ったのは野崎だと明かされました。

ところが次の回で、それはシンシーに近づくための潜入捜査だったことが分かります。

第16話で語られたのは、その始まりが5年前の北京にあったという話でした。

日本大使館に駐在していた野崎は、自分が使っていたエージェントのリュウを北朝鮮の組織から救い出せず、その直後にハンからシンシーへ誘われていたそうです。

野崎はシンシーの狙いを止めるため、その誘いに乗る形で中へ入っていきました。

しかも、死んだと思われていたリュウが、ハンに救われてシンシーの諜報員になっていた、という展開まで重なります。

リュウを演じているのは堺雅人で、乃木とFに続く1人3役。

見ている側の頭がこんがらがるのも、無理のない話でしょう。

 

別班員の情報は、野崎がシンシーに信用されるための手みやげだった、という筋書きです。

その野崎も、いまはシンシーの中でダブルエージェントを疑われ、口を割らされる側に回っています。

第19話では、核融合チームの責任者になったリュウが、野崎の口を割らせるためにハンへ取引を持ちかける場面もありました。

国のためとはいえ、仲間を差し出した結果がこれでは、別班の側からすれば割に合いません。

ネットでも、野崎や公安に向けたぼやきが目立ちました。

潜入が本当に必要だったのかは、最終話まで見ないと答えが出ない問いでしょう。

テントの情報を求める拷問の矛先は、別班員にも野崎にも同時に向いています。

痛めつけても出てこない答え

では、拷問をされている5人は、シンシーが欲しがるテントの情報を持っているのでしょうか。

ネットには、こんな指摘が並びました。

テントの情報なら、黒須以外はほとんど知らないのではないか。

口の堅い別班をしめあげるより、テントのいちばん下の人間から順にたどったほうが早いのでは、という声も。

たしかに5人はテントへの潜入作戦に加わってはいましたが、組織の奥まで知っているとは限りません。

それでもシュウ・ハオランは、手を止めませんでした。

 

いちばん先に和田を選んだのは、見た目が頑丈な者ほど心は折れやすい、という考えからだったと報じられています。

さらにシンシーの側は、情報を出さなければ1日に1人ずつ殺すとまで言い渡しました。

それでも、黒須たちは口を割っていません。

 

右手の指をすべて失った和田に、黒須が持っていた乃木家の守り刀が向けられる場面は、多くの人にとってこのシリーズでいちばんしんどい時間になったようです。

別班の口の堅さは、画面越しにもたしかに伝わってきます。

 

現実の世界に目を移すと、アメリカ議会上院の情報特別委員会は2014年に、CIAがテロの容疑者に行った過酷な尋問について報告書を出し、その手法は情報を手に入れる効果的な手段ではなかったと結論づけました。

尋問のさなかやその後に、作り話をした人がいたことも書かれています。

CIA側はこの結論に反論していますが、痛みで引き出した言葉が当てにならない、という指摘は重いものでした。

日本は1999年に拷問等禁止条約に加わっていて、憲法36条にも「公務員による拷問及び残虐な刑罰は、絶対にこれを禁ずる」と書かれています。

この条約でいう拷問とは、情報や自白を得ることなどを目的に、体や心に重い痛みや苦しみをわざと与える行為のこと。

まさに、シャキ城で行われていることそのものです。

知らないことは、どれだけ痛めつけても出てきません。

そして、何かを話したとしても、それが本当かどうかを確かめる手立ては、拷問する側には残っていないんです。

残された4人にとっても、時間はもうあまり残っていません。

乃木たちも、作戦の決行を1日前倒ししています。

シンシーが同じやり方を続ける姿にもどかしさを感じるのは、見ている側がそのことをどこかで分かっているからかもしれません。

テントの答えは城へ向かっている

シンシーが欲しいのは、テントの中の情報でした。

それを誰よりも持っているのは、檻の中の5人でも、口を割らされかけている野崎でもありません。

テントを率いているノコル本人です。

 

第18話で、奪還の断念を言い渡された乃木から連絡を受けたノコルは、「テントは全勢力をかけて、兄さんに協力する」と言い切りました。

シーズン1でテントを壊滅に追い込んだのは、ほかでもない乃木本人なのに、です。

そして第19話では、乃木とノコルの奪還チームが、チョッキーや新庄も加えて、シャキ城を目指して動き出しました。

シャキ城へ行くには、シンシーに見張られたオルコ村を通るしかありません。

そこでノコルは村の人たちに、シンシーの100倍の金額を示して協力を求めたと報じられています。

シンシーが拷問で引き出そうとしている答えそのものが、自分の足で城へ近づいてくる形です。

皮肉といえば、これ以上の皮肉はないですよね。

 

しかも、野崎がテントについて話した場面では、ノコルの名前が出てこなかったと気づいた人もいました。

野崎がわざと伏せたのかどうかは、いまはまだ分かりません。

シンシーの探し方そのものに、首をかしげる声もあります。

もしシンシーの目がまだノコルに届いていないのだとすれば、奪還作戦にとっては大きな追い風になりそうです。

第2シーズンは全24話で、最終話は11月8日の予定。

拷問の場面は、たしかにつらいものでした。

それでも、シンシーが何を欲しがっているのかが見えると、あの城でこれから起きることの重みも、少し違って見えてくるはずです。

シャキ城の扉が開くとき誰が何を話すのか、次の日曜を共に見届けたいと思います。