Netflixの『ラヴ上等』が、シーズン2の配信開始からずっと燃え続けています。

ただ、いま燃えているのは番組の中身ではありません。

企画してプロデュースした、MEGUMIその人です。

「見せ物にしてるくせに」

「ヤンキーを利用して稼いでるだけでしょ」

批判の矛先が、番組から作った人のほうへ移りました。

なんとなくモヤモヤするけれど、その理由がうまく言葉にならない…。

そんな人も多いはずです。

 

実はMEGUMIは、この番組についてかなり具体的な話を残しています。

企画を思いついた場所から、出演者にかけた言葉まで。

そこを順にたどっていくと、いま多くの人が感じている胡散臭さの正体がけっこうはっきり見えてくるんです。

今回はその発言をひとつずつ拾いながら、なぜここまで反感を買ったのかを見ていきたいと思います。

千鳥・大悟と話していて思いついた企画

そもそもこの番組、どこから生まれたのか。

きっかけは、ロケ現場だったそうです。

MEGUMIは岡山の出身で、千鳥の大悟も同じ岡山。

「なんだろうこの懐かしみは」という感覚がやってきた、と本人が語っています。

 

ここで、あまり知られていない話をひとつ。

MEGUMI自身が、中学生のころヤンキーだったというんです。

だから大悟と話していて、昔まわりにいた人たちを思い出したのだそう。

恋には不器用だけど優しい。

ヤンキー独特のレディーファースト感。

とにかく、あったかい。

そういう記憶が戻ってきた、という話でした。

 

そしてロケの帰りの車の中で、マネージャーにこう言ったといいます。

「ヤンキーの恋愛リアリティーショーっておもしろそうじゃない?」

これが出発点。

そこから企画書を作り、お金を集め、出演者を探して、形になるまでに3年かかったとのこと。

途中で「もうダメかな」と思った場面もいっぱいあった、と振り返っていました。

 

ちなみに、番組そのものはよくできています

音楽に小室哲哉のglobeを持ってきたり、美術に地方のラブホテルの看板みたいな世界観を入れたり。

「かっこよくないかっこよさ」を狙って組んだ、と本人が説明していて、実際その狙いは当たりました。

面白い番組を作ったこと自体は、責められる話ではありません。

ただ、この出発点だけは覚えておいてくださいね。

企画のはじまりにあったのは、懐かしさと「面白そう」だけ

更生も、社会問題も、まだどこにも出てきていません。

ラヴ上等は更生の番組ではなかった

今回の騒ぎが一気に大きくなったのは、国が絡んだからでした。

8月5日、法務省がこの番組とのコラボポスターを発表します。

コピーは「更生上等!」「立ち直りって、ラヴだ」。

罪を犯した人の立ち直りを支える全国の施設に、これから貼り出されていくというものでした。

この経緯については、こちらの記事で詳しく書いています。

ラブ上等と法務省コラボ
ラブ上等2|法務省コラボが大不評になった背景を解説 役所の壁に、全身入れ墨の人のポスターが貼られていたら、思わず足が止まりますよね。 Netflixで配信中の恋愛リアリティ番組『ラヴ...

 

さて、ここからが今回いちばん引っかかったところです。

MEGUMIは、更生の話を一度もしていません

それどころか、むしろ真逆でした。

 

配信が始まったころのインタビューに、こんなやりとりが残っています。

自分が若いころのヤンキーと、令和のヤンキーに違いはあったか、という質問です。

返ってきた答えが、これでした。

「全くなくて、それってすごいなと思うんですよね」

変わらずに受け継がれているものとして、本人が挙げていたのがこちらです。

  • 仲間は絶対
  • 女は大事
  • 威嚇して喧嘩して、力関係を確かめ合う

それが古典芸能みたいにそのまま残っている、と。

そして、こう続けます。

 

「変わっていく世の中で、変わらないものがあることがすごく尊いなと思いました」

 

これ、なかなかの発言だと思いませんか。

更生というのは、変わることです。

昔のやり方をやめて、別の生き方を選び直すこと。

ところがこの人は、変わらないことを尊いと言っています

言葉の向きが、まるきり逆なんですよね。

 

そしてもうひとつ、どうしても引っかかることがあります。

この番組で出演者がやっているのは、恋愛です。

気になる子とデートして、告白して、フラれて、仲間と喧嘩して、また仲直りする。

それを14日間やりました。

 

で、それのどこが更生なんでしょうか

 

誰かに謝ったわけでも、償いをしたわけでも、迷惑をかけた相手のところへ足を運んだわけでもありません。

恋をして、モテて、キラキラした画で終わった。

それを立ち直りと呼ぶのは、いくらなんでも都合が良すぎませんか

世の中には、まじめに保護観察を受けて、仕事を探して、何年もかけて信用を戻している人がいます。

その人たちの通う場所に「更生上等!」のポスターが貼られると考えると、正直きついものがありますよね。

 

つまり、こういうことになります。

MEGUMIは嘘をついたわけではありません。

むしろ最初からずっと正直で、「変わらないヤンキーがかっこいい」と言い続けてきました。

ズレが生まれたのは、その正直な本音の上に、あとから「更生」という看板が乗っかったときです。

私たちが感じているモヤモヤは、たぶんここから来ています。

 

本音と建前が食い違う場面は、世の中にいくらでもありますよね。

ただ今回は、建前を掲げたのが国の役所でした。

本音のほうを消さずに看板だけ立てたので、見ている側からは二枚舌に見えてしまうわけです。

この違和感を、タレントの武井壮がきれいに言い当てていました。

悪を描くのはいい、けれど本物の悪を皿に乗せるな。

この「皿に乗せる」という言い方が、いまの状況をよく表している気がします。

ラヴ上等が売っていたのは、変われる人の物語ではありませんでした。

変わらない人の魅力のほうだったんです。

MEGUMIが出演者に頼んだ「贖罪」

ここで、いちばん大事な話をします。

この騒ぎで完全に置き去りになっているのは、火をつけられた側の人です。

番組では出演者のひとりが「人に火をつけた」と過去を語り、その場面が切り抜かれて広まりました。

ただ、やられた側がその後どうなったのかは、どこにも出てきません。

この人物について詳しく知りたい方は、こちらにまとめてあります。

かずくん
ラヴ上等かずくんプロフィール|元嫁や人に火をつけた過去がヤバい…Netflixの恋愛番組「ラヴ上等」に、途中から入ってきたかずくんという男性。 8月11日に配信された回で、この人が自分の過去を話しま...

やけどの痕は、消えません。

番組の中ではほんの一言の身の上話でも、やられた側にはその後の人生がずっと続いています。

加害の話は番組を盛り上げる材料に使われるのに、被害のほうは一秒も映りません

それでいて画面には、過去を乗り越えた人の感動的なエピソードが流れます。

やられた側からしたら、たまったものじゃありません。

そのうえで、番組の作り方の話です。

出演者たちは共同生活を始める前に、ひとりずつMEGUMIと面談をしていました。

そこで何を伝えたのか。

本人がインタビューで、こう説明しています。

 

「ただ恋愛するのではなくて、贖罪であったりとか、今世の中がこうなってるから、あなたたちの生き様を見せてほしい」

贖罪、という言葉が出てきました。

罪を償うこと、という意味です。

そして、それを「見せてほしい」と頼んでいます

 

ここが、「見せ物にしてるくせに」と言われている部分の正体でしょう。

償いというのは本来、やった本人と傷つけた相手のあいだにあるものですよね。

それを画面に映してほしいと頼まれた瞬間に、償いは番組のネタへ変わってしまうわけです。

しかも、その画を受け取るのはカメラの向こうの視聴者で、傷つけられた本人ではありません

 

学校で反省文を書かされるのと、その反省文を全校集会で読み上げさせられるのとでは、話がまるきり別ものです。

後者は、反省そのものより見ている人の満足のためにやらせているもの

ラヴ上等の面談で起きていたのは、たぶんそちらのほうでした。

 

そう考えると、8月13日にMEGUMIが出した声明が、なぜあれだけ反発を買ったのかも見えてきます。

「彼らは、過去も今もすべてをさらけ出し、覚悟を持ってこの番組に参加してくれました」

正しい文章ではあります。

ただ、さらけ出してほしいと頼んだのは、他でもないこの人でした。

自分が頼んだことを、出演者の覚悟として語っているわけです。

その順番の入れ替わりに、多くの人が反応したのだと思います。

この違和感を、芸人のハウス加賀谷が短い言葉で表現していました。

同じ「さらけ出す」でも、守ってもらえる人と、仕事を失う人がいます。

じゃあ、その違いはどこから来ているのか。

答えは残酷なくらい単純で、番組の中にいるかどうかです。

炎上してもMEGUMIが困らない理由

もうひとつ、配信前のインタビューに気になる一節が残っています。

面談で出演者へ伝えた内容の続きです。

配信が始まったあとのことも、ちゃんと話しておいたというのですが、その中身がこうでした。

 

いろんな人がいろんなことを言うと思うけど、そういう人たちは裏アカとかでつぶやいてるだけだから気にしなくていい。

批判は裏アカの独り言なので、放っておきなさい。

配信前は、そう説明していたわけですね。

ところが実際に燃え始めると、今度は世間に向けてこう言いました。

「傷つけるような言葉を投げかけることは、どうかおやめください」

 

同じ批判を、相手を替えて二回あつかっています。

出演者に対しては「気にするな」。

世間に対しては「やめてください」。

どちらも番組を守る方向を向いているところが、胡散臭さの決め手になったのではないでしょうか。

この声明については、韓国での広がり方も含めてこちらに書いています。

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そして、数字の話です。

シーズン1は、Netflixの非英語シリーズの世界ランキングに初登場8位で入りました。

日本では4週続けて1位。

韓国でも週間トップ10に入っています。

この結果を受けて、2026年2月16日、MEGUMIはNetflixと複数年の独占契約を結びました

これから新作を作って、世界へ配信していくという内容です。

 

つまり契約は、今回の炎上が起きる半年前にもう決まっていたことになります。

いま何がどれだけ燃えても、その紙はなくなりません。

もちろん、企画した人が儲かるのは悪いことでも何でもないでしょう。

3年かけて作ったものが当たったのなら、それは実力ですよね。

 

ただ、名前と顔と過去を出して叩かれているのは出演者のほうで、その素材を集めた人は次の企画へ進んでいきます。

この差が見えてしまうと、「傷つけないであげて」という言葉の響き方も変わってきますよね。

 

ラヴ上等が炎上した本当の理由は、番組が過激だったからでも、出演者の過去が重すぎたからでもありません。

更生を語っていなかった人が更生の看板を受け取り、さらけ出してほしいと頼んだ人が、傷つけないでくださいと言う。

その順番の逆さまに、みんなが気づいてしまったということなのかもしれませんね。