JCOMのインターネットが、北海道と九州・沖縄を除く広い範囲でつながらなくなりました。

2026年9月23日、祝日の朝9時前のこと。

動画も調べものも止まってしまった家が、たくさんあったはずです。

そして昼を過ぎても、会社から復旧の見通しは出てこないまま。

ネットに並んだ声を読んでいくと、出てくるのは怒りというより、お金の話でした。

 

「この使えない時間があるのに料金が通常と同じだけ取られるのは納得いかない」

使えなかったぶんの料金は、本当に戻ってくるのでしょうか。

今回は、JCOMの契約書に書かれている24時間のルールと、使えなかった日にできることを、わかりやすく解説していきたいと思います。


JCOMのネットが朝から止まった一日

共同通信の報道によると、不具合は23日の午前8時55分ごろから続いていたとのこと。

NHKは、影響が出ているのは北海道と九州・沖縄を除く全国だと伝えています。

JCOMのお知らせを見ると、止まっていたものがほかにも並んでいました。

  • J:COM NET(家のインターネット)
  • J:COM MOBILEのデータ通信
  • マイページ
  • MY JCOMアプリ

家のネットがだめならスマホで調べよう、と思った人も、同じ会社のスマホだと、そちらまで止まっていた形です。

しかもカスタマーセンターへの電話も、大変つながりにくい状態だと書かれています。

困ったときに頼る窓口まで、一緒に止まっていたんです。

 

JCOMの公式アカウントも、昼前にこう出しています。

会社のコメントは、共同通信の報道では「お客さまには多大なご迷惑をおかけし、深くおわびする」というもの。

原因については、いまのところJCOMからの発表はありません。

関西テレビは、近畿地方でこのサービスを提供しているケーブルテレビ会社がホームページに当初「外部からの攻撃のため」と書き、のちにその記述を削除したと伝えています。

何が起きたのかは、まだ外からは分からない段階です。

 

夕方になると、ネットでは「普通につながりました」という声が出はじめました。

それでも関西テレビの報道では、夕方の時点で、会社からは復旧の目途について発表が出ていなかったそうです。

これが平日で、リモートの仕事や就職の面談の日と重なっていたらと思うとゾッとする、という声もありました。

祝日だったから助かった人もいれば、祝日だからこそ家で過ごす一日がまるごと崩れた人もいたでしょう。


約款の払い戻しは24時間から始まる

ネットの契約には、約款と呼ばれる長い決まりごとの文書がついています。

申し込むときに「同意する」を押す、つい読み飛ばしてしまう文書のことです。

契約の中身で困る話は、国民生活センターも、家に置くWi-Fiルーターの契約トラブルとして取り上げています。

JCOMのネットの約款には、使えなかったときのお金の扱いが、はっきり書いてありました。

 

2024年10月1日以降に契約した人向けの約款の、第40条です。

当社は、インターネット接続サービスを提供すべき場合において、当社の責めに帰すべき理由によりその提供をしなかったときは、そのインターネット接続サービスが全く利用できない状態(その契約に係る電気通信設備によるすべての通信に著しい支障が生じ、全く利用できない状態と同程度の状態となる場合を含みます。以下この条において同じとします。)にあることを当社が認知した時刻から起算して、24時間以上その状態が連続したときに限り、その契約者の損害を賠償します。

2 前項の場合において、当社は、インターネット接続サービスが全く利用できない状態にあることを当社が認知した時刻以後のその状態が連続した時間(24時間の倍数である部分に限ります。)について24時間ごとに日数を計算し、その日数に対応するそのインターネット接続サービスの利用料等の料金額を発生した損害とみなし、その額に限って賠償します。

出典:J:COM NET サービス契約約款(2024年10月1日以降にご契約のお客さま)第40条(責任の制限)

並んでいる条件は、次のとおり。

  • 数えはじめるのは、会社が気づいた時刻から
  • 24時間以上、続けて全く使えなかったときだけ
  • 払うのは、24時間ごとに1日分の利用料まで

いちばん大きいのは、真ん中の条件でした。

今回のように朝から夕方まで止まった場合、つらい一日だったことに変わりはなくても、約款の上では24時間に届いていません。

この条文どおりに読むかぎり、半日分の料金が自動で戻ってくる形にはなっていないんです。

 

最初の条件も、地味に大事なところ。

時計が動きはじめるのは、家で「つながらない」と気づいた時刻ではなく、会社が気づいた時刻と書かれています。

会社が障害をつかむのが遅れれば、そのぶん24時間の出発点も後ろへずれる計算です。

最後の条件にも、小さな仕掛けがありました。

24時間の倍数の部分しか数えないので、たとえば40時間止まっても、数えるのは1日分だけになります。

残りの16時間は、どこにも入りません。

 

同じ条文の最後の項には、使えなかったことで利用者と第三者(たとえば仕事の取引先)のあいだに生じた損害には、いかなる責任も負わないとも書かれていました。

在宅の仕事に穴があいた、といった損は、最初から対象の外という書き方。

「納得いかない」という声に、条文はかなり冷たい答えを置いています。

ただ、この条文には例外もあって、第3項には、会社の故意や重大な過失(ひどい手落ち)で止まったときは、この24時間のルールを使わないと書かれていました。

重大な過失にあたるかどうかは、原因が出てくるまで誰にも決められません。

なお、約款は契約した時期によって版が分かれていて、この条文は新しい版のもの。

それより前に契約した人は、自分の契約の約款で同じ「責任の制限」の条文を確かめておくと安心です。


国へ報告する線は2時間で引かれている

それでも、会社にはもう一つ、電気通信事業法の施行規則(法律の細かいところを国が決めた決まり)がかかっていて、国へ報告しなければならない重大な事故の線が引かれています。

インターネット接続のサービスなら、2時間以上止まって3万人以上に影響が出たとき、または1時間以上で10万人以上に影響が出たときです。

そうなった会社は、すぐに国へ報告したうえで、30日以内に詳しい報告書を出すことになっています。

今回は朝に始まって、午後になっても続いていたと報じられているので、時間の条件は、もう越えていました。

影響を受けた人数は、会社からまだ発表されていません。

 

国へ報告する線は2時間。

お客さんにお金を返す線は、24時間から。

同じ「止まった時間」なのに、線の引かれている場所が12倍も離れているんですよね。

 

国へ出す報告書は、原因を調べて再発を防ぐためのもので、一人ひとりへの払い戻しとは別の話として動きます。

報告の中身しだいでは、国が会社に行政指導を出すこともあって、KDDIがその例でした。

総務省は、障害が起きたときの知らせ方についてのガイドラインも公表しています。

国が細かく見ているのは、止まった理由と、利用者への知らせ方。

財布に戻るお金の話は、約款という会社との約束に任されています。

ネットには「総務省の立ち入りが必要だ」という声も上がっていて、そう言いたくなるのも自然な流れですよね。

ただ、国が入っても、それで料金が戻るとはかぎらない、というのが実際のところです。


KDDIの200円は約款の外にあった

ネットで名前が出ていたのが、KDDIでした。

「KDDIみたいな神対応望む。」という声です。

2022年7月2日の未明に始まったKDDIの通信障害は、61時間あまり続きました。

このとき、KDDIは返金を二段構えで発表しています。

 

  • 24時間以上続けて使えなかった271万人には、下の200円に加えて基本使用料の2日分
  • 期間中に契約していた3589万人全員に、一律200円

前者が、約款に書いてあるとおりの払い戻しです。

後者の200円は、約款の外で、会社が「おわび」として決めたものでした。

IT系のニュースサイトImpress Watchによると、この200円は、約款の払い戻しを1日分に直した平均52円をもとに、61時間を3日間として計算した156円に、おわびの気持ちを込めて決められたそうです。

61時間を24時間ごとに区切ると、約款で数えられるのは2日分。

3日目にかかった残りの時間まで、おわびの計算に入っていました。

全員に200円という分かりやすさが、「神対応」という記憶として残ったのでしょう。

ただ、KDDIのときは止まった時間がずっと長く、約款の線を大きく越えていました。

 

さらに、KDDIは総務大臣から行政指導(国が会社に改善を求めること)を受けています。

通信障害で大臣名の文書による行政指導が出たのは、このときが初めてと報じられました。

KDDIは2022年7月29日、原因と再発防止策を説明する場を設け、その日に返金も発表しています。

みんなの記憶にある「神対応」は、約款で決まっていたことではありませんでした。

会社が自分で決めた、おわびの上乗せです。

今回のJCOMが同じことをするかどうかは、いまのところ何も発表されていません。

約款の線に届かなかったぶんをどう扱うかは、会社の判断ひとつにかかっているんです。


止まった日にやっておきたい3つのこと

では、使えなかった側にできることは何もないのでしょうか。

そんなことはありません。

まずは、止まっていた時間を、自分でも残しておくことです。

いつからつながらなくて、いつ戻ったのか、スマホのメモに一行書いておくだけで足ります。

会社が後から返金やおわびを発表したとき、自分が対象かどうかを確かめる手がかりになるはず。

あわせて、マイページがまた使えるようになったら、自分の契約がいつ始まったのかも見ておくと安心です。

約款の版は契約した時期で分かれているので、どの条文が自分に当てはまるのかが、そこで分かります。

 

次に、返金をかたる連絡に気をつけることです。

KDDIの障害のあと、auの公式アカウントは、返金に便乗した偽メールや偽SMSが送られてくることが想定されると、先回りして注意を出していました。

返金の話が出ると、それを口実にした偽の連絡がまぎれ込みやすくなります。

SMSのリンクは押さずに、会社の公式サイトやアプリから自分で開いて確かめるのが安全です。

契約している会社を名乗る電話にも、同じ用心が要ります。

国民生活センターは、契約先を名乗る光回線の電話勧誘のトラブルが増えていると呼びかけていました。

困ったときの相談先は、消費者ホットラインの188番です。

 

最後は、回線を分けておくこと。

ネットでは、ネットと電話は別の会社のサービスにしてリスク分散していた、という声もありました。

今回は、同じ会社のスマホのデータ通信まで一緒に止まっています。

家のネットとスマホを別の会社にしておけば、片方が止まっても、スマホで調べものくらいはできたかもしれません。

同じ会社にまとめると割引が付いて安くなるので、全部をばらばらにするのは現実的ではないでしょう。

それでも、止まったときの逃げ道があるかどうかは、一度考えておいて損はありません。

 

約款の線は、会社が決めた約束で、利用者の側からは動かせないもの。

でも、止まった時間を書き残すことと、偽の連絡に引っかからないことは、今日からでもできます。

次にJCOMからお知らせが出たら、まずは払い戻しの対象がどう書かれているかを確かめてみてくださいね。

 

この記事で参考にした情報

障害の状況は、次の報道と発表をもとにしました。

  • 共同通信「JCOM、ネット接続で障害 原因調査、復旧時期は未定」(2026年9月23日配信)
  • NHKニュース「JCOMでネット接続サービスに障害」(2026年9月23日)
  • 関西テレビ「JCOMのインターネットサービスで大規模通信障害」(2026年9月23日配信)
  • JCOM「【全国】NET障害ならびにカスタマーセンターにお電話が繋がらない症状について」(2026年9月23日)

決まりごとと、KDDIの前例は、次の資料が元になっています。

  • J:COM NET サービス契約約款(2024年10月1日以降にご契約のお客さま)第40条・第41条
  • 電気通信事業法施行規則 第58条第2項
  • ITmedia NEWS「KDDI、全ユーザーに200円返金」(2022年7月29日配信)
  • Impress Watch「KDDI通信障害で一律200円返金。24時間不通の271万人は2日分減算」(2022年7月29日配信)
  • 日本経済新聞「KDDIに総務省が行政指導」(2022年8月3日配信)