本番まで2週間を切った8月9日に、突然中止になった「琵琶湖三市同時花火大会」。

2026年8月22日、滋賀県の3つの市で1万発以上を打ち上げる予定でした。

全席指定で、7,000円から19,000円。

それだけのお金を集めておきながら、中止のお知らせに「返金」の二文字はありませんでした

問い合わせの窓口も、止まったままです。

 

「これ、詐欺なんじゃないの?」

そう感じた方は、たぶん間違っていません。

疑われても仕方のない事実が、あとから次々に出てきました。

 

8月18日には滋賀県の窓口が動き、8月21日には主催者の男性の別の顔まで報じられました。

この事件を今日はじめて知った方にも伝わるように、最新の続報まで順にお伝えします。




琵琶湖の花火大会が開催直前に中止になった

まずどんなイベントだったのかというと、会場は滋賀県の長浜市・彦根市・高島市の3か所で、3つの市から同時に花火が上がると告知されていました。

席はすべて事前販売の指定席。

駐車場も事前予約の有料制で、会場のまわりへ直接行くことは禁止、シャトルバスで移動する設計だったとのこと。

つまり、お金を払わないと見られない形の花火大会だったわけです。

 

その大会の公式サイトに8月9日、中止のお知らせが出ました。

理由として書かれていたのは「開催日までに必要な準備・運営体制を整えることが困難」。

延期も振替もなし、今後の開催予定もなし、と告知されています。

チケットを買った人が知りたいのは当然「で、お金は?」ですが、このお知らせには返金という言葉が一度も出てきません

ここから騒ぎが大きくなっていきます。




滋賀の3市がそろって関与を否定する異例の発表

じつは中止発表の3日前、すでに大きな動きがありました。

8月6日、長浜市・彦根市・高島市の3つの市がそろって、公式サイトで「主催・共催等には関与していない」と発表したんです。

大会の名前に市の名前が三つも入っているので、名前だけ見たら市がやっているお祭りだと思ってしまいますよね。

ところが実際の主催は民間の実行委員会で、自治体も観光協会も関わっていませんでした。

市の側が「うちは関係ありません」とわざわざ公式サイトで発表するのは、かなり異例のこと。

 

その前日の8月5日には、チケットの販売が止まっています。

さらに、告知ポスターに描かれた琵琶湖の形が実際と大きく違う、という指摘も報道で出ています。

琵琶湖を掲げた大会なのに、肝心の琵琶湖がそれでいいの…と言いたくなります。

このあたりから「何かおかしいぞ」の空気が一気に濃くなっていきました。




彦根の消防には花火の申請が出ていなかった

そして、さらに気になる事実が明らかになります。

8月7日の時点で、会場の一つである彦根市の消防には、花火のための火薬使用の許可申請が出ていませんでした。

彦根市消防本部が、新聞の取材にそう答えています。

1万発の規模なら、開催のおよそ1か月前には申請が必要だそうです。

つまり8月に入った時点で、打ち上げの手続きがそもそも始まっていなかった可能性が高いということ。

しかも主催者側は、2025年12月と2026年1月に一度ずつ、長浜市へ相談に来ていたそうです。

そのたびに市は「警察や消防への手続きを進めてください」と伝えていたといいます。

半年以上前に案内を受けていながら、申請は出ていなかったことになります。

 

一方で、中止のわずか5日前にあたる8月4日の夜には出店者向けの説明会が開かれ、3つの会場の打ち上げ場所や「中止の場合は返金する」という説明までされていたそうです。

このとき不安になった出店予定の方の一人が、自分で地元の消防に問い合わせています。

返ってきた答えは「何の協議もできておらず、花火大会をやるとは思えない」

主催者の説明と、役所の現場の答えが、まるでかみ合っていませんでした。




打ち上げ会場は1か所も押さえられていなかった

中止のあとの取材で、もう一つ大きなことがわかってきます。

主催者側は、3つの市にまたがる4か所を、打ち上げ場所の候補として示していたそうです。

一部の施設には、実行委員会の人が直接足を運んで「ここで花火を上げたい」と説明もしていたといいます。

ところが、その4か所はどこも会場として押さえられていませんでした

 

実行委員会は、メールでの取材にこう答えています。

「施設管理者との正式な使用手続きが完了し、会場使用が最終的に確定した状態には至っておりませんでした」

確定していない段階で準備を進めたことについては、進め方と説明が足りなかったと認めました。

 

一方で主催者側は、はじめから開く気がなかったわけではない、とも主張しています。

4月には滋賀県庁を訪ねて、必要な許可や申請について相談したとのこと。

花火業者とのやりとりや会場の配置図など、進めていた作業の資料は残っていると説明しています。

ひと言でまとめると、架空の大会だったのではなく、結果として開けなかっただけ、というのが主催者側の言い分です。

 

それでも、4つの候補地はどこも、話をしに行っただけの状態でした。




県立高校でドローンを教えていた主催者の男性

では、その主催者はどんな人なのでしょう。

8月21日、その姿が少しだけ見えました。

 

大会の主催者を名乗る男性が、滋賀県立高校の部活動で、無償で生徒を指導していたと報じられたのです。

県の教育委員会への取材でわかりました。

時期は5月から6月。

科学系の部活の生徒に、琵琶湖で水中ドローンを動かす方法を、2回にわたって教えていたそうです。

ドローンの仕事をしていると話し、協力したいと自分から申し出たとのこと。

 

そのとき渡した名刺には、こう書かれていました。

「琵琶湖三市同時花火大会実行委員会代表」

それなのに、花火大会の話は一度も出なかったといいます。

思い出してほしいのは、この時期です。

5月から6月といえば、1万発の花火のチケットが売られていた真っ最中。

本番まで、あと2か月あまりでした。

その大会の代表が、地元の高校まで足を運んで名刺まで渡しておきながら、花火の話をしていないのです。

 

身元を隠していたわけではありません。

肩書も、指導の様子も、学校のホームページに残りました。

それでも今、その人とは連絡が取れていません。




花火を打ち上げるには消防の許可が要る

ここで「そもそも花火大会って、勝手にやっちゃいけないの?」という疑問が出てきますよね。

打ち上げ花火は、火薬を燃やすための許可を取らないと上げられません

そのルールを定めているのが「火薬類取締法」という法律です。

どこで、どれだけの量を、まわりとどれくらい距離を取って上げるのかまで審査される仕組み。

個人や民間の団体が、思い立ってすぐ開けるものではありません。

車の運転に免許が要るのと同じで、危ないものを扱う以上、先に「あなたなら大丈夫」と確認してもらう必要があるわけです。

 

そう考えると、今回の大会には設計の段階で気になる点がありました。

観客の席は先に売られて決まっているのに、打ち上げ場所は「開催1週間前にメールで案内する」ことになっていたそうです。

許可の審査は場所とセットのはずなのに、席が売られている間、その場所は知らされないままの設計。

席は決まっているのに花火の上がる場所は内緒、というのは、順番が逆に見えます。

 

花火大会に許可が要ることは、意外と知られていません。

知らなくて当たり前の話ですが、知っておくと、この先イベントの告知を見る目が少し変わります。




琵琶湖花火のチケット代は返ってくるのか

ここまで読んで、「それより自分のチケット代は?」という方がほとんどでしょう。

中止のお知らせに書かれていたのは、「法的専門家への相談を行いながら対応内容の確認・整理」を進める、という一文だけ。

返すとも、返さないとも書かれていません。

 

そして、聞きたくても聞けないのです。

メールも問い合わせフォームもSNSも、すべて止まっています

電話は、もともと受け付けない運用でした。

事務局があったとされる滋賀県栗東市の住所も、2026年6月で使用を終えていたと、中止発表のときになって明かされています。

 

この2026年6月は、あの高校でドローンを教えていた時期とそのまま重なります。

生徒に教えていたころには、事務局の住所はもう使われていなかったことになります。

 

並べてみると、おかしなことに気づきます。

チケットを買うほうの入り口は、24時間いつでも開いていました。

ところが、お金のことを聞くための入り口には、はじめから電話すらなかったのです。

 

7,000円から19,000円のチケット代だけではありません。

1店5万円の出店料を払ったお店も、同じところで止まったままです。

8月22日の土曜日を楽しみに、家族の分までまとめて席を押さえていた人もいるはずです。

 

詐欺と呼ぶかどうかを決めるのは、これから警察や裁判所の仕事になります。

ただ、払うための窓口はいくつもあったのに、返してもらうための窓口だけがありませんでした。

それだけは、はっきりしています。




公式サイトにいまも残っている返金の約束

ここで一つ、覚えておいてほしい事実があります。

大会の公式サイトには「特定商取引法に基づく表記」という、ネットでチケットや商品を売るときのルールを書いておくページがあります。

そこには今も、こう書かれています。

「主催者側の判断により大会が中止となり、延期開催も行われない場合に限り、チケット代金を全額返金いたします」

振込手数料などは対象外とされていますが、返すのはチケット代の全額です。

 

今回の中止は、主催者側の判断によるもので、延期もなし。

つまり、サイトに書かれた返金の条件に、今回のケースはそのまま当てはまります

自分たちで決めたルールでは全額返金を約束しているのに、中止のお知らせには返金の言葉が一つも出てこないのです。

約束のページが残っている以上、返金を求める声は言いがかりではなく、書かれた条件どおりの要求ということになります。

チケットを買った方は、このページが存在することをぜひ覚えておいてください。




滋賀県が「カード会社に相談を」と呼びかけ

そして8月18日、県の側から具体的な呼びかけが出ました。

滋賀県消費生活センターが、チケットを買った人に向けて、こう伝えています。

代金を支払った会社へ、大会が中止になったことを伝えて相談してください

ここでいう会社とは、クレジットカード会社、コード決済を運営している会社、振り込みに使った銀行などのこと。

主催者ではなく、お金が通っていった道のほうへ声をかける、という話です。

 

センターの担当者は「同様の事案で返金されるケースがあった」と話しています。

もちろん、返してもらえるかどうかは、それぞれの会社の判断しだい。

必ず戻るという意味ではありません。

それでも、主催者からの連絡をただ待つしかなかったところに、自分の側から動ける道が一本できたことになります。

 

センターは、この花火大会に滋賀県は関わっていないことも、あらためて説明しました。

3つの市に続いて、県も「うちではありません」と言った形です。

 

実行委員会のほうは、購入者と出店予定者への対応を「ホームページで随時お知らせします」としています。

ただ、中止から10日以上がたっても、返金の方針は示されていません。

出店を予定していたお店は150件、出店料は1件5万円ですから、合わせて750万円になる計算です。

チケットを買った人も、出店を決めていたお店も、同じ返事を待っています。




三陸花火大会では2500万円が未返金のまま

「まさか、本当に戻ってこないなんてことはないだろう」

そう思いたいところですが、よく似た前例がすでにあります。

 

岩手県陸前高田市の「三陸花火大会」です。

2025年5月に開かれる予定だったこの大会は、資金不足を理由に直前で中止になりました。

それから1年3か月。

いまも少なくとも1,700組、およそ2,500万円のチケット代が戻っていないと報じられています。

 

実行委員会の説明は、こうでした。

「返金に回す資金が手元に残っていない」

2025年9月ごろからは代表者と連絡が取れなくなり、いまは市が実態を調べている段階です。

 

救いがなかったわけではありません。

地元の有志が新しい実行委員会を立ち上げ、別の花火大会を開いて、返金されていない人にはチケット割引という形で埋め合わせをしました。

それでも、新しい花火は上がったのに、最初に払ったお金だけが戻っていません。




チケットを買った人がいまできること

三陸の例が教えてくれるのは、待っているだけでは戻らないということです。

もし自分や家族がチケットを買っていたなら、動くのは早いほど望みがあります。

 

まずやることは、どうやって払ったかを思い出すこと。

ここで、戻ってくる可能性がずいぶん変わります。

 

クレジットカードで払った方は、カード会社へ。

滋賀県の窓口が最初に挙げたのもここで、「同様の事案で返金されたケースがあった」というのは、主にこの道のことです。

コード決済で払った方は、その運営会社へ。

銀行振込やコンビニ払いだった方は、正直いちばん厳しい道になります。

だからこそ、早めに銀行と消費生活センターの両方へ相談しておいてください。

 

その相談先には、覚えやすい番号がひとつあります。

消費者ホットライン「188」

最寄りの消費生活センターにつながる、こうした金銭トラブルの相談窓口です。

 

それから、記録は絶対に消さないでください。

チケットを買ったことがわかるメール、決済画面の画面写真、公式サイトの告知を保存したもの、問い合わせのやり取り。

こうした記録がそろっているほど、警察へ被害届を出したときに動いてもらいやすくなるそうです。

 

それと、この先お金が返ってきたとしても、それで詐欺の話が終わるわけではないといいます。

盗んだ物をあとから返しても、盗んだこと自体はなくなりません。

返金と刑事の責任は別だと、弁護士が説明しています。

 

泣き寝入りするしかない、という話でもありません。

2025年11月には、強風で一部中止になったランタンイベントについて、大阪地裁が主催会社に返金の義務を認めた判決を出しました。

規約に「返金しない」と書いてあっても、そのまま通るとは限らないということです。

まして今回は、公式サイトのほうが全額返金を約束しています。

チケットのお金つながりでもう一つ、映画ちいかわの入場者特典シールにも、定価とかけ離れた高値の転売が出はじめています。

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最後にひとつだけ、これから先のための見分け方を。

次に家族で行くイベントの告知を見るときは、主催のところに自治体や観光協会の名前があるかを見てみてください

今回の大会は、市の名前を冠していながら、主催欄に市も観光協会もいませんでした。

それでも夏の花火は、やっぱり家族で見たいもの。

今度こそ何の心配もいらない会場で、ゆっくり夜空を見上げたいですね。