浜松の土下座動画|19歳は少年院で済むのか調べてみた

「いじめ加害度S」という格付けをつけて、ひとりの若い男性を囲んで土下座をさせる動画が、Xで大きく広がっています。
投稿した暴露系のアカウントは、囲んでいた側のひとりとして「19歳」とされる男性の名前まで書き添えていました。
見ていて胸が悪くなった、という人がほとんどでしょう。
動画の中では「少年院」という言葉まで聞こえてきて、囲んでいた側はちゃんと罰を受けるのか、という声が返信欄に並んでいます。
ハッキリと言います。
いじめは『した側が100%悪い』です。
「された側に原因がある」のではなく、
「した側が選んだ加害行為」なんです。
いじめは犯罪です。ダメ!絶対!!!
— ミル🥺 (@depression1203) 2026年9月25日
今回は、動画に映っていたことと分かっていないことを分けたうえで、19歳の加害者がどう裁かれるのかを調べてみました。
海の堤防で囲まれて土下座
投稿したのは、芸能人の暴露などで知られるDEATHDOL NOTE(デスドルノート)というアカウントです。
投稿は2026年11月5日の夜に出ていて、ついていた動画は3本、長いものでも1分ほどでした。
海の見える堤防の上で、正座した男性を若い男女が取り囲み、上から言葉を浴びせたり、頭に手を置いたりする場面が続きます。
土下座をしている男性の顔にはぼかしが入っていて、囲んでいる側の顔はそのまま。
音声には、ナイフや少年院という言葉も入っています。
返信欄に「警察通報だね」「逮捕案件。」という声が次々に並んだのも、無理はありません。
ただ、動画に添えられた文字には、分かっていないことが多く残っています。
いつ撮られたのか、どこの海なのか、名前を書かれた人が本当に映っている本人なのか。
投稿には浜松市と書かれていますが、返信欄にはまったく別の県の出身だという書き込みもあり、地名の時点でそろっていません。
この種の晒し投稿は、添えた名前や場所を確かめてから出しているわけではないんです。
同じアカウントが8月に広めた別の土下座動画も、映っていたYouTuberのグループが11月4日になって、自分たちで仕込んだ企画だったと明かしています。
YouTuber・雨来ズ、DEATHDOL NOTEが拡散した「セクハラ土下座動画」は自作自演だったと明かす
「完全に計画通りでございます」・8月、メンバーのそうたが泥酔して女性に土下座する動画がXで拡散
・デスドルノートの投稿は表示回数3200万回超を記録
↓… pic.twitter.com/YYrxIXwB79— ユーチュラ-YouTubeランキング (@ytranking) 2026年11月5日
今回の暴行そのものを作り物だと疑う材料は、どこにも見当たりません。
そのうえで、映像は本物でも、添えられた名前と場所が正しいとは限らない、という一点だけは押さえておきたいところです。
「いじめ加害度S」は法律の外
投稿の頭の「いじめ加害度S」は、このアカウントが自分でつけている格付け。
検索で拾えるだけでも、今年の3月から同じような格付けつきの投稿が12本。
どれもアカウントの独自の点数で、裁判所も警察も、この物差しは使いません。
「いじめ」という言葉そのものにも、引っかかるところが。
いじめ防止対策推進法は、いじめを「児童等」のあいだの出来事と決めていて、その児童等を「学校に在籍する児童又は生徒」と書いています。
19歳で学校に在籍していなければ、この法律の対象には入りません。
返信欄にも「19歳、いじめじゃなくて、紛うことなく犯罪。」という声がありました。
では、どんな罪にあたりうるのか。
拘禁刑というのは、それまでの懲役と禁錮がひとつにまとまった刑の呼び方です。
人を脅したり暴力をふるったりして、やる義務のないことをさせると、刑法223条の強要罪で、罰は3年以下の拘禁刑になります。
頭に手をかけて押すような行為は暴行罪に、ナイフの話を持ち出して脅していたなら脅迫罪にも当たりえます(どちらも2年以下の拘禁刑など)。
土下座をさせたことで逮捕された前例もあって、2013年には札幌の衣料品店で店員を床に正座させた客が、店員の被害届を受けて強要の疑いで逮捕されました。
返信欄では、手を出した人だけでなく、囲んでいた人や撮っていた人の名前まで探す声も。
刑法60条は「二人以上共同して犯罪を実行した者は、すべて正犯とする」と書いています。
正犯というのは、罪を実際にやった本人のこと。
つまり、みんなで一緒にやった人は、手を出していなくても同じ罪を問われることがあります。
囲んで逃げられなくしていたのか、そばで見ていただけなのか、撮影していた人がどちらに入るのかは、その場で何をしていたかしだい。
「いじめ」と呼ぶと学校の中のもめごとに聞こえますが、刑法で見れば、強要や暴行という名前のついた罪です。
ただし、19歳は少年法の上ではまだ「少年」で、2022年からは「特定少年」という別の扱いを受けています。
【厳罰化】改正少年法が成立、18・19歳は実名報道へhttps://t.co/FODZSBkFV8
「特定少年」と位置付ける特例を設け、刑事裁判にかける対象犯罪を拡大。起訴後は実名報道も解禁。成人年齢を18歳に引き下げる改正民法と合わせ、来年4月1日に施行する。
— ライブドアニュース (@livedoornews) 2021年5月21日
19歳は少年院で済むのか
先に答えを書くと、少年院で済むとは決まっていません。
行き先を決めるのは家庭裁判所で、そこから大人と同じ刑事裁判へ回る道も、法律にはっきり用意されているんです。
19歳の事件は、警察や検察の捜査のあと、まず家庭裁判所へ送られます。
家庭裁判所が「これは刑事裁判にかけるべきだ」と判断して事件を検察官へ戻すのが、逆送という手続き。
18歳未満の少年なら、逆送できるのは拘禁刑以上の罪だけ。
ところが18歳と19歳の特定少年については、少年法62条1項が、罪の種類を問わず逆送できると定めています。
そのうえで、いちばん軽くても1年以上の拘禁刑になる重い罪(強盗など)は、原則として逆送の扱い。
強要や暴行、脅迫は「◯年以下」と上限だけが決まっている罪なので、この中には入っていません。
なので今回のような罪だと、刑事裁判になるかどうかは家庭裁判所が事件の中身を見て決める、というのが正確な答えです。
家庭裁判所が保護処分を選んだ場合、特定少年に選べるのは次の3つ。
- 6か月の保護観察
- 2年の保護観察
- 少年院への送致(3年以下の範囲で、入る期間を最初に決める)
保護観察は、家に住んだまま、保護観察官や保護司の指導を受けて暮らす処分のこと。
少年院は、刑罰を受ける刑務所とは別の、教育を受け直すための施設です。
返信欄には「少年院入ってもいいとか抜かしとるから」として、懲役刑にしてほしいという書き込みもありました。
動画の中でどんな口ぶりだったにせよ、少年院になるか刑事裁判になるかを決めるのは、本人ではなく家庭裁判所です。
もうひとつ、19歳という年齢そのものにも期限が。
少年法は、本人が20歳以上になっていると分かった時点で、事件を検察官へ送るよう定めています。
手続きが進むうちに20歳を迎えれば、少年法の手続きそのものから外れて、大人と同じ扱いに。
名前が報じられるかどうかも、この年齢と関係してきます。
成人が18歳になったのに
少年法が20歳未満になってて
18歳19歳でも特定少年となり
事件起こしても名前が出ない変な形になってるんですよね
少年法は12歳の小学生までで良い!
法改正必要ですね— ラスタうどん (@dreadyarou) 2026年6月3日
実は、逆送されて特定少年のときの罪で起訴されれば、名前や顔写真を報じることが許されています(少年法68条)。
書面だけで罰金を決める略式の手続きになった場合は、名前は伏せられたままです。
怒りを確実に届ける先
返信欄でいちばん目立つのは、囲んでいた側の見た目をからかう言葉でした。
返信欄の235件ほどの書き込みのうち、土下座をさせられた男性を気づかうものは12件だけ。
怒りがわくのは当然です。
その怒りが罰へいちばん確実につながる場所は、警察と家庭裁判所の手続き。
強要も暴行も脅迫も、被害を受けた人の告訴がなくても警察が捜査できる罪です。
実際に動き出すきっかけとして大きいのは、札幌の例のように、被害を受けた本人からの被害届になります。
見たくないのに
イジメ動画が目につく…イジメは100%、加害者が悪い。
そこは一切ブレへん。ただ最近、
正義を掲げた特定班が
未成年の名前、学校、親の会社、住所まで平気で晒していく流れを見ると
正直、胸が重くなる。それもう制裁ちゃうやろ。
集団リンチにしか見えへん瞬間がある。…— 谷本吉紹|エースタイルGroup (@kaigo_akaruku) 2026年1月19日
動画を見て何かしたいと思ったら、元の投稿のURLを添えて、警察相談専用電話の#9110か近くの警察署へ伝えるのが確実です。
もし、こういう動画に映る側が自分の家族だったら。
まずは動画を消さずに保存して、近くの警察署に相談するのが先。
投稿そのものは、Xの投稿の右上にある「…」から報告できます。
囲んでいた側には、ちゃんと罰を受けてほしいですよね。
そして同じくらい、ぼかしの向こうで土下座をさせられた男性が、いまは安全な場所にいてほしいと思わずにはいられません。
