「いじめ加害度S」という格付けをつけて、ひとりの若い男性を囲んで土下座をさせる動画が、Xで大きく広がっています。

投稿した暴露系のアカウントは、囲んでいた側のひとりとして「19歳」とされる男性の名前まで書き添えていました。

見ていて胸が悪くなった、という人がほとんどでしょう。

動画の中では「少年院」という言葉まで聞こえてきて、囲んでいた側はちゃんと罰を受けるのか、という声が返信欄に並んでいます。

今回は、動画に映っていたことと分かっていないことを分けたうえで、19歳の加害者がどう裁かれるのかを調べてみました。


海の堤防で囲まれて土下座

投稿したのは、芸能人の暴露などで知られるDEATHDOL NOTE(デスドルノート)というアカウントです。

投稿は2026年11月5日の夜に出ていて、ついていた動画は3本、長いものでも1分ほどでした。

海の見える堤防の上で、正座した男性を若い男女が取り囲み、上から言葉を浴びせたり、頭に手を置いたりする場面が続きます。

土下座をしている男性の顔にはぼかしが入っていて、囲んでいる側の顔はそのまま。

音声には、ナイフや少年院という言葉も入っています。

返信欄に「警察通報だね」「逮捕案件。」という声が次々に並んだのも、無理はありません。

 

ただ、動画に添えられた文字には、分かっていないことが多く残っています。

いつ撮られたのか、どこの海なのか、名前を書かれた人が本当に映っている本人なのか。

投稿には浜松市と書かれていますが、返信欄にはまったく別の県の出身だという書き込みもあり、地名の時点でそろっていません。

この種の晒し投稿は、添えた名前や場所を確かめてから出しているわけではないんです。

同じアカウントが8月に広めた別の土下座動画も、映っていたYouTuberのグループが11月4日になって、自分たちで仕込んだ企画だったと明かしています。

今回の暴行そのものを作り物だと疑う材料は、どこにも見当たりません。

そのうえで、映像は本物でも、添えられた名前と場所が正しいとは限らない、という一点だけは押さえておきたいところです。

 

「いじめ加害度S」は法律の外

投稿の頭の「いじめ加害度S」は、このアカウントが自分でつけている格付け。

検索で拾えるだけでも、今年の3月から同じような格付けつきの投稿が12本。

どれもアカウントの独自の点数で、裁判所も警察も、この物差しは使いません。

「いじめ」という言葉そのものにも、引っかかるところが。

いじめ防止対策推進法は、いじめを「児童等」のあいだの出来事と決めていて、その児童等を「学校に在籍する児童又は生徒」と書いています。

19歳で学校に在籍していなければ、この法律の対象には入りません。

返信欄にも「19歳、いじめじゃなくて、紛うことなく犯罪。」という声がありました。

 

では、どんな罪にあたりうるのか。

拘禁刑というのは、それまでの懲役と禁錮がひとつにまとまった刑の呼び方です。

人を脅したり暴力をふるったりして、やる義務のないことをさせると、刑法223条の強要罪で、罰は3年以下の拘禁刑になります。

頭に手をかけて押すような行為は暴行罪に、ナイフの話を持ち出して脅していたなら脅迫罪にも当たりえます(どちらも2年以下の拘禁刑など)。

土下座をさせたことで逮捕された前例もあって、2013年には札幌の衣料品店で店員を床に正座させた客が、店員の被害届を受けて強要の疑いで逮捕されました。

返信欄では、手を出した人だけでなく、囲んでいた人や撮っていた人の名前まで探す声も。

刑法60条は「二人以上共同して犯罪を実行した者は、すべて正犯とする」と書いています。

正犯というのは、罪を実際にやった本人のこと。

つまり、みんなで一緒にやった人は、手を出していなくても同じ罪を問われることがあります。

囲んで逃げられなくしていたのか、そばで見ていただけなのか、撮影していた人がどちらに入るのかは、その場で何をしていたかしだい。

「いじめ」と呼ぶと学校の中のもめごとに聞こえますが、刑法で見れば、強要や暴行という名前のついた罪です。

ただし、19歳は少年法の上ではまだ「少年」で、2022年からは「特定少年」という別の扱いを受けています。


19歳は少年院で済むのか

先に答えを書くと、少年院で済むとは決まっていません。

行き先を決めるのは家庭裁判所で、そこから大人と同じ刑事裁判へ回る道も、法律にはっきり用意されているんです。

19歳の事件は、警察や検察の捜査のあと、まず家庭裁判所へ送られます。

家庭裁判所が「これは刑事裁判にかけるべきだ」と判断して事件を検察官へ戻すのが、逆送という手続き。

18歳未満の少年なら、逆送できるのは拘禁刑以上の罪だけ。

ところが18歳と19歳の特定少年については、少年法62条1項が、罪の種類を問わず逆送できると定めています。

そのうえで、いちばん軽くても1年以上の拘禁刑になる重い罪(強盗など)は、原則として逆送の扱い。

強要や暴行、脅迫は「◯年以下」と上限だけが決まっている罪なので、この中には入っていません。

なので今回のような罪だと、刑事裁判になるかどうかは家庭裁判所が事件の中身を見て決める、というのが正確な答えです。

 

家庭裁判所が保護処分を選んだ場合、特定少年に選べるのは次の3つ。

  • 6か月の保護観察
  • 2年の保護観察
  • 少年院への送致(3年以下の範囲で、入る期間を最初に決める)

保護観察は、家に住んだまま、保護観察官や保護司の指導を受けて暮らす処分のこと。

少年院は、刑罰を受ける刑務所とは別の、教育を受け直すための施設です。

返信欄には「少年院入ってもいいとか抜かしとるから」として、懲役刑にしてほしいという書き込みもありました。

動画の中でどんな口ぶりだったにせよ、少年院になるか刑事裁判になるかを決めるのは、本人ではなく家庭裁判所です。

 

もうひとつ、19歳という年齢そのものにも期限が。

少年法は、本人が20歳以上になっていると分かった時点で、事件を検察官へ送るよう定めています。

手続きが進むうちに20歳を迎えれば、少年法の手続きそのものから外れて、大人と同じ扱いに。

名前が報じられるかどうかも、この年齢と関係してきます。

実は、逆送されて特定少年のときの罪で起訴されれば、名前や顔写真を報じることが許されています(少年法68条)。

書面だけで罰金を決める略式の手続きになった場合は、名前は伏せられたままです。

 

怒りを確実に届ける先

返信欄でいちばん目立つのは、囲んでいた側の見た目をからかう言葉でした。

返信欄の235件ほどの書き込みのうち、土下座をさせられた男性を気づかうものは12件だけ。

怒りがわくのは当然です。

その怒りが罰へいちばん確実につながる場所は、警察と家庭裁判所の手続き。

強要も暴行も脅迫も、被害を受けた人の告訴がなくても警察が捜査できる罪です。

実際に動き出すきっかけとして大きいのは、札幌の例のように、被害を受けた本人からの被害届になります。

動画を見て何かしたいと思ったら、元の投稿のURLを添えて、警察相談専用電話の#9110か近くの警察署へ伝えるのが確実です。

 

もし、こういう動画に映る側が自分の家族だったら。

まずは動画を消さずに保存して、近くの警察署に相談するのが先。

投稿そのものは、Xの投稿の右上にある「…」から報告できます。

囲んでいた側には、ちゃんと罰を受けてほしいですよね。

そして同じくらい、ぼかしの向こうで土下座をさせられた男性が、いまは安全な場所にいてほしいと思わずにはいられません。