家を建ててから15年、20年と経つと、外壁のことが気になってきます。

壁をさわると手につく白い粉や、切れてしまったつなぎ目のゴム。

ベランダや屋上の床に出てきた、細かいひび割れ。

それで業者に見積もりを頼むと、返ってきた紙に書かれているのは、想像していた金額の倍だったりします。

200万円、300万円。

屋上の防水まで一緒にとなると、その先の数字が並ぶことも珍しくありません。

ここでいちばん困るのは、金額の大きさそのものより、その金額が何に対して払うお金なのかが見積書から読み取れないことだと思います。

塗料が高いのか、職人さんの手間なのか、それとも別の何かなのか。

今回は、外壁塗装の見積もりがなぜ高くなるのかについて、家のことにくわしくない人にもわかりやすく解説していきたいと思います。

見積もりが数百万円になるのは塗料のせいではない

まず知っておきたいのが、外壁の見積もりはひとつの工事の値段ではないということです。

壁を塗り直す外壁塗装と、屋上やベランダの防水工事は、名前が並んでいるだけで中身がまったく違います。

防水は、平らな床の上に防水の層を作り直す作業です。

 

この防水のほうは、それだけで100万円前後かかることも珍しくありません。

ウレタン、シート、FRPなど工法によって差はありますが、100平方メートルほどの屋上で100万円台が一つの目安です。

耐用年数は、どの工法でもおよそ10年から15年ほど。

つまり見積もりの何割かは、そもそも塗装ではない工事の代金だったりします。

 

もう一つ大きいのが、家の大きさです。

外壁塗装の金額は、塗る面積でほぼ決まります。

一般的な30坪の家で、70万〜120万円あたりが相場です。

屋根までまとめて塗ると、100万〜160万円ほど。

壁の面積が2倍になれば塗料も2倍、足場も2倍、職人さんの人数も日数も増えていきます。

出っ張りや段差の多い家、屋上のある家は足場の組み方も複雑になるので、そこでも費用が積み上がっていくんですね。

 

ここまでで言えるのは、数百万円という数字は「塗料が高いから」では説明がつかないということです。

面積、足場、そして別工事である防水。

この3つが重なった合計額を、私たちは「外壁塗装の見積もり」という一つの言葉で見てしまっているわけです。

ハウスメーカーに頼むと2割から4割高くなる

とはいえ、面積だけでは説明しきれない部分もあります。

それが、ハウスメーカーを通したときの価格差です。

大手ハウスメーカーは、塗装工事を自社の職人が行っているわけではありません。

受注したあと、実際に作業をするのは下請けの塗装業者です。

 

このとき、下請けの工事費にメーカー側の管理費や紹介料が乗ります。

業界ではこれを中間マージンと呼びますが、地元の塗装店に直接頼む場合と比べて2割から4割ほど高くなると説明されることが多い部分です。

実際、外壁塗装の比較サイトが公開している事例では、同じ内容の工事でメーカー経由が211万円、地元の塗装店が113万円という金額が並んでいます。

外壁と屋根の塗装にベランダ防水まで含めた例では、420万円と176万円という差になりました。

 

ここで大事なのは、この差額がまるごと無駄というわけではないということです。

メーカー経由には、自社の建材を知っている担当者がつく、施工後の窓口が一本化される、独自の保証がつくといった中身があります。

その安心にお金を払うという選択は、まったくおかしくありません。

問題は、その差額が何のぶんなのかを、施主が見積書から読み取れないことのほうです。

 

この読みにくさは、大きな家に限った話ではありません。

同じ家に、150万円から300万円までの見積もりが並ぶ。

倍の開きがあっても、どちらも詐欺ではありません。

塗る範囲も、下地の補修の中身も、保証の年数も違うからです。

いちばん誤解されているのは30年保証のほうです

ここからが、この話でいちばん見落とされている部分だと思います。

大手ハウスメーカーが掲げている、30年の長期保証という仕組みです。

そして多くの人が、こう受け取っています。

メーカーに塗装を頼まないと、保証が切れてしまう。

 

ところが、保証が守っている中身を見ると少し違います。

各社の説明を読むかぎり、長期保証の対象になっているのは建物の構造と、雨水の浸入を防ぐ部分です。

外壁の色あせや汚れ、粉が手につくといった変化は、自然な経年劣化として扱われます。

つまり見た目のための塗装は、もともと保証の対象ではありません

 

保証を続けるために求められているのは、塗装そのものではなく定期点検を受けることと、そこで必要と判断された補修をきちんと実施することです。

築10年を過ぎたあたりから数年おきに点検があり、指摘された箇所を直せば保証が延びていく、という形です。

 

ここで、おかしなねじれが起きます。

保証の対象になっていない塗装のほうには、保証を守るためだと思って高い金額を払う。

いっぽうで、保証に直接効いてくる点検や防水まわりの補修は、後回しにしたり値切ったりしてしまう。

本当に守るべき順番と、お金をかける順番が入れ替わっているわけです。

 

ただし、これは会社や契約の時期によって条件が変わる部分でもあります。

他社で塗装をしたら保証がどうなるのかは、思い込みで判断せず、契約書の保証条件をそのまま見せて確認するのが確実だと思います。

電話一本で聞けることに、何百万円もの差がかかっている話です。

いい家を建てた人ほど20年目の請求が重くなる

もう一つ、見落とされやすい仕組みがあります。

大手メーカーの高性能な外壁材や高耐久の塗装は、10年ごとの塗り替えが要らない代わりに、建てるときの費用が高く設定されているんですね。

長く持つのは事実ですが、「30年メンテナンス不要」は外壁材の話であって、家全体の話ではありません

塗装の専門店のなかには、現時点で30年持つ塗料は存在せず、実際の寿命は15年ほどだと説明しているところもあります。

 

ただし、ここには落とし穴があります。

10年ごとに塗り替える家は、100万円台の出費を2回に分けて払う形です。

2回目のときには、金額のイメージも業者の選び方も、ある程度つかめているはずです。

いっぽう20年もつ家は、その練習をしないまま20年目を迎えます。

 

しかも20年目には、塗装だけが来るわけではありません。

壁のつなぎ目のゴム、屋上の防水層、雨どい、ベランダ。

寿命が10年から15年ほどの部分が、そろって一度に順番を迎えます。

 

つまりメンテナンス費用は消えたのではなく、後ろにまとめて置かれていただけなんですね。

見積書を見て言葉を失う人が多いのは、金額そのものよりも、20年ぶんが一度に見えてしまうからだと思います。

 

しかも家の出費は、外壁だけで終わってくれません。

家は、買ったあとも少しずつお金がかかり続けます。

その請求書が、忘れたころにまとめて届くという話です。

 

見積もりを取ってから工事が始まるまで、半年近くかかることもあります。

思い立ったときに動いておくほうが、選ぶ時間も残ります。

見積書が届いたら見る3か所

では、実際に見積もりを受け取ったとき、どこを見ればいいのでしょうか。

専門知識がなくても確認できる場所が3つあります。

 

1つめは、「一式」という言葉がいくつあるかです。

外壁塗装一式300万円、と書かれていたら、その中身は誰にも比べられません。

塗る面積が何平方メートルで、単価がいくらなのか。

この2つが書かれていれば、他社の見積もりと横に並べられます。

 

2つめは、足場代が別の行になっているかです。

足場は塗装そのものとは別の作業で、金額もまとまった額になります。

ここが独立して書かれている見積書は、他の項目も分けて書かれていることが多いです。

 

3つめは、防水工事が塗装と分かれているかです。

屋上やベランダの防水は、外壁塗装とは別の工事です。

同じ行にまとめられていると、どちらの金額が大きいのかがわからなくなります。

 

そのうえで、相見積もりを取るなら2社から3社が目安とされています。

このとき比べるのは、合計金額ではありません。

塗る範囲、下地の補修の中身、保証の年数。

この3つがそろって初めて、金額の比較が意味を持ちます。

 

そして、メーカーの保証が絡む家であれば、先ほどの確認を先に済ませておくのが安全です。

保証の条件を知らないまま安いほうを選ぶのも、条件を確かめないまま高いほうを選ぶのも、どちらも同じくらいもったいない選び方だからです。

 

その見積もりが高いのか妥当なのかは、実際の家を見ていない人には判断できません。

ただ、その金額が何と何の合計なのかを説明してもらう権利は、頼む側にあります

金額に驚いたときに聞くべきなのは、たぶん「高すぎませんか」ではなく「内訳を分けて出してもらえますか」のほうなのだと思います。

 

家の話は、どうしても後回しにされがちです。

それでも、次の点検の案内が届いたときに、この記事のことを少し思い出してもらえたらうれしく思います。