犬を連れて入れるカフェで、コーヒーとサンドイッチを頼む。

会計は2千円くらいかな、と思いながらメニューをめくる。

そこに、6万円のボトルが載っていました。

 

アイドルグループWEST.の桐山照史が経営するお店で起きた、いわゆる6万円シャンパンの騒動です。

9月に入ってSNSが大きくざわつき、そのシャンパンは販売休止になりました。

 

ただ、声を一つずつ拾っていくと、少し意外なものが見えてきます。

高すぎる、と言っている人は、思ったほど多くありませんでした。

今回は、炎上したのが本当に値段のせいだったのかを、わかりやすく解説していきたいと思います。

サンドは1760円で酒は1万2000円から

6万円と聞くと、どんなお店なのか想像がつかなくなりますよね。

 

お店の名前は「F BULL’S Cafe」といって、東京の中目黒にあります。

オープンしたのは2026年4月15日です。

桐山が代表を務める会社が運営していて、自身のブランドとしては初めての実店舗だと発表されていました。

いちばんの特徴は、愛犬と一緒に入れることです。

1人につき2頭まで入店でき、犬用のメニューまで用意されています

お水やおしっこシートまで置いてあるそうで、そこはもう、犬連れのためにつくられたお店なんですね。

営業は朝8時から夜7時までで、水曜日が定休日です。

席は全部で20席で、貸切はできません。

夜遅くまでやっているお店ではなく、朝のコーヒーから夕方までの、ごく普通のカフェの時間割です

 

グルメサイトに出ているフードの値段も見てみました。

ホットサンドは1650円から1760円、ホットドッグは1430円から1760円、プレート類も1430円から1760円です。

2000円前後を見ておけば足りる、街のカフェの相場だと思います。

 

そのお店に、あるときからシャンパンが並びました。

報道によれば、全部で4種類が置かれていたそうです。

いちばん安いオリジナルのもので1万2000円台、そこから3万円のものがあり、いちばん高いもので6万円だったとのこと。

サンドイッチが1760円で、ボトルが6万円。

同じ1枚のメニューの上に、この2つが並んでいました。

ベルエポは良心的という声も出ていた

では、その6万円は法外な値段だったのでしょうか。

 

週刊女性PRIMEの記事では、6万円のシャンパンについて「ベルエポ」と書かれていました。

ベル・エポックというのは、ペリエ ジュエというメーカーが出しているシャンパンで、白いアネモネの花が描かれた瓶で知られています。

お祝いの席で出てくる、いわゆる高級な部類の1本です。

そのお店で出していた銘柄や年号までは公表されていないので、そこは分かりません。

ただ、ベル・エポックの参考小売価格は、公表されているもので2万円台でした。

お酒屋さんで2万円台のボトルが、お店では6万円になります。

飲食店はグラスも氷も席も人も用意するので、仕入れた値段のまま出すことはありません。

つまり6万円という数字は、シャンパンを置いている飲食店の値付けとしては、それほど外れた数字ではないんです。

 

実際、ネットにはこんな声もありました。

「ベルエポ6万ならめちゃくちゃ良心的な値付けやけど、、、ドッグカフェと言われたら、そこでベルエポは飲まないな。」

前半で値段を認めておいて、後半でひっくり返す。

この一言に、今回の騒動の形がほとんど入っています。

同じころ、こんな声も並んでいました。

「ドッグカフェでのシャンパンは、誰が飲むんでしょうか」

引っかかっているのは、いくらかではありません。

どこで、というほうです。

開店の案内にシャンパンは無かった

そうなると、次に気になるのは、いつからそのボトルがそこにあったのか。

 

オープンの5日前、2026年4月10日に、運営会社から開店のお知らせが出ています。

そこにはメニューがひととおり並んでいました。

  • フード=キューバサンド、ツナメルトサンド、ハムしそチーサンド、ささみカツサンド、フィッシュサンド、タコスサンド、ホットドッグ、タコライスプレート
  • スイーツ=オリジナルベビーカステラ、カステラパフェ、数量限定のフレンチトースト
  • 犬用=チキンプレート、わんこドッグ、パプチーノ
  • ドリンク=ブレンドコーヒー、カフェラテ、キャラメルラテ、沖縄黒糖ラテ、抹茶ラテ、紅茶、レモネード、もみもみシェイク

お気づきでしょうか。

シャンパンの名前が、1つもありません。

 

正確に言うと「アルコールメニューも一部用意」という一行はあります。

ただ、具体的な銘柄も値段も、そこには書かれていませんでした。

このあたりは、通っている人の実感とも重なります。

ネットには「最初コーヒーとか数種類しかなかったのに酒類の免許取ったのかオリオンビールが出てきて、突然オリシャンが出てきた時に目玉飛び出るくらいビビった」と書いている人がいました。

オリシャンというのは、そのお店だけのラベルを貼ったオリジナルのシャンパンのことです。

お店は生き物なので、置くものは増えていきます。

ただ、この5か月のあいだに、メニューは静かに姿を変えていました。

そして看板の文字だけが、4月のまま残っていたわけです

喫茶店という許可は5年前に消えた

そもそもカフェでシャンパンを出すのは、決まりの上で問題ないのでしょうか。

 

結論から言うと、まったく問題ありません。

飲食店を開くときに取るのは食品衛生法の「飲食店営業」の許可で、これ1つでお酒も食事も出せます。

カフェ、バー、居酒屋、レストラン。

どれも許可の上では同じ「飲食店営業」で、業態ごとに分かれてはいないんです。

 

実は5年前まで、「喫茶店営業」という別の許可が存在していました。

その定義に、こう書いてあります。

「酒類以外の飲物又は茶菓を客に飲食させる営業」

酒類以外。

つまり、喫茶店の許可ではお酒を出せませんでした

ナポリタンやサンドイッチのような、調理の必要なメニューも出せなかったとされています。

 

違っていたのは、看板の言葉だけではありません。

お酒や調理を扱う飲食店営業では、シンクの数や手洗いの消毒装置、換気の設備といった基準が厳しく決められていました。

厨房のつくりからして、別の店として扱われていたわけですね。

その線引きは、2026年ではもうありません。

2021年6月1日に施行された改正食品衛生法で、営業許可の業種が34から32へ整理され、喫茶店営業は飲食店営業に統合されました

カフェは酒を出さない店、というはっきりした区別。

それが5年前に、制度の側から静かに消えていたわけです。

 

だから「カフェなのにシャンパン」という感覚は、見当違いではありません。

少し前まで、その線は本当に法律の中にありました。

いま線を引いているのは、決まりではなく、お客さんの頭の中だけ

そう考えると、今回の騒動の姿も変わってきます。

これは6万円が高すぎたという話に見えて、カフェという看板が、もう中身を約束しなくなっているという話なんです。

 

現にこのお店は、朝8時に開いて夜7時に閉まり、席は20で、貸切もできません。

ホストクラブのような営業とは、そもそも形が違うお店です。

それでも「歌舞伎町ホストと変わらない」とまで言われてしまいます。

そう言った人が見ていたのは、お店そのものではなく、メニューの1行のほうでした

休止した日と批判が出た日は同じ

もう一つ、ネットで繰り返されている読み方があります。

販売をやめたタイミングが計算ずくではないか、というものです。

 

きっかけは、大きく広がったこんな投稿でした。

「しっかりと8月31日の自分の誕生日終わってからオリシャン休止したよコイツ」

たしかに日付だけ並べると、そう読みたくなります。

8月30日に藤井流星と小瀧望の脱退が発表され、翌8月31日が桐山の誕生日。

その日にお店で誕生日会が開かれ、シャンパンが開いたと報じられました。

そして販売休止になったのが、9月3日から4日ごろのことです。

誕生日が終わるのを待って、止めた形。

そう見えます。

 

ただ、お店の側は、その理由をもう言葉にしていました。

週刊女性PRIMEの取材に、こう答えています。

「ネット上でのことがありまして、9月3日、4日ごろからオーナーの判断により一律で販売を休止しています。販売再開の予定は、今のところ4種類とも立っていないですね……」

出典:週刊女性PRIME(2026年9月15日配信)

ネット上でのことがありまして。

お店の説明は、言われたから引っ込めた、という形になっています。

 

そして、この投稿には、ネットの中から静かな反論もついていました。

「誕生日のころはオリシャンについてグチグチ言われてなかったから。誕生日後から言われだしたから今やめた」

気になったので、ネットをさかのぼって探してみます。

そのお店のシャンパンについての投稿を日付で区切って探したかぎり、いちばん古いものは9月3日でした

8月のうちにシャンパンの値段を問題にしている投稿は、見つかりません。

 

批判が表に出はじめた日と、販売を休止した日が、ほぼ重なっています。

誕生日が終わるのを待ったのか、言われてすぐ手を引いたのか。

日付の並びだけでは、どちらとも決められません。

 

何を考えて値段を決め、何を思って引っ込めたのか。

そこは本人にしか分からないところなので、外から言い切ることはできないと思っています。

言えるのは、並びのほうだけ。

そしてもう一つ、確かめられることがあります。

休止になったのは、お酒ではなくシャンパンだけでした

お店の公式ページを見ると、生ビールは900円でいまもメニューに残っています。

お酒そのものが引っ込められたわけではありません。

引っ込められたのは、あの1本が置かれていた場所のほうでした。

カフェの看板で確かめたい3つ

この話、桐山照史のお店だけで終わりません。

 

好きな人がやっているお店や、SNSで見かけて気になったお店へ出かけるとき、カフェという二文字だけでは、もう中身が読めなくなっています。

だとしたら、どこを見ればいいのでしょうか。

挙げるとすれば3つです。

  • メニューのいちばん安い品と、いちばん高い品の差
  • 営業時間の終わりの時刻
  • そのお店が開いたときのお知らせ

1つ目がいちばん早いと思います。

ドリンクが600円で、いちばん下に1万2000円が並んでいたら、そのお店は2つの顔を持っているということです。

値段の幅は、そのまま客層の幅なので、自分がどちらの側で座るのかを先に決められます。

 

2つ目に見るのは、営業時間の終わりです。

今回のお店は夜7時に閉まるので、少なくとも夜に長居してもらうつくりではありません。

 

3つ目が、案外いちばん確かです。

いまはどこのお店も、開店のときに出したお知らせがネットに残っています。

店名と「オープン」で検索すると、当時のメニューや売りにしていたものが、そのまま出てくることが多いんですね。

お店は変わっていきますが、最初の案内は、たいてい書き換えられずに残ります。

今回でいえば、4月のドリンク一覧にシャンパンは1本も載っていませんでした

それを知っているかどうかで、同じメニューの見え方はずいぶん違ってくるでしょう。

 

ただ、看板の言葉を責めても仕方のないところもあります。

お店は毎日続いていくものなので、置くものは変わっていくのが自然。

変わってはいけなかったというより、変わったことが外に伝わる道が無かった、というほうが近い気がします。

その道を、いまは客が自分で持てる時代でもありますね。