静かに観たいから、あえて遅い時間の回にする。

そういう選び方をしている人は、けっこう多いですよね。

2026年9月6日、その夜の回について書かれた話がネットで広がりました。

ちいかわの映画のレイトショーに5歳くらいの子どもがいて、シーサーのセリフを一緒に口にして、エンディングもずっと歌っていた、という内容です。

 

かなりの反応が集まっていました。

ただ、そこで目についたのは怒りよりも先に出た疑問のほうでして。

そもそも、あの時間に子どもって入れるんでしたっけ、というやつです。

 

今回は、子どもが何時まで入れるのかという線引きと、声を出していい回が別に用意されている話について、わかりやすく解説していきたいと思います。


終映23時前なら5歳でも入れる

まず、多くの人が引っかかったのはここでした。

ネットで目についたのは「青少年なんとか条例に引っかかるのでは」「そもそもチケットが取れないはず」という反応です。

言われてみれば、たしかにそんな決まりがあった気もしますよね。

 

ところが映画館の案内を読むと、引かれている線はもう少し遅いところでした。

TOHOシネマズは、18歳未満の入場についてこう書いています。

「終映が23:00(大阪府は22:00)を過ぎる上映回には18歳未満の方は保護者同伴でもご入場いただけません」

大事なのは、保護者同伴でも、という部分です。

そしてもうひとつ、見るのは終映の時刻であって、開始の時刻ではありません。

同じ日の同じ作品でも、ひとつ後ろの回になった途端に入れなくなる、ということが起きます。

親が一緒でも、23時をまたぐ回にはどうやっても入れません。

 

裏を返すと、終映が23時をまたがない回なら、5歳の子どもでも保護者と一緒に入れるということ。

『映画ちいかわ 人魚の島のひみつ』の本編は99分だそうです。

だからどの回なら入れるのかは、上映スケジュールの終映時刻を見れば分かります。

つまり、いちばん怒りやすい足場、決まりを破ったという足場が、そもそも無かったわけです。

夜の回に小さい子がいたこと自体は、決まりの内側の出来事でした。

 

ここが分かると、この件のもやもやの置き場所が変わってきます。

ついでに背景も少し。

映画ちいかわは2026年7月24日の公開で、8月23日の時点で興行収入110億円を突破したと伝えられています。

入場者特典も第4弾まで続いていて、9月に入っても上映が組まれ続けている作品です。

夜の回まで席が動いているのは、そういう事情もあってのこと。


18歳未満を止める線は県で違う

もうひとつ、意外と知られていないことがあります。

この23時という線は、映画館が自分たちで決めたものではありません。

もとになっているのは、各都道府県で定められた条例だそうです。

だから、住んでいる場所によって線が動きます。

大阪府は22時です。

さらに大阪府では、16歳未満で保護者が一緒でない場合、終映が19時を過ぎる回には入れないとのこと。

岐阜県と高知県も、保護者が一緒でなければ終映22時を過ぎる回には入れないと書かれています。

同じチェーンで同じ映画を観ても、県境をまたぐと入れる回が変わってしまう。

 

自分の県の線がどこにあるかは、たいてい劇場の入場案内のページに書いてあります。

ここで、ネットにあったもうひとつの声も拾ってみましょう。

ゲームセンターは夕方で未成年が退場なのに、映画館はいいのか、というものでした。

ゲームセンター側は風営法の話でして、16歳未満は保護者が一緒でなければ18時まで、保護者と一緒なら22時までとされています。

18歳未満は22時を過ぎると入れません。

 

2016年6月の法改正で、保護者と一緒なら遅くまでいられる枠ができた、と各社が案内しています。

こちらも宮城・埼玉・神奈川・徳島のように、県によって時間が前倒しになるところがあるそうです。

並べてみると、どちらも同じ作りをしているのが見えてきます。

夜の時間を開ける鍵を持っているのは、店ではなく隣にいる大人のほうです。

だから、正しくは「入れてしまった」ではなく「入れた」。


レイトショーは静かな回ではない

ここまで読んで、まだもやもやが残っている人がいると思います。

決まりの内側でした、と言われても、壊された2時間は戻ってきませんから。

そのもやもやの正体を、少し書いてみましょう。

 

夜の回を選ぶとき、頭の中では「子どもがいない回」を買っているつもりでいます。

静かに、集中して、誰にも邪魔されずに観るための回です。

ところが、チケットに書いてある約束はそれではありません。

レイトショーというのは、上映開始が20時以降の回の料金を下げる仕組みのことです。

TOHOシネマズなら一般1,900円のところが1,300円になる、と紹介されています。

安さと引き換えに時間を後ろへずらしただけで、静けさを売っている回ではないんです。

ネットには「レイトショーだと安いから、家族で出費を抑えているのでは」という声もありました。

値段の側から見れば、その読み方のほうが制度の顔つきに合っています。

600円の差は、家族4人なら2,400円です。

子どもを寝かせる時間より、そちらを取る家があってもおかしくはありません。

 

そして、ここがこの一件のいちばん奥だと思っています。

映画館は回ごとに別のルールで作られているのに、その地図が客の側にだけ配られていないことです。

同じスクリーンで、同じ作品を、同じような値段で売っているのに、回が変われば許されることが変わります。

それを知らないまま、それぞれが自分の期待を持ち込んで、同じ暗がりに座っているわけです。

 

ぶつかったのはマナーではなく、期待のほうでした。

ネットで見かけたのは「セリフを言えるくらい何度も連れてこられているのでは」という見方。

特典が入れ替わる作品なので、何度も足を運ぶ家族がいるのは確かです。

ただ、その家がどういう事情でその回を選んだのかまでは、外からは分かりません。

分かるのは、選べる回がいくつもあったということだけです。


セリフを言っていい回が9月にある

ネットにあった「昼の回じゃだめだったのか」という問いは、かなりいいところを突いています。

ただ、答えは昼でもありません。

 

映画ちいかわには、声を出していい回がちゃんと用意されているんです。

公式が2026年8月24日に告知していました。

9月11日の金曜19時から「なんとかなれーッ!発声可能応援上映」が全国5都道府県7劇場で一斉開催です。

9月23日の水曜19時からは、自動制御ペンライト演出付きの応援上映も一斉開催されるとのこと。

ペンライトの回でいうと、実施されるのはこの7劇場だそうです。

  • 北海道/TOHOシネマズすすきの
  • 東京都/日比谷・新宿・池袋
  • 愛知県/TOHOシネマズ名古屋栄
  • 大阪府/TOHOシネマズ梅田
  • 福岡県/TOHOシネマズ天神

ハチワレの名台詞に声を合わせて、がんばるちいかわたちに掛け声をかけます。

人魚の気持ちになって、セイレーンの歌に合いの手を入れる。

 

セリフを一緒に言うのは、この回では迷惑どころか、参加のしかたそのものです。

まったく同じ行為が、回が違うだけで、迷惑にもなれば参加にもなります。

5歳の子がシーサーのセリフを覚えていたのなら、この回に連れて行けば、たぶんいちばん褒められる子どもでした。


赤ちゃんが泣いてもいい回もある

小さい子を連れている側にも、ちゃんと回があります。

TOHOシネマズには「ママズ クラブ シアター」「ベイビークラブシアター」という上映があるんです。

シアター内の照明は通常より明るめで、音の大きさは小さめ。

本編の前に流れる予告編も、小さな子どもを驚かせないように選ばれているそうです。

ベビーカーを預ける場所が用意されている劇場もあります。

 

泣いてもお互いさま、という前提のもとに人が集まっている回。

実施している劇場と作品はかぎられているので、行きたい劇場の公式ページで確認する形です。

 

つまり映画館は、静かに観たい人の回も、声を出したい人の回も、子どもと一緒に来たい人の回も、別々に持っています。

用意はされていて、しかも名前まで付いていました。

足りていないのは回の種類ではなかった、ということです。

ここまでの3つを並べると、映画館の側の考え方が見えてきます。

静けさも、にぎやかさも、どちらかに寄せて全部の回を作るのではなく、回ごとに分けて両方を残す。

分け方としては、かなりまっとうなほうです。


チケットを買う前に見る一行

ここまでを、次に映画館へ行くときの形に畳んでおきます。

持って帰ってほしいのは、たったひとつの問いです。

その回は、何のために作られた回なのか。

値段のための回か、声を出すための回か、それとも子ども連れのための回か。

 

予約の画面で見るところは3つだけです。

  • その回に付いている名前
  • 終わるのが何時になるか
  • 年齢についての注意書きが出ていないか

たったこれだけで、当たりやすい回とそうでない回は、かなり分かれてきます。

ちなみにネットには、レイトショーとは別の話も挙がっていました。

指輪物語の映画に小学校低学年くらいの子と父親が来ていて、父親がずっと小声で解説していた、という話。

これは時間ではなく、作品の側が合っていなかった例です。

夜の回を避けても、この手のすれ違いは残ります。

逆にいうと、レイトショーを避難場所のように使うのは、そもそも分が悪い作戦だったということです。

静けさが欲しいなら、平日の昼や、公開からしばらく経った回のほうが当たりは少なくなります。

7月の公開から1か月以上が過ぎたいまなら、その選び方もしやすいはずです。

 

そのうえで、それでも当たってしまったときの話も少しだけ。

自分で注意しに行かないことです。

暗い中で知らない人に声をかけると、たいてい話が大きくなります。

ネットには「そんな小さい子は入れないはず、チケットを買うときに表示される」という声もありました。

ただ、年齢の表示が出てくるのは、入場できない回のほうです。

線の内側にある回なら、画面は何も言いません。

買う人が自分で選ぶしかない、というのが今のかたちです。

 

それから、映画館の人に言って連れ出してもらいましょう、という声もありました。

席を立って呼びに行くのは損に感じますが、そのほうが早く静かになるはずです。

それと、これだけは書いておきたいので書かせてください。

決まりの内側だったとしても、隣の人の2時間を上書きしていい回ではなかった、とは言えます。

どんな事情があろうとも、そこは変わりません。

ただ、回の名前をぜんぶ覚えている人なんて、そういませんよね。

本当なら、買う画面のほうが「これは声を出していい回です」と先に教えてくれれば済む話でもあります。

それまでは、値段の下に小さく出ている回の名前を、買う前に一度だけ見てみるといいかもしれませんね。

 

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