好きになったばかりなのに、ライブに行くのが怖い。

M!LKのファンのあいだで、いまそんな声が出ています。

「私なんかがLIVEとか行くべきじゃないな」と書いている人までいました。

 

ことの始まりは、古参と新規の言い合いです。

「新規がコールを覚えないから、昔の曲がライブで封印されてしまう」と悲しむ人がいて、その隣には「古参が怖くて現場に行けない」と震えている人もいます。

どちらも本気で、どちらもM!LKが好きなんですよね。

 

覚えていくのが当たり前、という空気。

その暗黙のルールを誰が作ったのかを、今回はわかりやすく解説していきたいと思います。

まだ決まっていない席を取り合っている

火がついたきっかけは、「初ドームは古参を優先してほしい」という一言でした。

それに対して「怖すぎるし気持ち悪い」「古参てそんなに偉いんですね」と返す声が出てきます。

そこから一晩で、言い合いが一気に広がりました。

 

ところが、そのドームがまだ決まっていません。

M!LKがドームを目標として語ってきたのは、本当のことです。

2021年8月にメジャーデビューが発表された場でも、佐野勇斗がドームツアーへの思いを口にしたと報じられました。

ただ、いま公式が発表しているのは、2026年9月26日から2027年1月まで続くアリーナツアーだけです。

ドームの日付も、会場の名前も、どこにも出ていません。

 

いま起きているのは、存在しない席の順番を、先に決めようとしている状態

ちなみに、いま決まっているアリーナツアーが回るのは6都市です。

マリンメッセ福岡、ゼビオアリーナ仙台、ぴあアリーナMM、愛知スカイエキスポ、大阪城ホールと続きます。

2024年の秋に10周年イヤーへ入って、はじめてアリーナに立ったグループが、いまは13公演を回るところまで来ました。

 

もちろん、気持ちは分かります。

12年応援してきた人にとって、ドームは「いつか」ではなく「もうすぐ」に見えているはずです。

その日を誰と迎えるかを想像してしまうのは、応援している人なら自然なことでしょう。

ただ、順番の話というのは、いつも誰かを外側に置くことになります。

そして外側に置かれた人が、今度は別の誰かを外側に置く。

決まっていないものほど、その連鎖は止まりにくくなります。

会員26万人に用意された席は16万

M!LKの公式ファンクラブ「PREMIUM MILK」は、会員数を公表していません。

ではファンは、どうやって人数を知るのでしょうか。

入会したときに配られる会員番号から推し量っています。

その番号をたどると、増え方はこうでした。

  • 2025年11月ごろ:3万7000番台
  • 2026年1月初め:5万7000番台
  • 2026年2月:10万人超え
  • 2026年7月末:26万人突破

ネットで見かけた「FC会員約3万人の古参」という言い方は、たぶんこの一番上の数字を指しています。

ブレイク前からいた人の数として、3万人という見当は外れていません。

 

そして、いま動いているアリーナツアーの規模のほうは、公式がはっきり書いています。

2026年2月11日の告知に並んでいたのは「M!LK史上最大規模、約16万人を動員するアリーナツアー」という一文でした。

会員が26万人で、席が16万。

古参を優先しても、新規を優先しても、抽選を完全に公平にしても、結果は変わりません。

席より会員が多いかぎり、行けない人は必ず出てきます。

 

先行の受付そのものは、2月11日の夜から3月1日の夜まで開いていました。

申し込む時間はたっぷりあったわけですが、期間が長くなっても席の数はそのままです。

しかも、これは今年に始まったことではありません。

前回のアリーナツアー「SMILE POP!」は、追加公演まで含めて全公演のチケットが即完売したと発表されています。

席が足りない状態は、去年からずっと続いていたわけです。

 

疎外感を覚えた人が気にしすぎなわけでも、性格の問題でもありません。

数の上で、最初から足りていないだけ。

コールは12年かけて1曲ずつ増えた

5人組のM!LKが結成されたのは2014年11月で、2026年のいまは12年目になります。

ライブでみんなが声を出す「コール」は、曲が出るたびに1曲ぶんずつ増えてきました。

新曲が出る、コールができる、次のライブで覚える。

それを12年くり返してきたのが、いま古参と呼ばれている人たちです。

 

一方、2025年や2026年にM!LKを好きになった人の前には、その12年ぶんが最初から全部積まれています。

M!LKのファンの呼び名は「み!るきーず」。

そのひとりが、この差をうまく書いていました。

「コール曲が時間の経過に伴ってだんだんと増えていった流れの既存古参み!るきーずと、ハマったらコール完成済み楽曲が山積みの状態の新規み!るきーずでは向かう山の傾斜が全然違うな?

同じ山に登っているのに、傾斜がちがう。

これが、今回の揉めごとの正体だと思っています。

 

古参の人からすると、コールは「ライブに通っていれば自然と身についたもの」でした。

毎回1曲ずつだったので、覚えている自覚すらなかったかもしれません。

だから「覚えてこない」が、やる気の話に見えてしまいます。

新規の人からすると、コールは「参加する前に予習しなければいけない量」です。

実際、リリースイベントに行った人が「コールも覚えて行ったけどうまく言えなかった」「自己紹介は知らなかった」と落ち込んでいました。

覚えていないのではなく、覚えきる前に当日が来ているだけ。

 

古参の側が悲しんでいるのも、意地悪ではありません。

声が揃わないと曲が封印されてしまう、と書いている人がいました。

好きだった曲がライブの曲目から消えていくのを、そこで見ていることになります。

守りたいものがある人と、追いつきたい人が正面から向き合ってしまった形です。

落ち込んでいた人のなかに、「お願いだから少し待ってよ、回数重ねたらちゃんとできるから」と書いている人がいました。

たぶん、これがいちばん正確な答えだと思います。

どちらも怠けていないし、どちらも間違っていません。

渡された量と、渡された時間がちがうだけ。

あのコールを作ったのはメンバー本人

では、そのコールはどこで覚えればいいのでしょうか。

コールというのは、古参のあいだで受け継がれてきた秘密のルール、ではありません。

いまのM!LKのコールは、メンバー自身が作っています。

 

2025年10月に出た「好きすぎて滅!」のコールを監修したのは、塩﨑太智でした。

「爆裂愛してる」の公式コールは、リーダーの吉田仁人が初めて監修したものだと報じられています。

しかも、その覚え方まで公式が用意していました。

YouTubeの公式チャンネルには、そのコール講座の動画が上がっています。

メンバーが画面の中で、そのまま教えてくれるんですよね。

コールの言い方だけでなく、決めポーズの取り方や、その言葉を普段の会話でどう使うかまで入っているそうです。

はじめて見る人を置いていかない作りになっています。

 

2026年2月にはJOYSOUNDとのコラボもありました。

「好きすぎて滅!」のコールがテロップ付きで歌える「コールカラオケ」が配信され、ライブの前に予習できる仕組みまで作られていたんです。

こちらは5月6日で期間が終わっていますが、カラオケでコールを練習する道まで用意されていたことになります。

 

コールを知らない人に向けて、作った本人たちが「練習してみてください」と言っているわけです。

覚える場所は、界隈の中ではなく外にありました。

誰かに教わる順番を待たなくても、動画を開けば今日から1曲ずつ始められます。

「怒られそうだから行けない」と思っている人にとっては、ここがいちばん大きいのではないでしょうか。

規約に古参という言葉は一行も無い

「好きになった瞬間に現行ペンラ手に入れて現場行くならセトリ予習してコールも8の字も事前にイメトレして口上なんてやるかわからなくても覚えていくのが当たり前」

古参の人がこう言っていた、と書いている人がいました。

どこにも掲示されていないのに、いつのまにか決まっているもの。

これが、新規の人が肩身の狭さを感じる正体です。

 

では、その暗黙のルールは誰が作ったのでしょうか。

もうひとつ、ファンクラブの規約も見ておきましょう。

PREMIUM MILKの入会金は1,100円、年会費は4,400円。

特典として並んでいるのは、会員証、オリジナルのスマートフォンリング、限定の動画やギャラリー、メンバーブログ、そして「会員優先のチケット先行受付」です。

 

ここに、継続年数による優遇は書かれていません。

会員番号が若いほど当たりやすい、という説明もないんです。

公式が引いている線は、たった1本。

会員か、そうでないか。

線はそれだけです。

 

「古参が優先されるべき」も「新規が冷遇されている」も、どちらも公式のルールには書かれていない話ということになります。

運営が作った序列ではなく、ファンの側で生まれた序列なんですよね。

これは責める話ではありません。

長く応援してきた人にとって、その時間に意味があるのは自然です。

ただ、その意味づけが「優先されて当然」まで進むと、公式が書いていないルールを、ファン同士で運用することになってしまいます。

 

チケットが当たらないのは、申し込んだ人数が席より多いからです。

規約を読むと、そこがはっきりしました。

古さを測っているのは入会日だけ

これは、M!LKにかぎった話ではありません。

会員番号というのは、入会した順に配られる数字です。

若い番号の人が先に入った、という事実しか入っていません。

  • その人が何回ライブに行ったか
  • CDを何枚買ったか
  • うまくいかない時期にどれだけ支えたか

ライブの回数もCDの枚数も、あの番号は覚えていないんです。

なのに、番号は消えません。

どのファンクラブでも、入った日だけが半永久的に残って、それが「古さの証明書」のように扱われてしまう。

 

グループが急に売れると、この番号の差が、そのまま人数の差になります。

M!LKの場合、「イイじゃん」がSNSで27億回を超えて再生されたと報じられ、年末には紅白歌合戦にも初めて出ました。

去年の秋には3万人台だった場所に、いまは26万人がいます。

先にいた人は「知らない人ばかりになった」と感じ、あとから来た人は「自分は場違いかもしれない」と思ってしまう。

どちらも、番号が勝手に並べた結果です。

 

今回の言い合いを追っていて意外だったのは、両側から同じ言葉が出てくることでした。

「怖い」「しんどい」「悲しい」。

番号の上と下で、同じ言葉が並んでいます。

「メンバーが『み!るきーず』って発する度に『あ、古参の方達の事だな。』って思う瞬間が多々あります」と書いている人もいました。

そのすぐあとに続いていたのは、「凄く凄く羨ましいです」という一行。

怒りの形をしていても、中身は羨ましさだったりします。

新規の人へ「あなたたちのおかげでここまで来た」と書いている古参もいれば、「古参の方には絶対に当たってほしい」と書いている新規もいました。

強い言葉ほど遠くまで運ばれるので、そうでない声はタイムラインの下に沈んでいくだけ。

 

ひとつだけ、同じ日に並んでいた投稿があります。

9月16日の朝、「ペンラもうちわも持ってない新規ですが、不安すぎるけど大丈夫かな…」と書いていた人がいました。

その日の夜には、別の人が「新規も古参も誰も置いて行かないあったかい空気を5人から感じて初参戦でも楽しめました」と書いています。

同じ人ではありません。

それでも、朝に怖がられていた場所が、夜には置いていかない場所として書かれていました。

 

古参の人が悲しいのも、新規の人が怖いのも、どちらもM!LKが好きだから出てくる気持ちです。

ただ、12年かけて増えてきたものを、入った初日に全部渡されているのだとしたら、覚えるのに時間がかかるのは当たり前。

まずは1曲だけ、作った本人の動画から覚えてみたいところですね。