「はい!今から2分です!」

ちいかわパークの「ちいかわの家」で、そう声をかけられた人がいました。

その2分のあいだに、4人組がちいかわと写真を撮り合って、時間はほとんど終わってしまったそうです。

1枚だけ撮れた人もいれば、1枚も撮れなかった人も出ています。

 

そのときのことを書いた投稿が9月18日の未明に出て、朝の時点で表示は90万回を超えていました。

引用欄には「ルールが終わってる」という声まで出ています。

ただ、いまネットで2分ルールと呼ばれているものが、公式サイトに見当たりません

決まっていたのは、まったく別のものでした。

 

今回は、ちいかわパークが何を決めていて、何を決めていないのかを整理していきたいと思います。

2分の撮影で1枚も撮れない人が出た

投稿した人が書いていたのは、短い出来事です。

ちいかわの家に入れたのに、2分しかないところへ女の子4人組がちいかわと写真を撮り合って、その時間がその人たちだけでほぼ終わってしまったといいます。

自分は1枚だけ撮れたけれど、撮れていない人も結構いたそうです。

そして「再入場不可だからほんとにショック」と結ばれていました。

 

同じことを経験した人が、引用欄にも出てきています。

「これスタッフさんから急に『はい!今から2分です!』って言われてみんなオロオロしながらとりあえず列を作ってみたけどその間に1分くらい経って結局全員は撮れず…..。」

「2分ルール設けるなら仕切る人も最低限必要だと思った」と、その人は続けていました。

 

この記事は、その4人組を探したり責めたりするためのものではありません。

2分ですと言われた部屋の中で、誰が先に撮るかを決める仕組みが用意されていないなら、同じことは誰が入っても起きるからです。

 

引用欄には、同じ場面に立ち会ったという人もいました。

「とってるグループいて撮り終わった後子供撮りたがってたけど、他のみんなも撮りたがってたから残りのみんなはちいかわと並ばないでちいかわのみを撮った」

その人は「みんな撮りたいからやめよ〜ってデカい声で言った」とも書いています。

声を出した人がいた場面では、全員が何かしら撮れていたようです

公式サイトに2分とはどこにも無い

そこで、ちいかわパークの公式サイトを開いてみました。

2025年7月に、池袋のサンシャインシティ アネックスでオープンした体験型の施設です。

営業時間は10時から19時、最終入場は17時40分。

公式サイトには「ご利用ガイド」と「よくあるご質問」という2つのページがあって、決まりごとはそこにまとまっています。

 

ご利用ガイドには、かなり細かいことまで書いてありました。

持ち込みについては、他のお客様へのご配慮としてご遠慮いただくものがこちらです。

  • スーツケースやキャリーケース
  • カート類等の大型荷物
  • ドローンやラジコン機などの無人機
  • 一脚、三脚の使用
  • 撮影補助機材を伸ばした状態での使用

品目ごとに見ていくと、自撮り棒を伸ばして使うところまで線が引かれています

服装についても、裾や装飾が地面を引きずるもの、キャストと誤認される恐れのある服装、といった項目が並ぶ形です。

禁止事項のほうにも「無断での場所取り」がありました。

 

その禁止事項には「他のお客様のご迷惑となる行為や、パーク運営に支障をきたす行為」という一文もあります。

言葉としては、今回の出来事を受け止められる幅がありますよね。

ただ、そこで言う迷惑について、誰がその場で線引きするのかまでは書かれていません

 

ところが、この2つのページを最後まで読んでも、撮影の時間についての記載は出てきませんでした。

2分という数字も、ひとり何枚という数字も、1組ずつ入れ替えるという説明も、どこにも置かれていません。

持ち物には線があるのに、時間には一本も引かれていないまま。

決まっているのは時間ではなく回数

では公式は、この手の体験について何も決めていないのでしょうか。

決めていました。

ご利用ガイドの「体験・ゲームエリアのご利用について」に、こんな一文が置かれています。

「パーク内の複数のエリアでは、QRコードによる入場・体験管理を行っております。該当のエリアでは、お一人様につき1回限りのご体験とさせていただきます」

続けて、ゲームエリアについても「お一人様につきいずれか1種類(1回)のみのご体験となります」とありました。

公式が数えているのは、時間ではなく回数です

しかも数える単位は、お一人様。

用意されているのは「人ひとりにつき1回」という配り方です。

 

チケットの買い方も、同じ形でした。

大人は3,500円、子どもは1,800円で、人数のぶんを買って入ります。

払うのが人ひとり単位なら、体験も人ひとり単位

ここまでは、単位がきれいにそろっています。

 

この1回限りという言葉が、投稿の最後にあった悔しさの正体でした。

撮れなかったからもう一度並ぼう、ができません。

再入場についても、ご利用ガイドは「原則としてご遠慮いただいております」と書いています。

よくあるご質問には、トイレの混雑や緊急対応などやむを得ない場合はパークのキャスト(スタッフ)へ相談してほしい、という一文が添えられていました。

つまり出入りの相談はできても、体験そのものは配られた1回で終わります

2分は人ではなく部屋に配られている

引用欄には、こんな一行もありました。

「2分ルールあるのは知ってたけど1組2分じゃなくて入場したグループ単位なの終わってない?」

この人が言い当てているのは、数え方のずれです。

公式が配る単位はお一人様、現場で計る2分の単位は部屋。

同じ体験なのに、配る側の単位と計る側の単位が食い違っています。

「複数のエリア」とだけ書かれていて、どこがそれに当たるかまで名前が挙がっていないことも、分かりにくさを足しているはずです。

 

部屋を単位にすると、何が起きるでしょうか。

その回に入った人数が増えるほど、ひとり分の持ち時間は短くなります

仮に4人で分ければ30秒ずつ、6人なら20秒ずつ。

しかも順番までは決まっていないので、先にカメラを構えた人から使っていく形になります。

誰かが長く撮れば、その分は誰かの撮影時間から引かれてしまう

 

ゲームエリアの決め方と比べると、違いがはっきりします。

あちらは2種類あるうちの1種類を、ひとり1回。

誰が何を選んでも、隣の人の取り分は減りません

部屋ごとの2分は、そこがちょうど逆になっています。

 

リプ欄には、こんな声もありました。

「そもそも2分って制限じゃなく、『ひとり何枚写真撮れる』とかのルールを決めたらいいのに、と思います」

これは思いつきの提案ではなくて、公式がすでに使っている数え方そのものです。

お一人様につき1回、という発想を撮影にも下ろすなら、ひとり何枚という形になります。

 

もうひとつ、別の人がこう書いていました。

「2分っていう制限時間があるからこそ、周りの人に気を遣うっていう暗黙のルールを守って欲しいよね」

この気持ちも、よく分かります。

ただ、暗黙のルールというのは、書かれていないから暗黙なんですよね

書かれていないものは、守らなかった人を責める根拠にもならないし、変わったときに誰かへ知らせることもできません。

写真を撮ってもらえますかと言っていい

では、その部屋で自分の1枚を守るには、どうすればいいのでしょうか。

公式アカウントが、答えのひとつを置いてくれています。

インフォメーションの案内として、お困りごとの例が3つ並んでいました。

落としものをしました、このグッズはどこにありますか、そして「写真を撮ってもらえますか?」です。

撮影をキャストへ頼むことは、公式が例に挙げている行為でした。

 

よくあるご質問にも、同じ趣旨の一文があります。

ご来場当日のパーク内でのお困りごとについては、お近くのキャストにお気軽にお声がけください、と書かれていました。

困ったときにキャストへ声をかけるのは、遠慮ではなく想定された動きです

 

言い方も、そんなに難しくありません。

「みんなで順番に撮りましょう」でも、「すみません、次いいですか」でも通じます。

2分ですと告げられた直後の数秒が、いちばん言いやすいタイミングでしょう。

 

さっきの「みんな撮りたいからやめよ〜」と言った人も、結果的にこの線の上にいました。

言い出しにくい空気があるのは確かです。

それでも、2分ですと言われた直後に一声かけることは、誰のルールも破らずに済みます。

時間で区切る場所で損をしないために

同じことは、ちいかわパークだけで起きているわけではありません。

混んでいる場所には、たいてい時間の区切りがあります。

撮影スポット、体験コーナー、ミュージアムの一室、期間限定のフォトブース。

その区切りには2種類あって、読み分けられると損をしにくくなります。

 

ひとつは、1組ごとに時間が配られる形です。

前の組が長くても、自分の番はちゃんと来ます。

もうひとつが、部屋やエリアにまとめて時間が配られる形です。

こちらは、同じ時間に入った人数と、その人たちの撮り方で、自分の取り分が変わってしまいます。

 

見分ける方法は、ひとつだけ。

案内された瞬間に「この2分は全体で2分ですか、1組ずつですか」。

全体でと言われたら、順番を決めるのは自分たちだと分かるので、そこで一声かけておくと安心です。

 

聞きそびれても、列の作られ方で見当はつきます。

1組ずつ呼ばれて入るなら、時間は組に配られている形でしょう。

何人かまとめて通されるなら、その時間は部屋に配られていると考えて動くほうが安全です。

 

撮れなかった日のことを、自分が遠慮したせいだと思い込む必要もありません。

順番を決める役は、もともとその部屋に入る人の仕事ではないからです。

 

公式アカウントは来場予定の人へ向けて、こんな案内も出していました。

滞在時間の目安はおよそ2時間、トイレは数に限りがあるので事前に済ませてから、という内容です。

体験は1回限りで撮り直しがきかないので、順路の早い段階で電池と気持ちを整えておくと後悔しません。

公式サイトにはスマートフォンが必要だとも書かれていて、充電の案内が別に出ているのもそのためでしょう。

 

書かれていない決まりは、運営が変えても誰にも知らされません

公式アカウントは「ちいかわの家」について、窓の外に注目してみて、日替わりで出来事が起きている、といった見どころの案内は出していますが、撮影の順番についての発信は見当たりませんでした。

2分という数字を最初に知るのが、部屋に入ってからになってしまうんです。

今回いちばん多くの人が引っかかったのは、そこだと思います。

 

「はい!今から2分です!」と言われたとき、その2分が誰のものなのかは、まだ誰にも分かりません。

公式が配っているのはひとりにつき1回で、現場で走り出すのは部屋ごとの2分。

この2つがそろう日まで、あの部屋では声をかけた人だけが順番を作ることになります。

せっかく会いに行った相手なので、一枚ぐらいは笑って持ち帰りたいところですね。