メゾピアノの代わりを探す前に…プティマインも同じ会社だった

売り場で一着とって、値札を見て、袖の丈を娘の腕にあてる。
そうやって選んでいたはずの買い物が、急に難しくなった人がいます。
2026年9月17日、子ども服ブランド「mezzo piano」のコラボ企画が中止になったあとのことです。
ネットには「今回はさすがにナルミヤはもう買いたくない」という声が並び、代わりのブランドを教え合う動きも始まりました。
ところが、その先で足が止まります。
避けたい会社の名前は分かっているのに、どの服がその会社のものなのかが見えてきません。
今回は、子ども服のブランドと会社の関係についてわかりやすく解説していきたいと思います。
買い替えを決めた親がつまずく所
2026年9月15日、イラストレーターでVTuberのしぐれういと、mezzo pianoのコラボが発表されました。
描き下ろしのイラストでグッズを作り、三つの都市でポップアップショップを開くという企画です。
それが、9月17日に中止。
中止のお知らせをめぐっては、寄せられた意見と脅迫が一つの文の中に並んでいたことに、戸惑う声が出ていました。
そこまでの経緯が気になる方は、別の記事にまとめてあるので読んでみてくださいね。
ただ、いま広がっているのは、そのあとに起きていることのほうでした。
企画そのものへの賛否とは別のところで、買い物の話が静かに動いています。
子どもに着せるのはやめようと決めた親御さんが、代わりのブランドを探しはじめたんです。
そのときに、多くの人が同じ条件を書き添えていました。
できれば同じ系列の会社のものは避けたい、という条件です。
mezzo pianoを手がけているのは株式会社ナルミヤ・インターナショナルという会社で、この名前自体はすぐに調べがつきます。
ところが、そこから先が進みません。
会社の名前が分かっても、どれがその会社の服なのかは値札に書いていないからです。
こんな一言も流れていました。
「ナルミヤ避けるの難しい」
たった一行ですが、今回の困りごとがここに全部入っています。
もちろん、全員が離れているわけでもありません。
「メゾピアノはもう名前、イメージにおいてダメか?」と書き込んでいる人もいましたし、これからも買うと決めている親御さんもいます。
どちらにしても、次に出てくる疑問は同じでした。
ナルミヤの名前で並ぶ30のブランド
では、ナルミヤ・インターナショナルはどれくらいのブランドを持っているのでしょうか。
ネットには「ナルミヤ系ってボクの記憶では5ブランドあった気がする」と書いている人がいました。
だいたいこのくらいの感覚でいる人が、いちばん多いかもしれません。
実際に会社の公式サイトを開くと、ブランド一覧のページがあります。
新生児・ベビー・キッズ、ジュニア、レディース・メンズと分けて並べてあって、その数は30を超えていました。
たとえば、こんな名前が入っています。
- プティマイン
- ケイト・スペード ニューヨーク キッズ
- ポール・スミス ジュニア
- アナ スイ・ミニ
- ピンク ラテ
- ラブトキシック
ここで手が止まった人がいました。
プティマインは、ショッピングモールで買える値段のブランド。
名前を知っている人の数は、mezzo pianoよりずっと多いはずです。
ケイト・スペードもポール・スミスも、大人の売り場で見かける名前でした。
大人向けの本体までナルミヤが作っているわけではありません。
子ども服のラインを日本で手がけているのがナルミヤ、という形です。
それでも、棚から消える候補の数はかなり増えます。
一覧にはほかにも、センス オブ ワンダー、クレードスコープ、ポンポネット ジュニアといった名前が続いていました。
mezzo piano自体も、小さい子向けの本体とは別に、ジュニア向けのラインがもう一つ入っています。
実際、ネットにはこんな声が出ていました。
「メゾピアノ買わないようにしよう。と思ってナルミヤの子供服ブランド調べたら、プティマインだけじゃなく、ケイトスペード、ポールスミスとかも手がけてたの」
「着れる服一気に少なくなって辛い」
避けるつもりで一歩踏み出したら、足元がごっそり無くなっていた、という形になります。
ちなみに、会社の側がこの名前を隠しているわけでもありません。
ブランドをまたいだキャラクターを「ナルミヤキャラクターズ」という名前でまとめて、ふだんからこうして発信しています。
お知らせだよ❣️
『ナルミヤキャラクターズ』から、「ベリエちゃん/デビリーちゃん/クランベリエちゃん」のリボンぬいぐるみが9月18日より全国のクレーンゲームに順次登場中だよ🌈
ぜひゲットしてね♪#セガプライズ
#ナルミヤキャラクターズ— Berrie (@berriefan) 2026年9月14日
告知によれば、9月18日からは全国のクレーンゲームにぬいぐるみが並ぶとのこと。
表に出ていないのではなく、買う側の視界に入っていなかった、というほうが近いのかもしれません。
代わりに挙がった名前も重なっていた
では、代わりとして挙がったのはどんなブランドだったのでしょうか。
ネットで名前が出ていたのは、このあたりでした。
- スーリー
- シャーリーテンプル
- BEBE
- 組曲
- タルティーヌ エ ショコラ
- ミキハウス
どれも長くやっている、実在のブランドです。
ところが、この並びをよく見ると、一か所だけ重なっているところがありました。
BEBEと、タルティーヌ エ ショコラ。
この二つは、同じ人が別々のおすすめとして並べて書いていたものです。
タルティーヌ エ ショコラは1977年に生まれたフランスのブランドですが、日本で展開しているのは神戸の子ども服メーカー、株式会社ベベでした。
BEBEと同じ会社が手がけています。
株式会社ベベは、今回の件とはまったく関係のない会社です。
ここで言いたいのも、その会社がどうという話ではありません。
代わりを教えている人も、教わっている人も、どの会社が作っているかまでは分からないまま話している、ということのほう。
そしてこれは、みんなが詳しくないからではありません。
ブランドの名前が会社の名前を隠したまま売られています。
店頭で目に入るのは、ロゴと値段とサイズだけ。
出てくるのは、かわいい名前のほうなんです。
作った会社の名前はどこに書いてあるか
では、買う前に確かめようがないのでしょうか。
ここは安心してよいところで、確かめる場所は決まっています。
しかも、決めているのは法律のほう。
一つ目は、服そのものについている品質表示のタグ。
家庭用品品質表示法という法律があって、繊維製品には綿何%といった組成と、洗濯マークの表示が必要です。
そしてこの表示には、表示した事業者の氏名または名称と、住所または電話番号を付記することになっています。
洗濯マークの下に小さく入っている、あの会社名がそれです。
二つ目は、ネット通販のページ。
特定商取引法の11条が、通販で広告を出すときに表示しなければならない事項を並べていて、その6号が「主務省令で定める事項」となっています。
そこで施行規則の23条を開くと、1号にこう書いてありました。
「販売業者又は役務提供事業者の氏名又は名称、住所及び電話番号」
会社がインターネットで広告を出す場合は、2号で代表者か責任者の氏名まで求められます。
通販ページのいちばん下にある「特定商取引法に基づく表記」が、これです。
あれは飾りでも、細かい字のお作法でもありません。
その商品を誰が売っているのかを必ず書きなさい、という決まりなんですね。
試しに一つやってみます。
さきほど代わりとして挙がっていたスーリーの公式サイトを開いて、会社概要のページを見ると、株式会社Sourisという会社名が出てきました。
2003年12月に設立された、名古屋市の会社だそうです。
かかった時間は一分もありません。
シャーリーテンプルなら、公式オンラインショップのいちばん下に「特定商取引」とあります。
開くと、販売業者の欄に有限会社エムケーとありました。
どちらも、ブランドの名前からはまず出てこない社名です。
つまり、分からなかったのではなく、見る場所が決まっていることを知らなかっただけ。
タグの隅と、ページのいちばん下。
この二か所なら、今日から確かめられます。
系列をたどると親会社にぶつかる
避けたい会社が分かっても、もう一つ引っかかるところがあるんです。
系列は避けたいと決めたとき、その系列をどこまでたどればいいのか。
ナルミヤ・インターナショナルには、上にもう一つ会社があります。
会社の沿革を開くと、2022年2月の欄にこう書いてありました。
「株式会社ワールドによる当社株式の公開買付けの結果、株式会社ワールドが当社の親会社となる」
今回の件よりずっと前から、親会社はそこにありました。
ワールドは、大人向けのブランドをいくつも抱えている大きな会社です。
子ども服の売り場でその名前を見ることはあまりありませんが、上をたどっていくと、そこに行き着きます。
だとすると、系列を避けるという線は、どこに引けばいいのでしょうか。
mezzo pianoまでなのか、ナルミヤのブランド全部なのか、その上の傘まで入れるのか。
ここに正解はありません。
というより、正解が無いこと自体が大事なところです。
どこで線を引くかは、それぞれの家が決めていいこと。
ただ、線を引くには、線の向こう側に何があるのかが見えている必要があります。
いま足が止まっているのは、怒りが足りないからでも、調べる気がないからでもありません。
地図が配られていないだけなんですよね。
子ども服だけで起きている話ではない
この形は、子ども服にかぎったものでもありません。
たとえば、外国の有名ブランドの子ども服。
大人向けの本体を海外の会社が作っていても、日本で子ども用を作って売っているのは日本のメーカー、ということがよくあります。
今回のケイト・スペードやポール・スミスのキッズがそうですし、タルティーヌ エ ショコラも同じ形でした。
ブランドの名前は世界で共通でも、レジでお金を受け取っている会社は国ごとに違っているわけです。
食べ物でも、飲食店でも、似たことが起きています。
違う名前のお店に入ったのに、運営しているのは同じ会社。
別々のつもりで選んだ二つが、元をたどると一本につながっていた、という経験に心当たりのある人は少なくないはず。
ブランドの名前は、商品につける名前です。
会社の名前ではありません。
ふだんはそれで何も困らないので、こちらもそこを気にせずに買い物をしています。
困るのは、今回のように、この会社のものは避けたいと思ったときだけです。
そのときになって初めて、名前と会社がつながっていないことに気づきます。
買い続ける人もいれば、しばらく距離を置く人もいて、どちらが正しいという話ではありません。
ただ、どちらを選ぶにしても、誰が作った服なのかが見えていないままでは、選んだことにならないはず。
タグの隅と、ページのいちばん下。
答えは前からそこに書いてあったので、今度クローゼットを開けたときにでも、一枚めくってみたいところですね。
