警察官が謝らない闇…「謝罪は?」に「公務だから無い」

身に覚えのないことで呼び止められて、スマホや車の中まで確かめられて、何も出てこなかった。
疑いが晴れたのなら、ひと言くらいはあるものだと思いますよね。
ところが返ってきたのは、「公務だから無い」という言葉でした。
マスクして運転中に、ゴムが当たる部分(左耳)
を掻いていたら
どこからかパトカーが出てきて
サイレン鳴らして止まれと。止まったらお巡りさんが走ってきたので
「何ですか」と聞いたら
ドヤ顔で
「スマホ操作していたのを現認した」と。使っていませんと言っても
現認したというので… https://t.co/LePxHlKVAB— 髙﨑親一 (一社)安全衛生教育研究所 (@anzentakasaki) 2026年10月19日
2026年10月19日、運転中に左耳(マスクのゴムが当たるところ)を掻いていたらパトカーに止められ、「スマホ操作していたのを現認した」と言われた、という投稿が広がっています。
投稿した人がスマホを手渡して、通話の記録はあるのかと問い返したところ、返ってきたのは「お巡りさんも間違えることがあるから気を付けて運転してください」の一言だったそうです。
謝罪はないのかと聞き返すと、「公務だから無い」と言って行ってしまったとのこと。
翌20日には、白バイ隊員に同じような形で止められたという飲食店の方の投稿にも、大きな反応が集まりました。
その下で目立ったのは、「そして謝罪しないんだよね」という、ため息のような声。
今回は、間違えても警察官が謝らないと言われる理由と、その悔しさを警察へ届ける方法について、わかりやすく解説していきたいと思います。
「見ました」の一点張りで止められた人たち
20日に広まった白バイの件は、投稿によるとこんな流れでした。
運転中に白バイ隊員に止められ、「スマホを使用しながらはダメです」と言われたそうです。
ところがその日、スマホは店に忘れてきていて、手元にはありませんでした。
持っていないと伝えても、隊員は「操作してたのを私は見ました」の一点張り。
違反切符まで作られたので、車内を全部探してもらったところ、隊員から出てきたのは「無いですね」という言葉だったとのこと。
投稿した人は、そのあと隊員の所属と名前をしっかり控えたそうです。
投稿に残っているのは「無いですね」までで、謝ってもらえた、とはどこにも書かれていません。
同じような体験を書いた投稿は、今年の春にも広がっていました。
ガサゴソ
👮『何も無いね』
ワイ『だから言ったじゃん…遅刻しそう』
👮『はい。行っていいよ』
ワイ『あっはい』
…えっ何もしてないのに止めといて謝罪
ないの?— sena frl (@senafrl124) 2026年4月12日
通学中に自転車を止められ、イヤホンをしていたよねと言われてボディチェックまで受けた、という人の投稿です。
何も出てこなかったあとの言葉は、「はい。行っていいよ」だけだったと書かれています。
それにしても、なぜここまで「見ました」を引っ込めないのでしょうか。
取り締まりの現場では、警察官が自分の目で違反を確かめることを「現認」と呼びます。
元警察官だという人は、この現認が「犯行目撃供述という立派な証拠になりますよ」と書いていました。
運転中にスマホを手に持って使う違反は、普通車なら反則金18,000円、違反点数は3点。
警察の側からすれば、反則金も点数もこの「見ました」の一言にかかっているので、引っ込めにくいのかもしれません。
でも、止められた側からすれば、知ったことかと言いたくなりますよね。
目で見たことが証拠になるのなら、見間違えたときには、そのぶんの責任を言葉で示してほしいところです。
ひと言の謝罪まで「公務」で消える
では、「見間違えました、すみません」がなぜ出てこないのか。
元警察官を名乗る別の人が、10月19日にこんなことを書いていました。
「職質した事自体は適法な職務執行だから謝る必要ないけど、他人の時間を奪っているんだからそれに対して謝罪するのは当然だと思う」
続けて「でも変なプライドが邪魔して謝れない」とも書き、それを警察が嫌われる理由のひとつに挙げていました。
この言葉の中で、謝罪はきれいに2つに分かれます。
- 止めたこと自体が間違いでした、という謝罪
- お時間を取らせてすみません、という謝罪
1つ目は、職務そのものの誤りを認める言葉。
2つ目は、止められた人の時間に向けた、挨拶に近いひと言です。
「公務だから無い」という返事は、1つ目を言わなくていい理由で、2つ目まで言わずに済ませています。
ネットにも、同じ気持ちを書いた投稿がありました。
別に警察も悪いことをしたわけでもないから謝罪の必要はないかもだけど、ご協力ありがとうございましたって感謝を述べるくらいはできるよねって思う。
感謝の言葉すら言えない人は、警察官の前に人としてどうかと思う。— はまま(はまーず) (@mktaoo55) 2026年4月13日
謝罪の必要はないかもしれないけれど、協力へのお礼くらいは言えるはず、という声です。
白バイの件の投稿主も、あとから「警察だって人なんだから見間違う事がある」と書いていて、見間違えたこと自体は責めていません。
見間違いは、人である以上どうしても起こります。
だからこそ、間違えたあとのひと言が出てこないことが、余計に腹立たしいんですよね。
謝ると困るのは誰なのか
それでも、挨拶に近いひと言まで出てこないのはなぜなのか。
元警察官を名乗る人の投稿に、ヒントになりそうな一文がありました。
元警察官として言う。
「警察は絶対に謝らない」
よく聞く。
俺は何度も頭を下げた。
こっちが間違えた時、 当事者の前で謝った。
当たり前だ。
だが組織の指示はこうだった。
「余計なことを口にするな」
謝罪じゃない。 余計なこと、だ。
誠意を見せることが 「訴訟リスク」になると。…— ユーリ|組織の構造を暴く元警察官 (@RealBlueJourney) 2026年5月19日
自分は間違えたときに当事者の前で謝ってきたけれど、組織からは「余計なことを口にするな」と言われていた、という内容です。
理由として挙げられているのは、「訴訟リスク」。
どこの警察の話なのかは書かれていないので、外から確かめる手立てはありません。
では、その訴訟で責任を負うのは誰なのか。
国家賠償法の第1条は、警察官のような公務員が職務の中で違法に誰かへ損害を与えたとき、「国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる」と定めています。
警察官の職務で誰かに損害が出たとき、賠償するのは都道府県などの側だ、ということ。
県があとから本人に支払いを求められるのは、同じ条文で「故意又は重大な過失があつたとき」に限られています。
訴訟のリスクを背負っているのは、まず組織のほう。
「お時間を取らせてすみません」の一言で、目の前の警察官が賠償の面で何かを失うわけでもないんです。
組織の側には、ひと言でも誤りを認めたと受け取られたくない事情があるのかもしれません。
けれど、時間を取らせたことへのお詫びは、止めたことが間違いだったと認める言葉とは別のひと言です。
そこまで飲み込ませているのだとしたら、その構えが「警察は謝らない」を作っているように見えます。
決まりに書かれている「親切」
もうひとつ腹が立つのは、決まりと現場の落差です。
警察官の振る舞いについては、国がきちんと決まりを作っています。
国家公安委員会の「警察職員の職務倫理及び服務に関する規則」は、職務倫理の基本のひとつに「人権を尊重し、公正かつ親切に職務を執行すること」を挙げているんです。
これを受けて各都道府県の警察も細かい決まりを置いていて、たとえば神奈川県警の規程には、市民と接するときの心得がこう並んでいます。
- 親切、丁寧及び迅速を旨とし、常に温容と理解をもって、これに当たること
- いかなる事態においても感情を抑制し、冷静を保って、これに当たること
- 職務上支障があると認められる場合のほか、要求があったときは、自己の所属、氏名等を明らかにすること
「温容」というのは、穏やかでやさしい顔つきのことです。
国の規則には、「国民の信頼及び協力が警察の任務を遂行する上で不可欠であることを自覚し」という言葉で始まる条文まであります。
この考え方からすれば、止められて協力した人へのひと言は、むしろ当然のもののはず。
ところが、この心得と並べると落差の大きい体験談が、ほかにもありました。
パトカーに乗せられて2人の警察官に責められ、履歴を見ても何も出てこず、最後は「おかしいなー」だけだった、という人の投稿です。
車運転中、後ろからパトカーにスピーカーで呼び止められ路地に誘導。スマホで通話してたでしょとパトカーに乗せられて2人の警官に責められる。全く身に覚えがなく、スマホの着信・発信履歴を3人で確認。結果「おかしいなー」だけ言われてパトカー降ろされた。
一切謝罪なし。
謝罪できない警官多い。— こはぎ (@kohagi_mama) 2026年4月13日
決まりに並んでいる「温容と理解」とは、ずいぶんかけ離れた場面。
しかも、こうした不満は数字にも出ています。
警察への苦情の中身は、各地の公安委員会が会議で報告していて、たとえば岡山県公安委員会の2026年2月26日の定例会では、令和7年中に受けた苦情34件のうち、約半数の16件が「言葉遣いや態度に関する苦情」だったと報告されました。
言葉遣いや態度への引っかかりは、少なくとも岡山に届いた苦情の中では、いちばん多い種類の声だということ。
謝られなかった人が出せる苦情
その場で謝ってもらえなかった悔しさを、そのまま飲み込む必要はありません。
用意されているのが、公安委員会への「苦情の申出」という仕組み。
警察法第79条は、都道府県警察の職員の職務執行に苦情がある人は、都道府県公安委員会に文書で苦情を申し出ることができると定めていて、公安委員会には「処理の結果を文書により申出者に通知しなければならない」という決まりまで付いているんです。
対象には、違法な取り締まりへの不服に加えて、態度への不満も入ります。
京都府公安委員会も、この制度でいう苦情には「警察職員の不適切な執務の対応に対する不平不満」が含まれると説明していました。
埼玉県公安委員会の案内によると、書く必要があるのは次の4つです。
- 氏名、住所、電話番号
- 住所以外へ結果を送ってほしい場合は、その連絡先
- いつ、どこで、警察職員がどう対応したかという概要
- 受けた不利益、または対応への不満の中身
様式は特に決まっておらず、埼玉県では2025年12月15日から、国のオンライン申請窓口(e-Gov)からも出せるようになりました。
ただし京都府は、電話やファクシミリでの申出はこの制度に含まれないと案内しています。
その場でやっておきたいのは、所属と名前を聞くことと、日時と場所とやりとりを書き留めておくことの2つ。
聞きにくいかもしれませんが、神奈川県警の心得にも、求められたら所属と氏名を明らかにすることが書かれています。
白バイの件の投稿主も、所属と名前はしっかり控えていました。
とはいえ、申し出れば必ず謝罪が返ってくるわけではありません。
「苦情申出制度」というのがあって、公安委員会に書面で申し立てることができます。
実際に自分はやったことがありますが、苦情→調査→警察官が嘘をつく→調査終了→結果報告でした。— ビントロング (@b_rong_kb) 2026年10月19日
実際に申し出た人の中には、調べてもらっても警察官の言い分が通って終わった、と書いている人もいます。
時間がかかることも覚えておきたいところ。
参考までに、鹿児島県公安委員会への報告資料では、警察へ直接届いた苦情の処理にかかった日数が、令和7年9月末の時点で平均160.8日でした。
それでも岡山では、対応に問題が認められた苦情について、関係した職員への個別指導や再発防止の資料を出したと報告されています。
現場で飲み込まれた「すみません」の代わりに、こちらの言葉を警察へ届ける道は、法律の中にちゃんと開いているんですね。
それでも、いちばん引っかかるのは、何も出てこなかったあとに、時間を取られた人へのひと言もなく去っていくこと。
「お時間を取らせてすみません」は誰も損をしない言葉なのに、それが出てこないのはやっぱりおかしい、と感じてしまいますよね。
この記事で参考にした情報
決まりと数字は、次の資料で確かめています。
- 国家賠償法 第1条(e-Gov法令検索)
- 警察職員の職務倫理及び服務に関する規則(平成12年国家公安委員会規則第1号)第2条・第5条
- 神奈川県警察職員の職務倫理及び服務に関する規程 第12条
- 警察法 第79条
- 苦情の申出の手続に関する規則 第2条(埼玉県公安委員会の案内に掲載)
- 埼玉県公安委員会・京都府公安委員会「苦情申出制度」の案内
- 岡山県公安委員会 第5回定例会開催状況(令和8年2月26日)
- 鹿児島県公安委員会 報告資料「警察宛て苦情事案の受理・処理状況について」(令和7年10月29日)
- 警察庁「やめよう!運転中のスマートフォン・携帯電話等使用」
