「音信不通の状況が続いているため、詳細をお伝えできず申し訳ございません」

2026年9月22日の夜、アイドルグループZOCXの公式Xに、この一文が出ました。

お休みに入っていたメンバー、戦慄かなのについての報告です。

連絡がつかないので、話せることもないまま。

そのあとネットで広がったのが、「最後の投稿」と呼ばれた一枚の画像でしたが、そこに添えられていた一行は、これから先の話をしていました。

今回は、その一行に何が書かれていたのか、そして連絡の取れない人を探してくださいと言えるのは誰なのかを、わかりやすく解説していきたいと思います。


普通に動いていた8月の終わり

ZOCXというのは、大森靖子を中心に動いているアイドルグループです。

その公式アカウントが出した文章は、短い段落をいくつか重ねたものでした。

お詫びのあとに続くのは、これから発表されるイベントが大森靖子ほかのメンバーでの出演になる、という知らせ。

後半には、こんな言葉が置かれています。

「戦慄かなのを含め『ZOCXが大好き!』という気持ちで集まったのが現体制メンバーです」

「元気に戻ってきたら、負荷なく過ごせる環境を整えつつ活動して参ります」

戦慄かなのは、アイドルグループ「ZOC」のメンバーとして活動を始めた人です。

ソロでの音楽活動のほか、実の妹である頓知気さきなとのユニット「femme fatale」でも動いてきました。

そこへ至るまでに、こんなことが起きています。

  • 8月21日、東京キネマ倶楽部でのミニワンマンライブ(単独公演)開催が発表される
  • 8月27日、femme fataleの新曲「helter skelter」が発表される
  • 9月7日に予定されていたそのミニワンマンライブが、体調不良を理由に延期
  • 9月22日、ZOCXが「音信不通」と発表

そこまでは、告知も新曲もいつもどおりに出ていました。

もっとも報道によれば、最近は「体調不良のため」「諸事情により」としてイベントを欠席する告知が、たびたび出ていたとのこと。

ライブが飛んでから発表までのあいだに何があったのかは、グループの側にも説明できていません。

理由は文章の中にそのまま書いてあって、連絡がつかないから、なんですね。

もうひとつ、同じ日にZOCXはライブの告知も出していました。

10月31日に渋谷で開く企画ライブのお知らせで、そこには「※戦慄かなのは欠席いたします」と添えられていて、先の予定まですでに5人で組み直されています。


「最後の投稿」と呼ばれた一行

心配の声が、いちばん目につきました。

「大丈夫か」「無事だといいが」「心配」。

9月23日の午前0時台にYahoo!リアルタイム検索を見た時点では、感情の割合がネガティブ79%、ポジティブ21%と出ていました。

ただ、並んでいる言葉に悪口はほとんど見当たりません。

安否がわからない人を心配する言葉が、そのままネガティブとして数えられている形なんです。

気になったのは、同じ画面の関連ワードに「最後の投稿」が上がっていたこと。

いま拡散しているのは、本人のインスタグラムの投稿を写した画像で、9月3日と表示されています。

そこに添えられていたのは、この一行です。

「この100日間、日記を書き続けました。必ず出版される事を願っています」

100日ぶんの日記を本にしたいと書いた一行を、終わりの言葉として読むのは少し無理があります。

 

本人のXは、8月28日の未明に出した投稿で止まったまま。

新曲のミュージックビデオを知らせる短い告知で、中身はいつもと変わりません。

つまり、外から確かめられるのは、更新が途切れているという一点だけ。

それでも「最後の投稿」という呼び名は、半日とたたないうちに広がっていきました。

「最後」は、結末が決まったあとにしか使えない言葉です。

そしていまのところ、結末を知っている人は、ネットのどこにもいません。

 

リプライ欄では「別垢の投稿もやばいらしいけど、どんな投稿したの?」「誰か切り抜きとか持ってませんか?」というやりとりも続いていました。

心配の気持ちがそのまま投稿を集める動きに変わっていくのはよくわかるのですが、集まっているのは結局、本人が公開した画面のコピーだけ。


探してくださいと言えるのは誰か

家族でも友人でも、急に連絡が取れなくなる人は珍しくありません。

そのときに警察へ届け出る手続きは、「行方不明者発見活動に関する規則」という決まりで動いています。

平成21年に定められ、翌年の4月1日から使われている規則で、それまで「捜索願」と呼ばれていたものが、このときに「行方不明者届」という名前になりました。

では、探してくださいと言えるのは誰なのでしょうか。

規則の第6条には、届け出を受理する相手が5つ並んでいます。

  • 親権を行う者、または後見人
  • 配偶者、その他の親族
  • 現に監護している人
  • 福祉事務所の職員など、福祉に関する事務に従事する人
  • 同居者、雇主、その他その人と社会生活において密接な関係を有する人

かたい言葉が並んでいますが、前半の項目は要するに、親や配偶者、その人の世話をしている家族のことです。

5つ目に「雇主」と書いてあるところは、意外に知られていません。

血縁がなくても、一緒に働いている側から届け出る道は、条文の上ではちゃんと開いています。

 

もうひとつ、規則の第2条には「特異行方不明者」という区分が置かれていました。

事件に巻き込まれたおそれがある人、事故に遭っているおそれがある人などに加えて、「遺書があること、平素の言動その他の事情に照らして、自殺のおそれがある者」も、ここに入ります。

この区分に当たると、警察は行方の情報を集めたり、必要な探索や捜査をしたりする側へ回るという仕組み。

そのうえ第30条には、届け出が出ていない場合でも、この区分に当たると認められる人については必要な措置をとることができる、と書かれていました。

届け出る人がいないときの抜け道も、最初から用意されています。

 

警察庁の資料によると、2024年に届け出のあった行方不明者は8万2,563人で、年齢では10代がいちばん多く、10代と20代で全体のおよそ4割でした。

届け出のときに申し出のあった原因や動機のうち「不詳」は2万281人で、理由がわからないまま届け出られている人が4人に1人近くいる計算になります。

理由がはっきりしている中では、年代ごとの傾向もはっきり出ていました。

10代は家庭のことがきっかけになる割合が高く、20代から30代は仕事や職場のことが上位に来ます。

大人が連絡を絶つ背景には、働く場所の事情が絡むこともある、ということなんでしょう。

 

所在が確認されるまでの期間は、受理した当日がいちばん多くて3万4,116人、次いで2日から3日のあいだが1万8,675人。

連絡が取れないまま時間が過ぎると不安ばかりが大きくなりますが、実際に動いた人の多くは、かなり早い段階で見つかっていました。

いきなり警察署の窓口は気が重い、という場合は、相談専用の電話もあります。

全国共通の短縮ダイヤル「#9110」で、受付は平日の午前8時30分から午後5時15分まで、土日祝日や夜間は当直や音声案内につながる形です。


見つかっても知らせは来ないことがある

届け出た人が探してもらって、無事に見つかったとします。

そのとき警察がどうするのかは、規則の第25条に書いてありました。

最初にやるのは、その人の生命または身体の安全を確認すること。

そこから先は、本人と届け出た人の意思を尊重して、本人に対して、届け出た人へ連絡するよう「促す」。

本人を連れ帰るところまでは、警察の仕事に入っていません。

 

続く条文には、発見したことを届け出た人に通知する、と置かれています。

ところが、その文にはただし書きがついていて、本人の意思その他の事情を考慮して適当と認めるときは、「通知をしないこと又は通知をする事項を限ることができる」。

無事とわかっても、それが届け出た人に伝わらない場合がある、ということ。

冷たい決まりに見えるかもしれませんが、同じ第26条の続きを読むと、事情が見えてきます。

届け出た人からストーカー行為を受けていた場合、あるいは配偶者や交際相手として暴力をふるわれていた場合は、本人の同意がないかぎり通知しない、と決められていました。

本人にとっては、探してほしいと言った人が、いちばん会いたくない相手ということも、現実にはあるでしょう。

 

そして規則のいちばん前に戻ると、もっと大きな理由が置いてあります。

第3条にはこの活動の基本が4つ並んでいて、その3つ目が「行方不明者その他関係者の名誉及び生活の平穏を害することがないよう配慮すること」。

人を探すための決まりの、いちばん最初のところに、そっとしておくための一行が入っているんですね。

 

ZOCXが「音信不通」と書いた日に、ネットで始まったのは、本人の投稿をさかのぼって集める動きでした。

いっぽう、人を探すことを仕事にしている側の決まりは、見つけたあとに何を言わないかを先に決めています。

探すという同じ言葉なのに、向いている先はまるで反対のほう。

そう考えると、この先いくら待っても、こちらへ詳しい事情が届かない可能性は十分にあります。

そして届かないほうが、本人にとってはありがたいのかもしれません。

もし身近な人と連絡が取れなくて不安になったら、入口はこのあたりです。

  • 警察相談専用電話「#9110」。事件や事故になっていないけれど警察に相談したいとき
  • こころの健康相談統一ダイヤル「0570-064-556」。本人のことでも、周りの人のことでも
  • よりそいホットライン「0120-279-338」。24時間つながる無料の電話相談

どれも、まず話を聞いてもらうところから始まります。

 

あの発表から、新しい知らせはまだ出ていません。

ただ、あの文章でいちばん先の話をしていたのは、いちばん最後のところでした。

元気に戻ってきたら、負荷なく過ごせる環境を整えつつ活動していく。

そこまで書いて待っている人たちがいるのなら、こちらもゆっくり待っていたいところですね。


この記事で参考にした情報

今回の記事は、次の資料で確かめています。

  • ZOCX公式Xの発表(2026年9月22日)と、同じ日のライブ告知
  • 音楽ナタリー、モデルプレス、日刊スポーツ、スポーツニッポンの各報道
  • 戦慄かなのの公式ファンクラブサイトのお知らせとバイオグラフィー
  • 行方不明者発見活動に関する規則(平成21年国家公安委員会規則第13号)
  • 警察庁「令和6年における行方不明者届受理等の状況」
  • 警視庁「警察相談ダイヤル#9110」、厚生労働省「まもろうよこころ」