「タクシーや電車も割引してもらえるんです、まだ使ってないんですけど」

2026年10月8日、和田アキ子が都内のイベントでこう話し、障害者手帳の4級を持っていることを明かしました。

膝と股関節に人工関節を入れる手術を、2度受けていたとのこと。

 

ネットには「お互い頑張りましょう」という声と並んで、「4級なんてあるんだ」「もっと上のような気がするんだけど」という戸惑いも流れています。

4級は軽いのか、それとも重いのか。

この数字、人工関節の場合は2014年に決まり方そのものが変わっていて、いまは手術をしただけで4級になるとは限りません。

今回は、人工関節で障害者手帳が何級になるのかを、和田アキ子の4級を入口に、認定の仕組みと一緒にわかりやすく解説していきたいと思います。

和田アキ子が両手に杖をついた冬

この日出席したのは、東京・KITTE丸の内で開かれる「歩く人生に、つづきを。展」の発表会で、主催は医療機器メーカーです。

関節の痛みを我慢しないで相談してほしい、という展示で、和田アキ子は手術とリハビリを経験した当事者として登壇しています。

始まりは2022年の秋で、体幹を鍛えるためにピラティスへ挑戦したときのことでした。

足をゴムで引っ張って広げる運動の最中に左の股関節が痛み、トレーナーには筋肉痛だと言われたそうです。

本人も最初は「こんなに早く筋肉痛がくるんだ、嬉しいな〜」と笑っていたのに、その帰りには痛みで車に乗れなくなっていたといいます。

数日後の診断は、股関節の肉離れにあたる「腸骨筋挫傷」。

その後、痛み止めの薬などでごまかしているうちに悪化して、「変形性股関節症」と分かったとのことです。

当時は年末恒例のブルーノート東京でのコンサートと、記念の全国ツアーが控えていて、休むわけにもいかない時期でした。

 

「最後は杖をつくまでいったんです、歩くのが痛くて」と本人は振り返っていて、年が明けるころには両方に杖を持たないと動けなかったそうです。

痛い足をかばって動いているうちに、今度は膝まで痛み出しました。

立つのも座るのもつらい状態で、主治医とは別の医師にも意見を聞いたうえで、2023年に右膝、2024年1月に左の股関節を、それぞれ人工関節に置き換える手術を受けています。

決め手になったのは、「やっぱり自分の足で立って歌いたい」という気持ちだったとのこと。

 

同じ人工股関節の手術を受けたプロレスラーの星ハム子は、術後すぐの様子をこう書いていました。

ベッドに腰かけるだけで大汗が出るほどの痛みを越えて、ようやく歩く練習が始まります。

和田アキ子もリハビリ中の写真を公開していて、手にしていたのは「生涯現役」と書かれたボードでした。

発表会の壇上では、スムーズに歩く姿を見せていたと報じられています。

そして最近は左手首を骨折して全治3か月と診断されたことも話していて、76歳の体はいまも治療の最中です。

「4級なんてあるんだ」の正体

4級という等級があること自体を、今回はじめて知ったという人もいました。

そもそも障害者手帳と一口に言っても、体の障害の身体障害者手帳、知的障害の療育手帳、心の病気の精神障害者保健福祉手帳の3種類。

なかでもいちばん多いのが身体障害者手帳で、国の調査では、2022年12月の時点で自宅で暮らしながら持っている人がおよそ415.9万人いました。

それだけ身近な手帳なのに、等級の中身まではあまり知られていません。

その身体障害者手帳の等級は、1級から7級までの7段階に分かれていて、1級がいちばん重いという並びです。

ただし、手帳が交付されるのは6級まで。

7級の障害は1つだけでは手帳の対象にならず、7級が2つ以上重なったときに6級として扱われる決まりになっています。

4級は、手帳が出る6段階のうち、重いほうから数えて4番目。

数字だけを見ると「比較的軽い」と受け取りたくなるのも、無理はありません。

聴覚の障害で手帳を持つ人からも、人工関節を入れていても比較的軽い4級なのかと驚いた、という声が出ていました。

 

ただ、この数字は「つらさの順位」ではありません。

手帳の等級は、体のどの機能がどこまで残っているかを、障害の種類ごとの基準に当てはめて決めたものです。

耳の4級と、足の4級を並べて、どちらが大変かを比べる物差しにはなっていないんですよね。

しかも足の障害は、外から見えにくいことが多いもの。

人工股関節を入れた人が、見た目では分からないぶん助けを求めにくい、と書いていた投稿もありました。

和田アキ子が出た展示も、テーマは関節の痛みの〈見えにくい我慢〉。

手帳の等級は、その見えにくい不自由を、外の人にも分かる形にしたものと言えそうです。

人工関節なら誰でも4級だった時代

では、人工関節を入れた人の等級は、どうやって決まっているのでしょうか。

2014年3月までは、とても単純でした。

膝か股関節に人工関節を入れれば、一律で4級。

足首の人工関節なら、一律で5級という扱いだったんです。

 

それが2014年4月の申請から、術後の経過が安定した時点で、関節がどこまで曲がるかなどを見て決める形に変わりました。

膝と股関節の場合、選ばれうるのは4級、5級、7級、そして「非該当」の4通りです。

国の認定基準では、4級は関節の「機能の全廃」にあたり、膝なら動く範囲が10度以下といった状態が目安になります。

5級はその次の「著しい障害」、7級は「軽度の障害」で、7級は1つだけでは手帳が出ない等級です。

岡山市や広島市の案内には、医療技術の進歩によって、人工関節を入れても大きな支障なく暮らせる人が多くなったことが理由として書かれています。

元厚生労働大臣の舛添要一も、2017年に自分の股関節の手術について書いた投稿で、「数年前まで身障者手帳が交付されていました」と触れていました。

それより前に手帳を受け取った人には、この見直しの影響はありません。

和田アキ子の手術は2023年と2024年なので、判定には新しい基準が使われています。

しかも膝と股関節の2か所なので、2つを合わせて判定する決まりもあり、どちらか1つだけの話とは限りません。

 

つまり人工関節に限っていえば、4級はこの4通りのなかでいちばん重い側です。

「もっと上のような気がする」と感じた人もいましたが、人工関節1つだけで判定するなら、4級より重い等級は選択肢に入っていません。

昔なら手術をしたというだけで誰でも4級で、いまは術後の体の状態しだいで、4級になる人もいれば手帳が出ない人もいます。

どの関節がどう判定されたのかまでは、本人は話していません。

それでも、手術を受ければ自然に付いてくる数字ではなくなっています。

和田アキ子がまだ使っていない割引

手帳の話を和田アキ子がしたのは、この日が初めてではありません。

10月3日、パーソナリティーを務めるニッポン放送のラジオ番組でも、同じ話をしていたんです。

マネジャーたちに「ちゃんとしてや」、つまりいたわってほしいと嫌味を言ったうえで、「障害者4級持ってるんですよ。だからタクシーとかも割引できるし」。

いつ言ったのかと聞かれて「ご飯食べる時に」と返し、スタジオを笑わせていたそうです。

 

笑い話にしているけれど、中身はかなり実用的な話でした。

身体障害者手帳の4級で使える主なものは、次のとおりです。

  • JRの運賃=本人だけで片道100キロを超えて乗るとき、普通乗車券が5割引
  • 所得税の障害者控除=27万円(1級と2級は特別障害者で40万円)
  • タクシー=運賃が1割引になると案内している自治体もある
  • 有料道路=本人が運転するときに割引の対象になる

鉄道の割引は、障害の程度で「第1種」と「第2種」に分かれていて、手帳に書かれたこの区分で中身が変わります。

足の障害の4級はふつう第2種で、本人だけで乗るなら片道100キロを超えないと割引にならないので、近場の電車で毎日使えるものではありません。

「4級は割と取れるがメリットは少ない」という声も出ていました。

それでも、税金の控除は毎年のことなので、知っているかどうかで差が出ます。

 

しかもこの控除は、年末調整や確定申告で自分から申告して初めて差し引かれる形。

また、住民税にも障害者控除があって、こちらは控除額が所得税とは別に決められています。

受けられる割引の中身は自治体ごとに違うので、住んでいる市区町村の障害福祉の窓口で一度確かめておくのが確実です。

 

もう一つ見落としやすいのが、使う場面のつらさ。

母親が人工関節で手帳を受け取り、初めてタクシーで割引を頼んだら、運転手に心ない聞き方をされた、と書いていた人もいました。

割引はどれも、手帳を持っているだけでは何も起きず、自分で出して、頼んで、初めて受けられます。

和田アキ子の「まだ使ってない」という一言にも、持つことと使うことのあいだにある一歩が出ているのかもしれません。

親が膝や股関節の手術をしたら

この話をいちばん自分ごとに感じるのは、膝や股関節を手術した親がいる人ではないでしょうか。

国税庁の決まりでは、障害者控除は本人だけでなく、扶養している家族が手帳を持っている場合にも受けられます。

親を扶養に入れている人なら、親の手帳がそのまま自分の税金に関わってくるんです。

しかも65歳以上なら、手帳がなくても、障害の程度によっては市区町村などの認定を受けて障害者控除の対象になる道もあります(自治体では「障害者控除対象者認定」と呼ばれている手続きです)。

身体障害者手帳を申請するときは、都道府県が指定した医師に診断書を書いてもらい、市区町村の窓口へ出すのが基本の流れです。

 

人工関節の場合、判定は術後の経過が安定してから。

膝と股関節の両方に人工関節を入れた人なら、1つずつでは7級でも、7級が2つ重なって6級として手帳の対象になることもあります。

手術のときに何も言われなかったから対象外、とは限りません。

 

福祉の制度は、基本的に自分から申し出て始まる仕組み。

いちばん疲れている人に、いちばん複雑な手続きが求められる、という投稿もありました。

だからこそ、そばにいる家族が気づける場面は多いと思います。

和田アキ子はイベントで、「年齢からくるものだからと考えるのではなく、まずは身近な人に相談してほしい」と話していました。

手帳の等級は、つらさを比べる順位ではなく、使える支えの入口を決める数字です。

次に実家へ帰ったときは、膝や腰の具合と一緒に、手帳の話も一度だけ聞いてみてくださいね。

この記事で参考にした情報

  • サンケイスポーツ、TBS NEWS DIG(2026年10月8日配信)=発表会での和田アキ子の発言と手術の経過
  • スポーツニッポン(2026年10月3日配信)=ニッポン放送「ゴッドアフタヌーン アッコのいいかげんに1000回」での発言
  • 岡山市・広島市「ペースメーカーや人工関節等を入れた方に対する身体障害者手帳の認定基準」(2014年4月の見直し)
  • 国税庁タックスアンサーNo.1160「障害者控除」
  • 船橋市・新宿区ほか自治体の身体障害者手帳と運賃割引の案内
  • 厚生労働省「生活のしづらさなどに関する調査」(2022年12月時点)