菊池風磨がtimeleszのメンバーに「5年間は熱愛も結婚も禁止」と伝えていた、という報道が、2026年10月4日の朝にもう一度ネットを回り始めました。

これを読んで、真っ先に元乃木坂46の白石麻衣の名前が頭に浮かんだ人は多いはず。

自分は交際が報じられているのに、メンバーには禁止なのか、と。

しかもこの話は、オーディションで加わった新メンバーにだけ厳しいのでは、という見方と一緒に広がっているところ。

今回は、この報道がどこから来たのか、新メンバーにだけ厳しいと言われるのはなぜなのかを確かめたうえで、アイドルの恋愛禁止が実際の裁判でどう扱われてきたのかも調べてみたいと思います。

出どころは名前の出ていない関係者

まずは、モヤモヤの中身から。

ネットでいちばん多いのは、やはり「自分はよくてメンバーはダメなのか」という声でした。

「まずは白石と別れてからのスタートだろ」と書いている人までいます。

いっぽうで、同じ記事の下には「自分はよくて人はダメとかそういう話ではない」という声も並んでいて、こちらにもかなりの共感が集まっていました。

叩く側とかばう側が、同じ記事の下でほぼ同じ熱量でぶつかっている状態。

10月1日の会見の直後から、何を言っても文句がつく、とかばう声は出ていました。

話の発端は、9月19日に傷害の疑いで逮捕された猪俣周杜です。

10月1日には、9月30日付でSTARTO ENTERTAINMENTとの契約が解除され、グループを抜けることが発表されました。

その同じ日に出た週刊誌に、オーディションのころの2人のやりとりが載ります。

2次審査のとき、菊池風磨が「彼女いんの?」と聞き、猪俣周杜が「いる」と認めた、と。

そのうえで「けじめ」をつけられるかと問われ、つけると約束した、という証言です。

 

では、そこから広がった「5年熱愛禁止」は、どこから出てきた話なのでしょうか。

出どころは、その10月1日発売の『週刊文春』だと伝えられています。

新体制になって2か月ほどたったころ、菊池風磨が「5年間熱愛・結婚禁止」をメンバーに通達した、という芸能事務所関係者の話が載っていたそうです。

さらにさかのぼると、2025年5月の『女性セブン』にも、芸能関係者の話として「結婚は5年封印」という考えをメンバーで共有していた、と書かれていました。

ここで押さえておきたいのは、どちらも〈関係者の話〉だという点。

本人が「5年間禁止」と言った場面は、報道に出てきません。

本人が人前で話したのは、10月1日の取材での「私自身もメンバーに対してプライベートも含め芸能活動を行う者としての自覚を何度も促してきました」という一言までです。

「自覚を促した」と「禁止を通達した」のあいだには、ずいぶん距離があります。

その距離を埋めているのは、いまのところ名前の出ていない誰かの証言だけなんです。

ただ、嘘か本当かは別にして、怒るにしてもかばうにしても、土台がまだ伝聞だということは知っておいて損はないと思います。

2022年に本人が選んだ言葉はマナー

次に気になるのは、菊池風磨がもともとアイドルの恋愛をどう考えていたのか、という点です。

この人には、4年前にテレビで話した答えが残っています。

2022年10月17日放送の『グータンヌーボ2スペシャル』で、アイドルは恋愛してもいいのかと聞かれたときのこと。

「街中で人目に触れるときとか、手繋いで歩いちゃってて、もしそれが誰かに見られたときにどういう気持ちにさせますか?」

そう問い返したうえで、「マナーは守りましょうね」と話したと報じられています。

ネットに残る書き起こしでは、事務所から恋愛を禁じられているわけではない、という前提での話だったそうです。

つまり、恋愛そのものを止める話はしていません。

しているのは、見られたときにファンがどんな気持ちになるか、という話だけ。

放送当時は、この答えがかなり好意的に受け止められていました。

 

しかも、ファンの側が引っかかっていたのも、恋愛より見られ方で。

そこを言葉にしてもらえた、と喜ぶ声が並んでいたんですよね。

そして、報じられてきた白石麻衣との交際も、この言葉のとおりの形をしています。

そもそも2人の交際は、2024年3月にスポーツ紙が「結婚前提の交際」として報じたものです。

その後の週刊誌の報道によると、会うのは原則おたがいの自宅で、出入りも時間をずらし、地下駐車場を使うなど、同じ場所にいる姿を見せないようにしていたとのこと。

2人で外を出歩く写真は一度も撮られていない、と週刊誌自身が書いているほどです。

でも当時の取材に、菊池風磨の事務所は「お答えできることはありません」、白石麻衣の事務所は「プライベートは本人に任せております」と答えていて、肯定も否定もしていません。

自分にも同じ線を当てていた、と読むこともできそうです。

恋愛禁止の裁判は判断が割れた

では、アイドルの恋愛禁止は、そもそも決まりとして通るものなのでしょうか。

先に言っておくと、アイドルの恋愛を禁じる法律は日本にありません。

あるとすれば、事務所とタレントが結ぶ契約や規約の中です。

その規約を破ったらお金を払わなければいけないのか、という争いが、これまでに東京地裁で2度ありました。

 

1つ目は、2015年9月の東京地裁です。

所属していた女性が、交際を禁じる規約に反して男性ファンと付き合い、グループが解散。

デビューからわずか数か月での解散だったそうで、会社が損害賠償を求めた裁判で、裁判所は女性側に65万円の支払いを命じました。

交際の発覚はアイドルのイメージを悪くする、という理由だったと報じられています。

 

このときは、判決を疑問視する声が弁護士からも上がりました。

いまも、恋愛禁止そのものを人権の問題として語る人がいます。

2つ目は、そのわずか4か月後の2016年1月18日、同じ東京地裁です。

こちらも、ファンとの交際を禁じた規約を破ったとして、会社が元メンバーの女性に約990万円を求めた裁判でした。

結果は、会社の請求を退けています。

裁判長は「異性との交際は幸福を追求する自由の一つで、アイドルの特殊性を考慮しても禁止は行き過ぎだ」と述べたそうです。

同じ裁判所で、半年もたたないうちに正反対の結論が出ました。

2つを分けたのは、交際がばれて客が離れることを、そのまま会社の損と見るかどうか。

2015年の判決はそれを損と見て、2016年の判決は、その損を本人に払わせるのは筋が違うと見ました。

つまり裁判所が見ていたのは、お金の請求が筋に合うかどうかだったんです。

ただ、2016年の判決は、会社の言い分を全部切り捨てたわけでもありません。

「ファンはアイドルに清廉性を求めるため、交際禁止はマネジメント側の立場では一定の合理性はある」とも書いているんです。

ファンの気持ちはわかる、でも禁止して罰するのは行き過ぎ。

裁判所が選んだのは、その中間でした。

2016年の判決が線を引いた場所

この2016年の判決には、もうひとつ大事な一文があります。

会社がアイドルに賠償を求められるのは、どんな場合か。

判決は、それを次のような場合に限るべきだとしました。

 

「積極的に損害を生じさせようとの意図を持って殊更これを公にしたなど、害意が認められる場合等に限定すべき」

少しかたい言い回しなので、ほどいてみます。

付き合ったこと自体は、責められません。

責められるとしたら、会社に損をさせるつもりで、わざわざ交際を表に出したようなとき。

たとえば、契約でもめた腹いせに、自分から交際をばらして回るような場面が思い浮かびます。

うっかり撮られた、というのとはまったく違う話なんですよね。

 

裁判所が線を引いたのは、恋愛をするかどうかではなく、それをどう表に出したか、という場所でした。

ここで、さきほどの「マナーは守りましょうね」を思い出してみてください。

菊池風磨が気にしていたのも、街で見られたときにファンがどう感じるか、でした。

本人の言葉と裁判所の判断は、ほぼ同じ場所に線を引いています。

 

だとすると、今回の件は「自分はよくてメンバーはダメ」という話に見えて、実は〈見られ方〉の話なのかもしれません。

報じられている交際が本当だとしても、写真1枚撮られていないのなら、本人の中ではまだ線の内側なのでしょう。

去年の夏、ほかの人の熱愛報道が続いたときにも、この姿勢を引き合いに出す人がいました。

もっとも、それで納得できるかどうかは別の話です。

交際が報じられた時点で、もう十分見られているじゃないか、と感じる人もいるでしょう。

新メンバー向けに読まれる3つの材料

最後に、もうひとつだけ整理しておきたいことがあります。

2つの裁判は、どちらも会社とタレントの契約をめぐる争いでした。

いっぽう今回報じられた「5年熱愛禁止」は、メンバー同士の話として書かれています。

報道にあるのも、メンバーに通達した、メンバー間で共有した、という言い方だけ。

 

仮に本当にそう伝えていたとしても、先輩メンバーの一言は、契約の条項とは別物。

2016年の判決は、会社の契約書でさえ賠償まで求められる場面はかなり狭いと言っています。

それなら、メンバー同士の言葉に人を縛る力があるとは考えにくいんです。

そもそも他人の恋愛に口を出す権利が誰かにあるのか、と問う声もあります。

では、なぜこの話は「新メンバーにだけ厳しい」と受け止められているのでしょうか。

報道の文面は「メンバーに通達」で、新しく入った人と元からいる人を分けてはいません。

それでも新メンバー向けの話として読まれるのには、本文で見てきた材料が3つ重なっています。

  • 通達したとされる時期が、新メンバーが加わって間もないころ
  • オーディションの段階で、猪俣周杜に「けじめ」をつけられるかと問うていたという証言
  • 菊池風磨自身は、ジュニア時代から長い下積みを経てきたという差

この3つ目について、ネットには「長く頑張ってきたからこそ今恋愛していてもおかしくないけど、オーディションで加入させてもらったばかりの子達がすぐに恋愛するのはおかしいよね」という受け止め方もありました。

 

もうひとつ、交際相手の側の人生を気にかける声も並んでいます。

待つことを当然のように求められるのは酷ではないか、という心配です。

どちらの声も、恋愛そのものを責めているわけではないところが印象に残りました。

こういう報道に触れたとき、見ておくと落ち着ける点は3つあります。

  • その言葉は本人が話したものか、関係者の話か
  • 事務所の契約の話か、メンバー同士の話か
  • 責められているのは恋愛そのものか、表への出方か

今回でいえば、関係者の話で、メンバー同士の話で、本人がもともと気にしていたのは表への出方でした。

 

アイドルの恋愛をめぐる言い合いは、たいてい「していいか、ダメか」の二択で始まります。

けれど、裁判所も、本人も、ファンの多くも、別のところを見ていました。

メンバーに禁止で自分は交際、と聞けば、モヤっとするのは自然なことです。

ただ、その線が〈恋愛するかどうか〉ではなく〈どう見られるか〉に引かれているのだとしたら、話は少し違ってきます。

次にアイドルの恋愛のニュースが流れてきたら、付き合っていたかどうかより、どう表に出たかを見てみると、案外ちがう景色が見えるかもしれませんね。