髙橋海人は本当に謝ったのか?ボカロ側がいちばんほしかったもの

「まず謝ってないしな」
髙橋海人の謝罪が報じられると、ネットにはこんな声が並びました。
報じられた謝罪の言葉は、会員しか読めないファンクラブのブログの中にあったんです。
いっぽうで、ボカロのファンが発表の日からいちばんほしかったものは、謝る言葉とは別のところにありました。
しかもその2日後の夜、Xの「本日のニュース」には、こんな見出しが並びます。
「KAITOこと高橋海人が『ボカロ沼』特集でMEIKOとスタジオライブ」
ところが、その夜のNHK Eテレの生放送でMEIKOと並んで歌ったのは、髙橋海人ではありません。
2006年に発売された歌声ソフト、ボーカロイド(ボカロ)のKAITOでした。
あーっ!困ります!!あーっ!! pic.twitter.com/QyeQkN9otL
— 顧問P (@komonpf) 2026年10月17日
謝罪と同じ夜には、ハッシュタグを「#KAITO_SALTBOY」へ分けてほしいというお願いも出ていて、「やっとこの不毛な争いが終わるのか」とほっとする声も出ていたところ。
それなのに、なぜまたふたりのKAITOが混ざってしまったのか。
髙橋海人は本当に謝ったのか、そして謝罪とタグの変更で何が片づいたのかを、順番に見ていきたいと思います。
「本当にごめんなさい」は会員だけに
始まりは10月3日、King & Princeの髙橋海人が、本名の「海人」をローマ字にした「KAITO」の名前で、ソロ活動を始めると発表したことでした。
同じつづりのKAITOは、ボカロの世界で2006年から使われてきた名前で、「#KAITO」のハッシュタグには、ファンが作った曲や絵が集まってきたんですよね。
ハッシュタグは、投稿に付けると同じ印の投稿がひとつの一覧にまとまる目印のこと。
発表のあと、その一覧に髙橋海人の話題が次々と流れ込み、ボカロのファンが「タグだけは分けてほしい」と頼み続ける形になっていました。
髙橋海人の側から#KAITOについての説明がないまま、日にちだけが過ぎていきます。
動きがあったのは、10月15日の夜のこと。
Smart FLASHによると、髙橋海人はファンクラブの会員だけが読めるブログで、多くの人に悲しい思いをさせてしまったとして「本当にごめんなさい」と書いたそうです。
メンバーやレーベル、スタッフと話し合いを重ねてきたことも明かし、これからは「#KAITO_SALTBOY」を使ってほしいと呼びかけたとのこと。
同じ夜には、レコード会社のユニバーサル ミュージックもXで、KAITO名義のEP「SALT BOY」を11月25日に出すと知らせました。
その知らせの後半に、タグのお願いが添えられています。
ユニバーサルミュージック様より発表がありました
ご対応に感謝いたします
#KAITO pic.twitter.com/kl18V3j9Wu— minmi (@minmi59696045) 2026年10月15日
添えられた画像のとおり、文面は「KAITOへ寄せてくださる皆様のお声は、#KAITO ではなく #KAITO_SALTBOY で発信をしてくださると幸いです」でした。
会員には本人の言葉が届き、会員でない人に届いたのはタグのお願いの一文だけ。
謝っていないという声と、「そもそも謝罪がいることなのか?」という声がぶつかっているのは、この出し方のせいでしょう。
本人の謝る言葉を自分の目で読めない以上、謝っていないと感じる人が出るのは自然なことです。
いっぽうで、同じ名前の人がいるのはよくあることで、自分の名前をタグにしただけなのに、と感じる人がいるのも無理はありません。
ボカロのファンが発表の日から頼み続けていたのは、タグを分けることでした。
タグさえ分かれれば、これまでの曲と絵を探す一覧は守れるんですよね。
そのお願いが誰でも読める場所に出たことで、ボカロの側の頼みには、ひとまず答えが返ってきた形です。
#KAITOに並ぶのはボカロの曲
では、そのタグはそれからどうなったのでしょうか。
10月18日の夜に、「#KAITO_SALTBOY」を付けていない「#KAITO」の投稿を新しい順に並べると、上から出てくるのはボカロのKAITOの絵や、ボカロPの新曲の告知、KAITOに歌わせたアカペラの子守唄でした。
上から15件のうち、髙橋海人の件に触れていたのは2件だけです。
反対に「#KAITO_SALTBOY」には、同じ日の昼すぎに見たときも、ソロの1曲目「swim?」の感想や、EPの発売を記念したイベントの話が次々と並んでいました。
そちらの上から21件のうち、#KAITOも一緒に付けていたのは3件で、どれも言い合いの投稿。
そして、ユニバーサル ミュージックのXにも、10月15日の知らせのあと、#KAITOを付けた投稿は見当たりません。
発表の日から分けてほしいと頼まれていた一覧は、ボカロの曲と絵が並ぶ場所へ戻りつつあります。
もーえーでしょうKAITO問題の話はさぁ
タグも変えてくれて本来の目的は達成できたんだからさ……人間側のKAITOの謝罪がどうとかマジでどうでも良くない?そこまでして精神的勝利(?)を得たいのか?
安心して推しを推せる環境が手に入ったならやることは一つ、推しの応援だろ……喧嘩じゃないって絶対
— 豆芽なむる (@Google157556) 2026年10月17日
こう書いた人のように、ここで一区切りにしたボカロのファンもいるようです。
長いあいだ同じタグで曲を探してきた人にとって、一覧が戻ることは何より大きいはず。
いっぽうで、誰でも読める場所での一言を求める声も、消えてはいません。
有料のブログの中身は、会員でなければ確かめられないもの。
何があったのかを、あとから誰でも確かめられる形で残してほしいという声も上がっています。
「KAITOこと高橋海人」と書いたAI
10月17日の20時から、NHK Eテレの「沼にハマってきいてみた」で、「ボカロ沼」特集の第4弾が生放送されました。
音楽ナタリーによると、初音ミク、鏡音リン・レン、巡音ルカと続いてきたシリーズの完結編で、MEIKOとKAITOがテレビで初めてのスタジオライブを披露する回です。
ところが、Xの「話題を検索」の画面にある「本日のニュース」に載ったのが、冒頭の見出しでした。
本文も「KAITO(高橋海人)とMEIKOがスタジオライブを披露し、初音ミクら6人のボカロが集結するフィナーレも」と続いていて、髙橋海人がボカロの特集に出たように読めてしまいます。
番組名も、特集の名前も、MEIKOとの共演も、全員そろってのフィナーレも、全部合っていました。
間違っていたのは、KAITOが誰なのかという一点だけです。
この「本日のニュース」は、記者が取材して書いた記事ではありません。
Impress Watchによると、2024年5月に始まった機能で、AIのGrokが、話題になっているポストをもとに記事のような要約を作るものです。
見出しの下には「このストーリーは、Xのポストの要約であり、時間の経過とともに新しくなります。Grokは間違えることがあるため、アウトプットが事実かどうかを確認してください」と小さく添えられていました。
だ、駄目だ…。
KAITO問題は解決していなかった。
NHKで放送されたボカロKAITO初のTVライブについて、XのAI要約がボカロのKAITOと人間のKAITOを区別できない事が発覚。
タグ被りが解消されても、情報が混じってしまう事が判明した。一体、我々は今後どうすれば良いのか…?…
— 刹那P (@setsuna__P) 2026年10月17日
「タグ被りが解消されても、情報が混じってしまう」という嘆きは、まさにこの夜のことを言っています。
ファンが分けたタグとは別のところで、AIの要約が、ふたりをもう一度ひとつにまとめてしまったんです。
しかも、この取り違えは、ファンどうしの新しい言い合いの種にもなっていきます。
「AIが間違えるような投稿をしてる髙橋海人サイドが悪いだろ」と書く人がいれば、「swim?」のミュージックビデオへの低評価の呼びかけなどを並べて「Grokが混乱したのは、そのせいでは?」と返す人もいました。
ただ、間違った見出しの下でいちばん上に並んでいたポストは、どちらのファンのものでもありません。
番組の公式アカウントの「スタジオでは #MEIKO さんと #KAITO さんがリハーサル中だぬ〜ん!」という投稿でした。
音楽ナタリーも、この回を知らせる投稿に「#沼ハマ #KAITO」を付けています。
要約の元になった投稿の#KAITOは、ボカロのKAITOに正しく付けられたものでした。
なぜそうなったのか、Xからの説明は見当たりません。
見出しの下にあった正しい答え
間違った見出しは、長くは残りませんでした。
ボカロPの刹那Pが、同じ夜の21時すぎに、直った要約の画面を上げています。
AI要約が直った!!
よ、良かった…。
(もう、こんな事で一喜一憂したくないよ!まったく…)#ボカロ沼 pic.twitter.com/paXHVZY0BX— 刹那P (@setsuna__P) 2026年10月17日
直った見出しは「NHK Eテレで『ボカロ沼』生放送 MEIKOとKAITOがテレビ初スタジオライブ」。
元になったポストの先頭は、間違っていたときと同じ、番組の公式の投稿でした。
正しい答えは、最初から見出しのすぐ下にあったんです。
Grokの要約は、前にも同じような取り違えをしています。
琉球新報によると、2026年9月15日、Xの「本日のニュース」は「琉球新報社説『スマホ置いて新聞を』がSNSで反響」という見出しを出しました。
実際にその社説を書いたのは沖縄タイムスで、琉球新報は「偽情報」と判定しています。
その日の昼すぎ、見出しは説明のないまま、沖縄タイムスの社説を扱う別の言葉へ変わっていたそうです。
2025年10月には、地域のニュースをGrokがまとめた際に、滋賀県で開かれたイベントを「京都」と書いてしまった件も、ビジネスジャーナルで取り上げられていました。
地名でも、新聞社の名前でも、そして今回の人の名前でも、同じ形の取り違えが起きています。
だからこそ、要約の見出しを見かけたら、下に並んだポストを1本開いて確かめるのがいちばん確実です。
「本日のニュース」の見出しをタップすると、要約の下に「トップ」と「最新」の2つの並びが出てきて、そこに並んでいるのが要約の元になったポスト。
今回なら、いちばん上の番組の公式の投稿を1本読むだけで、出演したのがボカロのKAITOだと分かりました。
では、KAITO騒動は謝罪で終わったのでしょうか。
#KAITOの一覧がボカロの曲と絵を探しに来る人の手に戻ってきたことは、ひとまず片づいたと言えそうです。
誰でも読める場所での本人の一言を待つ声は、まだ残っています。
そしてAIの取り違えの元になった投稿は、どちらのファンのものでもありませんでした。
11月25日にはEP「SALT BOY」が出て、ボカロのKAITOのほうも、これからまた新しい曲が増えていきます。
それぞれのKAITOの新しい知らせを、それぞれのタグで落ち着いて祝える日が続くといいですね。
