宮西尚生選手の“プロ支給品”とされるグローブが、フリマサイトで15万円。

週刊女性PRIMEが写真つきで伝えた、取引のひとつです。

その記事は、ドラフト会議の翌日にあたる2026年10月23日、「日ハムで窃盗事件か」という見出しで配信されました。

球団の返答にある「すでに警察にも相談しております」の一文で、ドラフトの喜びに沸いていたファンの空気は一気に重くなっています。

いまネットでは「で、誰なの?」という声とあわせて、記事の中で触れられた別の球団の元選手にまで話が「飛び火」しているところ。

今回は、誰がやったのかがまだ分からないなかで、球団の返答から確かに言えることと、まだ誰も言っていないことを、わかりやすく整理していきたいと思います。

ドラフト翌日の「窃盗事件か」

週刊女性PRIMEによると、メルカリでファイターズ選手の“プロ支給品”をうたう品をいくつも出品しているアカウントが見つかったとのこと。

宮西尚生選手や達孝太選手、中島卓也選手など、人気選手のグローブが取引に出されていたそうです。

記事に出てくるスポーツ紙記者は、こうした品を「通常、一般人が手に入れるのは困難な品物」と話しています。

そのうえで記事は、この10月にファイターズから戦力外通告を受けた元選手を「X氏」と呼び、窃盗の疑いがあるという情報が出ていると伝えました。

「キャリーケースで何かを運ぶ不自然な様子が防犯カメラで確認され、謹慎処分を受けた」という話まで、拡散されているそうです。

それでも記事は、このX氏の部分について「公式からの発表はありません」とはっきり書いています。

疑いの話も防犯カメラの話も、出回っている情報として紹介されているだけなんです。

ドラフトで高校生3人を上位で指名し、ファンが「相変わらずロマンドラフト」と盛り上がっていた翌日に、この見出し。

喜んでいいのか落ち込んでいいのか、分からなくなってしまいますよね。

 

球団が一度も使っていない言葉

週刊女性が球団に尋ねたのは3つでした。

出品を把握しているか、出品物は本物なのか、そしてX氏に窃盗の疑いがあるという情報は事実なのか。

これに対して球団は「球団内の遺失物等につき、当球団としても確認中であり、すでに警察にも相談しております」と答えています。

続けて「捜査に影響を及ぼす可能性があるため、詳細なコメントは差し控えさせていただきます」とのこと。

この返答の中には、「窃盗」も「盗難」も一度も出てきません。

使われているのは「遺失物等」で、球団の中でなくなった物がある、という言い方でした。

法律でも、人の物を盗む「窃盗」と、落とし物のように持ち主の手を離れた物を自分のものにしてしまう罪は、別々の罪として分けられています。

ただ、どちらに当たるのか、そもそも罪になる話なのかを決めるのは、相談を受けた警察の仕事です。

 

記事を読んで、出品されていたグローブは本物だった、と受け取った人もいました。

そう読みたくなる流れの記事ですが、球団が認めたのは、球団の中で物がなくなっていて警察に相談している、というところまで。

でも、メルカリに並んだ品が本物かどうか、なくなった物と同じかどうか、X氏が関わっているかどうかには、一言も触れていません。

ちなみに、記事の小見出しは「『警察にも相談』球団が“遺失物”認める」でした。

見出しは「窃盗事件か」でも、球団はまだ一度も「盗まれた」とは言っていないんです。

報道の2日前に出ていた「本物なの?」

報道より前に、ファンの側ではもう話が始まっていました。

週刊女性の記事が出る2日前、10月21日の夜の投稿です。

メルカリで選手支給品のグラブをよく見かけるけれど、本物なのか、どこから出回っているのか、という素朴な疑問。

同じころ、もう消えた出品の跡をさかのぼって、首をかしげている人の姿が。

実は、プロ野球の用具をめぐる盗難は、これまでにもありました。

2018年7月には、巨人の当時23歳の選手が、ジャイアンツ球場の選手ロッカー室から同僚のバットやグラブ、ユニホームなど110点を盗み出し、中古ブランド品の買い取り専門店に売っていたとして、球団から契約を解除されています。

2020年には西武が、選手から盗難被害の報告を受けて調べ、選手の私物を盗んでいた2軍コーチとの契約を10月31日付で解除し、11月1日に公式サイトで発表しました。

報道を見るかぎり、この2件は、球団が誰が何をしたのかを調べ、名前と処分をそろえて世の中に知らせています。

でも今回は、世の中に知らせが届いた順番がまるごと逆。

ファンが出品に気づき、噂が出回り、週刊誌が問い合わせて、ようやく球団の「警察にも相談」の一文が出てきた流れです。

球団がいつ気づいていたのかは、外からは分かりません。

そして、中古店の棚に並んだ品は店に来た人しか見ませんが、フリマの出品は、選手の名前で検索した誰の画面にも出てきます。

今回、最初に「おかしい」と声を上げたのも、その画面を見ていたファンでした。

 

別の球団に飛び火した「誰なの?」

一方、ネットで思わぬ方向へ広がったのは、記事の途中に出てくる別の話です。

記事は、別の球団にいた元選手の「K氏」についても、以前メルカリで先輩選手のバットなどを出品しているのではないかという疑いが取り沙汰されたと紹介しています。

これを読んだ人たちからは、名前を伏せた意味がないという反応が次々に上がりました。

ただ、記事自身がこの件について「出品中の商品はすべて削除され、真相は不明となった」と書いています。

日本ハムの件とは球団も時期も違う、しかも答えの出ていない別の話です。

それなのに同じ記事の中に並んだことで、まるで関係があるかのように読まれてしまいました。

 

見出しにある「戦力外選手」という言葉も、時期と球団がそろうと、読む人が候補を絞り込めてしまう書き方です。

フリマの出品をめぐる騒ぎで、出品した人が名指しで責められる騒ぎは、前にも起きています。

2026年7月、梨の盗難をめぐって出品者への疑いが広がったとき、メルカリは公式Xでこう呼びかけました。

そのあとのJ-CASTニュースの取材にも「盗難の被害に遭われた農家の方も、謂れのない攻撃を受けている出品者の方も、いずれも本来守られるべき生産者・お客さまです」と答えています。

そして今回は、窃盗かどうかさえ、球団はまだ口にしていません。

支給品を買った人の手元はどうなるのか

今回の話を読んで、前にフリマで買った支給品は大丈夫なのかと心配になった人もいるはずです。

民法193条は、盗まれた物やなくした物について、持ち主は盗まれた時・なくした時から2年間、いまそれを持っている人に返すよう求めることができると定めています。

条文の言葉は「盗品又は遺失物」。

球団が使った「遺失物」でも、見出しの「窃盗」でも、この193条の対象になる点は変わりません。

払った代金がどうなるかは、どこから買ったかで扱いが変わるので、ここは一律には言えないところです。

罪のほうはどうかというと、弁護士ドットコムニュースの記事で坂口靖弁護士は、盗品だと知らずに買った場合は罪に問われる可能性はない、と解説しています。

刑法256条が罰しているのは、盗まれた物だと知りながら買ったり運んだりすることです。

 

メルカリは、盗品の出品を利用規約とガイドラインで禁じていると公式に説明しています。

被害を受けた企業や個人からの申告があればシリアルナンバーや商品の特徴を照合し、警察から照会があれば法令に基づいて協力する、という仕組みです。

同じ記事で坂口弁護士は、買ったあとで盗品だと気づいた場合は、管理者や警察に相談するのがいちばんよい対応だとも話しています。

手元の品が気になるなら、まずはメルカリの事務局か、近くの警察署へ相談してみてください。

 

グローブの出どころについて球団が認めたのは、球団の中で物がなくなったことだけです。

そして誰がやったのかは、まだ誰の口からも出ていません。

宮西選手たちのグローブがどこから出ていったのか、球団と警察の次の発表を共に待ちたいですね。