退職代行モームリを、188回も使われた会社。

2026年10月23日、モームリの公式アカウントが「退職代行モームリを100回以上利用された企業が、4社となりました」と投稿しました。

いちばん多い会社は、188回だそうです。

返信欄には「超ブラックじゃん」「その4社公表してほしい」という声がずらりと並んでいます。

同じ週にモームリが出した利用者のデータには、こんな退職理由まで載っていました。

これを読んだあとで回数を聞けば、どんな会社なのか知りたくなるのは当然ですよね。

ただ、回数だけでは、その会社がどれだけひどいのかまでは分かりません。

今回は、社名が出てこないわけと、ランキングの上位にいつも人材派遣会社が並ぶわけを、わかりやすく解説していきたいと思います。

188回の会社の名前は一度も出ていない

ネットでは「大変お世話になっております」「お得意様じゃん」と、取引先あつかいする声まで出ていました。

笑ってしまいますが、名前を知りたい気持ちは、たぶん全員同じです。

実は、モームリは去年も、使われた回数の多い会社を何度か並べています。

2025年2月のプレスリリースでは1位が人材派遣会社で104回、5月に系列サービスの「MOMURI+」が出したランキングでも、1位は人材派遣会社の131回とのこと。

秋には、公式アカウントがこんな形で投稿しています。

どの回も、並んでいるのは業種と回数だけで、社名は出ていません。

今回の188回の会社については、いまのところ業種すら書かれていない状態です。

モームリは、ランキングをプレスリリースで近日公開するとしています。

これまでと同じ形なら、並ぶのは業種と回数になりそうです。

 

返信欄には「え?弁護士法違反してたのに?」という声もありました。

運営会社アルバトロスの前社長は、利用者を報酬目的で弁護士へ紹介したとして2026年2月に逮捕され、8月28日に東京地裁で懲役2年・執行猶予3年の判決を受けたと報じられています。

前社長は判決のあと、自分のアカウントでこう謝っていました。

会社は「サービス自体に対する司法判断ではない」と説明しています。

新しい代表のもとで春から受付を再開していて、今月の発表を見るかぎり利用は続いているようです。

水彩風の街並みを背景に、引っ越しトラック「モームリ」が走る写真と「モームリ社長逮捕の理由とは? 倒産の可能性と法律違反・業界の課題に迫る」という大きな見出し文字が重なったアイキャッチ画像。
モームリ社長逮捕の理由とは?倒産の可能性と法律違反・業界の課題に迫る退職代行サービス「モームリ」を運営する株式会社アルバトロスの社長夫妻が、2026年2月3日に逮捕されました。 容疑は弁護士法違反です。...

 

派遣社員は利用者の4.6%しかいない

去年出たランキングでは、どれも1位が人材派遣会社でした。

2025年2月のデータでは、上位40社のうち16社が人材派遣会社。

MOMURI+のランキングでも、トップ10の半数以上を占めていたと伝えられています。

ところが、モームリが今月出した51,935人分のデータでは、利用者のうち派遣社員は2,403人、全体の4.6%しかいないんです。

それなのに、会社ごとに数えると上位に人材派遣会社がずらりと並ぶ。

 

派遣で働く人の雇い主は、毎日通う職場ではなく、派遣会社です。

そして、大きな派遣会社は、たくさんの職場へ人を送り出しています。

退職代行が「辞めます」と伝える先は雇い主なので、あちこちの職場で辞めた人が、全部ひとつの社名の下に積み上がっていくんです。

 

実際、2025年2月のデータでは、人材派遣会社に雇われていた利用者の9割が、派遣先で働いていた人でした。

モームリはそのとき「雇用元と就業先が異なるため、労働環境の実態の把握が難しい」とし、派遣の契約があるぶん強引な引き止めも起きやすいと書いています。

そのランキングのときには、前社長が自分のアカウントでこう補っていました。

前社長は同じ日の補足で、派遣会社は従業員の数で利益が変わるため「退職=利益減となり、安易に退職を認められない」とも書いています。

MOMURI+によると、その時点で1位だった会社には3か月で約30回の依頼があり、「3日に1回は退職代行から連絡が来ていることになります」とのこと。

引き止めの中身については、別の退職代行の会社も、大手人材派遣会社の営業担当から言われたという言葉を公開しています。

「いてもいなくても正直どっちでも良い」と言いながら、契約の期間だけは守らせたい。

毎日顔を合わせるのは派遣先の人なのに、辞めると伝える相手は、たまにしか会わない派遣会社の担当者です。

4人に3人は自分で辞めると言っていなかった

モームリの資料に並ぶ退職理由には、配属された初日に上司から「不義理を働いた時は九州内で働けなくしてやる」と言われた、という声まであります。

退職理由を読んだ人からは、こんな声も出ていました。

怒りたくなる気持ちはよくわかります。

ただ、退職代行を使った経緯で「会社に非はなく、自己都合」と答えた人も8,950人いて、全体の17.2%と、「人間関係や職場環境」の18.8%とほとんど変わらない数でした。

入社から半年たたずに頼んだ人が、半分を超えていたとのこと。

つまり、退職代行を使った人がみんな、ひどい会社から逃げてきたとはかぎりません。

 

同じデータで目を引くのは、利用前の聞き取りの結果です。

退職代行を使う前に、自分で辞めたいと伝えたかを聞いたところ、「伝えていない」が73.8%。

伝えたと答えた人でも、いちばん多かった相手は同僚でした。

上司に直接伝えた人は、回答者全体の11.7%だけ。

退職代行を頼んだ経緯に「上司から退職を止められる」を挙げた人もいて、上司のところで話が止まる様子が数字に出ています。

だから、188回の多くは、辞めますを自分の口で言えなかった人の数なんです。

自分で言えた人はそもそもモームリに数えられないので、その会社を自分で辞めていった人が何人いたのかは、モームリにはわかりません。

しかも、上位に入るのはもともと大きな会社ばかり。

最初に出た上位10社は、どこも従業員が1,500人を超える会社で、モームリ自身も「母数自体が大きいことも一因」と書いていました。

何人の会社で何回なのかで意味がまるで変わる、とネットで書いていた人もいます。

1位の回数が104回、131回、160回と増えてきたのを見るかぎり、ランキングの回数はサービスが始まってからの合計だと考えてよさそうです。

大きな会社で、言い出しにくい仕組みがあれば、回数は自然と増えていく。

また、モームリの同じデータには、職場が改善されたとしても勤め続けたいとは思えなかった人が92.1%いたとも書かれています。

 

社名の代わりに自分で確かめられること

とはいえ、これから入る会社がどうなのかは、やっぱり気になりますよね。

返信欄にも「これからはこういう情報も視野に入れて就活しないと」という声がありました。

社名入りのランキングを待たなくても、自分で見に行ける数字はあります。

 

ひとつは、新卒などの採用で使える決まり。

若者雇用促進法では、応募した人や応募しようとしている人から求められたら、会社は職場の情報を3つの種類ごとに1つ以上出さなければいけません。

その1つ目の種類に「過去3年間の新卒採用者数・離職者数」が入っています。

ただし、どの項目を出すかは会社が選べるので、同じ種類の中から平均勤続年数のような別の項目を出してくる会社もあるかもしれません。

何を出してきたかも、ひとつの材料になります。

 

就職情報誌に載っていた離職率が誤りで、人事に確かめて初めて分かった、という人もいました。

もうひとつは、派遣で働く人のための決まり。

派遣会社は、派遣している人の数、派遣先の事業所の数、マージン率などを、インターネットで公開することになっています。

厚生労働省の「人材サービス総合サイト」で、会社ごとに見られる情報です。

マージン率というのは、派遣先が払う料金のうち、働く人の給料にならずに派遣会社に残る分の割合のこと。

何人をいくつの職場へ送っている会社なのかが分かれば、ランキングの回数が大きく見えるわけも想像がつきます。

 

でも、数字のほかに確かめておきたいのが、いまの職場で辞めますを言える相手は誰なのか。

派遣で働いているなら、毎日会う派遣先の上司ではなく、雇い主の派遣会社の担当者がその相手です。

正社員のように働く期間が決まっていない場合、民法627条では、辞めると申し入れてから2週間がたてば雇用は終わることになっています。

会社が首を縦に振らなくても辞められる、というのが法律の形です。

社名が出るかどうかは分かりませんが、その相手の名前と連絡先なら、今日のうちにスマホのメモへ残しておけますね。