『23カ国が備蓄指示』は本当?米軍の90日と冬に足す備え

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世界のあちこちの政府が、国民に水と食べ物を家に置いておくよう呼びかけているそうです。
日本でも、11月2日の防災庁の発足に合わせて、国が家庭に「最低3日、できれば1週間」の備えを求める緊急要請を出すと話しています。
そこへ、アメリカ軍が基地に「90日分」の備えを求めているという話まで重なって、ネットでは不安な声が広がっていました。
【不気味】並べて見るとちょっと不気味な現在の状況
🇯🇵日本政府が11月2日、全国民に「最低3日分、できれば1週間分の食料・水を準備せよ」と緊急要請(地震関連と推定中ではある)
🇬🇧英国政府の「Be…— 三日前 (@expokun) 2026年10月28日
並べて見ると不気味、と感じる気持ちはよくわかります。
家庭には3日なのに、なぜ軍の基地だけ90日なのか、と引っかかりますよね。
ところが、発表を1つずつ開いていくと、家庭の3日と基地の90日は、そもそも別のものを数えていました。
今回は、「23カ国」と「90日」がどこまで本当なのかを確かめたうえで、そこから見えてくる冬の備えを、家と車に分けてわかりやすく解説していきたいと思います。
『23カ国』の一覧は年も中身もばらばら
ネットで回っている一覧には、国の名前と日数がずらりと。
並びのまま読むと、世界中の政府がいっせいに同じ指示を出したように見えますよね。
まず国の数ですが、23という数を誰がどう数えたのかは、主な報道を探しても出てきませんでした。
一覧に出てくる国の発表を、出た年で並べると次のとおりです。
- ドイツ:食料は10日分、水は5日分(2016年の民間防衛の計画)
- スウェーデン:全世帯へ冊子を配布(2018年と2024年)。2020年の決定で目安は1週間に
- EU:72時間分(2025年3月の戦略)
- フランス:72時間分の備えを載せた冊子を全世帯へ(2025年に配布の準備)
- イギリス:3日分(2026年10月22日に特設サイトで公開)
- 日本:最低3日、大きな災害では1週間(11月2日の防災庁の発足に合わせて緊急要請)
いちばん古いドイツの計画と、いちばん新しい日本の要請のあいだには、何年もの開きがあります。
スウェーデンの冊子も、始まりは第2次世界大戦中までさかのぼるとCNNは伝えていました。
日本の「1週間」も、首相官邸の防災のページに前から書かれている目安です。
つまりあの一覧は、何年もかけて別々に出てきた発表を、ひとつの画面に集めたもの。
出した年も国の事情も違うので、日数がそろわないのは無理もありません。
それなら、この一覧でひとつだけ桁が違う「90日」は、何を意味しているのでしょうか。
家庭の3日と基地の90日は数えている立場が違う
90日の話は、アメリカのFox News Digitalが国防総省の内部の文書を見たとして、2026年10月下旬に報じたもので、Fox Newsの政治のアカウントも25日にこう投稿しています。
FORTRESS: The Pentagon is preparing every major U.S. military base to survive 90 days without outside support — no civilian power grid, no global supply chains, no outside fuel or water.
The initiative, revealed in documents reviewed by Fox News Digital, envisions portable… pic.twitter.com/PFbVTlkfgH
— Fox News Politics (@foxnewspolitics) 2026年10月25日
FORTRESS(フォートレス)と名付けられた計画で、アメリカ本土の主な基地が、外からの支援なしで少なくとも90日、電気や水、燃料、通信を保てるようにする内容だそうです。
報道では、持ち運べる小型の原子炉や大きな蓄電池、町の電力網から切り離して動かせる電気の仕組みまで挙がっていました。
ただ、90日という数字を書いた命令の文書そのものは公開されていないと伝えるメディアもあります。
すべての基地が、いまそこまで持ちこたえられると示されたわけでもありません。
ここで、家庭の3日を横に並べてみましょう。
EUで危機管理を担当する委員は、72時間を、家庭が自分たちだけで暮らしをつなぐ目安として示しました。
日本の細野豪志防災担当大臣も、フジテレビのネット番組で「最低限3日、できれば私は1週間と申し上げたいと思うんですけれど、おうちで公助がなくても食べ物やトイレや水ですね」と話しています。
公助というのは、国や自治体による助けのこと。
どちらの言い方でも、家庭の3日は、外から助けが届くまで家で持ちこたえる日数として語られているんです。
一方の基地の90日は、町の電気や物流が止まっても、軍が外の助けを当てにせずに動き続けるための日数でした。
「政府は何かを知っていて言わないのでは」と読みたくなりますが、桁の違いは、待つ側と動き続ける側という立場の違いでそのまま説明がつきます。
もちろん、なぜいまアメリカがここまで備えるのか、という不安は残りますよね。
報道によると、ヘグセス国防長官は幹部にあてたメモで、サイバー攻撃や破壊工作で電力網が落とされても基地の明かりは消えない、という趣旨を書いたそうです。
心配されているのは電力網が止まることで、特定の日付や相手を名指しした話は、報道の中には出てきません。
では、日本で暮らす私たちが〈待つ側〉の3日を考えるとき、冬にいちばん気をつけたい場所はどこでしょうか。
冬は車の中で助けを待つ夜がある
答えのひとつが、雪の道で動けなくなった車の中です。
NEXCO東日本と国がまとめた資料によると、2020年12月16日の夕方から、新潟県の関越道で大雪のために車が動けなくなり始めました。
動けない車の数は、18日朝の約70台という発表から、昼には、約1,000台へ訂正されています。
高速道路会社による物資の配布はその前から始まっていましたが、自衛隊による配布が始まったのは、立ち往生が始まった翌日の夜遅くだったそうです。
今年の大雪の時期にも、首相官邸が大雪の緊急発表で、車の立ち往生に警戒するよう呼びかけていました。
「大雪に対する緊急発表」を出しています。
大雪に警戒を!☑️不要不急の外出を控えて
☑️車の立ち往生に警戒
☑️やむを得ず車を運転する場合は、冬タイヤやチェーンの早めの装着の徹底
☑️大雪・暴風雪・吹きだまりによる交通障害に注意
☑️水道管の凍結に注意 pic.twitter.com/2LkirQkglB— 首相官邸(災害・危機管理情報) (@Kantei_Saigai) 2026年1月21日
車の中で待つ夜は、家と違って暖房を使い続けられません。
国土交通省北陸地方整備局のチラシは、排気口が雪に埋まると排気ガスが車内に逆流して一酸化炭素中毒になるおそれがあるとして、「必ず車のエンジンは切りましょう」と書いています。
同じチラシの「もしもの時のために車に常備しておきましょう」という欄に並んでいたのが、防寒服・毛布・使い捨てカイロと、非常用の水・食料、そして携帯用ラジオや懐中電灯でした。
エンジンを切った車で温まるもの
エンジンを切った車の中で頼れるのは、燃料も電気も使わない温まり方です。
いちばん手軽なのは、使い捨てカイロ。
ふだんの通勤や通学で使い切れるので、冬のあいだトランクにひと箱置いておいても無駄になりにくいのが助かるところです。
このカイロは、メーカーの説明で、ちょうどよい温かさが14時間続く、衣類に貼るタイプとのこと。
もう一歩備えるなら、座席に座ったまま体ごとくるまれる寝袋もあります。
このロゴスの寝袋は、メーカーの表示で適正温度の目安が0℃まで。
丸洗いでき、同じ品番どうしなら連結もできると説明されています。
収納袋に入れておけば、トランクに置いても場所はそれほど取りません。
毛布を1枚積んでおけば足りるなら、それで十分だと思います。
車に置きっぱなしにできる水と食べ物とトイレ
チラシにあった非常用の水と食料は、車に置きっぱなしにできるものを選びたいところです。
水は、片手で飲める小さめのペットボトルが扱いやすいはず。
メーカーの表示では、賞味期限は製造から15年。
食べ物は、お湯も水もいらず、手を汚さずに食べられるものが車向きです。
えいようかんは1本ずつ食べきれる大きさで、5年保存とメーカーは説明しています。
そしてもうひとつ、チラシの一覧には入っていないトイレの備え。
富山市の地区の公民館が出した便りにも、「大雪で立往生したら一番困るのがトイレです」とありました。
北陸地方整備局のチラシも、吹雪の中では自分の位置を見失うおそれがあるとして、不用意に車を離れないよう書いています。
車を離れて歩けない以上、トイレも車の中で済ませるしかありません。
マイレットのmini-10は、メーカーの表示で10回分・一人約3日分。
凝固剤と袋とポケットティッシュがセットになった小さな箱で、グローブボックスや座席の下にも収まる大きさです。
スマホの電池は寒さに弱い
同じチラシには、「携帯電話は充電しておきましょう。予備バッテリーがあるといざというとき困りません」という一文もありました。
エンジンを切ったままでは、車でスマホを充電し続けることもできません。
ただ、モバイルバッテリーは寒さで使えなくなることがあります。
エレコムの説明では、一般的なモバイルバッテリーが使える温度は0℃~40℃。
このモデルは半固体の電池を使っていて、-15℃~45℃まで使えると書かれています。
電解液をゲル状にして、液漏れや燃えにくさにも配慮したつくりとのこと。
冷えきった車内に置いておく1台なら、この温度の幅を見て選ぶと安心です。
家で迎える冬の停電と断水に足すもの
もちろん、家の備えも冬に向けて見直しておきたいもの。
食べ物・トイレ・水をどの順番でそろえるかは、防災庁の緊急要請を受けてまとめたこちらの記事にあります。
政府広報も今年の1月、地震や大雪でライフラインが止まった日に備える食品の備蓄を呼びかけていました。
もしもの時に備えて「食品備蓄」🎒
地震や大雪などでライフラインが止まったり、物流が機能しなくなったりした場合、家庭でどれくらい備えているかが重要になります!
何をどれだけ備蓄すればいいのか、必需品は何かを確認しましょう✅https://t.co/g1WOqtggCs@MAFF_JAPAN pic.twitter.com/FpBpEHrFGr
— 政府広報オンライン (@gov_online) 2026年1月15日
添えられていた図では、水とカセットコンロとボンベが「必需品」の欄のいちばん上に置かれています。
冬に、ここへひとつ足すなら、体を拭くもの。
断水すると、お風呂もシャワーも使えない日が続きます。
このからだふきは大判で、背中まで拭けるサイズとのこと。
暖房が止まった家で温まる方法は、湯たんぽや毛布を中心にこちらで紹介しています。
ポータブル電源は寒い場所に置かない
停電が長引く家の備えのうち、値段も重さもいちばん大きいのがポータブル電源です。
このDJIの電源は、メーカーの仕様で容量が1024Wh、重さが約14.2kg。
電気を出せる温度が-10℃~45℃なのに対し、充電できる温度は0℃~45℃。
寒い車庫や物置に置いたままだと、いざ充電しようとしたときに温度の範囲から外れてしまうことがあります。
しまう場所は、家族が過ごす部屋の近くにしておくほうが安心です。
値段の桁がひとつ違う買い物なので、要るのは次のような家だと思います。
- 電気で動く医療機器を家で使っている
- 停電しても家にとどまり、電気毛布を何晩も動かしたい
- 小さな子どもや高齢の家族がいて、避難所へ移るのが難しい
どれにも当てはまらないなら、上で紹介したモバイルバッテリーで、スマホの電池を守るところから始めれば十分です。
世界の備蓄の呼びかけを並べてみると、家庭の3日は、外から助けが届くまで待つための日数でした。
その3日を待つ場所は、冬には家ではなく、雪の中の車の中になることもあるんですよね。
11月2日に防災庁の緊急要請が出たら、家の備えのメモに、車のトランクの1行も書き足しておきたいですね。
Amazonのアソシエイトとして、風のまにまにライフは適格販売により収入を得ています。
この記事で参考にした情報
- Fox News Digitalの報道(2026年10月)と、それを伝えたIBTimes UK・Daily Wireなどの記事(国防総省のFORTRESS計画)
- CNN「スウェーデン、戦争に備える手引を配布へ」(2018年)、「戦争に備えておむつや医薬品の蓄えを」(2024年)、「非常時を生き抜く『サバイバルマニュアル』、フランスで全世帯に配布へ」(2025年)
- 欧州委員会の準備同盟戦略(2025年3月26日)を伝えた各社の報道/ドイツ内務省の民間防衛構想(2016年)を伝えた各社の報道
- FNNプライムオンライン(細野防災担当大臣の発言)/首相官邸「災害に対するご家庭での備え」
- NEXCO東日本などが公表した関越道の大規模滞留についての資料(令和2年12月25日)
- 国土交通省北陸地方整備局「ドライブは計画的に!」チラシ
- 各商品の仕様は、Amazon・楽天市場の商品ページとメーカーの説明(2026年10月30日時点)
